2019.6.23
北海道クラブマンカップレースRd.1 VITA-01
開催日時:2019年6月23日(日)
開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース
ドライバー:佐藤 元春(#12)、鶴賀 義幸(#310)、常松 巧(#516) 竹谷 和浩 (#712)、
大島 良平(#777)
マシン:恒志堂レーシングVITA 12号機、310号機、516号機、712号機、777号機
参戦クラス:VITA-01クラス
天候:予選/曇り、決勝/晴れ
路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
佐藤 元春 予選:3/17位 決勝6/17位
鶴賀 義幸 予選:1/17位 決勝1/17位
常松 巧 予選:8/17位 決勝7/17位
竹谷 和浩 予選:4/17位 決勝:3/17位
大島 良平 予選:10/17位 決勝:9/17位
Koshido Racingとしては参戦3年目となる北海道クラブマンカップレースVITA-01。昨年までの4台
体制から、今期はさらに1名のレギュラードライバーと1台のマシンンが増え、5台体制でのエント
リーとなった。 エースカーは例年通りチームオーナー兼代表である佐藤元春が搭乗。昨年までの
グリーンを基調とした610号機に代わり、今期新たに準備された12号機を投入。“音速の貴公子”と
呼ばれたF1ドライバー、故アイルトン・セナが駆る往年の名車、マクラーレン・ホンダMP4/6を
イメージしたカラーリングが施された(TOP画)。 310号車には、富士スピードウェイにて開催
されている富士チャンピオンレースシリーズ(以下、FCR) VITAに昨年まで参戦し、常に上位争
いを繰り広げていた鶴賀義幸がそのシートに収まる。2019年の北海道シリーズをKoshido Racing
からのエントリーで戦うことになった鶴賀は、現在TOYOTA GAZOO Racing86/BRZレースにエキ
スパートクラスのドライバーとして活躍しており、ビジターながらその活躍が期待された。
310号機 鶴賀 義幸選手
今年新たに投入されたVITAには516のナンバーが与えられ、これまでのKoshido Racingにはない
イエローを基調としたカラーリングが施されていた。ドライバーもまた、今期新たに加わった
常松巧がレギュラードライバーとしてこれをドライブする。 チーム代表の佐藤とは旧知の中である
常松は、これまで様々なスポーツカーやチューニングカーをドライブし、十勝スピードウェイの
コースレコードホルダーの経歴を持つベテランドライバー。こちらも大きな期待を背に2019年
シーズンを戦う。
516号車 常松 巧選手
712号車はチーム代表の佐藤と同様、3シーズン目を迎える竹谷和浩が担当。今期の竹谷は十勝
スピードウェイだけでなく富士スピードウェイにも遠征するなど、その活動の場を拡げ、より多く
の経験値を得ている。昨年の本シリーズ最終戦では見事優勝を飾り、今年もその勢いは衰えること
を知らない。 そして777号機もまた、昨年同様に大島良平がドライブすることとなった。参戦2年
目の大島は日頃よりレーシングカートに勤しみ、またサーキット走行の度に自身の走行データ解析
に励んでおり、そのドライビングスキルは理論で裏付けされつつある。様々な走行経験からヒント
を得てVITA-01での戦いにフィードバックし、成長してきた。
<DAY1> 6月21日(金) 練習走行
佐藤、竹谷、常松の3名は公式練習走行の前日から現地入りし、セッティングと修練に励んでい
た。この日は通常のフリー走行枠を利用。エースカーである12号機はアドバイザーである平中克幸
選手がセッティングを担当し、佐藤は参戦2年目までドライブしていた777号機のセッティングを
煮詰めていた。竹谷は712号機を、常松は516号機の感触をそれぞれ確かめつつ、今期初戦に向けて
のコンディションづくりに励む。
12号機のセッティングにあたる平中克幸選手
今年の北海道クラブマンカップレースシリーズの開幕は例年より遅めであり、4月から5月にかけて
練習に充てる機会が得られていた。今期から搭乗の常松は4月のVITA初乗りで1分33秒427を記録。
十勝スピードウェイレコードホルダーの経歴をもつことを裏打ちするかの如く、初乗りでは驚異的
