RACING

北海道から全国へ、そして世界へ!
子供たちへ「希望」と「勇気」を与えるために走り続けたい。

2025.06.22 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE Rd.3富士24時間-練習走行-

■5月27日(火)

レースウィークでの走行練習はこの日が初日。チームオーナー兼Aドライバーの佐藤は他のドライバー陣よりも一日早く現地入りし、実戦機ではなくスペアマシンのND5ロードスターにて富士スピードウェイに来ていた。

スペアマシンといえど内装は最低限でロールケージが張り巡らされたレース仕様車両。スリックタイヤに交換し、この日は4本の走行枠に挑んだ。
1本目から感触は良好で、タイヤ内圧が安定してからはコンスタントに周回を重ねていく。タイムは2分5秒前半から6秒台を刻むようになったところでガス欠症状が出始め、走行を終えたが、佐藤は2分4秒台はみえるところまできているとコメントしている。
給油をはさみ、タイヤが冷えて内圧が低下した状態でも決勝でのドライバーチェンジ直後を想定した走行訓練に臨んだ。
佐藤はこの一日でND5ロードスターの理解を深め、レースへの良い足掛かりをつかんだ。

■5月28日(水)

<搬入>

今回は24時間レースということもあり、大量のスペアパーツが必要となる。スペアマシンは前日までに自走で搬入させ、可能な限り積み込めるスペアパーツと復活を遂げた610号機(通称ロトスタ号)をトランスポーターに積み込んでKOSHIDO RACING一行は富士スピードウェイに乗り込んだ。
到着と同時に積み込まれた荷物を手際よく降ろすメカニックやスタッフ。2時間ほどで大凡のピット設営は完了し、午後からの走行に備えた。

<練習走行>

佐藤に加え、佐藤、浅井、山本、大宮と各ドライバーが到着。この日のメニューはタイム出しというよりもマシンチェック、ブレーキの焼き入れとタイヤライフ測定、燃費計算に費やされた。走行枠は50分間×3本。あとは柴田によるマシンセッティング。そしてその後に各ドライバーが搭乗し、フィーリングを確認するという流れ。
走行前にはドライバーとエンジニアによるミーティングが行われ、決勝の周回ペースの目処が伝えられる。上記の作業をこなしつつドライバー全員が指標タイムに合わせていくという形となった。

走行はユーズドタイヤにてスタート。このタイヤは前日の5月27日にAドライバーの佐藤が練習走行に使用したものをそのまま履いてスタートした。柴田が2分7秒台をマークし、各ドライバーもそれに続く形で2分8秒台をマークしていく。マシンはまた少し動きに変化がみられるようであったが、概ねトラブルなく走行を終了した。

■5月29日(木)

レースウィーク三日目の走行枠は、一本あたり90分の長丁場を二枠と、夜間練習走行60分の一枠の行程。日中の二本の走行枠はスーパー耐久専有として設けられており、コース内の状況は一変。前日までの少ない台数での走行枠とは異なり、一気に混走車両が増えた。しかしターゲットタイムは前日と変わることはない。いかに後続の他クラスを上手くパスさせ、タイムを落とさない走りをキープできるかが肝となる。

<Session1>

佐藤、浅井、柴田、大宮の順で搭乗。それぞれ決勝想定テストとし、柴田はいつも通りマシンのバランスチェックも任された。マシンの動きにはまだ課題が残っており、全ドライバーが同様の考えでセット変更を望んだ。柴田と佐藤でその方向性をエンジニア・チーフメカニックに伝え、決勝に向けたセッティングが進められる。

そのような状況下ではあるものの、大宮は何かを掴んだか順調にタイムを短縮し始める。5月8日の夜間走行練習で初めてロトスタ号に触れ、ドライビングの組み立てを強いられたものの少ない時間でそれを見事に形にしてきた。

<Session2>

まずは柴田がマシンチェックで10分間ほど走行。やや鋭くターンインするとイン側のリアが浮き気味でロックしやすいが、動きとしては悪くないという印象。2分7秒台半ばで周回し一通りのチェックを終え、浅井に交代。浅井はこれまでタイヤが厳しい状況での走行機会が多かったが、今回は新品のセットでロトスタ号本来の性能と向き合う機会となった。タイムを徐々に短縮し、2分7秒フラットまで詰める。その後も同7秒台半ばで安定して周回し、ドライバーとしてのポテンシャルの高さを見せつけた。次は山本が搭乗の予定であったが、現状のマシンの動きを把握するという目的で急遽佐藤が搭乗。ひとしきりチェックを終え、良い方向にきていると好感触の様子。満を持して山本へ交代。山本はこのレースウィークに自身の所有車両でロードスターカップにもエントリーしており、双方の走行ラインの違いやマシンの動きの違いに翻弄されながらの走行。とはいえどもロードスターマイスターとしてどの車両においてもベストな走りを可能とする山本は2分6秒台を叩き出す。それも一周限りということではなく、複数周回にわたっての6秒台。実力の高さをうかがわせた。
このセッション最後の搭乗者は大宮。一枠目で開眼した現役フォーミュラドライバーはコースイン後早々に2分6秒530をマーク。残り時間が少ない中で数周回しか許されなかったものの、短時間ながら助っ人の域を超えた走りに誰もが期待を抱いた。

<Night Session>

夜間走行。この走行枠は佐藤と柴田が担当。

まずは柴田が搭乗。ミッション交換後の慣らしを目的とした走行でもあるため軽く流す程度の走行ながら、ことのほかタイム的には2分7秒台と好ペースでの周回となり、クラストップのタイムをマークしていた。FCY訓練をはさみ、佐藤にチェンジ。2分10秒台前後のペースでミッションの調子を確かめつつ、丁寧に仕上げていく。残り30分を残してピットに帰還。セッティング変更の最終チェックを以てこの日の走り収めとした。

■走行後ドライバーコメント

Aドライバー:佐藤元春

24時間の耐久なので一発よりもコンスタントに想定タイムを刻んでいくことが重要と考えている。一日目はバッドコンディションでいかにペースを落とさず安定した走りができることを、二日目は決勝を想定した燃料満タン、ニュータイヤ装着からのスタートでの練習ということをそれぞれ主眼において走行した。決勝を想定したトレーニングを全ドライバーで意思疎通を図りながら行えた結果は期待ができるものだった。
各ドライバーは大凡チームが考えている目標値をクリアしているので、ノーペナルティかつ想定されたラップタイムを刻んでしっかりバトンをつないでいければ優勝できると信じている。

Bドライバー:柴田優作

24時間レースということで他のレースに比べてより車の準備が必要となるが、それを水曜日から順調に進められており、セットアップも良い方向に仕上がっている。ほぼ予定通りに進行できていたと思う。最後の夜間走行でも問題なく、決勝に十分期待できる状態。チームとして初の24時間ではあるが、およそのプランはできているので、チーム全員で確実に遂行できれば勝てると考えている。

Cドライバー:浅井康児

一日目、タイヤの状態もマシンのセットも自分の想定していたものとはずれていて、それをアジャストさせるまでにかなり苦労した。
二日目までに頭を整理し、挑もうとしたところセットが変更されており、その方向性がイメージ通りになっていてアクセルで車を前に進められるようになっていた。
決勝では車を壊さずみんなでゴールを目指して価値を目指したい。

Dドライバー:山本謙悟

一日目は持ち込みのセットの確認と計測4周、タイヤもマイルオーバーでフィーリングが良くない状態であったため、クルマのチェック走行に集中した。結果としては問題なく終えられた。
二日目、A・Bドライバーが車のセットアップを進めてくれて、良い状態に仕上がっていたので24時間は安心して挑めると思う。
24時間レースの燃費、燃費5クラス特有の作戦、1ピット減らす。壊さないこと前提に速さと燃費のバランスよいところを見つけて貢献したい。

Eドライバー:大宮賢人

先日の夜間テストの際に初めてロードスターに乗り、ドライビングの修正点が課題として多く出た。一日目はそのような中で挑んだが、上手く修正しきれなかった。タイヤのコンディションもあったとは思うが、もう少し早い時間で合わせられたらと思っていた。
二日目は理想の走りのイメージができてきて実践できたことがよかった。まだ燃費やタイヤの使い方という点で課題は残っているが、スプリントではなく24時間レースということを改めて認識し、ひとつひとつクリアしてロスなく走ることに集中したい。

2025.06.20 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 富士スピードウェイ公式テスト

スーパー耐久シリーズの山場となる富士24時間レースを月末に控え、チームは事前テストにて富士スピードウェイに来ていた。

今回のレースは以前にVITA-01の耐久レースでAドライバーの佐藤とタッグを組んだ経験もある大宮賢人選手をEドライバーとして起用し、5名体制で臨む。

富士スピードウェイは各ドライバーとも比較的走行経験が豊富なサーキットであるが、スーパー耐久用のロードスターで走行するのはあくまでも今回が初めて。参戦初年度というだけあり、手探りの状態からのスタートである。まして今回は鈴鹿でのクラッシュ後に応急対応にて乗り入れており、走行の目的はセッティングおよびトラブルシューティングが主なものとなった。

■Daytime Session

午前の1本目の走行枠は最終調整の時間に充て、走行は午後から。まずは柴田がファーストドライバーを務め、マシンの状態を見極める。
動きとしては特定のコーナーにおけるアンダーステアと何らかの原因によって起こる振動が悩ましい状況。しかしセッティングではない別の試みでマシンの動きは改善されており、寧ろそれがエビデンス取得を難儀させる要因となっていた。

車体自体は走行に問題ないレベルの状態であり、以降のセッションに向けてよい滑り出しとなっている。
2本目は1本目の走行枠で解明しきれていない問題を解決すべく、急遽スーパー耐久専有走行枠以外にも一般走行枠への出走を決行。このセッションも前半まずは柴田が搭乗し、1本目で試みたことを確証に変えるべく走行を重ねるが結論には至らなかった。しかしながらマシンの状態は問題なく、続いて搭乗の佐藤も良いペースで計測ラップへ。今回初めてこの車両に触れる大宮も、手探りの状態から徐々に自身の走りを組み立て、他ドライバーと遜色ないタイムをマークしていく。浅井・山本は消耗したタイヤながらレース本番を想定したようなペースを維持し、依然として不足していたマシンの走行データの取得にひと役買う形となった。

■Night Session

 

 今回のテストはこの夜間走行がメインとなる。日没とともに一気に肌寒さが感じられる富士の夜。本セッションは18:30から2時間弱にわたって執り行われた。走行開始直後はマシンたちもまだ夕日に照らされていたが、ほんの数周回のうちに辺りは一気に暗くなっていく。
ドライバーは柴田からスタート。ピットアウト後早々に無線でエンジンが吹けないと連絡が入る。ピットではエンジニアがマシンの状態を常に確認しており、即時原因を特定。次第にマシンは元々の状態を取り戻し、柴田は本来のペースでの走行が可能に。常に2分6秒台のハイペースで周回していた。
続いての搭乗ドライバーは佐藤。ピットアウト後ほどなくして赤旗が降られ、計測できない状態となる。ほどなくしてコースオープンとはなったが、燃料満タンでタイヤもずるずるの状態ながら2分6秒台をマークし、本番想定としては十分すぎる結果となった。佐藤は前戦鈴鹿から好タイムを刻み続けており、今回もその良い流れを汲んでいる。24時間は長丁場なだけに油断はできないが、チームオーナー自ら勝ちに行く姿勢を見せることにチーム全体の士気が高まる。

