2025.09.02 2025 FCR-VITA Rd.3 富士スピードウェイ
年に一度の最大ベントである十勝夏祭りにて大いに会場を沸かせたKOSHIDO RACINGの面々であったが、間髪入れず富士スピードウェイへ向かっていた。
5月の第2戦から3か月ぶりの富士チャンピオンレース VITA-01(以下FCR-VITA)にはチームオーナー佐藤に加え、スーパー耐久富士24時間レースを共に戦った大宮賢人を招集。そしてKYOJO枠レギュラードライバーであるRINA ITOが3月の初戦以来久々にカムバック。
佐藤のマシンには今回から新車が導入され、S耐ロトスタ号と同じゼッケンである610を冠したVITA-01が登場。
但し、このレースウィークは公式スポーツ走行前の一般練習日が確保されておらず、新車への合わせ込みに費やせる時間が相当限られていた。足回りを移植し、メカニックと協力しながら急ピッチでマシンセッティングを進めていく。
RINA ITOは前戦同様35号機に、大宮は元々佐藤が搭乗していた15号機でのエントリーとなった。
■公式スポーツ走行
朝一1本目の走行枠はまず新610号機の佐藤が走行。マシンのフィーリングを確かめる。卸したての新車ということもあり、4速に若干の渋さが残っていたが、とにかく丁寧にシフト操作することで改善が見られ、フィーリングは向上。翌日の予選・決勝に向けてよい感触を得た。
2本目は佐藤、RINA、大宮がコースイン。しかし15号機はアライメントのずれが著しく、すぐにピットに帰還。即時調整に入ることとなる。
第1戦で35号機との相性が良かったRINA。久々ということもあり、様子を見つつ若干ゆとりをもってのドライビングで初回の走行に臨む。それが功を奏し、まずまずのタイムからのスタートを切った。しかし2本目はやや力が入ってしまい、突っ込み気味の傾向。ドライバーの性か、より詰められるのではないかという欲が操作の遅れを生み、結果タイムは振るわない。ことVITA-01に関しては頑張れば頑張るほどタイムが反比例するドライバーが多い。長年VITAに乗り続けているRINAはそれを十分に理解しており、3本目となる最終枠は走りを修正。多少雨がパラつく中、ペースを上げて周囲のライバルたちから一歩抜きん出る。最終的には路面を濡らすまでには至らず、ドライコンディションのまま走行が可能となったが、豊富な経験を基に路面コンディションを適切に判断したRINAの走りが光った走行枠であった。
走り出しでアライメント修正が必要な状況に置かれた大宮は、調整後の走行枠へ満を持してコースイン。しかし今度は4速が抜けるというトラブルに見舞われる。ドライビングに多大なる支障をきたすことから急遽載せ替えることになり、午前中いっぱいを換装に費やしたことで大宮の走行はこの日午後のみとなった。
最初はトラブルもあって、最終的にメカニックに直してもらってマシンは改善。2本走れてどちらも調子はよかったと話し、ネガティブな気持ちはない様子。毎ラップチャレンジでき、自分のなかではよかった。ただ、トップは59秒台。そこには遠いと感じる、自分は今回2分0秒台止まり。明日に向けてまずはどこが足りてないのか考えてセットも調整したい、予選の中でもいろいろ試してベストを探りたいと非常に意欲的な姿勢を見せた。
佐藤は新610号機について、セッティングはこれまで十勝や富士で培ったデータを基に詰めているので自分的にはタイムが出せる仕様であると思っている。ただ、自分自身がそれに対する走りでアジャストできてない。もうひとつ壁を壊して、決勝ではトップ勢とのバトルに持ち込みたい。そのためにも新車を上手く走らせるコツを掴みたいと語る。
課題は三者三様であるが、いずれも前向きな捉えでその克服に余念がない。準備不足で予選・決勝に挑むことは痛手ではあるものの、それぞれの活躍に期待がかかった。
■予選
空一面に広がった雲と、今にも雨が降り出しそうな湿度の中、8時25分から予選は開始される。
ピットには大宮の15号機、佐藤の610号機、RINAの35号機が順に並び、コースインの時を待っていた。
開始2分前、45台のVITA-01が一斉にファストレーンへ飛び出す。
ピットレーン出口のシグナルがグリーンに変わり、コース内はけたたましいエキゾーストノートに包まれた。
前日の練習走行最終枠同様に小雨がパラついたものの、路面コンディションに変化はない。この時期はタイヤに即熱が入るため、アウトラップの翌周回からアタックに入る車両がほとんど。トップは早々に1分59秒台をマークし、他数台の上位マシンがそれに続く。KOSHIDO RACING勢ではまず15号機の大宮が3周目に2分0秒14をマークし、6周目に2分0秒15、続く7周目に2分0秒118まで縮め、予選は4番手を獲得した。