なタイムである。これまでの経験が存分に活かされていることはその結果が物語っているといえ
よう。そして臨んだ今回の練習走行であるが、より速く走るために考えたが故の迷いが生じ、
序盤のタイムは1分34~35秒台にとどまっていた。
自らの走りを振り返り、悩む常松
それでも4スティント目には33秒台へと押し上げ、さらに走りをまとめ上げた結果、最終スティン
トでは1分33秒853まで短縮した。 竹谷の712号機はシーズンオフ中にエンジンオーバーホールを
受け、4月に入念に慣らしを重ねた後で本格的に始動。5月にはFCR VITAの第1戦を佐藤とともに
戦い、2年ぶりの富士スピードウェイでもそれを感じさせない走りを披露していた。そんな好調の
竹谷は1スティント目から1分33秒台を連発。やはり昨シーズンからVITAの走らせ方を掴んでいる
様子で、本人もその手応えを感じていた。最終スティントではついに32秒台へと突入し、平均的な
ラップタイムも33秒前半をマークし続けていた。 佐藤が数スティントをかけて仕上げた777号機
は、フロントの接地性を高める方向でセッティングが進められ、翌日の大島良平に託されること
となる。その後、佐藤は平中選手の手によって詰められたセッティングを確かめるため、本来の
12号機にてコースイン。1分33秒台を安定して刻み、限られた時間ではあったが、1分33秒103を
マークし、この日の練習走行を終えた。
練習走行結果
#12 佐藤 元春: 1’33.103
#516 常松 巧 : 1’33.853
#712 竹谷 和浩: 1’32.924
<DAY2> 6月22日(土) 公式特別スポーツ走行(30分間×3本)
朝から大雨に見舞われた2日目。コース上のあちらこちらで川となって大きな水溜まりを形成して
いる。天気予報でも一日中雨が降り続くことが明らかとなっており、終日ヘビーウェットでの
走行を強いられた。 この日は常松が都合で参加できなかったが、鶴賀の到着に加え、大島良平の
合流により、4台での練習走行となった。
全車タイヤのエア圧を高め、しっかりと接地面圧を上げてコースイン。それでも常にハイドロ
プレーニングとの戦いとなっており、練習走行といえど常に緊張が強いられた。
車載から見るコースの様子。路面の大半は川や水溜りで覆われている。ここで頭角を現したのは
310号機の鶴賀。FCRの舞台となる富士スピードウェイは天候変化が激しく、雨天走行となること
も多い。それもヘビーウェットとなることが少なくないことから、今回その経験が大いに活かされ
ていたことは容易に想像できる。 タイムはファーストスティントで他の3台から抜きん出て2秒近
く速いペースを保持。ウェットではコントロールがシビアなVITAを、まったく危なげなく前に
進めていくドライビングは圧巻であった。
佐藤もまた、雨の中での走行経験は豊富である。というのも彼は練習魔なのである。これまで課題
を見つけては時間をつくり、ただひたすらに、ひたむきに練習し続けてきた。その中で幾度となく
雨の日もあった。勿論、レース本番においても台風が迫る富士スピードウェイをVITAやGT3マシン
で走り切るなど、過酷な状況での経験を積んできた。それを裏付けるかの如く、最初こそ慎重な
走り出しであるが、セカンドスティント、サードスティントと走行を重ねるごとに着実にタイムを
上げていく。路面がグリップするところを即時分析し、ラインを工夫しながらマシンを前に進める
佐藤。最終的には鶴賀と遜色ないタイムをマークするに至った。
ここ何戦かでマシンコントロール精度を飛躍的に高め、悪条件下ではチーム随一の力を発揮する
竹谷。ファーストスティントの1コーナー進入でオーバーランし、痛恨のコースアウトを喫したも
のの、その後の立ち直りは早く、臆することなく攻め込んでいく。セカンドスティント開始直後に
はコースアウト前と変わらぬタイムで周回し、雨量が減ってきたタイミングでベストラップをマー
ク。コースセクションごとにタイムを見ると、比較的アグレッシブに攻め込むセクター1やセク
ター3が速い竹谷であるが、ヘビーウェットの繊細なステア操作も兼ね備えているところがこの
コンディションにおいても強さを見せる所以である。
その場でのロガー分析から走り方を随時変え、いかなるコンディションにおいても貪欲に速さを
