RACING

北海道から全国へ、そして世界へ!
子供たちへ「希望」と「勇気」を与えるために走り続けたい。

2019.01.30 24H DUBAI 2019 RACE REPORT

第14回 HANKOOK 24H DUBAI 2019
開催日時:2019年1月10日(木)・11日(金)・12日(土)
開催地:ドバイ オートドローム(アラブ首長国連邦)
チーム:MRS GT-Racing(#989)
ドライバー:横溝 直輝、近藤 保、Ken Seto、Xu Wei、佐藤 元春
マシン:Porsche 991 Cup Car(Type 991-Ⅱ)
クラス:991 – Porsche 991 Cup Cars
天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
予選~総合:41/75位、 クラス:11/11位
決勝~総合:43/75位(DNF)、 クラス:6/11位

毎年1月にドバイ・オートドロームにて開催されている24時間レース。Koshido Racing代表である
佐藤元春は、MRS GT-Racingより989号車でエントリーしていた。

一緒に参戦する面々は、富士スピードウェイで開催されるCARGUY Super Car RaceやFerrari
Racing Daysではライバル関係にある近藤保選手、Ken Seto選手、またアジアルマンシリーズで
活躍しているWei Xu選手、そしてGTドライバーである横溝直輝選手という布陣。

今回、佐藤は海外レースへの出場は勿論のこと、ドバイオートドロームの走行、ポルシェカップ
カードライブ、24時間耐久、ナイトセッションと、初挑戦となることが目白押しで、緊張と期待に
満ち溢れていた。
まずはコース攻略として、2018年暮れよりドライビングシミュレーターによる特訓に通い詰め、
路面の起伏やライン取りを徹底的に叩き込んでいた。舞台となるドバイオートドロームは全長が
5390メートル、16個のコーナーからなるサーキットで、路面のうねりも所々に見られる。周りに
砂漠が広がっていることもあり、ラインを外すと砂に乗ってあっという間にコーナー外に膨らみ、
コースアウトや急な姿勢変化に見舞われる。また、気温も1月といえど日中は30度以上にも達し、
夜には15℃以下と寒暖差が大きく、現地の気候に慣れていない身には体調維持だけでも厳しい
コンディションである。

<DAY1> 1月9日(水) 練習走行(11:00~)

佐藤にはいよいよとなる国際レースデビューの日。今回のドバイ24時間は80台近くがエントリー
しており、走行中の混雑は容易に想像できる。しかも実質的な練習走行はこの日からということ
もあり、走行開始とともに各チームのピットより次々にマシンが射出されていく。無論、各車一斉
に出走した結果、コース内は即渋滞に見舞われることとなった。

程なくして赤旗が降られ、なかなかコース攻略に移ることができない佐藤。それでも日本にいる
間にシミュレーターで組み立てた走りのイメージを活かし、初乗りでのタイムは横溝選手の+3秒
につける。これはジェントルマンドライバーであるチームメイトの中ではトップタイムであった。
コース内は変わらず混雑している中でのタイムということを考えると、やはりこの辺は普段から
多数レースに参戦している経験が活きているといえよう。


横溝選手よりロガーデータからアドバイスを受ける

 

<DAY2> 1月10日(木)
予選(16:15~)

予選の朝、各ドライバーはブリーフィングのために一堂に会していた。各国から数多くの著明ドラ
イバーが集まる本レース。その全員が集まると圧巻の人数である。指定されたそこはまるで大学の
講堂のような広い空間。ドバイ24時間レースの規模の大きさを物語っている。ブリーフィング後は
フリー走行の時間が設けられ、各チームが予選前の最終調整を行っていた。
予選アタックは佐藤が担当することとなった。先に述べた通り、横溝プロを除くチームメイトの中
ではトップタイムをマークしていた佐藤。ジェントルマンドライバーでどこまで上位に食い込める
か期待が寄せられる。しかし、レースはそう甘くはなかった。そもそも今回のセッティングはアマ
チュアドライバーがメインのチームであることから、シビアな挙動は避け、極力ドライビングにお
ける負担を軽減することを目的とした安定的なものであった。そのため同じ991クラスの上位車両
に比べると、車の動きが穏やかな分、俊敏性に欠け、1周回ごとに3~4秒の差が生まれてしまう。
また、本人はヨーロッパのプロドライバーやポルシェ職人の壁が大きかったともコメントして
おり、ヨーロッパにおけるモータースポーツへの取り組み姿勢がいかに熱狂的なものであるかと
いうことを示唆していた。

 

 

ナイトプラクティス(19:00~)

24時間レースといえば夜間走行は避けられない。本番を前にいよいよナイトセッションが始まる。
佐藤は既に同日のフリー走行と予選アタックを終えており、疲労はピークに達しつつある中での
走行である。

やはり夜は視界がきかないこともあり、ラップタイムはどのチームのドライバーもベストから3~
4秒落ちる。最大の難所は1コーナーを抜けた後に続く4速での高速コーナー。コース照明の光も
ほとんど届かず、コーナーの先が見通せないといった状況で恐怖すら覚える。若かりし頃に峠で
慣らした腕前も、本場のナイトレースではまったく意味をなさないほどであったと佐藤。そのよう
な中、後ろからは容赦なくGT3車両が迫り、パッシングとともにぎりぎりのところをかすめ、抜き
去ってゆく。しかし、この頃には佐藤も911の乗り方をかなり掴めてきており、大きな疲労と引き
換えに決勝での走行前に充実したプラクティスができたと好感触を得ていた。

 

<DAY3> 1月11日(金)
決勝(15:00~ 24hours)

ドバイは1年を通して雨が降ることがなく、このレースウィークも常に快晴。
スタート前にチームで入念にミーティングが行われる。

長丁場を前に、レース運びや最終的な注意点についてしっかりと確認し合う
スターティングドライバーは佐藤が担当することとなった。ドバイ入りしてから3日が経過して
いるが、自身でも成長を自覚できるほどの様々な経験を積み、決勝に臨む。
午後に入り、スタート時刻が迫りつつあるが、これから始まる長い戦いを前にチームメンバーは、
緊張というよりも心からレースを楽しんでいるという雰囲気が伝わる。

スタート直前、リラックスムードの中での一コマ

そして時刻は15時。いよいよ24時間の幕が開ける。スターティンググリッドには様々なGTカーや
ツーリングカーが総勢75台も並び、ホームストレートは一層賑やかになる。989号車のグリッドは
41番。991クラスの中では最後尾である。
レースは予定通りにスタート。直後の大きな混乱はないが、とにかくエントリー台数の多さから、
コース上では所狭しと車が行き場を探している

この2日間のプラクティスや予選アタックで911の走らせ方を心得た佐藤は、快調にペースを上げて
いく。7周目にはプラクティスで記録していたベストの約1秒落ちである2分9秒025をマーク。
このタイムはプラクティス同様、横溝選手を除くチームメイトの中で、のちのレースラップベスト
となった。
1時間を経過し、総合順位は53位とポジションダウンしているが、991クラスではトラブルないし
クラッシュで早々に2台のリタイアが出たことで、989号車は9位にポジションを上げていた。
無事に30周を走破し、最初の佐藤のスティントは終了。近藤選手へと繋いだ。最初の佐藤の
スティントこそ30周回であったが、以後はおよそ40周回ごとのドライバーチェンジでレースは
進んでいく。

4時間経過後には88周回で総合順位を40位までアップ。クラス内ではトップと5ラップ差の8位に
つける。この時点で、989号車にトラブルの予兆は見られない。
4時間を回ると少しずつ日も傾き、各車ヘッドライトを点灯させ始める。いよいよ普段のスプリ
ントレースとは異なる雰囲気が漂い始め、24時間レースであることを改めて感じさせる情景が
広がる。

そして毎年多くのクラッシュが発生すると言われているナイトセクションへと突入していく。
ドバイオートドロームは華やかなドバイ市街地の中にあり、サーキット周囲は夜間でも明るい。