次の搭乗者は大宮。この日初めて乗ったマシンでありながらかなり短い時間でマシンに順応していく。現役若手ドライバーならではの吸収の速さとセンスで周回するたびにタイムを短縮。最終的に佐藤、柴田に並ぶ2分6秒台とし、24時間レースの助っ人という枠を超える卓越した走りに皆が期待を寄せた。本人は最高速こそ高くはないものの、軽くてよく止まり、よく曲がるマシンにかなりの好感触を得ていた様子。ただ、それだけではなく普段搭乗しているF4にはない動きと速度域に合わせたドライビングを組み立てるなど、走りへの追及にも余念がない。何より初めての夜間走行が楽しいと口にする大宮。普通のドライバーであれば夜間の走行は疲労度合いも格段に上がる。そこを楽しいと話してしまうあたり、大物の片鱗を見せつけられたような気分である。
続く5人目は山本。ラップタイムは問題ないが、左のリアで異音を感じ取り、様子を見ながらの走行を強いられる。計測ラップはとれず、一旦ピットイン。マシンチェックの後、改めて2周の計測へと突入する。ピックアップ(タイヤかす)を回収したか、挙動にも影響が出ている様子。2分9秒フラットから7秒台へと押し上げ、限られた計測の中でしっかりと役割を果たした。
6人目は浅井。今シーズン初めて経験するS耐という空気の中、初戦から常に不安を訴えている浅井であるが、蓋を開けてみれば2分8秒台半ば~9秒台をコンスタントにマーク。やはりもてぎや鈴鹿よりは格段に走り慣れたステージということもあり、他クラス車両が入り乱れる、しかもナイトセッションという環境でありながら予想以上の結果を刻んでいく。

最後の搭乗は再び柴田。マシンの状態をチェックしつつ、余裕をもっての周回。このテストが終了後にはマシンのフルメンテナンスを控えており、それに向けての問題の洗い出しとメカニックへのフィードバックを以て走行を終了した。
本テストでは新たに参入した大宮を含めたドライバーチェンジの訓練も行われた。その分一人一人のスティントは短縮されてしまうが、ここも耐久レースで勝ち上がるためには非常に重要なファクターであり、その精度はレースやテストを経るごとに上がっている。

こうして富士のテストは幕を閉じた。マシンのチェック、課題の洗い出し、レース本番想定での安定したペースの獲得、現役若手選手の初走行と、非常に濃密な行程を修了できた。ここから3週間後、再びこの地で耐久の頂点ともいえる24時間の闘いが繰り広げられる。チームは全力で勝ちを取りに行くべく、それぞれに課された役割に対峙していく。

2025.06.20 2025 FCR-VITA Rd.2 富士スピードウェイ

KOSHIDO RACINGは搭乗機をロードスターからVITA-01に替え、5月8日のスーパー耐久公式テストから引き続き富士スピードウェイにて走行を重ねていた。

今期は昨年までVITA-01でのレースであったKYOJO CUPがフォーミュラ(F4)に車両変更され、FCR-VITAの台数は減少。とはいえ常に30台オーバーということもあり、変わらず激戦が繰り広げられているカテゴリーである。

この第2戦は15号機に佐藤元春選手、35号機に清水愛選手、610号機に三輪英則選手がエントリー。

佐藤を筆頭にいずれも富士でのレース経験は豊富である。

■予選

前日の公式スポーツ走行までは曇天ながらドライコンディションが維持されていたものの、レース当日は未明から激しい雨に襲われた富士スピードウェイ。いわずもがな路面はヘビーウエットである。

8時ちょうどからの予選には総勢32台のマシンたちが一斉にピットアウト。このコンディションになるとメインストレートからTGRコーナーは霧で一切見えなくなる。そこにきて前走者が巻き上げるスプラッシュによりさらに視界は悪化。経験とスキルが一気に要求される状況となる。

そのような中、佐藤がまず2分22秒702で全体の7番手タイムをマーク。清水、三輪はマシンの状態とコンディションの把握でともに34秒台からのスタートとなった。ここから各車ペースアップし、計測2周目といった矢先、降雨量増加によるコースコンディション悪化のため赤旗中断。状況が回復するまで一旦ピットで待機を強いられる。

残り5分でのタイミングで再度のコースオープンを迎える。計測ラップとして与えられた周回は2周のみ。佐藤はタイヤと路面状況に全集中し、まず1周目で2分21秒961。アタックを継続し、続く2周目には2分20秒433をマーク。過去最高位となる5番手を獲得した。

清水もまた赤旗前のタイムから一気に8秒更新の2分26秒240。全体の23番手でKYOJO枠としてのポジションは8番手とした。

もうひとり気を吐いたのは三輪。VITA-01搭乗経験は実質昨年からで、しかもスポット参戦という状況の中、赤旗再開後のたった1周で2分22秒489というタイムを叩き出し、10番手につけた。前日の会話の中では「雨も強いから無理せず様子見で」などと話していたが、いざフタを開けてみればこれまでのレース経験をフルに発揮した優れた状況判断とマシンコントロールでその意地をみせた。
悪コンディションをそれぞれ味方につけた予選セッション。決勝での争いにチーム全体の期待が高まっていった。

■決勝

予選時に降り続いた雨は霧雨程度となり、レース中に路面コンディションが変わることは必至。しかしドライとまではいかず、依然スリッピーな路面との戦いは避けられない状況である。

スタートは佐藤、清水、三輪と順当に決め、FCR-VITAではありがちなオープニングラップでの大きなトラブルもなくレースは展開されていく。

15号機の佐藤はスタート直後からトップ集団に食らい付く。そのトップ集団は1位から5位の佐藤までを含めた塊となっており、それぞれ前走者を追うという状況が続いた。しばらく膠着状態が続いていたが、トップ3台が周回ごとに入れ替わる中、コンマ数秒の間隔をあけて4位争いが繰り広げられる。佐藤の前を行くのはゼッケン12番の大野選手。つかず離れずの展開から若干佐藤が遅れたものの、一切のミスなく周回を重ねていく中で大野選手がミスにより後退。堅実に走り続けていた佐藤が4位に浮上した。ここからは単独走行となったが、元々1台で淡々と練習走行をこなすスタイルというだけあり、それ以降もミスなく、しかもウエット路面を比較的得意としていることもあり、タイムも落とすことなく走破。FCR-VITA(MEC120除く)における自己最高順位を塗り替え、4位フィニッシュとなった。

初ウエットレースの35号機清水はスタートを上手く決め、一時は16番手に浮上。しかし焦りが出たか、序盤で2回のスピンを喫し29番手までポジションを落としてしまう。雨での練習量が足りない、難しいと嘆いていたが、VITA-01+フルウエット路面という境遇は想定以上にシビアだったようだ。それでも気持ちを切り替えて3周目には2台の前に出て27番手、その後も1台ずつパスして徐々に元のポジションまで戻していった。終わってみればラスト3周は毎周1ポジションアップを果たしており、最終的には24番手までのし上がってレースを終えた。本人は悔しい気持ちでいっぱいだったようであるが、これから練習を重ねることで今後の走りは激変するであろうことを確証付けた。

610号機の三輪は3台の中で最もスタートを決めたといえる。そこからの勢いそのままにオープニングラップで3台を抜き去り、7番手へと浮上。トップに次ぐ第2集団の中で熾烈なポジション争いを演じた。2周目には1台に先行を許したが、話されることなく食らい付いていく。そして4周目、悲劇は訪れた。コカ・コーラコーナー進入から立ち上がりにかけて前走者がアウト側ランオフエリアにコースアウト。その後スピンモーションに入りながら610号機の右前面に向かってコースインしてきたのである。たまらず三輪は左に回避行動をとるが相手もコントロールを失っており、そのまま接触。弾かれた三輪は反時計回りにスピンしながらイン側のウォールにクラッシュした。アライメントのずれはあったものの自走可能と判断し、すぐさま体勢を立て直してコースに復帰。幸いこの時点では10番手と2ポジション落としただけでレースを続行することができた。しかし、結構な速度域でのクラッシュであったことからボディ右後部を大きく破損し、リアウイングが激しく起こされた状態になってしまったため空気抵抗が倍増。ストレートスピードが全く伸びなくなっていた。

富士スピードウェイにおいてこれは致命的ともいえる。コーナーでは前走車との差が詰まるもののメインストレートでごぼう抜きされるという状況にさらされ、6周目以降はほぼ毎ラップ1台ずつ先行を許してしまうことに。チェッカーを受けたときは15位となっていた。それでもあれほどのアクシデントに巻き込まれながら15位完走というのはもはや快挙である。ここ2シーズンでレース経験が一気に増えた三輪の強さが光ったレースであった。

今回のFCR-VITAはKOSHIDO RACINGとしては悲喜交々といった感じにはなったが、後ろ向きな要素は何ひとつなく、寧ろスーパー耐久に続き、今回も強いチームであることを実証できた。今期は本州レースに主眼をおいて戦っていることもあり、今後の富士や鈴鹿でのVITAレースもますます見逃せない。

2025.06.19 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE Rd.2鈴鹿サーキット-決勝-

正式結果:順位認定なし

 

■決勝前ピットウォーク

前日の予選前に比べて一気に来場者が増加。事前のSNS告知等を通してたくさんのファンの方々にお越しいただいた。ノベルティは前日に比べてさらに早いペースで配られ、用意していたタオルやクリアファイルも早々になくなるといった状況。
今回はメインスポンサー様や有限会社恒志堂と包括連携協定を締結している赤井川村副村長も来場され、この時間を一緒に盛り上げていただいた。

■1stスティント:Aドライバー佐藤

時刻は11:00。気温21℃、湿度40%。今回はサクセスウエイト5㎏を積んでの戦い。
総合グリッドでは40番でイン側に位置する610号機。すぐ前はトップの村上モータース88号車。

ローリングスタートで絶妙なダッシュを決めた佐藤は1コーナーまでに前に出かけるが、88号車もアウト側で粘りS字で再びポジションを戻す。開始直後からの競り合いはあったものの、大きな混乱なくポジションそのままにレースは運んでいく。

スタート直前にエンジニアから目処となる周回タイムについて佐藤に伝えられ、それを上回るタイムでラップを重ねていく。決勝本番にしてこれまでの走りとは一線を画す佐藤の走りに誰もが驚き、そして期待を寄せた。