求める大島良平。脚回りのセッティングがやや荷重をのせて曲げるタイプの777号機は、他の
Koshido Racing VITAに比べて初期のステア操作における機敏性に劣るが、ウェット路面での操作
性には優れている。 この日ははるばる筑波よりガレージBe:Flat代表の関口氏も応援に訪れ、777
号機のセッティングについてともに考え、方向性を探った。関口氏は鶴賀とともにFCRを戦い、
VITA-01のセッティングにも非常に長けている。なお、今期鶴賀がVITAを降りたあとも他のドラ
イバーと組み、FCR-VITAの第1戦では見事ポディウムの頂上に導くことに成功している。
セカンドスティントでは試験的にECUを載せ替え、いつも以上によく廻るエンジンへと変貌。
シビアな挙動の12号機に乗る佐藤に肉薄する場面もあった。とはいえ雨量は多く、ラフにブレーキ
ングしながらコーナー進入しようものならたちどころにオーバーステアを誘発してしまう。走行中
ブレーキバランサーに手をかけ、挙動を安定させる姿も見受けられた。加えて素早いカウンター
ステアが功を奏し、スピンモーションに移行することなくマシンを前に進める。大島良平は冬季の
雪上走行会においてもその的確なステア操作により好タイムを記録していたことから、コンディ
ションの悪化をものともしない実力を兼ね備えているといえよう。
素早いカウンターステアによりコントロールを破綻させることなくコーナーをクリアしていく
大島良平
公式特別スポーツ走行結果
#12 佐藤 元春: 1’48.669
#310 鶴賀 義幸: 1’48.371
#712 竹谷 和浩: 1’49.089
#777 大島 良平: 1’48.731
<DAY3> 6月23日(日) 予選(9:35~9:55)
曇天ではあるが前日の雨はすっかり上がっており、コース上はドライ。但し、ひとたびコースを
飛び出せば、多分に水分を含んだグラベルや芝が容赦なくVITAをスタックへと誘い込むであろう
ことから、油断は禁物といった状況。筆者の記憶が正しければ昨年の第1戦も同様のコンディショ
ンであったと思われる。気温16.8℃、湿度59%と、走行に関してのコンディションは悪くはない。
2019年の十勝初戦のエントリーは17台。予選時刻を迎え、その各車が次々とコースインしていく。
Koshido Racingからまず最初に飛び出していったのは310号機鶴賀。前走車がウォームアップ走行
している中、早々にペースを上げ、クリアラップを確保。1分34秒台、33秒台と着実に詰め、
アタックラップ3周目には1分32秒155のトップタイムを叩き出す。その後様子を見ながら走行して
いたが、32秒台前半を連続で記録し、少しばかり時間を残してピットへ戻った。以降も記録を更新
されることはなく、ポールポジションを獲得。
エースカーの佐藤もアタックラップ2周目にして1分33秒307をマーク。12号機もそれに呼応するか
の如く、余力を残している様子。しかし、佐藤がさらに詰めようとアタック3周目に入ったところ
で問題は起こった。ガス欠症状が出現したのだ。元々軽量のVITAはちょっとした燃料搭載量の差に
よって動きが簡単に変わってしまうため、一発のタイムを狙っていく予選では極限まで給油量を
絞る。無論、これまでのデータから算出された量を直前に入れるわけであるが、わずかな気候の差
によって燃料消費量は変わってしまう。今回それが災いとなったか、想定よりかなり早い段階で
アタックを終了せざるを得ない状況となってしまった。結局アタックわずか2周目にマークした
タイムがそのまま予選記録として反映され、3位で終えることとなる。佐藤は悔しさを滲ませた。
一昨日の練習走行から一日おいた516号機の常松は、アタックに入ってすぐ前走車のスピンに巻き
込まれそうになったものの、間一髪でかわし、リズムを崩すことなくアタックに復帰。
1コーナー進入は慎重なブレーキング姿勢を見せるが、コース幅を有効に活用したスムーズなライ
ン取りが特徴である。特に最終コーナーのライン取りはひとつのコーナーであると錯覚するような
美しいラインをトレースしていく。エンジンパワーがそれほど大きくないVITA-01は、ステアリン
グ舵角を与え過ぎると失速に直結してしまう。故に常松のドライビングはロスの少ない走りと言え