しかし、コース内はホームストレートを除き、そのほとんどが暗闇に覆われる。前日のナイト
プラクティスでは、各ドライバーが神経をすり減らしながら走行しており、日中の走行に比べて
何倍もの負担がかかる。この点に関してはいかにサーキット慣れしているかが大きな差となるが、
ほとんどのドライバーがドバイ初走行となる989号車メンバーには大きなハンデとなっていた。
他の991クラスのチームも、タイムは軒並み予選時に比べて3~6秒落ちとなってはいたが、安全
マージンを残しつつタイム差を最小限に抑えるには大きなハードルである。

それでもドライバー面々の努力の甲斐もあり、総合順位を大幅に落とすことなく、夜間走行は続い
ていく。クラス順位も7~8番手をキープしていた。
勿論、ナイトセッションが山場であることは989号車に限ったことではない。日中数件だった接触
やクラッシュは暗くなるにつれて一気に増え、コード60(他レースではセーフティーカー導入に
該当)の回数が大幅に増える。

参考までに、昨年は35回のコード60が発令されたが、その大半はナイトセクションであった。
レースは過酷を極める一方であるが、その傍らで花火が上がるなど、24時間レースならではの
楽しい雰囲気も垣間見られる。

7時間を経過し、周回数は155周。総合46位、クラス7位につけ、順調に周回を重ねていた989号車
であったが、22時頃ついにトラブルに見舞われる。

無線が使えなくなり、緊急ピットイン。幸いにして復旧に多くの時間を要することはなく、横溝
選手にドライバーチェンジし、ほどなくしてコースに戻っていく。7時間時点で後ろにつけていた
979号車とは7周のマージンがあり、このピットインでは順位変動なく、レースを続けることが
できた。その後は横溝選手の走りでトラブル対処に要した時間を少しずつ消化していく。ラップ
タイム的には、989号車の他ドライバーの日中走行のペースと遜色ないか、むしろ上回るくらい
である。そして時刻は日付が変わる時間帯へ。ちょうどその頃に再び佐藤のスティントが迫って
いた。

 

<DAY4> 1月12日(土)決勝( ~24housゴール)

日付は変わり、残り15時間。989号車は無線復旧後、再び問題なく走行を続けていた。アマチュア
としてはレース経験豊富な佐藤に、「怖くて本当に大変だった」と言わしめたナイトセッション。
その本番である決勝に挑むべく、レース開始から202周を数えたところで佐藤にドライバー交代の
時がやってきた。

佐藤としては意外にも消極的なコメントを残していた暗闇の中での走行であったが、いざ蓋を開け
てみれば2分12秒231と、日中同様に横溝選手を除くチームメイトの中でのトップタイムをマーク
していた。努力と適応能力の高さで、初走行となるコースも自分のものとしていく。約2時間を
走破し、次走者にバトンを渡す。この時点で順位は総合44番手、クラスでは7位とポジション
キープ。マシンセッティングにハンデがある中でのポジションキープ、まして決勝におけるナイト
セッションという条件下では、さすがに心身ともに疲労が大きい様子であった。

ドライバーやピットクルーの休息場所は隣接するサーキットホテルであったり、はたまたピット裏
に設置されたテントの中となるが、いずれもコース内を走行しているマシンたちの耳を劈くような
エキゾーストに苛まれ、十分な睡眠をとるには困難極まりない様子である。

次第に夜は明け、時刻は6時。夜間15度ほどだった気温は、日光が差すと同時に即23度まで上昇。
まさにドバイならではである。

7時を回る頃、再び989号車にトラブルの波が訪れる。ABSが作動しなくなったほか、ブレーキが
効かなくなったと近藤選手より報告が入った。走行に直接影響する類のトラブルだけに、今回ばか
りはさすがに慎重に対処せざるを得ない。ピットインし、左リアサスペンションを交換。40分ほど
を要した。

メカニックが必死に対処を試みたが、ABSトラブルは原因がわからず、やむを得ずそのまま安全
走行で完走を目指すという方針でコースに戻る。しかし、サスが原因だったのか、幸いにもABSは
復旧していた。前述の通り夜間はクラッシュが多くなるが、夜が明けたこの時間帯もドライバーの
疲労によるミスからクラッシュする車両も少なくない。ABSが再び使えるようになったことは、
疲労で集中力を欠きやすい状態にあるドライバー達にとって安心材料となったはずである。
この時点で18時間が経過。ピットストップに1時間以上を要していたが、991クラスのライバルが
クラッシュ・リタイアしていたため、順位はそのままに走行を続けることができた。

20時間を経過し、周回数も400周を数えるころ、前を走っていた991クラスのライバル一台が
クラッシュにて戦線を離脱する。元々40周以上の差があったが、コンスタントに周回を重ね、
残り1時間をまわったところでついに逆転。989号車はポジションを6位に上げる。
その後はトラブルの予兆もなく、このまま残りの数十分も無事に走り切り、感動のゴールの瞬間を
迎えるだろうといった安堵の空気が漂い始めるピット内。ラストスティントのドライバーに抜擢
されていた佐藤はチェッカーまでの15分で自身の仕事をきっちりこなすべく、ピットで準備して
いた。最後のドライバーチェンジも問題なく、コースに戻っていく989号車。その先に待っている
のは24時間の戦いを乗り越えた達成感と仲間たちと分かち合う大きな喜びであると、誰もが確信
していた。

しかし、最後の最後にドラマが待ち受ける。

23時間56分30秒。モニターに映し出された自車の姿に、ピット内は騒然。感嘆の声が響いた。
ピットでゴールの瞬間を待ちわびていたチームクルーも、日本で夜通し応援し続けていた友人や
チームあるいは会社のスタッフも、そしてなによりドライブしていた佐藤自身も、その現実を
受け入れられなかった。佐藤によると、バックストレートで突如ギアが入らなくなり、そのまま
止まってしまったとのこと。車内では試行錯誤し、再始動を試みる佐藤の姿が見られたが、エン
ジンが再び息を吹き返すことはなかったという。一瞬ガス欠とも思われたその症状であったが、
結果ECU系のバグによる燃料カットが原因と判明。タンク内には6リットルほど残っていた。
残り3分半。受け入れがたい結果であるが、これがレースの厳しさである。

直前で完走は逃したものの、リザルトは493周回で総合43位、クラス6位として記録された。
ドライバーもチームスタッフもこのままでは終われるはずもない。いずれ必ずリベンジすることを
誓い、ドバイを後にした。