10周目を過ぎ、ややペースは落とし気味としたところで、その後は安定的して周回。しかしその後、大きなトラブルが佐藤を襲った。14周目、日立アステモシケインのブレーキングで急に姿勢を乱し、アウト側のクラッシュパッドに激しく突っ込む。ほぼ最高速に近い状態からブレーキが抜けた状態(踏んでも制動力が正常に立ち上がらない状況)でブレーキングを開始。異常に気付いて素早く踏み直したものの、ブレーキ油圧が戻ると同時にリアタイヤがフルロックし、アウト側に飛んでしまったという状況であった。クラッシュパッドを除去したのち自走で戻ってはこられたものの、所々マシンを損傷しておりそのままピットへ。ここから精鋭揃いのメカニックによる復活への道のりが始まる。

■2ndスティント:Dドライバー山本


鈴鹿にスペアマシンを持ち込んでいたKOSHIDO RACINGは2時間弱に及ぶ修復作業の末、610号機は走行が可能な状態となった。まさに敏腕メカニックたちの技術が結集された結果である。
残り時間2時間余りでピットアウト。長い作業から目覚めた610号機が息を吹き返す。
とはいえマシンは万全というわけではない。山本は手負いのマシンでまずは2分37~38秒まで縮めたが、徐々に早いラップペースの中で状態を探る。

マシンの状況はステアフィールに違和感が感じられたものの、大きな問題はなく走行を続けられている。様子を見ながらの走行を強いられていた山本であったが、ある程度走行に問題がないことがわかるとタイムを徐々に上昇させ、2分33~34秒台での周回に。こうなると本来のレースペースと遜色ないレベルである。スーパー耐久参戦経験豊富かつロードスターマイスターとしてのプライドにかけ、山本はハイペースでラップを重ね続けていく。元々予定されていた周回集をそつなくこなし、8回目のFCY(フルコースイエロー)明けにやや遅れてのピットインとなった。

■3rdスティント:Bドライバー柴田

予定は10周程度。ST-5Rクラストップ集団と遜色ない2分32秒台というハイペースで走り続ける。変化しているマシンの動きを自らがステアリングを握ることでメカニックやエンジニアに克明に伝え、後続の浅井に向けてより具体的かつ実践的なアドバイスも伝達された。しかしながらABSにトラブルを抱えている状況で、予定より早めのピットインを強いられることとなる。通常時に比べるとやはりまだブレーキフィールはよくないというコメントを残しており、完走に向けて慎重に走らなければならないことが共有される。

■Cドライバー浅井

残り30分のところでチェンジ。ここからでは規定周回数には及ばないことが明らかとなり、確実に鈴鹿でチェッカーを受けるという使命を全うするために浅井が最後のバトンを受け取った。スーパー耐久シリーズでは各クラスの優勝者の周回数のうち70%を走破していなければならないが、この時点ではフィニッシュ時に50%をやや上回るくらいの感覚。タイヤはグリップ感が低く感じられるものの、マシン自体は乗りにくくはないと浅井。 ブレーキのフィーリングはやはり全然違うと感じていたが、2分36~38秒台で抑えめに周回したことで無理なくデータを収集しつつ、16:00無事にチェッカーを受け、帰還した。

レース序盤に不運に見舞われた今回のレース。前回のもてぎ戦が順調だっただけに今回の結果はより残念なものと感じられたが、走り続けることで得られたことがたくさんあった。今年マシン製作し、これまで時間がない中でなんとか走らせてきた610号機。実践的な戦闘力を高めるためにはまだまだマイレージが足りないのは事実である。仮に順調に走り続けていた場合、データ上表彰台圏内は間違いなかったという解析結果も得られている。今後は速さだけではない「強さ」を身につけていくことが必須である。

次戦はいよいよスーパー耐久シリーズ一の大舞台である富士24時間。今回を大きな糧とし、ポディウムに上ることを見据えてKOSHIDO RACINGは邁進する。

2025.06.19 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE Rd.2鈴鹿サーキット-予選-

正式結果:ST-5Rクラス2位

■Aドライバー佐藤

時刻は14:00。気温21℃、湿度21%。

スーパー耐久シリーズの予選はA、Bドライバーのタイムの合算でスターティングポジションが決定されるため、チームの勢いをつけるためにもこの時間は非常に重要なファクターである。

早々にタイヤに熱を入れ、アタックラップ一周目から照準を合わせていく佐藤。計測ラップ1周目、2分31秒290と上々の滑り出し。その後も3周にわたって良好なペースをマークし続けるが、タイヤの消耗とともに徐々にタイムも厳しくなる。とはいえすべての周回を31秒台でまとめ、決勝に向けた走りのパッケージとしては良い感触を維持していた。

ここでAドライバー枠では3番手。その後のタイムはどうかといったところでなんとコース上でマシンが失速。不測のトラブルにより余儀なくランオフエリアにマシンを停め、佐藤の予選はここで終了となってしまう。
ポジション的には3番手をキープし、Bドライバーの柴田に託す形となった。

■Bドライバー柴田

15:00。気温は22℃。湿度は20%を切っている。

前セッションでのトラブル回収のため、遅れてピットに戻ってきた610号車。メカニックたちが全力で走行準備にあたり、車両は息を吹き返す。残り7分のところでようやくピットアウト。与えられた周回数は実質2周。昨日よりも特定のコーナーでアンダーステアが強く出ている中、2分29秒670をマークし2番手につける。しかしトラックリミット違反によりこちらのタイムは採択されず、続く周回でマークしたセカンドベストの2分29秒997がリザルトとして残された。

ポジションは変わらず2番手だったが、そのまま後続のタイム更新はなく、そのままのポジションで予選終了。前戦のもてぎではBドライバー枠で辛くもポールポジションだっただけに悔しさは残るが、短時間での対応と限られたアタックラップの中でやれることを最大限にし尽くした結果の2番手。チームの総合力の高さを証明した。

■Cドライバー浅井/Dドライバー山本

16:20スタート。19.8℃。湿度22%

この走行枠は決勝のスターティングポジションを決定するものではないが、各ドライバーがタイムを記録することを目的とされている。まずはCドライバーの浅井がコースイン。初回計測周は2分34秒215。浅井はマシンの状態を確認しつつ、徐々にペースを上げていく。2周目には2分32秒918と練習時のベストタイムに肉薄する記録をマークし、ここでガス欠症状が出始めたためピットイン。10分間想定の走行時間は予定通りとなった。


残り時間は山本の走行時間。とはいえども5分で、計測周として扱えるのは1周程度となる。アウトラップからペースをつくり、唯一の計測ラップである2周目へ。セクター2では浅井以上のタイムを記録し、2分32秒830をマークする。たった一周のラップをまとめ上げた山本の集中力の高さが窺える。

■ピットウォーク

北海道イエロースターズの選手3名も駆けつけたこの時間は多くのファンが来場し、サイン待ちで長蛇の列となっていた。ノベルティ配布も500を超える数があっという間になくなってしまうほどの盛況ぶり。KOSHIDO RACINGのノベルティも開始早々に配布予定数を上回り、モータースポーツ人口が多い鈴鹿ならではの熱量を強く感じられる結果となった。

本日は全ドライバーが平均して安定したタイムを刻むことができており、翌日の決勝に向けてよい流れが確立されたセッションとなった。マシントラブルはあったものの、レースウィークとしての流れは悪くはなく、それぞれがよい方向へと邁進できている。

明日はいよいよ決勝。万全の体制で挑み、初戦もてぎに続く連続表彰台を目指してチームはひた走る。

2025.06.19 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE Rd.2鈴鹿サーキット-4月25日練習走行-

■Session1

本日の走行は8時からと少し早めのスタート。天候は曇りで気温は15~16℃といったところ。スタートはいつも通り柴田から。今回はニュータイヤで予選を想定したアタックの練習である。アウトラップでのタイヤウォームを少し失敗したと本人は話していたが、計測ラップ2周目で昨年の鈴鹿予選ベストを上回る最高のタイムを早々に叩き出し、ピットへ戻る。本人もまだ余裕があるようで、明日の予選本番のアタックはますます目が離せなくなった。ピットイン後は佐藤にドライバーチェンジ、佐藤も柴田同様に予選を想定したアタック練習。コースイン後まもなくは少しマシン特性に悩まされているかと思われたが、計測3ラップ目あたりから本日のコンディションに順応し、タイムが縮まっていく。130Rのボトムスピードが昨日よりも高い領域で安定しており、2分31秒前半をマーク。30秒台も視野に入れた状態で1枠目の走行を終える。

続いて浅井が搭乗。昨日から限られた走行時間しかとれなかった中で、ようやくまとまった練習ができるようになった今回。浅井も例にもれずこの流れに乗じ、2分32秒7までタイムアップさせる。日に日に目に見える速さを身につけていったことで本人の中でもよい流れを掴んでいる様子が伺えた。

■Session2

この走行枠は他クラスとの混走。試験的にリアウイングを変更し、富士24時間に向けたテストも兼ねての走行。

まずは柴田が搭乗し、マシンの様子を見ながら走行を開始する。他クラス車両をパスさせつつの走行ながら、計測周では安定して2分31秒台をマーク。普段スーパーGT300クラスで戦っているドライバーでもあり、クラス違いの混走は手慣れたもの。パスのさせどころが絶妙である。KOSHIDO RACINGのドライバー陣を引っ張る存在として実力を遺憾なく発揮。

柴田に続いては浅井がコースイン。今回は山本の走行時間をしっかり確保するために短時間での搭乗となったが、後続の処理にまだ慣れない様子でSession1のような走行はできず、混走における課題が明確となった。一方で山本は劇的に速いタイムはでの周回はないものの、2分33秒台をコンスタントに重ねる堅実なドライビングでレースペースづくりの基礎を作り上げる。ミスのないドライビングでマシンにも負担の少ない走行を披露し、練習走行のセッションを有効に活用した。

■Session3

この走行枠はグループ2専有となり、ST-Q、4、5F・5Rクラスの車両がコースへ。ドライバーは佐藤からスタート。本戦用ロードスターでのマイレージが少ない中、確実に走りの精度を上げており、柴田と遜色のない2分31秒台のペースでの周回を可能とした。早々に走行を切り上げ、本日走行時間が十分に取れていない山本にステアリングを譲る。

山本はタイヤのグリップが低下しつつある中で、ライン取りの工夫やセクター1・2を4速ホールドでボトムスピードをキープする走りを試みるなど、様々な走り方を追求。その中で2分32秒台をマークし、レース本番に向けた走りを組み立てつつあった。

■Session4

本日の最終枠。天候は午前中より曇りの状況が続き、気温・路面温度ともに上昇はなし。この走行枠では柴田は搭乗せず、佐藤・山本・浅井が走行した。柴田はオンボード(車載)映像を確認しながらアドバイザーに徹し、3名のドライビングを見守る。

最初の搭乗は佐藤。最終枠かつ全クラス混走ということもあり、クリアラップの獲得にはなかなか至らない。それでもこれまで取得時間が限られていた走行データを少しでも多く収集し、マシンセッティングをより詰めるべく各ドライバーがそれぞれの仕事をする。 2時間の走行枠をしっかりと走り切り、二日目の走行日を有意義なものとした。