る。目立ったミスもなく、1分34秒618をマークし、予選8位につけた。
712号機の竹谷は前日のウェット走行の感覚が抜けず、アタック序盤はかなり苦労していた。しか
し、徐々にそのライン取りやブレーキングは精彩さを取り戻し、周回を重ねるごとにタイムが短縮
されていく。1分35秒台から1秒ずつ縮め、アタック4周目で1分33秒476をマーク。その後も貪欲に
タイムを追うべく攻め込むが、次の周でスピンを喫してしまう。上手く感覚が戻りつつあることを
感じていた竹谷は間髪入れずコースに復帰。記録更新を狙うが、ここで12号機の佐藤と同じくガス
欠症状が出現。手応えを感じていただけに、こちらも無念さを隠せないまま予選終了となった。
ポジションは4番手となったが、決勝のグリッドは2列目からのスタート。上位が狙える位置で
あり、決勝に向けての意気込みが強く感じられた。
777号機の大島良平は、セッティング変更後初のドライ路面走行となり、若干戸惑いながらの走り
出しとなった。これまでとコーナー進入での向きの変わり方が大きく変わっており、各所でテール
スライドさせながら走行している姿が目立つ。それでもウェット走行の時と同様、カウンターステ
アに移行するまでの動きが素早いため、スピンモードに陥ることなく、ドリフト状態を維持した
ままコーナーをクリアしていた。しばらくオーバーステアと戦い続けるうちに現状のセッティング
に順応し始め、コーナー進入初期の操舵角が小さくなっていく。それとともにリアの動きも落ち
着き始め、無駄のない操作へと変化していった。結果、タイムは1分34秒台後半から35秒台前半を
コンスタントに刻むという形で反映され、安定した走りをみせた。
~以下、公式予選終了後ドライバーコメント~
佐藤 元春
予選は3位という結果となったが、アタックラップ3周でガス欠症状が出てしまい、やむなくそこで
予選を終えることになってしまった。個人的には非常に残念な結果だったが、レースではまだまだ
ペースを上げられるので、決勝では予選ポールポジションの鶴賀選手と一緒に表彰台に登れるよう
に頑張りたい。
鶴賀 義幸
5月に練習した時からフィールは良かったので、このまま思った通りに攻めればタイムは出るだろ
うと思って挑んだ。ニュータイヤを入れたことで自己ベストを更新でき、ミスもなく走れたので
よかった。チームオーダーが出ていたためその後も走行を続けていたが、戻ってみたところトップ
タイムを記録できていて驚いた。ポールポジションから出られるので、決勝もこのままぶっちぎっ
て勝ちたい。
竹谷 和浩
昨日一日中ウェット走行を続けたことでドライの感覚がリセットされてしまい、本当はあと3、4周
重ねたかったがガス欠症状が出てしまった。4周目に1分33秒4が出てから、もう2、3周詰めたかっ
たが残念。決勝は12周と長いので、ドライの感覚を取り戻しつつ、攻めたい。
常松 巧
タイヤを新品としたが、まだ車に順応できてないという状況。タイムも予想以上に伸びず、1分33
秒台に届かなかった。それでも予選中に車の特性を把握できたので、決勝では完走を目指して、
できれば6位以内を目標として頑張りたい。
大島 良平
曲がるセッティングに変更してもらったが、それに慣れ切らない。ウェット路面の昨日は気持ちで
踏めたが、今日は曲げるセッティングに上手く適応できず、ブレーキングを終えてからアクセルを
踏むまでの空走時間が長くなっている。向きは変わるようになったが、ボトムスピードが遅くなっ
ている。これからロガーデータを確認して、どこが悪いのか考えて決勝に挑みたい。
決勝(14:35~、12LAP)
午後になり、順当に気温が上昇しているが、予選時のコンディションから大きな変化なく決勝の
時刻を迎える。
今年の十勝初戦での健闘とクリーンなバトルを誓い、恒例儀式から始まるKoshido Racingの面々。
予選での失敗を踏まえ、各車ゆとりをもって給油を済ませ、ピットアウト。グリッド上にはチーム
オーナー佐藤の計らいで、ドラゴンクエストの登場人物であるセーニャとベロニカに扮したスタッ
フがレース前のひとときを盛り上げた。
そしてフォーメーションラップへ。限られた時間の中で可能な限りタイヤに熱を入れるべく、各車
速度を上げていく。ホームストレートに姿を見せる頃には、最後の仕上げと言わんばかりにエンジ