~レース後、ドライバーコメント~
初めての海外レース、しかもそれが24時間耐久ということで、しっかりと体調を整え、全力を
出せるような状態で臨みました。今回は横溝プロの他、ジェントルマンドライバー4名(日本より
3名、中国より1名)の合計5名で戦ってきました。ドバイに着いたのが現地時間の朝5時過ぎという
ことで、時差呆けを生じないようにするために到着当日は一切仮眠をとらず、夜中まで起き続ける
ことに専念しました。それが功を奏し、現地時間に身体を順応させることができ、2日間のプラク
ティスも問題なく進めることができました。ドバイのコースレイアウトは周りが砂漠ということも
あり、ところどころ砂が浮いてスリッピーな場所もあれば、タイヤカスが溜まっている部分も
あり、プラクティスからライン取りを意識して取り組みました。特に1コーナーを抜けた後の高速
コーナーに関しては、リア荷重が抜けると車が飛んでいくようなところもあるので、フロント荷重
過多にならないようにリア荷重も意識しながら、4輪を沈めてコーナリング姿勢をつくっていくこ
とを念頭においてトレーニングしていました。その結果、徐々にタイムを短縮でき、自分としては
初めてのコースでは納得のいくプラクティスができました。
レース本番では予選アタック、オープニング、チェッカー担当という非常に重要な役割を果たす
ことになりました。予選アタックは当然GT3、GT4、TCR車両との混走であったため、レーシング
ラインを意識しつつもGT3をパスさせることによるロスタイムが最小限になるように努めました。
予選のタイムに関してはフリープラクティスの時よりも短縮でき、自分としてはさらに更新できる
という手応えは残しつつも、納得いくアタックができたと思っています。
そして約80台にも上る台数の中、決勝がスタートとなりました。本レースに関してはフォーメー
ションラップが2ラップありますが、2ラップ目の後半には隊列を組まなければならなかったため、
1ラップ目にしっかりタイヤとブレーキに熱を入れて、1.5周の間に車両をベストな状態に持って
いくことを意識しました。当然ながら多くの台数の中でのバトルなので、しばらくは他車との接触
を避けなければならず、前後左右に注意を払いながら、かつ自分の持てる走り、必ずマージンを
残すこと、後方から迫る車両のクラスを判断すること、これらに集中にしながらレースを組み立て
ていきました。無線でも混走車両の情報を送ってくれていたので、それも併せて確認し、ロスが
最小限になるように走りました。
自分は最初のスティントが終わり、次がナイトセッションになりましたが、夜間の走行に関しては
1コーナーを抜けた後のハイスピードコーナー、つまりはリア荷重が抜けると危険なゾーンが真っ
暗で縁石も見えない、クリッピングポイントも見えないという状況でした。徐々に修正を重ね、
特に最初に舵を当てるタイミングを調整しながらなるべく本来のレーシングラインに近づけるよう
専念しました。ナイトセッションはどうしてもクラッシュが多く、コード60が頻繁に出ていた
ため、単独はもとより、もらい事故に遭わないように注意し続けることも重要でした。その後の
スティントは明け方だったため、自分のコースへの慣れとレースへの感覚も掴めてきたことも
あり、もう少し詰めていこうという思いで挑みました。その3スティント目の中で、後方からGT3
のポルシェが近づいてきていたのを確認していたため、イン1台分を空けてヘアピンコーナーで
オーバーテイクさせてから追従しようと考えたのですが、相手の車両がアンダーステアを誘発
し、自車のホイールに当たったことで、大きく何かが破損したと認識したため、緊急ピットイン
をせざるを得ない状況になりました。そのタイミングでドライバーチェンジをし、最後は残り
20分をきったところでチェッカーを受けるべく、ラストスティントを担当しました。すべての
ドライバー、エンジニア、メカニック、監督の思いをのせ、あくまでもチェッカーを受けることが
目標であったため、安全マージンを確保しつつ、周りの状況をみてレース運びに専念しました。
残り5分のところで横溝プロから無線が入り、残り2ラップになるであろうと連絡を受け、無事に
走り切ろうと気持ちを新たにしていた矢先、残り3分のところでバックストレート上で6速に入れ
た瞬間にギアが抜けたような症状があり、失速していきました。続いてガス欠症状のアラームが
出たため、緊急用の燃料送油やミッショントラブル時のクラッチでミッションを繋ぐ応急装置を
発動させましたが、ギアが入らないという状況でやむなくコース外に停止し、車両は23時間57分
でストップしました。最終的には牽引され、ピットまで戻りました。チェッカーは受けられなか
ったですが、実際には完走扱いとなり、クラス11台中、6位という結果を残すことができました。
初めての海外、24時間耐久と初めてづくしだったのですが、みんなと喜びや悔しさを共有できた
ことは非常に有意義なものと思っております。またこのメンバーでドバイに限らず、24時間耐久
レースに参戦したいと思いました。
また、今回自分の所属チームのエンジニアもメカニックも女性だったのですが、良いカルチャー
ショックとなりました。ヨーロッパではドライバーに限らず、車のメンテナンスに携わるスタッ
フも女性が活躍しているということから、日本もそういった流れにしていくことが望ましいと
考えます。男性・女性という垣根をなくし、女性がメカニックとして、エンジニアとして活躍
できる場をつくっていくことができればという思いをチームオーナーとして強く感じました。

Koshido Racing 佐藤 元春

2019.01.20 Fuji Champion Race Series 2018 FCR VITA Rd.4 RACE REPORT

Fuji Champion Race  VITA-01 Rd.4
開催日時(FCR-VITA):2018年11月17日(土)
開催地:富士スピードウェイ(静岡)
ドライバー(FCR-VITA):佐藤 元春
マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機
参戦クラス:FCR-VITA
天候(FCR-VITA):予選/曇り、決勝/晴れ
路面予選(FCR-VITA):予選/ドライ、決勝/ドライ
佐藤 元春  予選:23/29位  決勝:17/27位

2018年のFuji Champion Race(FCR)もいよいよ最終戦。佐藤はいつも通りVITA-01クラスにエン
トリーしていた。北海道民とはいえ、この時期ともなると冠雪した富士山から吹き降ろす風が冷た
く感じられ、シーズンの終わりを肌で感じさせられる。空気も澄んでおり、富士山もくっきりと
その姿を見せていた。そんな凛とした11月の空気の中、VITA-01での今年最後の決戦の火蓋が切ら
れた。

<DAY1> 11月16日(金)
公式練習走行(30分×4本)

いつも通りであればレースウィークの木曜日には現地入りし、フリーでのスポーツ走行枠を使って
練習走行に励んでいるが、今回は専有イベントが入っていたために金曜の公式練習からの走行と
なった。
この日の1枠目は8:30からのスタート。第3戦に引き続きKoshido Racingドライビングアドバイザー
である平中選手がまずステアリングを握る。限られた時間で走りを組み立てていく必要がある
ため、最初のこの時間を平中選手がドライブし、セッティングの方向性を打ち出していく。

天候は快晴。冒頭でも述べたとおり空気は冷たく、エンジンの伸びには一役買いそうな気候である。
しかし実際に走り出してみると、今期常に悩まされ続けていたエンジンパワー不足に苛まれる。
コーナー進入では鋭く間合いを詰めていく平中選手。そのままの勢いでコーナーを立ち上がるが、
あっさりと他のVITAに離されていく。特に1(TGR)コーナー、アドバンコーナー、最終パナソ
ニックコーナーなど、低速まで減速した後に長いストレート区間を有する場所で顕著にみられて
いた。また、立ち上がりで上り勾配になっていくダンロップコーナーでもパワー不足がはっきりと
現れていた。

それでもタイム的には2分2秒340と、今期610号機で記録した富士スピードウェイでのタイムの中
では最も速かった。
9:50からの2枠目は佐藤がコースイン。やはりパワー不足は否めないが、挙動は安定している。
最終戦ということもあり、佐藤は今回悔いなく走り切りたいと練習走行より気合が入っていた。
燃料は満タンかほぼそれに近い状態での走行。ライバルのVITAと一緒にコーナーに飛び込むと
アンダーステアが顔を覗かせることもある。しかし、そんなトライ&エラーを繰り返しながら自ら
の走りを組み立てていく。
インタープロトやCCS-Rとの混走で、なかなか自分のラインに乗せて走ることができなかったが、
2分3秒930をマーク。続く3枠目では3秒フラットまで縮めた。

最終枠も時間いっぱい走り切り、ライバル車との駆け引きやマシンの動きのチェックに勤しんだ
佐藤。タイヤが喰いすぎることで100Rが失速気味といった状況ではあったが、3秒台半ばをコンス
タントにマークし、練習走行を終えた。

練習走行結果

佐藤 元春:2’03.050(AIM計測)

 

<DAY2> 11月17日(土)
公式予選(8:35~8:55)

上空にはところどころ雲がみられるものの、天候は前日に引き続き概ね晴れている。気温は前日
同様低く推移しており、水温管理には気を使う。他車にストレートで大きく水をあけられるという
現状を打開できないまま最終戦にもつれ込んだ今シーズン、オーバークールによるパワーロスを
最小限にとどめるべく、エアインテークのテーピングを入念に行う。

車両の準備が終わったところで、佐藤はしっかりとタイヤに熱を入れながらコースインする。練習
走行で走りの組み立てができていた佐藤は、2周目より即アタックを開始。最初のアタックラップ
で2分5秒507を記録したのち、周回を重ねるごとにコンマ数秒ずつ短縮していく。水温はコース
イン前にテーピングしたにもかかわらず最高で66.8℃と低めであった。参考までに、今年の610号
車の富士スピードウェイでのベストタイム記録時の水温に比べると5~10℃ほど低く、パワーが
潤沢に出ている状況ではないことが予測される。挙動を大きく乱すこともなく、すべてにおいて
まとまった走りではあったが、タイムは2分4秒1と伸び悩んだ。やはり今シーズンの富士スピード
ウェイでの戦いを象徴するストレートでの多大なる遅れが最後まで足枷となり、23番手という
順位で予選を終えた。