■走行後ドライバーコメント

・佐藤

柴田選手の加入でセッティングをつめる速度が大幅に早くなり、自分を含めた他のドライバーの平均タイムの底上げにもなった。予選が楽しみになっている。
ライバルたちが皆速いことはわかっているが、やるからにはAドライバーとして一番時計を出せるように全力で走ってくる所存。
スポンサーの皆様も観戦にお越しになるので、表彰台のてっぺんに上がることを目指して全力で挑む。

・柴田

走行時間がたくさんあったので明日に備えた予選のシミュレーションからログの走行テストもできたので良い一日になった。
明日は決勝スタートを少しでも優位に運ぶために全開でポールポジションを獲得できるように頑張りたい。

・浅井

本日の走行は午前一本と午後一本。午前はマシンの状態もタイヤのコンディションも良好で、やはり条件が良いと自分の想定以上に良いタイムが出せて操作もイメージの通りで、いけるという感触が得られた。
午後はロングスティントで使用したタイヤを履いて燃料も軽めの状態で走行したが、自分の課題はやはりそこにあり、グリップの低いタイヤでどうタイムを稼いでいくのか、また多くの他クラスとの混走の中でロスなく走らせるにはどうすべきなのかというところを考えたい。
明日の予選はおそらく計測2周しかできないと思われるため、無理せず今まで培ってきたものを惜しみなく出して挑みたい。

・山本

本戦を想定して念入りにタイヤのグリップ力低下などをみながらロングスティントを乗ったが、比較的ペースもよく感触は良好だった。良いデータも取れたと思う。但しほかのチームもペースが良いのでそこを警戒しつつ、夜に解析されているであろうデータに基づいて決勝で勝つというストラテジーに向けて走りを組み立てたい。
明日は予選ということでできることが限られてくるが、時間の経過とともに変化する路面にセットアップをどのように調整できるかというところが肝になってくるはずなので、そのあたりを念頭に走らせたい。

2025.06.17 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE Rd.2鈴鹿サーキット-4月24日練習走行-

■搬入

KOSHIDO RACINGのメンバーは8時にサーキット到着。到着と同時に先入りしていたトラックから荷物を下ろし搬入がスタート。ラウンドを重ねた今回は前回に比べ、チームスタッフやメカニックの手により荷物がスマートにまとまり始めスムーズなものへとなりつつある。


レースといっても準備からスタートしており、搬入搬出でいかにストレスをなくすかがチームの雰囲気につながる。1時間ほどで搬入とピット設営を終え、午後からの走行に向けマシンとホスピタリティの準備が開始。

■Session1

Rd.1からダンパーが変更となったマシン。暖機を終え柴田がマシンへと乗り込む、
アウトインを繰り返し、セッティングを進める中1コーナーでクラッシュが発生し赤旗となる。マシンは一度ピットインし、柴田が藤巻へマシンのフィーリングをフィードバック。


残り20分のところで赤旗が解除され再びコースイン、トップとコンマ5差まで近づき車の方向性が見えたため一度佐藤へとドライバーチェンジ。10分強の走行終了とほぼ同刻に赤旗となりSession1が終了した。

■Session2

Session1を終えて、スプリングを前回鈴鹿でテストしたバネレートのものに交換。柴田がマシンに乗り込み、再びセッティングへと繰り出す。

チェックを終え佐藤にドライバーチェンジ。練習走行の段階から本番に向けたドライバーチェンジの練習も行い、佐藤がコースイン。変更後の足回りのフィーリングがとても良く、ペースも良好で無事走行完了。ピットインし、今回の鈴鹿戦から参戦の山本にドライバーチェンジ。初めてのマシンながらさすがの一言、とても良好なペースで走行を重ね15分ほどでピットイン。ここで浅井へとドライバーチェンジ。 鈴鹿での初レースとなる浅井は前週にチームメイト佐藤・柴田・山本と人生初の鈴鹿走行練習に来ていた。マイカーのロードスターで丸一日走行したものの本番用車両かつスリックタイヤでの走行は今回が初めてである。走行開始後そろそろ慣れてきたかというタイミングだったが、マシンのガス欠テストも兼ねていたためピットインを余儀なくされそのままSession2が終了となった。

■走行後ドライバーコメント

Aドライバー:佐藤 元春

1本目の走行枠ではリアの挙動がシビアでセットを変更した。その後挙動は落ち着き、状況は改善された。内容としてはスプリング交換でリアがブレイクするような感触はなくなり、急なオーバーステアもなくなった。4名のドライバーが安定してタイムを刻めるようになったことから、このまま金曜・土曜と練習を重ねれば必ず良い結果につながると思う。
多くの方からご協賛いただいているので、このパワーを受け取ってしっかり結果として残せるよう挑みたい。

Bドライバー:柴田 優作

S耐車両での鈴鹿初走行となったが、初戦のもてぎからバランスよく仕上がっている。ここから鈴鹿に向けて煮詰めていく。
鈴鹿のコース特性を想定したところ多少合わないところがあったため、エンジニアに相談し、リアのスプリングを交換した。この調整で2回目のセッションではうまくマッチしたと感じている。
明日の課題は、調子自体は良いためそれをキープすることと、チーム全体のレベルアップを図ってゴールを目指せるようにしたい。

Cドライバー:浅井  康児

燃料残量テストも含めて数周回してきた。燃料が少ないため軽くて動きはよかったが、自分のロードスターとはまったく違う動きに戸惑いが生じ、思うような走りは到底できなかった。明日、明後日の練習走行枠を使ってしっかりアジャストさせたい。

Dドライバー:山本 謙悟

計測3周ほどしてきた。初めてS耐用のロードスターに乗ったが、クルマはよく曲がる印象で調子が良い。
マシン自体の完成度は高いと思う。ただ、鈴鹿は難しいため走行においての改善点はたくさんある。明日以降徐々に詰めていきたい。

2025.03.29 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE Rd.1もてぎ

ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE

開催日時:2025年3月22日(土)~3月23日(日)
開催地:モビリティリゾートもてぎ(栃木県)
ドライバー:佐藤 元春/柴田 優作/浅井 康児
マシン:KOSHIDO RACING Roadster
参戦クラス:ST-5R
天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
予選:クラス3位
決勝:クラス3位

■3月20日

搬入
7時半サーキットに到着し、10tトレーラーに納められたマシンと機材をピットに搬入するところからレースウィークは開始する。

上段にはレースマシンとスペアマシンを積載し、下段に機材がある。ドライバー、スタッフ、メカニック総動員で搬入作業を行い、Session1走行準備へと移る。

 

・Session1

柴田がマシンに乗り込み、3月頭のテストに続くブレーキパッドの感触確認とマシンのセットアップを行う。1時間の走行時間中45分を走行しピットインを繰り返したのちセットアップが整う、この段階で同クラスST-5Rの中では2番手のタイムをマーク。

柴田がピットインし、佐藤にドライバーチェンジ。佐藤は15分間走行を続けマシンの状態を確認しながら走行し、マイレージを積み重ねる。車にはまだまだ不慣れなはずだが、ライバル車に劣らないタイムをたたき出し午前の走行枠を終えた。

・Session2

Session1走行後ドライバーのフィーリングをもとにメカニックが車のセットアップを変更。セットアップを担当している柴田が走行を行い車の方向性を確認する。20分ほど走行し同クラス2番手のタイムをマーク、柴田から佐藤へドライバーチェンジ、ピットエリアで初となるドライバーチェンジの練習も伴い無事佐藤がコースイン。柴田からのフィードバックをエンジニアから佐藤に伝え、走行しながらマシンのフィーリングを確かめる。

20分ほど走行した佐藤はピットリミッターの動作確認も含めピットイン、浅井へとドライバーチェンジ。
浅井は3月頭のテストでは天候が優れずウェット路面のみの走行だったため、初のドライタイヤ走行。エンジニアから無線でフィードバックを聞き走行に挑む、ドライタイヤの特性に若干苦戦するも20分ほどの走行時間ではあったがラップタイムも他車に近づく。1時間の走行枠を浅井が締め、この日の走行を終えた。

 

■3月21日

・Session1

今日の走行からはメカニックも耐火装備を身に着け、本番前日という緊張感がチーム内を漂う。

 

柴田がマシンに身を収め走行が開始する。前日のユーズドタイヤからのスタートとなり、燃費の計算やセットアップを進める。車のセットがよい方向となりここでピットイン、ユーズドタイヤからニュータイヤへとタイヤ交換を行い初めての予選さながらであるアタックテストを行う。今回使用するマシンでセットアップを担当しいちばんマイレージを稼いでいる柴田は、このアタックでST-5RとST-5Fを合わせた同クラストップタイムをマーク。

 

ライバル車たちも燃費走行や、実践を見据えた練習を行っているため各車トップタイムとは限らないもののポテンシャルの高さを見せつけることは充分にできたであろう。
アタックテストを終えた柴田は、ピットインし浅井へとドライバーチェンジ。

前日ドライ初乗りの浅井はマイレージを稼ぎたいところである。浅井は周回を重ねるたびに変化するタイヤの状態をしっかりと感じ取りながら、着実に走行を重ねる。前日は車両やタイヤの特性に苦戦を見せる様子もあったが、走行を重ねるごとにペースも安定してきている。前日からは相当気温も上がっているにもかかわらず、2秒前後速いペースで周回し1本目の走行を終えた。

・Session2

本日2本目の走行は浅井からのスタート。この走行枠では走行開始から10分ほどでFCY(Full Course Yellow)訓練が行われる。各車無線やディスプレイ、マシンの動作を確認し再度走行がスタート。

Session1から車に慣れ始めた浅井だが、ST-5クラスが当たる壁の一つ、上位クラスをいかにうまくパスさせるかというところに苦戦中。下手にラインを外すとピックアップ(タイヤカス)を拾ってしまいその後のペースを完全に乱されてしまう。ピックアップの配慮とペースの安定を加味したうえで上位クラスにパスさせるのがとても重要である。約30分の走行を終え佐藤にドライバーチェンジ。

本日初走行となる佐藤は明日の決勝をイメージしたペースでの走行をテスト、エンジニアとリアルタイムで状況を確認しあいながら安定したペースでの走行を練習する。決勝前日最終枠ということもあり、台数はここ二日間で一番多くピックアップ配慮と上位クラスのパス対応がとても忙しい。佐藤は昨年までもST-5クラスで走行していたため落ち着いて対応。とはいえミラーを見る時間がとても増える中、自分のペースもある程度維持する必要があるため耐久レースならではの体力の消耗が激しい。残りの時間をしっかりとこなしこの日の走行を終えた。

 

■3月22日

KOSHIDO RACINGスーパー耐久シリーズ参戦、第1章が始まる。記念すべきこの日はチームオーナー佐藤元春の生誕50周年と重なり、チームにとってもよりメモリアルな一日となった。

 

・予選

気温は6~7℃。思ったより上昇は見込めず、前日の走行からはまたコンディションが変化している。

Aドライバーは佐藤。実は練習走行初日から体調が思わしくなかったが、直前まで調整を続けて挑んだ予選。路面温度が上がらない中フィーリングを確かめつつ、まずは2分21秒533をマーク。そこから順当にタイムを削っていく。アタックの旬は3~4周目。ここに照準を合わせて走行するが、コーナー進入でのフロントの入りが甘く、アンダーステア気味のマシンに手を焼く。最終的なタイムは2分20秒658でAドライバー枠の5番手につけた。