ンを唸らせ、リアタイヤをしっかりと潰しにかかる。 すべてのVITAがグリッドに再整列し、ほど
なくしてシグナルブラックアウト。ポールポジションの鶴賀はそつなくスタートを決め、そのまま
の勢いで1コーナーへ。一瞬、後続車をけん制したと思いきや、その後はじわじわと2位との差を
広げていった。それとは対照的に、予選3位の佐藤はスタートで大きく出遅れる。4位スタートの
竹谷にイン側から並ばれ、1コーナー進入においてアウト側から精一杯粘るも、先行を許した。
スタート直後に横並びとなり、そのまま1コーナーへ向かう佐藤と竹谷
8番手スタートの常松も若干出遅れ、11番手から好スタートを決めた#89M.A.R.T☆STEP・VITA-01
の後藤選手にかわされ、9位へポジションダウン。その後10番手の大島良平にも並びかけられる
が、アウト側コース一杯に踏みとどまり、並走のまま3コーナーまでもつれる。インとアウトが
反転する4コーナーにて前に出たことで、9位をキープしたままレースは進む。
常松、大島良平、後藤選手の三つ巴の戦い
上手く前に出られた竹谷ではあるが、その後ろは佐藤がすぐ後ろに食らいつき、コーナーの度に
揺さぶりをかけられる。予選のタイムでは佐藤が前をいっていただけに、2コーナーを過ぎた辺り
から一気に差を詰め、オーバーテイクのチャンスをうかがう佐藤。2周目のホームストレートでは
スリップを使って抜きにかかる。しかし、1コーナーのブレーキングでインに飛び込めるほどの
アドバンテージは作れず、一歩退いては再びインフィールドで竹谷をも猛プッシュしていた。
しかし、竹谷の強靭な精神力はマシンコントロールの破綻を許さない。テールトゥノーズのバトル
となると必然的に守りのラインを走行することが多くなり、大きくペースを落とすのが通例である
が、わずかにラインを外すことはあってもオーバーテイクされるほどの隙を与えることなく走り
続けた。この竹谷と佐藤のバトルは4周にわたって繰り広げられるわけであるが、ここでレースは
動く。ホームストレート上で上手くスリップストリームを使い、何度も竹谷に並びかけた佐藤で
あったが、実はそのすぐ背後に1台迫るマシンがいた。#61 HDC日本平中自動車の平中繁延選手で
ある。彼は2台のバトルを後方から静観し、虎視眈々と隙が生まれるのを待っていた。4周目の
1コーナーでインから仕掛けた佐藤が一瞬失速したその時を見逃さず、すかさずインに飛び込む。
そのまま2コーナーで前に出ると、竹谷の追撃にかかった。 背後が平中選手に変わった後も変わら
ずひるまぬ竹谷。ここのバトルが始まることで佐藤が再び間合いを詰め、ここでも三つ巴のバトル
が展開される。この戦いは終盤までもつれ、10周目のコントロールタワーを過ぎた直後、佐藤の
後ろにもう一台の迫るマシンがいた。#30 十勝レーシングスクールSilent 01の鬼塚選手である。
上手くスリップストリームから抜けた鬼塚選手は1コーナー進入で難なく佐藤の前へ。佐藤はさら
にポジションをひとつ落とし、6番手となる。しかし、同一周回の4コーナーで平中選手が痛恨の
スピンを喫し、ポジションを再び5位へと戻す。3位以下はレース全般にわたって拮抗した戦いが
繰り広げられ、目まぐるしく順位が変動した。 その集団からやや後方を走る常松は、スタート
直後に前に出られた後藤選手が2周目の1コーナーでアウト側にはらんだ隙を見逃さずポジション
を取り返す。その後は1分35秒台前半をキープした堅実な走りでポジションを守り続けた。
走行ラインも周を重ねるたびに無駄のない、スムーズなラインへと変化していき、レースラップ
でも34秒台をマーク。挙動も終始安定しており、途中スピンからのコース復帰に時間を要した平中
選手をパスしたことで、予選順位から1ポジションアップの7位でチェッカーを受けた。
常松を追いすがる大島良平は、2周目の1コーナーで痛恨のコースアウト。練習走行の時と同様、
素早い対処によりマシンの姿勢を大きく崩すことなく復帰できたが、常松との距離が開いてしまっ
たことに加え、#48 さくらBreeze 01の山口選手に前に行かれてしまい、苦しい展開を強いられ
る。しかし、走行ラインに関しては常松同様、周回を増すごとに無駄のないものと変化していき、
ブレーキングポイントも奥へと詰めていく。そのため、コーナー進入から立ち上がり直前までは