公式予選結果

佐藤 元春:2’04.129

この日はスーパーFJの最終戦も併催されており、北海道クラブマンカップシリーズVITA-01で
Koshido Racingから参戦していた石崎竜一朗が出場。今期シリーズ参戦しており、年間チャンピ
オンをかける重要なレースである。

予選2位からのスタートとなり、ポイントランキング2位の選手との僅差のバトルが続いたが、
ライバルより前でチェッカーを受け、見事シリーズチャンピオンを決めた。

 

決勝(12:30~ 10LAP)

天候は快晴となり、気温は少し上昇。予選ではなかなか期待通りの値に達しなかった水温も上昇が
見込まれる。いつもと同じようにピットロードを出たところから丁寧にタイヤを温め、自らの
スターティンググリッドに向かう。
サインボードの見落としのないよう、改めてピットの位置をチェックする佐藤。

今回のFCR-VITAは最終戦ということもあってか、エントリー台数がこれまでのレースに比べて
2割ほど多く、一層賑やかな様相を見せている。
グリッドについた佐藤は、緊張のスタートを待つ周囲の喧騒に流されることもなく、最後の戦いを
前に心頭を滅却する。悔いを残さないために。

いよいよスタートの時。
ここ最近のレースでのスタンディングスタートは安定の速さを見せる佐藤。今回は富士スピード
ウェイでのドライ路面ということもあり、4000rpmからのクラッチミート。これが絶妙なトラク
ションを生み、スタートから1コーナーで1台をパスする。そのままの勢いでさらにポジション
アップしたいところではあったが、タイヤはまだ冷えた状態であり、100Rではアンダーステアも
オーバーステアも出る。ここは素早い修正舵でマシンを抑え込み、ポジションをキープした。
タイヤも温まりつつある2周目は挙動が安定し、コカ・コーラコーナーでコースアウトしている
車両を横目にスムーズなステアワークでコーナーをクリアしていく。同一周回の最終コーナーでは
アンダーステアを出した前走車を立ち上がりでパスし、そのままイン側をキープ。ストレート
スピードに勝るライバルを相手に1コーナーで何とか前に出る。
インフィールドに入ってしまえば、ミスをしない限りほとんど抜かれることはない。次のストレー
トまでにマージンを稼ぐべく、アグレッシブに攻め続ける佐藤。これまでのレースより細かなカウ
ンターを何度も当てている姿が見受けられた。

レースは4周目。ダンロップコーナーでスピンしているライバル車両を冷静にかわし、それ以降は
単独走行が続く。レースラップも6周目に突入し、13コーナーで失速しているライバル1台をパス。
そのまま最終コーナーまで速度を維持し、スリップにつかれないようにホームストレートでは
ラインをずらす。


今年最後のレースを戦う佐藤を、チームスタッフ全員が見守る

7周目、100Rでアンダーステアを誘発し、アドバンコーナーでの進入スピードが落ちる。久々の
ドライビングミスに一瞬リズムが崩れかけたが、即修正。しかし、その周の最終コーナー立ち上が
りから後ろに張り付かれ、スリップストリームから抜け出た1台に1コーナーで再び前に出られる。
その後、ホームストレートで差を拡げられてはインフィールドで詰めるといった状況を繰り返し、
そのままフィニッシュ。最終的に17位まで順位を上げてのゴールとなった。

シーズン中、マシンを労わりながら走り続けてきた佐藤であったが、今回の最終戦では後悔しない
ためにも遠慮することなく、全力を出し切って走り切りたいとレース前より話していた。結果、
マシン性能のハンディを背負いながらもポジションを6つ上げたことは、来シーズンへの手応えと
なったはずである。

 

~レース後、チームオーナーコメント~

1年間全戦参戦したうえで、自分が考えていることすべてをお話ししたいと思います。 それは
マシンに個体差がありすぎるということです。これはプロドライバーに乗ってもらい、他のサー
キットでコースレコードを持っている若手ドライバーも乗せましたが、明らかに他のマシンより
3〜4秒遅かった。同じようなセッティング、同じようなエンジン・ミッション、同じような水温・
油温管理で臨んでもそれだけの差がありました。こればかりはどうしても覆すことができません
でした。セッティングと自分の実力で1秒は覆すことができても、3〜4秒という差は不可能です。
我々の見解としては、おそらくフレーム自体の個体差が大きいのではないかという判断になりま
した。来季に向けては新しい車両を購入して、それが皆と戦えるマシンであることを信じて、
本当の意味でのイコールコンディションで戦いたいと思います。それが実現した時にはしっかりと
結果を残し、メカニック、エンジニア、ドライバー、チーム全員の成果を見せたいと思います。

Koshido Racing 佐藤 元春


2019.01.20 北海道クラブマンカップレース2018 Rd.4 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレースRd.4 VITA-01
開催日時:2018年9月30日(日)
開催地:十勝スピードウェイ(北海道)
ドライバー:佐藤 元春(#610)、石崎 竜一朗(#310)、竹谷 和浩(#712)、
大島 良平(#777)
マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機、310号機、712号機、777号機
参戦クラス:北海道クラブマンカップレース (VITA-01クラス)
天候:予選/曇り、決勝Race1/曇り、決勝Race2/雨
路面:予選/ドライ、決勝Race1/ウエット、決勝Race2/ウエット
佐藤 元春  予選:1/14位 決勝Race1:1/14位 決勝Race2:2/14位
石崎 竜一朗  予選:2/14位 決勝Race1:6/14位 Race2:7/14位
竹谷 和浩   予選:9/14位 決勝Race1:5/14位 Race2:1/14位
大島 良平   予選:10/14位 決勝Race1:8/14位 Race2:5/14位

 

日中も肌寒い日が続き、日没後は明らかに寒さが増す9月の末日、北海道クラブマンカップ最終戦
となる第4戦が開催された。本レースは1~3戦とは異なり、2レース制で争われる。1レースは10周
で、いつもより2周ほど少なく設定されており、予選は1レース目に対してのみ行われる。2レース
目のグリッドは1レース目のベストタイム順に基づいて決定される。
今回は第3戦で都合がつかず参戦できなかった竹谷が712号機に戻り、310号車には石崎、610号車
は佐藤、777号車に大島良平と、この3台はいつもと同じラインナップ。全車レギュラードライ
バーでのエントリーとなった。
今期はこのシリーズでまだ優勝がないKoshido Racing。各々最終戦で何としてでも表彰台の頂点を
ものにしておきたいという思いが強くあった。

<DAY1> 9月28日(金) 練習走行

佐藤と石崎両名はこの日から十勝入りし、フリー走行枠での練習に励んでいた。同日は他にも数名
のライバルたちが走行しており、#61 HDC 日本平中自動車の平中繁延選手や#88 OPTech☆東北海
道ヤナセの坂野選手の他、同月初旬に開催された耐久戦に続いてエントリーしている選手たちも
走行していた。
この日は11:30からの走行開始となった。天候は晴れており、正午近くになるが、気温は15.5℃と
すっかり涼しい気候となっている。湿度は58%でコンディションとしてはまずまず良好といった
ところ。北海道クラブマンの最終戦ということもあり、ドライビングアドバイザーである平中克幸
選手も駆けつけ、一本目の走行枠でマシンとコースの感触を確かめるべくVITAに乗り込んだ。

決して暑くはないが、走り出して数周で水温が90℃まで上昇。最高速の伸びにも影響し、ラジエ
ターエアインテーク部のテーピングを調整して再度コースイン。調整後の水温は82℃。1分33秒
フラットをマークし、午前の走行を終える。
午後は車高を5ミリ下げ、タイムは1分32秒5とさらに短縮。気温は17.3℃まで上昇していたが、
水温は午前の走行時と変わらなかった。
佐藤は15:30からコースイン。遅いスタートとはなったが、練習に長い時間を費やしてきた十勝と
いうこともあり、マシンのセッティングの方向を確認しつつ、15周回ほどで走行を切り上げた。
ベースのタイムを1分33秒台前半とし、所々32秒台をマークする走りをみせていた。
同日十勝入りしていた石崎は、ドリフトコースを使用し、自らが乗るエンジンオーバーホール後
の310号機の慣らし走行に徹していた。