Bドライバーは柴田。アタックラップ一周目から2分17秒台をマークし、トップタイムを刻む。この時点で2位とはコンマ2秒の差をつけている。この予選で使用したタイヤは決勝のスタート時に使用することになっており、その点を考慮して柴田はもう一周のみアタックを敢行。わずかにタイム更新し、セッションの最終的なタイムは2分17秒254。そのままトップを明け渡すことなくBドライバー枠を終えた。

Cドライバー予選は浅井。

この走行枠ともなるとタイヤカス(以降、ピックアップ)の散乱が目立ち始め、コース内は限られたラインでの走行を強いられる。ST-5クラスは後続にパスさせる技術も非常に重要となる中、少しずつ自身のペースを作り上げていく。コース状況とマシンの調子を見ながら徐々にタイムを更新し、決勝レースを意識したペースづくりを展開。コンスタントに2分22秒台をマークしていった。その中でのベストタイムは2分22秒129。これまで浅井の走行時間は限られたものでしかなかったが、決勝に向けて走りを見事に確立させた。

予選全セッションを終了し、全体のベストタイムは柴田がマークしたタイムとなる。
スーパー耐久はA・Bドライバーの合算タイムによりポジションが決定されることから、スターティングポジションは3番手となった。

 

・決勝

13:00から4時間の戦いが繰り広げられる。初日の練習走行日から日に日に気温が上昇し、スタート時には21℃にまで達している。但し日差しも強くなっており、数値以上の暑さが感じられた。

各ドライバーともロードスターの車内は暑いと口を揃える。北海道では初夏をイメージさせる気候で、ドライバー陣は暑さとの闘いでもあった。
スターティングドライバーは柴田。レース展開はクリーンなスタートで、610号車は3位をキープしたまま周回を重ねていく。序盤の時点で周回タイムで上回る76号車をとらえ前へ。好調なペースを維持する柴田はそのままトップの88号車を追撃。その差を徐々に詰め、数周回にも及ぶ競り合いの後、ついにクラストップに躍り出る。その後もコンスタントに差を広げ、5秒近くギャップを得たところで88号車がピットイン。柴田のペースは落ちることなく第1スティントは29周を走破。2位以下に約10秒のマージンを稼いで佐藤にステアリングを託した。
柴田から第2スティントドライバーの佐藤へドライバーチェンジを確実にこなし、タイヤは左2本のみの交換。

 

ピットアウト時点でのポジションはクラス3番手となっていた。佐藤はペースを維持し、3番手以内を保持。その後もライバルチームのピットインのタイミングで順位はトップ~3位の中で常時変動していたが、前後のギャップはほとんど変わらずに安定したレース運びをみせる。

しかし、52周を終えたところで燃料残量の問題が佐藤を襲った。Aドライバー登録している佐藤は今回のレースで60分間以上の走行が義務とされているが、それを待たずして燃料補給のためにピットインせざるを得なくなったのだ。ルーティーンのピットインまであと少し引っ張りたかったところであったが、やむなく一旦ピットへ。燃料のみ補給し、ドライバーチェンジしないまま再びコースイン。58周を終えたところで再びピットに戻り、浅井へ交代となった。

交代自体は訓練の賜物でそつなくこなされ、4輪タイヤ交換もメカニックの作業精度が光り、迅速に完了。トップから18秒の遅れでコースに戻る。しかしながらここで再びKOSHIDO RACINGに試練が襲った。佐藤のピットストップ時にストップボードを飛ばしてしまったため、ピット作業安全義務違反でドライブスルーペナルティが課されてしまう。ペナルティを消化し、浅井の走行は予選時に引き続き安定のペースを刻む。普段から慣れないマシンやサーキットの場合、走り始めこそゆっくりであるが、ひとたび順応すると急速に早くなっていくのが浅井の走り。コースインするまで緊張を隠せない様子が見られたが、今回も定石通りの展開でレースペースは後半になると周りのライバルたちと遜色ないレベルとなっていた。

最終スティントはスターティングドライバーを務めた柴田が再び搭乗。コースに戻った時点での前車とのタイム差は約40秒。ポジションは4位。しかし柴田はあきらめることなく毎周回アタックをみせ、40秒以上あったタイム差は最終的に約27秒まで短縮。アンカーとしての意地をみせる。前方3位を走行しているのは76号車。残り15分を切ったところでなんとこちらもガソリン残量が少なくなっていたようで、ゴール直前でのピットインを強いられた。
一時は表彰台を諦めかけたが、最後の最後でチャンスが訪れたことにチームメンバー全員の期待は一気に高まる。そしてゴールまで残り僅かとなったその時、76号車の前へ…ついに表彰台圏内に返り咲いた。

柴田はそのままハイペースを維持し、さらに少しずつ差を広げて3位でチェッカー。チームメンバー全員が歓喜に沸いた。普段あまり感情を表出しないメンバーまでもが涙を流し、初参戦3位表彰台という偉業を讃えあった。

 

 

このレースシリーズ参戦までの道のりは険しく、準備も大変だった。ドライバー、メカニック、スタッフ全員が苦労を重ね、ようやくここにたどり着いたのだ。この結果はチームメンバーだけでなく、スポンサーの皆様のご支援や応援してくれた方々のご声援あってこそ生み出せたもの。KOSHIDO RACINGに関与していただいたすべての方に心からの感謝をしつつ、第2戦以降も全力で戦っていく。

 

2024.11.12 北海道クラブマンカップレース 2024 Rd.2 TOKACHI 3時間耐久レース

HOKKAIDO Clubman Cup Race TOKACHI 3時間耐久レース

 

■開催日時:2024年6月30日(日)

■ドライバー:佐藤元春/大宮賢人、上野大哲/浅井康児、石崎竜一朗/市川篤、

工藤大祐/木下祐希

■マシン:VITA-01 11号機、12号機、310号機、910号機

■参戦クラス:1C

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績

佐藤元春/大宮賢人 予選:5/12位 決勝:3/12位

上野大哲/浅井康児 予選:1/12位 決勝:2/12位

石崎竜一朗/市川篤 予選:7/12位 決勝:4/12位

工藤大祐/木下祐希 予選:4/12位 決勝:5/12位

KOSHIDO RACINGは今年もVITA-01耐久レースに参戦するため、十勝スピードウェイを訪れた。6月という事を忘れさせるほどの暑さの中3時間の耐久レースに挑むという事で、スプリントレースとは違った集中力と駆け引きが必要とされる。

今回のエントリー体制、11号車は富士S‐FJ石崎と恒志堂社員兼ドライバーの市川がタッグを組んで出場。

12号車はチームオーナー兼ドライバーの佐藤と今年度からスーパーGTへ参戦しているPONOS RACINGより現役F4ドライバーの大宮がスポット参戦しタッグを組んで出場。

310号車はRd.1で圧倒的な速さを見せた上野と昨年310号車にてシリーズ参戦していた浅井がタッグを組んで出場。

910号車は昨年に引き続きシリーズ参戦中の工藤と毎年耐久レースに道外から参戦している木下がタッグを組んで出場。

以上4台8名体制となる。

 

 

 

<練習走行>

6月28日。6月の北海道とは思えない暑さ、8月かと思わせる日差しと気温。人も車も間違いなく消耗するこのコンディションの中でどのような走りを見せてくれるのか、ドライバーはマシンに乗り込む。

初日の走行枠は5本。十勝スピードウェイ、VITAとどちらも初めてである大宮はマルボロカラーの旧12号機をドライブし走行枠全てを走行できる体制、十勝に慣れるところからスタート。現役F4ドライバーという事もあり、チームメイトからも期待が高まる。

佐藤、上野、浅井、はさすがの走りであった。この気温でありながら、30秒台から31秒台に入っておりラップタイムも安定している。上野は30秒台に入り前回レース優勝者の強さ速さをしっかりと見せつけ、チームメイト・ライバルにプレッシャーをかける。佐藤・浅井は31秒台を連続でマークし続け、長年十勝で走っているこの2人ならではの安定した速さと強さという耐久において必要不可欠な要素を見せつけた。今回十勝スピードウェイもVITAもはじめての大宮、一本目はブレーキとコーナリングにおいて限界を探っている様子だ。ステアリングを切り増ししマシンとタイヤの性能についても探りを入れている。さすが現役F4ドライバー、二本目走行枠から31秒台に連続で入るという驚異の適応力。チームメイトの上野が30秒台に入っており、31秒切りを目指して攻めるが最終枠でコースオフしてしまいそのままこの日の練習を終えた。一方市川は安定して周回はしているもののもうひと段階詰めた際に出るコーナー進入時のオーバーステアに苦戦していた。一本目の走行枠では32秒前半で周回していたが、その後ペースが上がらず33秒台での周回をしており翌日の練習走行も気が抜けない。工藤は今回耐久レースという事で、スプリントレースとは違ったセットで車を持ち込んだ。一発の速さより安定してそれなりに速く走れる耐久仕様のセッティングを二日間の練習走行で煮詰めいていく方針。1本目なかなかタイムが安定せずピットインの回数も多くみられたが調整の末31秒台をマークすることに成功。しかしながら安定といった意味ではまだ成熟しておらず初日の練習を終えた。道外から参加の木下、毎年耐久に参加しておりコースはしっかりインプットされている様子。1年ぶりの十勝のためリハビリからスタートかと思われたが、献身的な走りで32秒台を連続でマークし安定した走りを見せた。

十勝二日目となる6月29日の行程は午前2本午後2本設定されている。本日はドライバーチェンジや給油等ピット作業の練習も可能なため、明日の本戦に向けた本格的な練習が想定される。本日から石崎が遅れて十勝スピードウェイ入りし練習に参加した、VITAでのレース参戦は2年ぶりだがS-FJに乗っていた実績もあり期待が高まる。前日驚異の適応力を見せた大宮は30秒台を目指しアタックを続けていた、1本目の走行枠終盤で30秒台に入りこの日のチーム最速タイムをマークすることに成功。さすがの一言、大宮の早すぎる成長にチームメイトも鼓舞され前日のピットの雰囲気はとても良いものであった。前日31秒台で安定していた佐藤だが、練習後のインタビューで本人も語っていたようにスランプに陥っていた。32秒台から35秒台と安定せず明日へ不安を残すかと思われたが、最終枠で31秒台をマークし練習を終えた。同じく前日絶好調の310号車上野、1本目で31秒前半をしっかりマークしこのまま明日の予選へと思ったが迷走状態に突入してしまう。32秒台から33秒台を迷走しこの日の練習を終えたが、練習後には初心に帰り予選では本領発揮をすると自信あるコメントをくれた。相方の浅井は、一本のみの走行となったがしっかり31秒台をマークし相方上野との情報共有や作戦を練る1日となった。11号車をドライブする石崎は2年ぶりという事もあり、リハビリがメインの練習走行とはなったが走行はミスが少なくコンスタントに32秒台をマークしているため入賞に期待を抱き練習を終えた。相方市川は、十勝入りしたばかりの石崎がメインで走っていたため走行は一本のみとなった。前日抱えていた課題を石崎と共有し解消すべく走行に挑んだが、解消には至らなかった。セッティングを変更し乗りやすくはなったもののタイムアップとはならず、課題を残したまま練習を終えた。910号車の工藤と木下、こちらのペアはドライバー交代多めかつピットインの回数もかなり他車に比べると多い。セッティングを煮詰めることに注力し走って調整の繰り返し、工藤はシリーズ参戦している愛機のため体に馴染んでいるが木下は車に慣れることに時間を費やし練習を終えた。