35号機のRINAは久々のFCRとは思えない落ち着いた走り。コースイン直後から上位勢をマークし、しっかりとスリップストリームを狙える位置を焦らず待った。そのためセッション序盤はタイヤとマシンの温存に徹し、割り切ってアタックは一切かけない。そして上位集団がきたところで一気に攻勢に出る。2分1秒台から2分フラットをマークしたところでダブルスリップが狙えるタイミングを的確に狙い、本アタックへ。一周をまとめ上げ、2分0秒546で全体の9番手、KYOJOクラスの中では3番手につけることに成功した。
一方で不調に喘いだのが佐藤。新車のセッティングが詰め切れていなかったか、練習走行からタイムが伸び悩み、2分1秒を切ることも難しい状況。何とか2分1秒092まで短縮し、15番手のポジションにつけた。
■決勝
44台のVITA-01がホームストレート上に整列。フルグリッドでのスタンディングスタートとなった。
イン側4番手スタートの大宮。シグナルブラックアウトとともに抜群の蹴り出しでスタートを決め、前方3台との距離を一気に縮める。しかし、すぐ前を走行していたライバルが強烈にインを締め、行き場を失った大宮はやむなくスロットルをやや戻すことに。この間に二台に前に出られ、スタート直後からTGRコーナー立ち上がりまでに2ポジションダウンを余儀なくされた。
しかし勢い溢れる大宮の走りは即時ポジションを取り戻しにかかる。コカ・コーラコーナーでイン側から一台をパスし、5位へ。その後も2位争いの集団の後方から付け入る隙は見逃さないという勢いで食らいついていく。しかしここでクラッシュとスタック車両によりセーフティーカー(以降SCとする)導入となり、5周目まではバトルは休止。6周目からバトルは再開された。早速TGRコーナー進入で前に仕掛ける大宮。ターンインまでにイン側から横並びになったものの、前走車がアウトから切り込んできたことで15号機の左フロントと相手の右リアが接触。素早い修正舵でスピンは免れたが、これによりアライメントが著しく狂ってしまい、手負いの状態で残り5周を走り切らなければならなくなってしまう。その後はターンインがすんなりと決まらず、コーナーのクリップまでステアリングを常に微調整しながらなんとか2位争いに食らいついていくという状況。しかしストレートの伸びも弱くなり、厳しい戦いを強いられた大宮は徐々に前から離され、そのまま5位でチェッカーを受けた。
9番手スタートのRINAもまた最高のスタートを決め、TGRコーナーまでに一台を仕留める。その後のコーナー立ち上がりでも鋭く加速体勢に入り、7位へポジションアップ。さらに100Rではアウト側からもう一台をパスし、6番手で大宮のすぐ後方につけた。
スタート直後から序盤がめっぽう強いRINA。SC解除後も引き続き前を追いにかかるが、2位争いの集団のペースが速く、なかなかそこに割って入るまでにはいかない。そうしているうちに後方からの追い上げが勢いを増し、少々苦しい展開に。何とか後方を抑え込みながら走行を続けるが、そうなると必然的にペースは上げられず前方との差は徐々に大きくなっていく。それでもポジションを死守するべく序盤の勢いそのままに走り続けた。レースラップをそこまで落とさずフィニッシュまで持ちこたえたかったRINAであったが、一台のみ先行を許し、ポジションは7位へ。そのままゴールとなった。総合では7位でスタート時の順位からは2ポジションアップ。そしてKYOJOクラスでは見事2位表彰台を獲得。強い走りがこのリザルトを手繰り寄せた。
15番手スタートの佐藤もしっかりとスタートを決め、TGRコーナーまでに前方集団に切り込む。前後左右にライバルたちがひしめく中、空いているラインを素早く選択し、早々にポジションアップを図る。
しかしオープニングラップの300Rにて佐藤の前を行く一台のマシンが宙を舞うほどの大クラッシュが発生。その後も2周目のTGRコーナー進入にて目の前で前走車がスピンするなど、第3戦は序盤から荒れた展開をみせた。そのような中、他車の動きを見極めながら確実に回避していく。ほどなくして3周にわたるSC導入によりレースは動かず、残り周回半分のところからリスタートとなった。TGRコーナーでは幾度となくイン側に並びかけられるものの、アウト側で粘り前には行かせないという強い意志が感じられるドライビング。一見するとサバイバルレースで生き残ったようにも見えるが、その中にもしっかりとライバルたちとのバトルを制し、ポジションを10位まで押し上げてフィニッシュした。
今回のFCR-VITAはそれぞれに苦しい戦いとなったが、3台ともよいバトルを展開し、チームとしては善戦していた。最終戦は12月のMEC120。スプリントではないものの2時間全開で走ることになるため、スキルのみならず集中力と体力も問われる。それまでにドライバー・マシンそれぞれがどこまで調整できるか、次への戦いはすでに始まっている。