練習走行結果

佐藤 元春:1’32.896
平中 克幸:1’31.532

 

<DAY2> 9月29日(土) 特別スポーツ走行

前日の夜に竹谷が合流し、早朝には大島良平も十勝入りとなった。これでKoshido Racingのドライ
バーが勢揃いし、ピット内のムードもより賑やかなものとなる。併催のNetz Cup VITZレースに
参戦中の清水宏保選手も訪れていた。

一枠目の走行開始は9:40から。気温もまだ上昇しておらず、エンジンには好条件であるためか、
各車ベストに近いタイムをマークしていく。その後の走行枠は11:00~、12:20~、13:40~、
15:00~と続き、次第に気温・湿度ともに上昇していたが、一枠目で佐藤が1分32秒6、大島良平が
1分33秒8でこの日のベストとし、午後からは竹谷が1分34秒4、午前中の走行枠いっぱいを慣らし
に使った石崎が1分32秒8で午後にベストラップを記録した。


惜しみない努力を重ね、技術が熟成しつつある佐藤


参戦一年目にして目覚しい成長を遂げた大島良平

どのドライバーも全走行枠を通してタイムのばらつきが少なく、安定してベストタイム近辺を刻み
続けていた。これは一年間の走行経験を通して培ってきた技術が成せる業といえる。決勝での安定
した戦いにチームの期待も高まっていた。

練習走行結果

佐藤 元春 : 1’32.673
石崎 竜一朗: 1’32.865
竹谷 和浩 : 1’34.442
大島 良平 : 1’33.811

 


長い慣らし走行を終え、一息つく石崎。エンジンコンディションに手ごたえを感じている。

 

<DAY3> 9月30日(日)
予選(8:55~9:15)

天候は曇り。予選前の気温13.9℃、湿度88%。上空を覆う雲は厚く、高い湿度と相まって今にも
雨が落ちてきそうな空模様である。

雨天に変わる前にと、各車順序コースインしていく。
まず佐藤が1分33秒6で周回し、2周目には早くも32秒台へと短縮する。続いて石崎も33秒台前半を
マーク。その後周回を重ねていく毎にコンマ数秒ずつ短縮し、32秒7とした。竹谷・大島良平の
両ドライバーは、34秒台前半をコンスタントにマークし、Koshido Racing勢が順調に上位を占めて
いくと思われた。しかし、ライバル達も手をこまねいてみているわけではない。#88 OPTech☆東
北海道ヤナセの坂野選手が1分32秒台をマークしたのをはじめ、#61 HDC 日本平中自動車の平中繁
延選手や#11 さくら眼科十勝スクールの今野選手、#9 十勝レーシングスクールTAKUMI01の鬼塚
選手、また#3さくら眼科☆OWLwithRS-α01の古井戸竜一選手も相次いで33秒台を記録し、
Koshido陣営の行く手を阻む。
最終的に1分33秒台に4台が入り込み、竹谷・大島良平はそれぞれ9・10番手につけた。32秒7を
記録していた石崎は辛うじて坂野選手の追撃を振り切る形で2番手、佐藤はその後さらにタイムを
縮め、1分32秒489でポールポジションを獲得。

予選結果

佐藤 元春 : 1’32.489
石崎 竜一朗: 1’32.730
竹谷 和浩 : 1’34.205
大島 良平 : 1’34.288

 

決勝Race1(11:25~、10LAP)

スタート時こそ降ってはいないものの、予選後からそれまで続いた雨により路面はウエット状態と
なっていた。気温は14℃、湿度89%。コンディションが悪化しているにもかかわらずKoshido
Racingの面々には緊張している様子はない。気負いというより寧ろこれからのレース展開に期待を
寄せているようにすら見える。


応援に駆け付けた家族に囲まれ、良い表情を見せる竹谷


心からレースを楽しんでいることを窺わせる大島良平

各車グリッドへ。フロントローはKoshido Racingが独占している。
気温が低く、濡れた路面でスタートは一層神経を使う。フォーメーションラップでは到底タイヤが
温まる気配はない。ファーストグリッドについた佐藤は低めの回転でクラッチミート。これが絶妙
に決まり、トップを維持したまま1コーナーへ飛び込む。しかしなおも冷えたタイヤが牙を剥き、
2周目までは温まる様子はなく、アンダーステアもオーバーステアも襲ってくる。ウエット路面に
対応すべくラインは一車幅分ずらし、アウト側は縁石にのらない程度に目一杯コース幅を使って
立ち上がる。アウト側の縁石はのった途端に足元をすくわれるため、このコンディションで使う
のはご法度である。
石崎はスタートで一瞬出遅れる。それでもホイールスピンは最小限に抑え、冷静にトラクションを
確保した。しかし時すでに遅しといった勢いで、1コーナーまでに周りのライバルたちに一気に
並ばれ、苦しいラインを迫られた石崎は一気に6位に後退。そこで焦りが出てしまったか、2コー
ナー立ち上がりで痛恨のスピンを喫してしまう。コース外に半車身飛び出してしまったが、幸い
スタックはせず、最後尾ですぐにコース復帰。そこからは覚醒したかの如く、前走車を追い上げ
る。2周目だけで3ポジション取り返し、続く3周目ではSAURUS Jr.を捉える。ラインを塞がれ、
苛立つ場面も見られたが、挙動を乱した隙を見逃さず前に出る。その後も勢い止まらず、もう一台
パスする。

竹谷は絶妙なスタートを決め、#95 幸伸建設Y’sステップの坂本選手との1コーナーでの競り合いに
勝利し、その後2コーナーでの石崎のスピンによる混乱に乗じて一気にポジションを3つ上げる。
しかし、その後に背後から再び後続車に並ばれ、行き場をなくした結果、#89 M.A.R.T STEPの
後藤選手と#95坂本選手の2台に先行を許す。その後はすぐに後藤選手を抜き返し、ポジションを
ひとつ回復させ、坂本選手に追いすがる。
ルーキーイヤーにして上位陣に食い込む健闘ぶりをみせている大島良平は、大きなミスこそない
ものの、これといった決め手に欠け、スタート直後はなかなかライバルたちの前に出られない。
しかも2周目には70Rでの痛恨のミスで最後尾にまで後退。ここからの巻き返しは相当困難で
あった。
3周目からは各車挙動も安定するが、速度はそこまで乗せられない状況。佐藤は1コーナーで3速を
使うこともあるほど。挙動を安定させるためにシフトダウンのポイントもずらすなど、随所に佐藤
の工夫が見てとれた。この積み重ねで2位との間にかなりのマージンを稼いでおり、このままいけ
ば順当にトップチェッカーを受けられる…チームの誰もがそう考えていた矢先、ライバル2台が
絡んでコース上にマシンが残ってしまい、6周目にセーフティーカーが導入された。これにより
佐藤がこれまで築いてきたマージンはゼロに。今季、様々な試練に見舞われた佐藤であったが、
最終戦においてもなお試練は重なる。2周にわたってセーフティーカーが先導する中、リスタート
に向けてタイヤ及びブレーキが冷えないようスロットルとブレーキを巧みに使う。それでも油断
するとオーバーステアが顔を覗かせるため、終始気の抜けない状況が続く。
路面が一部乾きつつある中、セーフティーカー解除。石崎は次の一台をパスするべく真後ろに
つけたところでのセーフティーカーというタイミングとなり、#89の後藤選手を視界に捉えた
ままリスタートの時を待っていた。ファーストラップではまさかのスピンから一時は絶望的な
レース展開となることも予想されたが、セーフティーカー解除後に#9 十勝レーシングスクール
TAKUMI01の鬼塚選手とのバトルも制し、最終的にポジションを7位まで上げ、フィニッシュ
した。ラップタイムでは驚異的な追い上げをみせたことから出走車中トップタイムをマーク。
Race2でのポールポジションを決めた。一方、竹谷は前を行く坂本選手に1コーナーのブレーキン
グでラインを変え、揺さぶりをかける。オーバーが強い712号機を上手くねじ伏せ、残り周回を
常に全開で攻め続けた。予選では振るわなかったが、気が付けば巧みなレース運びとマシン
コントロールで5位にてチェッカーを受けた。しかもレース周回中で2番手のタイムを記録すると
いう健闘ぶりであった。
一時は巻き返し困難と思われた大島良平であったが、2周目以降は堅実な走りでひとつずつ順位を
上げていった。ライバルたちがスピンやコースオフで遅れていく中、最初のミスを感じさせない
走りで挽回していく。