<予選>

予選はAドライバー、Bドライバーと順に行われる。第一戦同様十勝も新品タイヤスタート、新品のAドラとその直後中古のBドラこのタイヤの変化がどのようにしてタイムに影響を与えるのか。VITAとヴィッツが混走となるためヴィッツをどのようにつかうかもまた勝負のカギを握る、各チームの戦略が楽しみである。

Aドライバー予選

12号車佐藤は序盤ヴィッツにひっかがるラップが多く、なかなかアタックが決まらない状態であった。前を走っていた上野との距離も空いてしまい単独アタック、32秒825をマークし2番手につける。その後ライバル上野と6号車平中克幸選手が佐藤を上回り3番手となる。果敢なアタックを続け11周目で32秒550をマークしたが4脱のためタイム抹消、セカンドベストである32秒704が起用され3番手で予選を終えた。

310号車上野は昨日の練習走行での反省点を生かし予選に挑む。1周目はしっかりタイヤを温め2周目からアタック開始、アタック最初の周から31秒8をマークすることに成功。その後も調子を落とすことなくアタックを続け7周目に31秒452をマーク、このタイムが予選の全体ベストタイムとなった。

11号車石崎は8周目まで33秒台で周回しておりタイミングを狙っている。前を走るチームメイトの工藤のスリップを使い32秒550をマークすることに成功、しかしこのラップ4脱判定となってしまいベストタイムが抹消。セカンドベストが起用され7番手で予選を終えた。

910号車工藤は1周目入念にタイヤを温めアタック開始。3周目に33秒41をマークするがなかなかタイムが伸びない、7周で一度ピットインしタイヤ空気圧を調整。この空気圧調整が功を奏し、ピットアウト後最初の計測ラップにおいて32秒898をマークすることに成功。5番手で予選を終えた。

Bドライバー予選

12号車大宮は前日の好感触を予選にぶつける。序盤ヴィッツや86に捕まる場面が多くみられたが、後半は最終コーナー手前から準備を整えアタック開始。やはりAドライバーの走行後という事もあってか全体のペースが少し遅いようだ、そんな中タイムを出すべく果敢にアタックを続け9周目に32秒470をマーク。しかし予選アタック中の走路外走行が目立ち2グリッド降格のペナルティとなってしまった。

310号車浅井も大宮と似た展開であった。序盤は混走に苦しみ中盤からアタック開始、少ないクリアラップの中10周目に32秒470をマークし3番手で予選を終えた。

11号車市川は練習走行同様にマシンの動きに苦戦していた。持ち前のテクニックで何とか車の動きを修正しようとするがなかなか1周にまとめることができない。アタックラップ最終周にベストラップを更新、4脱のない綺麗な走りをし7番手で予選を終えた。

910号車木下は車に完全に馴染めていない状態での予選となった。予選終盤まではライバル車にも複数回パスされなかなかペースが上がらない様子、スリップをもらうことも叶わなく33秒33がベストタイム。時間ギリギリのところでピットイン、空気圧を調整しアドバイザーの山本からアドバイスを受ける。ピットアウト後、時間的にも最後の計測ラップと思われたその周に32秒945をマークし4番手で予選を終えた。

予選タイム

11号車:1分32秒989(決勝7番グリッド)

12号車:1分32秒470(決勝5番グリッド)※ペナルティにより2グリッド降格のため

310号車:1分31秒452(決勝1番グリッド)

910号車:1分32秒898(決勝4番グリッド)

<決勝>

気温は30度。6月とは思えない真夏日のような暑さの中、スタートを担当するドライバー達がマシンに身を収める。

 

 

 

今回は3時間耐久ということで、いつものスプリントレースとは違いローリングスタートとなっている。

先頭上野が隊列を率いたまま最終コーナーを抜けホームストレートへ、シグナルレッドからブルーに変わりレーススタート。

310号車上野はポールポジションスタート、後ろには6号車現役GTドライバーの平中克幸選手が常に迫る。予選一発の速さでは上野が勝っていたが、レースの組み立てやバックマーカーの使い方という面で平中選手は長年培っており一度前を許すと抜き返すことは容易ではない。平中選手のプレッシャーに耐えながら近い距離で奮闘していたが、4周目1コーナー手前で前を許してしまう。5周目から別クラスのバックマーカーに追いつきここからが耐久というところ、その後もバックマーカーが絡み多少のバラつきはあったがしっかり平中選手の背中につきプレッシャーを与えた。

30周を超えたところで前を走る平中選手がピットイン、上野はピットアウトしてくる平中選手よりも前に出るためペースを上げる。34周目の1コーナー進入でピットアウトした平中と並ぶが、ここでは車速の乗っていた上野に軍配が上がる。このままペースを維持し後ろとの差を広げたいところだったが38周目に燃欠症状が出てしまいピットイン、浅井とドライバーチェンジをする。

浅井は同一周回のライバルと絡むことはなかったが、うまくバックマーカーをさばき33秒前半での周回を1スティント走り切った。速く走らなければいけないが頭の片隅に燃費走行という言葉の浮かぶ中、とても良いペースで周回し上野にバトンパス。

上野はピットアウト後耐久レースということもありマシン、ドライバーともに疲弊しているはずだがそんなことは感じさせない走りを魅せる。他車より1秒近く速いタイムで周回を積み重ね確実に後ろとの差を広げている、このまま単独トップかと思われた矢先不幸に見舞われてしまう。前を走る88号車に2コーナーで迫った際前の車が姿勢を崩してスピン、何とかかわそうとステアリングを切るがコーナー旋回中の修正はさすがに厳しく上野もスピンをしてしまう。このスピンにより20秒ほどタイムロスをしてしまうが上野のペースが落ちることはなかった、32秒台で周回し開いた差を確実に埋める走り。

ここで3回目のピットイン、上野浅井ペアはドライバーチェンジせずこのまま好タイムの上野がステアリングを握ることを選択。この選択は実質上野がチェッカーまで走るという事を意味している。3時間の耐久レースも残り20分弱にして1位と2位が僅差、上野の力強い走りと勝利を信じピットクルー、チームメイトの気持ちもこみ上げつつあるが決して気の抜けないスプリントレース以上の走りが必要であった。310号車は上野の好ラップタイムを見て3分という短いピットストップの中でリアタイヤの交換を決意、ピットクルーの正確かつ迅速な作業のおかげで20秒ほどを残し作業が完了。気持ちを背負い上野はピットアウト、1コーナーへ加速し始めると左後ろから白いマシンが迫る。6号車平中選手だ、上野は1コーナー前でパスされ前を走る現役GTドライバーを追いかける展開となった。途中チームメイトの市川が間に入るシーンもあったが、迅速な判断で上野を前に行かせエールを送る。上野は32秒フラットで周回し続け前を走る平中選手とは周回を重ねるごとに距離が縮まっていた、ここからの勝負は正直興奮が止まらない。バックマーカーを使った熾烈なバトルが繰り広げられたが、のころ6分のところで上野が平中選手を射程圏内に入る距離まで猛追することに成功。このままの距離を保持しホームストレートでオーバーテイクかと思われたが、途中平中選手が7コーナー手前にて86を使ったうまい駆け引きに成功し上野は86と衝突寸前の一大事。ここでまた前との差が開いてしまうが上野のラップタイムの速さは本物だ、諦めず果敢に前との距離を詰め最終週1コーナーブレーキングでまたしてもトップを射程圏内へ。とても近い距離のまま最終コーナーを立ち上がる、310号車の鼻先が6号車にかすめるほどの距離まで追い詰めたが悔しくも0.144秒差の2番手でチェッカーを受けた。上野はチェッカーと同時に気持ちがこみ上げ男泣き。プロを相手にとても力強い走りを魅せてくれた。

12号車佐藤は相方大宮の予選時複数回走路外走行により2グリッドダウンの5番手スタートとなった。順調にスタートを決め4番手スタートチームメイトである910号車工藤の後ろをかなり近い状態で走行。10号車、910号車、12号車この3台が固まった状態が続いている。4周目1コーナーでスリップを使い車速の伸びた佐藤は910号車工藤をパス、前を走る10号車に差し迫りプレッシャーをかけ続けている。佐藤は昨年シリーズチャンピオンを飾っており、その強さと経験を含めた意地の走りで先頭2台に追いつくつもりだ。6周目には目を走る10号車を射程圏内に入れオーバーテイクのチャンスを伺うが中里選手の粘り強い走りになかなか前へ出られない、11周目のホームストレートでようやく綺麗な状態でスリップをもらうことに成功。1コーナーブレーキングで10号車をパスし3番手に浮上、ここで先頭集団との差は15秒であった。先頭2台が32秒台前半でラップを刻む中佐藤のタイムは平均33秒前半、5周後には20秒の差が開き1ラップごとに約1秒離れている計算となる。少しでも前に追いつこうとバックマーカーのスリップを積極的に使いペースアップを試みるが差は縮まらなかった、しかし予選で下がった2グリッド分を取り返しピットイン、しっかりと仕事を果たし大宮へとドライバーチェンジをした。

大宮にドライバーが変わりコースイン、大宮は予選時の自分のミスで2グリッド降格させてしまったこともあり気合十分。練習2日間で驚異の適応力を魅せレースでの活躍にも期待が高まる。序盤なかなかタイムが上がらない様子の大宮は33秒前半での周回が続く、バックマーカーのいなし方も慣れてきた15周目32秒87をマーク。その後もタイム差はあるがノーペナルティでしっかり走り切りスティント終了際にベストラップを更新、ここでスティント終了の時間が来てしまいピットイン。

佐藤が自身最終スティントのステアリングを握りコースイン、ピットからはペースアップの指示があった。先頭集団との距離を縮めるべく果敢に走るが、前日からスランプ気味なのもあってかなかなかペースが上がらない。リアタイヤの状態が厳しい中ノーペナルティで綺麗に走り切り佐藤のスティントは終了した。

12号車も310号車同様に最終ピットストップにてリアタイヤを交換、ピットクルーの完璧な作業で時間内全工程を済ませ大宮が最終スティントを走る。タイヤを交換したこともあり大宮のペースが特段に上がった、32秒前半でラップを重ね3位という現在の順位を死守したいという気持ちのあふれる走り。レース終盤では32秒フラットと全体ベストラップもマークした、31秒に差し迫る渾身の走りで先頭集団との間にあった60秒ほどの差も45秒まで縮め先頭には届かなかったが3番手でチェッカーを受けた。