一気に差が縮まっている。このままバトルにもちこみたいところであるが、エンジンパワー不足が
足枷となり、ホームストレートはもとより5コーナーや8コーナー等の立ち上がりに控える短いスト
レートにおいても777号機は後れをとってしまう。そのような展開を繰り返しているうちに前方で
後藤選手と山口選手のバトルが始まり、その間大島良平も一気に差を詰めていった。ストレート
スピードに勝る#48の山口選手は、8周目のホームストレートで#89の後藤選手を難なくパス。
以後もペースの上がらない後藤選手に肉薄していった。3台の差が詰まり、三つ巴のバトルが始ま
ろうとしていた矢先、山口選手が9周目の最終コーナーの進入でスピン。 ぎりぎりでかわした大島
良平はポジションを10位に戻し、前を行く後藤選手に照準を合わせる。しかし、この緊急回避の
間に大きく水をあけられた大島良平。残り周回数でのポジションアップが難しい状況であることは彼が最も痛感していたはずであるが、諦めることなく走り続けた。するとファイナルラップの4コーナーで#61平中選手が痛恨の2度目のスピン。ここで前に出たことでポジションを9位とし、フィニッシュした。
減速によるロスを最小限にし、わずかな間隙を縫って#48の前に出る大島良平
スタートからトップを走り続けてきた310号機の鶴賀は、レースラップを常に1分33秒台で走り切る
完璧なレース運びをみせる。2位の#3さくら眼科☆OWLwithRS-a01古井戸選手に7秒もの差を
つけ、ぶっちぎり状態でのトップチェッカー。
竹谷、鬼塚選手、佐藤が繰り広げる3位争いは、ファイナルラップの8コーナーで最後のチャンス
とばかりに竹谷を捉えようとイン側から仕掛けた鬼塚選手が立ち上がりでバランスを崩し、失速。
そこに一気に肉薄する佐藤であったが、前に出るまでには至らず、もつれたまま最終コーナーへ
飛び込む。ラインの自由度を確保できなかった佐藤はそれが引き金となり、ラストのストレート
速度が伸びず、フィニッシュラインの直前で#95幸伸建設Y’s・ステップ☆VITA01の坂本選手に
パスされ、6位でレースを終えた。竹谷はそのまま逃げ切り、3位チェッカーを受け、レースは幕を
閉じた。
鶴賀の優勝、竹谷の3位表彰台と、チームとしては2019年シーズンを勢いづかせたといってもよい
今回のレース。一方でそれぞれに課題が見えたドライバーやマシンもいたことは事実であり、
各々が次戦に向けて再び全力で向かうことになるであろう。
優勝の鶴賀義幸と3位の竹谷和浩
~レース後、チームオーナーコメント~
前日までの練習ではマシンの仕上がりもよく、自分のコンディションも非常に良好でした。予選
アタックでは不意のガス欠症状が出現したことで、クリアラップでのアタックが1周しかできませ
んでした。言い訳にはなってしまいますが、よりタイヤがベストな状況でアタックできなかった
ことが悔やまれます。今後、再度気温や湿度を確認した上での燃費計算をする必要があると考え
た次第です。結果的には予選3位ということで、自分の思うような走りはできなかったものの、
予選順位としてはトップを狙える位置につけることができました。 決勝は、結論から申し上げま
すとスタートミスが最大の失敗であり、先行を許した原因であります。ペース的には自分の方が
速いことはわかっており、1コーナーで何とか仕掛けましたが、竹谷選手をオーバーテイクする
には至らず、そのタイミングで後続車が距離を縮めてきたことで常に3~4台のバトルが続くよう
な状況でした。その状況下で後半、上手くスリップストリームを使われ、鬼塚選手と坂本選手に
先行を許す形となってしまいました。これらはスタートミスを誘発したことと、いち早く前走車
をオーバーテイクし、前に出られなかった自分の実力不足にあると思います。
次戦に向けてはスタート練習をしっかり行い、シグナルへの反応速度を高めること、そしてリア
へのトラクションをしっかりと確保したスタートができるようにトレーニングに励みたいと思い
ます。今後も引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。
レース自体は全員が非常にクリーンな戦いで集中して臨むことができ、楽しいレースを繰り広げ
ることができました。ライバルの皆様に感謝申し上げます。
Koshido Racing 佐藤 元春