この時、ウエット路面でのVITAの動きを確実に掴んでいた。ツボに嵌れば速いが、どことなく安定
したレース運びに課題が残っていた大島良平。Koshido Racing期待のルーキーは、レースを重ねる
ごとに確実に躍進し、その結果が今回、最後尾からの追い上げ8位という結果に結びついた。
そしてトップを守っていた佐藤。ピットロードに消えていくセーフティーカーを横目に、無事に
リスタートを切る。しかもこれまでよりもブレーキングが鋭くなっている。一時はどうなることか
と思われたが、コーナーを抜ける度に再び2位との差が拡がり、佐藤は安全マージンを残した走り
に切り替える。それでも他の追随を許さず、念願のトップチェッカー。

一年間紆余曲折しながらも努力を続けてきた佐藤に、ようやく勝利の女神が微笑んだ。苦労して
手にした優勝だけに、佐藤もチームの喜びもひとしおである。


完璧なレース運びでの勝利。難コンディションでの好レースをライバルたちと称え合う

 

決勝Race2(14:35~、10LAP)

Race1を終えたドライバーやチームスタッフの面々は数時間後のレースに備え、一息ついていた。
待ちに待ったKoshido Racingの今期初勝利に酔いしれつつ、Vitzレースに参戦する清水宏保選手の
応援のため、グリッドに駆け付ける。同じ北海道出身で、日本各地を転戦する仲間として活躍を
祈るばかりである。


Netz Cup Vitzレース参戦の清水宏保選手

清水選手のレース後、程なくしてRace2の時刻を迎える。
ポールは前述の通り石崎。セカンドグリッドには竹谷がつけ、またもフロントローをKoshido
Racingが独占する形となった。Race1優勝の佐藤は3番手で、こちらもまた好ポジションが狙える
位置につけている。大島良平はRace1のスタートポジションから2つ順位を上げ、今回は8番グリッ
ドからのスタートとなった。
Race1ではぱらつく程度だった雨が本降りとなっており、路面はよりハードウエットに。完全に
濡れてしまっているという点では突如挙動が乱れることはないが、路面温度はより低くなり、滑り
やすいことに変わりはない。スタートでは今回もシビアなクラッチワークとスロットルコント
ロールが求められる。しかし、そんな過酷な状況の中でもやはりKoshido Racingの面々に緊張の
様子は見られない。


ヘビーウエットながらまったく気負いを感じさせない竹谷。同じ712号機で戦う中川が激励する

Race1でトップタイムをマークし、Race2での善戦を誓う石崎
いよいよ北海道クラブマンカップシリーズVITAレースの2018年最後の戦いが幕を開ける。
ポールの石崎はややストール気味のスタート。好スタートを切ったイン側2番手の竹谷に先行を
許す。しかし1コーナー立ち上がりですぐさまポジションを取り返した。
一方の竹谷は、トップ石崎のすぐ後ろでぴったりとマーク。守りのラインの石崎に対し、雨に臆す
ることのない一歩攻めのラインで肉薄する。
3番手の佐藤はスタートでややホイールスピンが多くなったものの、ポジションをキープしつつ
ペースを作っていく。70Rで一瞬トラクションが抜け、姿勢を乱したが即修正し、引き続き前を
追う。すぐ前方で石崎と竹谷が競り合うのを冷静に見つつ、丁寧にマシンを前に進めていった。

大島良平はミスなくスタートを決めるが、ファーストラップ中で一つ順位を落とす。しかし、
前レースである程度ウエット路面のコツを掴むことができていたためか、2周目以降の挙動は終始
安定。早々に元のポジションを取り返し、前を行くライバルたちの隙を虎視眈々と狙う。ラップ
タイムは2周目に1分54秒であったのに対し、周回を重ねるごとにコンマ3秒ずつ、あるいは1秒近く
短縮していき、レース後半には1分50秒台まで縮めてきた。その後半のペース上昇ぶりに、周りの
ライバルたちも驚きを隠せなかったはずである。残り2周のところで前方2台がスピンしている横を
冷静に通過し、ファイナルラップではさらに1台の前に出てトータルでポジションを3つ上げ、
今シーズンの最高順位である5位でフィニッシュした。

石崎はRace1でのスタート直後のスピンのこともあり、慎重にファーストラップを走り切る。
その後堅実に周回を重ねていたが、2位竹谷プッシュがやまず、ミラーに目を運ぶ回数が増える。
レースも後半になると、いよいよ竹谷が真後ろまで迫っていた。前を走る310号機によって水しぶ
きが激しく舞い上げられ、前がほとんど見えない中、7周目の2コーナーで竹谷が仕掛ける。インに
飛び込まれた石崎は、そのままトップの座を明け渡す。クロスラインでのポジション挽回を試みた
が、立ち上がり車速がうまくのらず、そのまま2位に甘んじた。そこから追撃態勢に入るが、焦り
が出たか、8周目の6コーナーで痛恨のスピン。一気に7位までポジションダウンしてしまった。
その同一周回の最終コーナーにて前の2台が姿勢を崩し、コースオフしている間にポジションを
二つ戻した後、9周目の3コーナーで前走車のインぎりぎりをかすめ、#11 さくら眼科十勝スクール
の今野選手の前へ。辛くもポジションを一つ上げ、4位まで復帰する。しかし、この路面にセッ
ティングを合わせきれなかったのか、ファイナルラップの6コーナーにてまたしてもスピン。再び
順位を落とし、7位でゴールした。
レース序盤の石崎のミスで2番手にポジションアップした佐藤は、何度か前に仕掛けにいくが、
竹谷のブレーキングに追いきれない。実際、レース後にも「どんどん離れていった。追いつく気が
しなかった」と称賛のコメントを残している。より強くなる雨脚の中、路面μはさらに低下し、
シビアな挙動に神経をすり減らす戦いが続いたが、決して追うことはやめず、アグレッシブに走り
切り、2位でのゴールとなった。
基本的にターンインで早めに向きを定め、トラクションをかけながらコーナーを脱出する竹谷。
車の姿勢は終始安定しており、大きなミスはほぼ皆無であった。7周目で石崎の前に出た竹谷は
その後さらに勢いを増す。しかし、熱くなりすぎることはなく、ひたすら冷静にマシンを前に
進める丁寧な走りに徹していた。

結果、2位の佐藤以下を徐々に引き離し、そのままゴール。悲願のトップチェッカーである。
シリーズ参戦し、初めてのポディウム中央を勝ち取った竹谷。Race1に続き、またもKoshido
Racingのピットは歓喜に沸いた。


竹谷初の表彰台、そして優勝。ピットも一層の盛り上がりを見せた


初のシャンパンファイトに歓喜の表情を見せる竹谷

 

なお、佐藤は最終戦での優勝・準優勝で一気にポイントを獲得し、シリーズ2位でクラブマン
カップを終えることとなった。
北海道クラブマンカップ最終戦は、まさにKoshido Racing Dayとなった。今期苦労を重ね、時には
辛い結果にも向き合わざるを得なかったこともあったが、努力の継続とチームワークで勝ち取った
結果といえよう。この一年間で積み上げた経験をもとに、来期以降もメンバー全員が善戦を誓った。