11号車スターティングドライバーは予選順位を決定させた石崎が担当。しかし、その予選ベストラップで唯一の4輪脱輪を犯してしまったことからセカンドタイム採択となり7番手スタートに。実質2グリッドを下げる形となった。これに対し悔しさと自身への責任を滲ませ、スタートから攻めていくと堅い意志をみせる。

グリーンシグナル点灯とともに絶妙なタイミングでスタートを切った石崎はすぐ前を行く129号機を1コーナーのブレーキングで捉え、ターンインで前へ。早速1ポジションアップの6位へ。その後も追撃の手を緩めることなく先行する12号機、910号機を追う。若干リアタイヤのキャパシティが勝っているような動きで全体的にアンダーステア傾向が出ている11号機を上手くコントロールし、4周目のホームストレートできれいに910号機のスリップストリームに入った石崎は1コーナーの飛び込みまでに無理なく前へ。ここは工藤も一歩引いた形で先行させた様子が窺える。

そこからさらに周回を重ねるとクラス違いの車両が絡み始めた。北海道クラブマンカップの3時間耐久は戦略上ここがポイントであり、如何にペースを保ったままバックマーカーをパスできるかというところが大きく結果に影響する。すぐ前では10号機と12号機がバトルを展開しており、ペースが上がらない状況の中、インフィールドで一気にその差を縮める。しかしストレートに出ると前方2台のVITAにエンジンの伸びで負ける11号機。スリップストリームにつきながらも離されていく。セクター2で追いつき、セクター1・3で離されるという展開が数周続き、12号機が10号機とのバトルの末に前へ。この直後から10号機との一騎打ちが始まる。耐久レースとはいえ、スプリントさながらの攻防。そこにバックマーカーも交え一瞬たりとも気が抜けない状況。2コーナー進入から3コーナーにかけてバックマーカーに詰まった2台はセオリー通りに4速で抜けようとするが、石崎はここで3速を選択し鋭く2コーナーを立ち上がる。一瞬の判断で順位が入れ替わり石崎は4位へ浮上。2018年に北海道クラブマンカップVITA-01にシリーズ参戦していたこともあり、十勝スピードウェイへの順応性が高い石崎はここで地元ならではの走りをみせる。

その後は隊列も少しずつ分かれ始め、一定の距離をおいて12号機を追う展開。深溝の状態ではトレッドが動いて動きに影響するタイヤの状態も徐々にコントローラブル方向にシフトし、ラップタイムは常に安定している。30周回を迎えたところでルーティンのピットインを迎えた。

セカンドスティントは市川。練習走行ではマシンの動きが掴み切れず苦労していたものの、予選からようやく順応し始めたこともあり、交代直後から安定したペースで周回を重ねていく。昨年の参戦時に走路外追い越しでペナルティ裁定を受けていた市川の今回の方針はとにかくノーペナルティ・ノートラブル。バックマーカーを無理なく慎重にパスし、自身もミスをしないように着実に走り続けた。まさに耐久レースの戦い方ができていたといえる。前後に同クラスのマシンもおらず、バトルもなくひたすら単走状態が続く。結果ノーミスで予定周回数である30周に達し、実質4位をキープしたまま予定通りピットインとなった。

リアタイヤがこのままもつのか危ぶまれるところであり、リア2本は交換となる。給油・タイヤ交換ともに迅速かつ確実に完了させたピットクルーに敬意を表しつつ、サードスティント担当の石崎が飛び出していく。

リアタイヤのみ交換したことで再びマシンの動きが変わった11号機を何事もなかったように走らせる。ファーストスティントのような目まぐるしいバトルはないものの、バックマーカーの処理は適切そのもの。一度最終コーナーでインを締めてきたVitzと危うく接触か!?という場面もあったが、全体を通して動きに無駄がなく、後先をしっかり見据えたうえでペースを作り出していく石崎の走りは目を見張るものがある。ここはやはり富士スピードウェイでFJチャンピオンを獲った実力の持ち主。数年のレースブランクを感じさせない攻めの姿勢と冷静な判断で着実にレース展開をものにしていく姿はさすがの一言である。

こちらも予定通りの周回をこなし、4位のままピットへ帰還。フォーススティントからチェッカードライバーとなる市川へバトンを託す。

タイヤの状態も良好で給油作業もミスなく終え、最終スティントに向かってピットアウト。セカンドスティント同様に自車前後のライバル車両は不在。前方は30秒の差で3位の12号機、後方にもチームメイトである5位の910号機という状況。ここでも作戦はあくまで問題なく走り続けること。無論ポジションを落とすことは許されず、4位以上を目指して周回を重ねていく。やがて若干日が傾き気温が落ち着いてくる中、ラップタイムは1分33~34秒台となり後方との差は一定以上をキープ。レースペース自体は全スティントの中で最も良い時間である。当初の作戦通り一切問題を生じさせることなく3時間を走破し、無事にフィニッシュラインを超えた。表彰台には一歩届かなかったが、この境遇の中での4位は11号機にとってベストリザルトといえるのではないだろうか。

910号機のスターティングドライバーはマシンオーナーの工藤が務める。

予選では12号機が2グリッド降格のペナルティ裁定により4番グリッドスタートとなった。スタートタイミングはしっかりと決め、ポジションをキープしたまま1コーナーへ。前方には6号機と10号機が競りつつ立ち上がっていく中、オープニングラップから虎視眈々とポジションアップを狙う。相方である木下との体重差が想定以上で、思いのほかバラストを積むことになった工藤は動きの変わった910号機に苦戦しながらもビジターとなる10号機の隙を突くべく積極的に仕掛けていく。しかし後方から迫る12号機にも牽制しつつの走行となっていたことでベストラインをトレースすることができず、インフィールドでは差が詰まるもののストレートでは離れるといった状況。3周目の1コーナー進入では一歩引く形で12号機にポジションを譲り、4周目には11号機にも同ポイントでポジションを譲り、6番手からの追い上げという展開となった。5周目からバックマーカーが絡み始めると、10号機を先頭に先行を許した12号機、11号機との距離が一気に縮まり、4台でのバトルへ突入。この景色を見ている限り、スプリントレースとなんら変わりはない。数周にわたって続いたこのバトルは1台ずつ10号機の前に出る結果となり、オープニングラップ同様に10号機対910号機の構図が浮上。クラス違いの86やVitzを交わす際、所々で3速を用い、鋭く立ち上がっては揺さぶりをかけるが、前を行く10号機のドライバーは西の強豪中里選手。そう容易くは前に出させてはくれない。10周以上にも及ぶバトルが続く中、徐々に10号機が離れていく。途中で同クラス周回遅れの88号車にも引っ掛かり、その間に10号車との差はますます開いてしまった。20周回あたりからは完全に単走状態となり、淡々と周回を重ねる。32周回あたりからガス欠症状が出始め、強制的に燃費走行を強いられる。しかもピットインのタイミングを計るためにその後2周回にわたって4~5秒落ちのペースで走行しなければならず、結構なロスとなった。

木下にドライバーチェンジした後は再び息を吹き返したようなペースでラップ。ほどなくしてピット作業中に前に出られた129号機とのバトルになるが、メインストレートで難なくパスし、その後も1分33秒台後半~34秒台前半のペースで走り続けた。この十勝3時間耐久が今回で3度目の参戦となる木下。その走りは地元ドライバーの如く安定した走りで不安要素も微塵も感じさせない。木下のスティントで12周を回る頃、先ほどとは逆にピットアウトしてきた129号機が再び前方に現れ、バトルへ。しかし展開は同様で難なく前へ。その後は後方からトップの6号機が迫り、パスさせたもののしばらくすぐ後ろを追う展開。この時の6号機は村上選手。北海道クラブマンカップVITA-01トップ勢ドライバーであるにもかかわらず数周にわたって追いすがる。その上で木下は燃費走行にも余念がない。バックマーカーが前方に現れ、将来的に明らかにラインが交錯する周回は一段高いギアを使って燃料消費を抑える。またKOSHIDO RACINGの他チームとは異なり、タイヤは無交換作戦を決行。労りのドライビングで3時間をそのまま走破することを念頭に、チーム910司令塔のRDS山本代表と密にやりとりを交わしながらゴールに向かって総合的な戦略を組み立てていく。そしてセカンドスティントは29周を回り、木下はピットへ。

サードスティントは再び工藤に戻り、問題なくピット作業を終えてコースへ。少々気張り過ぎていたのかコース復帰直後にシフトミスする場面も見られたが、その後はミスなく1分33秒半ば~34台という良好なペースで周回し続け、ポジション5位をキープ。わずか16周回でピットに帰還し、フィニッシュまでの残り時間のすべてを木下に託す。前を走るのは同じKOSHIDO RACINGの11号機。周回数は同じで、ワンチャンスものにできれば届く範囲内ということもあり、木下は全開ドライビングで追う。ペース的には1分33秒半ば~34台を安定して刻み続けるものの11号機もまったくと言っていいほど同様のペースで走行しており、その差はなかなか縮まらない。それでも諦める

ことなく攻め続けた。途中バックマーカーのVITAに進路を塞がれ、穏やかな木下としては珍しく怒りをあらわにすることも。しかしそれだけポジションアップへの意気込みが強いということの証明でもある。最後の最後まで手を抜くことなく前を追い続けたが、その差は埋まらず5位でチェッカーを受けた。2名のドライバーが精一杯の力を出し切って挑んだ3時間。木下がビジターバトルであることを考慮すると5位入賞は十分に輝かしい戦績である。来期以降も是非再チャレンジして結果を残してくれることを期待してやまない。

今回のKOSHIDO RACINGは今までとは違った雰囲気であった。今まではチームオーナー兼ドライバーの佐藤を筆頭にチームメイト同士仲間としてライバルとして鼓舞し合ってきたが、今回佐藤はもちろんほかのドライバーの成長が著しくみられた。特にSHADE RACINGよりスーパーGTに参戦している平中克幸選手を今回3時間の末0.144秒差まで迫った上野。初日から圧倒的な適応力をみせ底知れないドライバーとしての可能性を感じさせたPONOS RACINGより現役F4ドライバーの大宮。このようなドライバーの成長でKOSHIDO RACINGはチーム内で全員が刺激を与え刺激をもらえるという環境が生まれこの先チームとして間違いなく革命的な進化を遂げることだろう。

 

2024.11.12 北海道クラブマンカップレース 2024 Rd.1 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレース Rd.1 VITA-01

開催日時:2024 年 5 月 19 日(日)

開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

ドライバー:市川 篤(#11)、佐藤 元春(#12)、上野 大哲(#310)、工藤 大祐(#910)