~レース後、チームオーナーコメント~
今年は再三再四にわたるエンジントラブル、ミッショントラブル、ECUトラブルに見舞われ、非常
に悔しい思いをしてきました。最終戦ということもあり、ここでしっかり表彰台の頂上に上って
登ってやろうという気持ちで臨みました。事前の天気予報で雨に移行する予報だったので、予選で
しっかりアタックしてポールポジションを獲得し、ポールトゥウィンで逃げ切るしかないと考えて
いました。雨になりコンディションが悪くなってくると、視界も遮られ、オーバーテイクのリスク
も高まります。そのため先行逃げ切りが最も勝利に近い戦法であると考えました。故にスタート時
のクラッチミートもいつもより回転を低めに、かつ丁寧につなぐこと、そしてタイヤが冷えた状態
でのスタートであることから、トラクションが抜けやすいことを念頭に置き、路面にパワーがしっ
かり伝わるよう早めのシフトアップを心掛けました。かつインとアウトに入られないよう、ミドル
より若干外のラインから1コーナーに進入し、きれいに立ち上がることができました。
これまでドライのみならず、セミウエット、ウエット、台風と、様々な状況下で練習を重ねてきた
ため、どのコンディションでも戦える自信はありました。やはり重要となってくるのは、オープニ
ングから2ラップ目でいかに後続車を引き離すかというところにあったので、そういった練習も
意識的に行ってきました。タイヤが冷えた状態でグリップの限界値を掴み、そこを引き出せるよう
な練習をしてきたことが功を奏し、スタートを上手く決めることにつながったと思います。1コー
ナーをトップのまま抜けられたこと、続く2,3コーナーでウエットにおけるレーシングラインを
トレースできたことで、後続が徐々に離れていく姿が確認できたことから、2周目からは若干の
マージンを残しながら少しずつ引き離すという戦法に切り替えました。ところが6周目にセーフ
ティーカーが入り、リスタートが切られる状況になったことで、築き上げてきたマージンがゼロに
なりました。セーフティーカーが先導している間、タイヤの熱が逃げないようブレーキングによる
熱入れを続けていましたが、2周スロー走行する間に想定以上の内圧低下が感じられたため、
セーフティーカーが戻った後は焦らずに1コーナーを抜けることを意識しました。予想以上に雨も
強くなり、タイヤの熱も逃げてしまったことからグリップ感がかなり低下していたため、後続車を
大きく離すことよりしっかりと自分のラインを確保して、少しずつマージンを稼ぐということに
意識を集中させました。ウエットコンディションではミスを誘発しやすくなります。ミスなく走り
切れば勝てるということがオープニングラップで体感できていたので、丁寧な走りを心掛け、その
ままチェッカーを受けることができました。
最後のレースで優勝、準優勝という好成績を残すことができたのは、北海道クラブマンカップ
レースに出場しているライバルの皆様が素晴らしい走りをしていること、自分もそれに負けじと
練習を重ね、レースバトルのスキルを向上させなければならないという意識を持つことができた
ことが大きな要因です。良きライバルの皆様に感謝いたします。

Koshido Racing 佐藤 元春


2019.01.20 CARGUY SUPER CAR RACE 2018 Rd.3,4 RACE REPORT

CARGUY Super Car Race Rd.3・4
開催日時:2018年10月6日(土)・7日(日)
開催地:富士スピードウェイ(静岡)
ドライバー:佐藤 元春、平中 克幸
マシン:恒志堂レーシング SLS AMG GT3
クラス:Ⅰクラス
天候:予選/曇り、決勝Rd.3/曇り、Rd.4/曇り
路面:予選/ウエット、決勝Rd.3/ドライ、Rd.4/ドライ
予選(平中克幸):1/7位
決勝Rd.3:リタイア、Rd.4:1/7位

 

木村武史氏が代表を務めるスーパーカーエンターテイメント「CARGUY」が主催するSuper Car
Race(以下、SCR)。CARGUYといえば自動車をこよなく愛し、様々なカテゴリの自動車を使っ
たイベントを精力的に開催する集団で、そのパフォーマンスで観る者を次々と圧倒する。真冬
の雪山をフェラーリF40で爆走したり、メルセデスベンツGクラスでオフロードコースを激走
したり、また国内トップカテゴリーであるスーパーGTにGT300クラスでエントリーするなど、
その活動は多岐に及ぶ。そのスーパーGTには代表の木村氏自らがNSX -GT3のステアリングを
握り、毎戦参戦するという本気ぶりである。
恒志堂レーシングは2017年よりSCRに参加しており、今年は二度目の参戦。前年はフェラーリ
458チャレンジとSLS AMG GT3の二台体制でエントリーし、双方ともクラス優勝を果たしている。
今回はSLS1台に絞っての参戦となった。マシンはAMG SLS GT3を駆り、チームオーナーであり、
ジェントルマンドライバーである佐藤と、プラチナドライバーである平中の両名でクラスⅠにエン
トリーした。第3・4戦のステージは、昨年に引き続き富士スピードウェイ。平中はもとより佐藤も
Fuji Champion Race(以下、FCR)やMcLaren TRACK DAYなどで走り慣れたコースである。

 

<DAY1> 10月5日(金) 専有走行(14:30~15:30)

FCRと併催される本レース。この日はインタープロトやスーパーFJ、Vitzレースなど、他の競技の
練習走行も目白押しとなっていた。FCR-VITA第3戦にもエントリーしている佐藤は、SCR練習枠の
前までVITA-01での走り込みを重ね、午後のSLSでの走行時間を迎えていた。
SCRのこの日の練習走行枠は1時間のみ。まずはマシンの調子をみるため平中がコースイン。数周
走って状況を見たのち、マシンを佐藤に委ねる。しかし、この頃から雨がパラつき始め、見る見る
うちに路面はウエットへと移行していく。今シーズン何度も同じ文言をレポート上に記してきた
が、やはり恒志堂レーシングの富士スピードウェイでのレースは雨が多い。急遽レインタイヤへ
チェンジし、佐藤がコースイン。

走り出して数周で1分57秒台をマークし、その後56秒台前半まで詰めたところで一旦ピットへ。
今回の乗り味としてはアンダーステアが強めであった。そのためブレーキをこれまでより少し
ゆっくり気味にリリースすることでコーナー進入での姿勢を保つ方向に乗り方を変え、残りの
スティントに臨む。結果、ピットアウト直後の周回からさらにタイムを短縮し、1分55秒台に記録
を更新した。この時点での各セクターベストタイムを繋げば54秒台は見えている。
その後は再び平中がステアを握り、3周のみアタック。過去にスーパーGTを戦った愛着あるマシン
で1分52秒台をマークし、この日のSLSでの練習枠は終了した。

公式練習走行結果

佐藤 元春:1’55.397
平中 克幸:1’52.514

<DAY2> 10月6日(土)
公式予選(9:50~10:05)

前日に引き続き天候はすっきりとせず、路面はウエットのまま。空には曇が広がっている。
気温22.3℃、湿度は85%と高い。
予選は平中が担当することとなった。


陽も差しつつあるが、明け方まで続いた雨の影響で路面は乾かず。

予選時間として設けられている20分のうち、アウトラップ、インラップを除いて5周計測となった
が、いずれも1分53秒台をマーク。しかもその周回内での差も0.16秒以内と僅少であった。限られ
た時間でのアタックをほぼ同タイムで周回し続けていることから、常にいかに精度の高いマシン
コントロールをしているということが窺い知れる。結果は1’53.281で、ポールポジションを獲得。
しかし、予選後平中はマシンのバランスが悪いとコメントしていた。アタックに入る前、2周に
わたってタイヤに熱を入れ、マシンと路面のコンディションを入念にチェックした後、アタックに
入っている。ウエットであったため、挙動もシビアであったと推察されるが、2位との差も0.072秒
差と、決勝でも決して楽な展開にはならない様相を示していた。

Rd.3 決勝(15:00~ 50分間)

気温は24.2℃、湿度70%。天候は一時晴れ間が差していたものの、小雨がぱらつきいており路面は
辛うじてドライといったところ。タイヤはスリックを選択。スターティングドライバーは佐藤が
務めた。前日スリックで練習走行できていない佐藤は、マシンの動きを確かめつつゆっくりと先頭
グリッドまでマシンを進める。