マシン:恒志堂レーシング VITA 11 号機、12 号機、310 号機、910 号機

参戦クラス:VITA-01 クラス

天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績

市川 篤 予選:6/7 位 決勝:7/7 位

佐藤 元春 予選:3/7 位 決勝:3/7

上野 大哲 予選:1/7 位 決勝:1/7 位

工藤 大祐 予選:4/7 位 決勝:4/7 位

寒暖差の激しい5月の十勝スピードウェイ。花粉が飛び交う中更別村にて北海道クラブマンカップ第1戦が開催された。昨年に比べ総エントリー数7台と少ないが、うち4台はKoshido Racing車両のため表彰台独占を目指し熱い戦いが繰り広げられた。

今回Koshido Racingからは、佐藤、市川、工藤、上野による4台体制での参戦となる。

昨年惜しくもシリーズチャンピオンを逃した上野、チャンピオンである佐藤とはチームメイトでありライバルでもあるがこの2人の戦いに注目だ。チーム内のレベルが高まり、今シーズンはどのようなドラマが繰り広げられるのか期待が高まる。

<練習走行>

今シーズンより使用タイヤについて新たにレギュレーションが追加された。昨シーズンまで北海道クラブマンカップでは新品中古問わずタイヤを選定することができたが、今シーズンより予選新品スタートへ変更となりFCR-VITAと同様になった。

これにより車両は新品タイヤに合わせた新たなセッティングが必要不可欠となり、決勝までにどれだけの完成度へ運べるかが勝負のカギを握る。

5月17日の1本目は雨が降っており全車走行を見送る。2本目の走行枠には路面も渇きはじめ各車感覚を取り戻すべく練習走行スタート。各ドライバー初日という事もあり、本気のアタックというよりは人とマシンのシンクロ率上昇に時間を費やすスタートとなるかと思われたがさすがの走り。上野は1分30秒台を連発しかなりの好感触。昨シーズンから十勝でのVITAに参戦しているが常に上位に君臨しシリーズチャンピオンまで僅かという位置まで登り詰めた実力の持ち主。今年こそはシリーズチャンピオンと本人も意気込んでいる。佐藤、市川はなかなかリズムが合わず苦戦している模様。とはいえ長年十勝スピードウェイ走っている2人は3本目の走行枠にて両者とも31秒台をマークし調子を取り戻しつつあるが、リズムが合わず車と人間のシンクロ率が上がり切らないまま一日目が終了。一方工藤はセッティングの大改造中であった。今年から変わったニュータイヤ基準のセッティングを出すべく、時間をかけ緻密なセッティングを一日かけて行った。

5月18日、5月とは思えない暑さの中各車前日の公式練習に挑む。

昨シーズンシリーズチャンピオンに輝いた佐藤は時間帯気温と決勝日にかなり似ているため1本目の練習を予選、2本目の練習を決勝といった実戦形式でのプランで走行。前半31秒台を連続でマークしここからかと思われたが熱の入った新品タイヤに苦戦している模様。その後も果敢にアタックするがなかなかアジャストする事が出来ず模擬予選が終了。2本目の走行枠にて模擬決勝スタート、決勝さながらの気合の入った走りを見せるも前日に続きコーナー進入がなかなか安定しない様子。レース同様12周走り切るが車のセットが合わず不安の残る走行となった。その後メカニックと細かい打合せや車のセット修正を行い最終枠を迎えた。各調整、佐藤の修正力がともない31秒台を連発、各コーナーの進入時オーバー傾向にあったがそれも収まり舵角修正のすくないとても綺麗な佐藤本来の走りが戻り、明日の本番に向け良い状態で練習を終える。

前日とても好感触に終わった上野は変わらず絶好調の様子。前日同様30秒台を連発し1本目3本目のみと車の感触を確かめつつも、現在の良い状態を当日にもっていくべく少ない練習時間で前日を終える。走行していない枠は各ドライバーと情報共有やアドバイスをするなどチームに貢献する姿も見せた。

市川は今大会から初めて乗るマシンという事もあり探り探りで乗っている様子。とはいえ2日目も1本目から31秒台をマークするなど相性は悪くないようだ。練習途中アクセルペダルの故障があり走行を中断、メカニックの迅速な修理により走行再開するがなかなかまとまらない。最終枠にてセクター1・2で当日ベストを出すものの、全セクターなかなかつながらず32秒台にてこの日の練習が終了。練習後の重量測定にて、前年乗っていたドライバーが25㎏ほどバラストを積んでいたためとても重たい状態で走っていたことが発覚、この結果が当日吉と出るのか凶とでるのか。

工藤は前日に引き続きセッティングを中心に走行している様子。セットが収まらない中緻密なセッティングの末迎えた最終枠、31秒台を連発し当日の自己ベストを更新。長時間に及ぶセッティングが終わりセット出しが完了、翌日の本番に向け気合が入る。

<練習走行結果>

佐藤 元春:1分31秒139(5/17)

市川 篤 :1分31秒837(5/17)

工藤 大祐:1分31秒376(5/18)

上野 大哲:1分30秒086(5/18)

<公式予選>

天気は晴れ、路面はドライ。5月とは思えないかなりの暑さの中予選を迎える。

北海道クラブマンカップ第1戦目、各ドライバー気合を入れマシンに身を収める。

予選開始二分前の表示とともに各マシン一斉にピットから飛び出す。

先頭でコースに入ったのは練習から絶好調の上野。前日まで中古タイヤで走っていたが本番は新品スタート、アウトラップ含め2周でタイヤを丁寧に温める。3周目からアタック開始、計測2周目で30秒台をマークするもその後なかなか更新できない。やはり新品の特性を完全にはつかみ切れていないのか予選の中で探っている様子。そんな中一つのミスからニュータイヤの可能性に気付き予選最終ラップでベストを更新、ポールポジションでチェッカーをうけた。

2番目にコースインしたのは昨シーズンシリーズチャンピオンを獲得した佐藤。上野同様に2周目までタイヤを入念に温め、3周目からアタックスタート。初日から悩まされている進入時のオーバーステアを修正しながら順調にタイムを上げアタック開始3周目で予選ベストラップをマーク。その後も果敢にアタックを続けるが、オーバーステアが強くなり32秒前後となったため一度ピットイン。内圧の確認を行い再度コースインするもアタックしきれず3番手でチェッカー、セッティングが決まり切っていないのがここにきて響く展開となった。

3番目のコースインは工藤。前日最終枠にてセットが決まり乗り手が完全に仕上がっていない状況ではあるが、予選の中でのタイムアップに期待が高まる。他選手同様にタイヤを温め3周目からアタック開始、車の姿勢も安定しており順調に攻めていく。アタック2周目で予選ベストラップをマーク、その後も新しいセットに体をなじませながらアタックを続けるが4番手でチェッカー。

市川は4番目でのコースイン、他選手同様に2周目まででタイヤの熱入れを行いアタックの態勢を整え3周目からアタックスタート。市川はアタック最初の周で予選ベストラップをマーク、その後も果敢にアタックを続けるが初めてのニュータイヤスタートにかなり苦戦している模様。グリップ力はあるが前に転がらないというこの特性をよい方向へ調整しようとするも、6番手でチェッカーを受けた。

<決勝>

気温25.8℃と昨年8月に行われたクラブマンカップより暑い異例の気温。ニュータイヤに変更され、異例の高気温と難しいコンディションの中各選手自らのグリッドにマシンを収める。

 

 

 

7台すべてのマシンがフォーメーションラップを終えグリッドに着く。シグナル点灯、消灯と同時に各車スタート1コーナーへと飛び込む。

ポールポジションスタートの上野はイマイチのスタート、2番手スタートの#77村上選手が良いスタートを切り上野と並んだ状態となるがコーナーでのマシンのポテンシャルをとても高く感じていた上野は並んだ状態で1コーナーを抜ける。ここから先頭集団での攻防が繰り広げられるのかと思われたが、絶好調の上野はレース序盤から各コーナーで後ろを走る村上選手・佐藤に差をつけ早くも完全独走状態へと突入。レース中でありながらとてもリラックスしており、レースラップ30秒後半から31秒前半ととても良いペースで走り続けた。他を寄せ付けない圧倒的な走りで優勝。

一方3番手スタートの佐藤、昨年のレースの中で1番手に浮上するという勝負強さが印象的だったため期待が高まる。スタート後2番手を走行する村上選手とかなり近い状態が続いたが、2周目最終コーナーで少し挙動を乱し村上選手との差が開いてしまう。先頭から上野・村上・佐藤の3選手は等間隔があいたまま3台とも単独走行が続いている状況だ。前方を走る車両に少しでも近づき、ホームストレートでのスリップを上手く使い追いつきたいところ。セッティングが完璧でないマシンを持ち前のテクニックと経験で操るもペースが上がらず追いかけきれない、果敢に攻めるも3番手でチェッカーを受けた。レース後、佐藤は悔しさの中にも可能性を大きく感じている様子、今大会は完敗とライバルたちを称えつつもその目はすでに次戦へと向かっていた。

4番手スタートの工藤、今年こそは表彰台と4番手からの追い上げに期待が高まる。無難にスタートを決め前方を走る佐藤とかなり近い状態、佐藤に食らいつきタイミングを伺ってポジションアップを狙いたいところである。前半2周は舵角修正の少ない綺麗な走りで佐藤に食らいついていたが3周目の最終コーナー、大きくリアの挙動を乱してしまい前方との差が開いてしまう。後方からは#129梅田選手が迫るなか、2周ほどでリズムを取り戻し梅田との間にマージンを築くも表彰台には届かず4番手でチェッカーをうけた。マシンのセットには納得している様子だが、乗り手がまだ乗りきれていないと謙虚な姿勢。練習を積んで迎える次戦に期待が高まる。

6番手スタートの市川は良いスタートを切る。前方を走る梅田選手と横並びの状態で1コーナーを立ち上がりこのままインをキープすれば2コーナーでパスできるかと思われた矢先、シフトミスにより後方#61平中選手にも前を許してしまう。このまま差が開くかと思われたが市川も長年十勝を走る選手の一人、早急にリカバリーし前方平中選手を追いかける。1周目、2周目と着実に前との距離を縮め3周目の4コーナー手前で完全に射程圏内まで追い詰める。しかしストレートでは平中選手のマシンに分があり、ここから数周インフィールドで近づきホームストレートで離れるという厳しい状態が続く。途中スリップに入れる距離でストレートに突入するもなかなか追いつけない、1コーナーブレーキングで距離を詰めるなど試行錯誤を繰り返すも同じような状態が続いたまま最終ラップを迎える。11周目終盤で再びかなり近い状態に、射程圏内に収めたままストレートに入りスリップをもらうことに成功。1コーナー進入時鬼の突っ込みで平中選手のインをとるも体制を崩し接触してしまう。その後平中選手の後ろに着くもブロックされてしまい7番手でチェッカーを受けた。

2024年の第1戦目。ニュータイヤへの変更がありセッティングの完成度に違いはあったが、予選では全車近いタイムでの戦いとなり前年と比べ少ないエントリー数ではあったが今年も熱い戦いが繰り広げられる予感を感じさせた。決勝レースではマシンとドライバーの完成度が顕著に出ている様子であったが、チーム内のレベルは確実に上がってきている。今年も表彰台独占を目指しKOSHIDO RACINGのチームメイトでありライバルでもあるという強みを生かして走り続ける。