スタートはローリング形式。フォーメーションラップを終え、シグナルブラックアウトとともに
前車一斉に加速を始める。

エントリー車種はイベント名の通りすべてがスーパーカー。見た目の美しさ、加速の力強さ、
コース内に轟くエンジン音、そのどれもが観客を高揚させる凄みを持つ。
1コーナーへ力強く加速し続けたかと思えば、そこからは強烈なブレーキング競争が繰り広げられ
る。ファーストラップでまだタイヤが冷えており、グリップもままならない状況の中、佐藤は
ブレーキペダルからのインフォメーションをくまなく察知するべく神経を研ぎ澄ませる。トラブル
なく1コーナーに進入したものの、好スタートを決めた#10 SALIH & CHARLIE HURACANにアウト
側から並ばれ、脱出で先行を許した。その直後に一瞬の挙動の乱れもあり、さらに後方5番手
スタートからジャンプアップしてきた#777 CARGUY RUF 488challengeにアドバンコーナーで前に
出られ、この時点で3番手となる。やはり今期SLSでのドライコンディションでの走行時間がとれ
ておらず、実質一年ぶりのドライビングとなっただけに、マシンに慣れるための時間が十分で
なかったことは明らかであった。それでもタイヤに熱が入り、SLSのドライコンディションでの
感覚が戻ってきた2周目以降は佐藤の本来の走りが戻り、安定したラップを重ねていく。それと
ともに前を行く777号車との差も見る見るうちに縮まっていき、8周目には完全に捉える格好と
なった。

9周目、ホームストレートで真後ろにつける佐藤。しかしながら最高速に勝る488 challengeとの
間合いがなかなか詰められず、そのまま勝負は10周目までもつれ込む。最終コーナーをきれいに
立ち上がった佐藤は、ホームストレートで再び777号車の真後ろへ。しかしここでも前に出ること
まではかなわず、11周目の1コーナーへのブレーキング勝負へ。レイトブレーキングからのイン
へのライン変更でようやく前に出る。その後もまた順調な走りで、バックマーカーも安全にパス
しつつ周回を重ねていこうとしたが、コーナー進入でリアが落ち着かなくなる。タイヤの性能が
ピークを越え始めた13周目でピットイン。平中へとドライバーチェンジする。
平中は慣れたマシンでコースイン直後からSLSを攻め立てる。ピットイン中に前に出られた777号
車もあっさりとパスし、ポディウムを堅いものとするべくリードを拡げていく。そのまま順調に
レースが展開されていくと思っていた矢先、トラブルは発生した。
平中に交代して3周目、レーストータルでは16周目となったレクサスコーナーの進入で突如ギアが
3速固定となってしまう。周回を続けながらミッションの調子を窺っていたが一向に戻る気配は
なく、17周目やむなくピットイン。メカニックによって状況が確認される。

この時点での残り周回数を考えても、ミッションを載せ替えるとなるとレース終了までには到底
間に合わず、このまま走り続けてもマシンに負担をかけるだけである。苦渋の選択ではあるが、
そのままリタイアを届け出てRd.3を終了することとなった。
ピットではGAINERのメカニックたちを中心に、すぐさま翌日のRd.4向けてギアボックス交換が
開始されていた。

<DAY3> 10月7日(日)
Rd.4 決勝(10:05~ 40分間)

気温は22.2℃、湿度82%。天候こそ曇りであるものの、路面は完全にドライコンディションが維持
されている。
ミッショントラブルでリタイアしたRd.3終了後、GAINERメカニックたちの懸命な作業により、
同日の夜にはスペアミッションに換装されていた。
Rd.4には予選はなく、前日のRd.3のベストタイムでそのスターティンググリッドが決まるという
方式である。リタイアを喫したものの、レース中の周回で1分40秒983のトップタイムを記録して
いたことから、Koshido Racingはまたもポールポジションを獲得する形となった。


扱いなれたメカニックの手によって万全の状態に戻されたKoshido Racing SLS AMG GT3

前日同様、スターティングドライバーは佐藤。Rd.3のリタイアもあり、今日は絶対に負けられない
と一層集中力を高める。

グリッドには愛娘も応援に駆け付け、勝利を誓う。

スタート前に家族の激励を受け、勝利を誓う佐藤。
そしてレースはスタートする。フォーメーションラップを終え、セーフティーカーがピットへと
入っていく。佐藤はシグナルを見つめ、ブラックアウトするその瞬間を見逃すまいと集中力を
さらに高めていた。横一列に並んでいた赤いシグナルが消え、冷えたタイヤで最大のトラクション
を生むべくスロットルを開ける。スタートは決まった。しかしその後も1コーナーへのブレーキン
グから立ち上がり、コカ・コーラコーナー、100Rと挙動が安定しないファーストラップは緊張を
強いられる。

続くアドバンコーナー、300Rとトップをキープし、ダンロップコーナーへ。立ち上がりではトラ
クションを確実に路面に伝えるために早めのシフトアップを意識するなど、攻めの中にも守りの
走りを織り交ぜ、13コーナーからレクサス、最終コーナーを立ち上がり、ポジションキープした
ままホームストレートに帰ってくる。2位には僅差で#10のSALIH & CHARLIE HURACANがつけ
ており、予断は許されない状況である。
2周目も無難にまとめられたと思われたが、最終コーナーのクリップ辺りで競り合っていた10号車
と軽く接触。姿勢を乱すことはなく、幸い大事には至らなかったが、そこで若干リズムを崩した
か、次の周回では終盤までなんとかポジションを死守していたものの、最終コーナー立ち上がりで
アウトから並ばれ、サイドバイサイドのまま1コーナーへ。わずかに前に出ていた10号車にアウト
側からかぶせられ、立ち上がり加速が鈍ったところで前に出られてしまう。


Rd.4序盤は#10 SALIH & CHARLIE HURACANとの激しいバトルを展開

その後は激しいブレーキングや積極的なライン取りで一定の差を保ちながら前半スティントを攻め
続ける佐藤。2位のポジションをキープしたまま、11周目にピットイン。平中へとバトンを渡す。
平中はトップを奪還すべく、猛チャージをかける。一度は前に行かれた#10にドライバー交代後
6周目で追いつく。#10の前に出た後も、ライバル達とは一線を画すスピードでピットインの間に
前に出られたマシンたちをどんどん抜き去っていく。

乗り慣れたSLSは平中のコントロール下でさらにペースを上げていき、マージンを稼いでいく。
終始安定したペースでもはや独走状態となっていた。
そして40分間の戦いが終わりに近づき、最後となる最終パナソニックコーナーを立ち上がりゴール
の瞬間が訪れる。

紆余曲折はあったが、Koshido Racingは勝利を手にすることができた。待ち望んだポディウムの
中央である。

ドライバーもチームクルーもこの瞬間を心から慶んだ。

2018年のSCRはリタイアと優勝という両極の結果で幕を閉じた。トラブルさえなければRd.3でも
勝利を手にしていたかもしれない。しかし、この展開もまたレースならではといえる。これからも
Koshido Racingのあくなき挑戦は続く。

 

~レース後、チームオーナーコメント~

FCR-VITAのうっ憤もあったので、必ず優勝しようという思いで挑みました。パートナードライ
バーである平中克幸選手、そして今回はメカニックとして、スーパーGTで活躍しているゲイナー
からお越しいただいたので、万全の体制で臨むことができました。第3は途中のミッショントラ
ブルにより余儀なくリタイアとなりましたが、翌日の第4戦では見事ポールポジションからの
スタート、そして優勝という結果を残すことができました。これはひとえにチーム力の賜物で
あり、二人のドライバー、エンジニア、メカニック、サポートメンバーが一致団結して勝ち取った
栄光であると思っています。来年度以降もスーパーカーレースが開催される場合は積極的に参戦
し、Koshido Racingとして少しでも知名度を上げていきたいと考えておりますので、スポンサーの
皆様に今後ともサポートのほどお願い申し上げる所存です。

Koshido Racing 佐藤 元春