正式結果 予選:クラス3位 決勝:クラス優勝
予選~決勝
梅雨明けの爽やかな夏空が広がる中、スーパー耐久シリーズは第5戦を迎える。
今回はST-Zクラス以外の8クラスでの開催となっている。
■予選前練習走行
午後からの予選に備え、30分間のフリー走行枠が設けられている。また、ここではFCY(Full Course Yellow)訓練も実施される。
最初の搭乗は柴田。前日に引き続きブレーキの焼き入れとマシンチェックを担当。数ラップし、2分14秒台で周回。佐藤に代わる。佐藤はあくまでも予選前の状態確認に徹し、2分17秒台で走行し、トラブルなくピットに帰還した。
■予選Aドライバー
シミュレータ訓練から始まったオートポリス攻略を終え、満を持してコースインする佐藤。
アウトラップ翌周回に2分14秒414をマークし、その後のアタック継続はタイムが更新できそうな感触が得られず、ワンアタックにてピットに戻った。
オートポリスは元々タイヤに相当負担が掛かるコースといわれているが、それに加えて真夏の路温が容赦なく襲い掛かり、グリップ力のピークはごく限られた間しか発揮できない。ドライバーはその点を見極め、かつコースに送り出されるタイミングも重要であり、他のサーキットに比べても条件はシビアである。このセッションで佐藤はクラス3番手につけた。
■予選Bドライバー
タイヤのベストコンディションは一度のアタックでしか訪れない。それが結論付けられている状況で柴田はコースインのタイミングを慎重に見計らっていた。しかしながらライバルチームも考えは同じ。予選開始から半分の時間を過ぎても6台中5台がピットレーンから動き出そうとしない。残り7分を切ったところで柴田が動き出す。それにつられるように他4台も同時にピットアウト。見事なまでに互いの手の内を探り合っていることが見てとれる。アウトラップから5台は接近したまま周回し、そのままアタックラップへ突入。柴田は2分12秒781という驚異的なタイムを叩き出すが、他3台はさらにそれを上回るタイムをマークし、柴田は4番手タイムとなった。上位4台に2分12秒台がひしめく大接戦。Bドライバーの意地のぶつかり合いが他クラスにも見劣りしない熱い戦いを繰り広げた。
A・Bドライバーのタイムの合算で順位が決定されるオートポリス戦の予選はクラス3位のポジションを獲得。しっかりと上位が狙える位置につけた。
■Cドライバーフリー走行
予選ポジションには関わらないものの、全ドライバーラップタイムを記録しておかなければならないというシリーズ通じての規則により浅井がコースイン。マシンとタイヤの消耗を考え、浅井もまたワンアタックのみとした。タイムは建前上の記録として2分18秒867という結果を残し、このセッションを終了する。同クラスのライバルたちも同程度のタイムで、程なくして掲示されたレッドフラッグにより早々に走行を切り上げた。
■Dドライバーフリー走行
山本も浅井同様にタイム計測が必要であり、コースイン。山本はアタックラップを複数周とり、3ラップを計測に充てる。ファーストアタックで2分17秒530、次いで2分15秒863と大幅に短縮し、その翌周回も2分16秒081と安定したペースを刻む。決勝に向けて手応えを感じつつ、全員が予選セッションを終えた。
■ドライバーチェンジ訓練
目標タイムを25秒に設定し、タイヤ交換や給油作業も想定した動線での訓練を実施。前々日に実施した訓練時からさらにまたアップデートを重ね、各々が各持ち場においてより無駄のない動きや装備品配置を追求した。
レース運びにおいて重要な位置を占めるドライバーチェンジ。この訓練は目標が達せられるまで繰り返され、絶対にミスをしないという気概がピット内に漂っていた。
■ピットウォーク
オートポリス戦は予選前後(予選後はキッズウォーク)と決勝前の3回行われた。
両日どの時間帯も来場者は多く、西日本のモータースポーツに対する熱気が伝わる。鈴鹿や富士スピードウェイに引けを取らない盛り上がりで、ノベルティも想定より早くなくなってしまうという状況。遠い蝦夷の地から遠征してきたチームに関心を寄せてくれるレースファンは多く、たくさんの交流やスポンサー様のアピールの場となった。
■決勝
ピットウォークの時間帯から雲が怪しい動きをしていたが、スタート進行を前に小雨がパラつき始める。メカニックは路面状況の変化に備えてレインタイヤをグリッドに持ち込み、万全の対応をとりつつスタートの時を待つ。幸い路面を濡らすまでの雨足には至らず、スリックタイヤでのスタートとなった。
スタートドライバーは柴田が務める。周りのライバルチームも速いドライバーばかりで、ここからの5時間は過酷な戦いとなることは必至。11:00、ローリングスタートでレースは始まる。スタートはクリーンでポジション変更なく各車1コーナーに飛び込んでいく。ST-5Rクラスは6台のエントリーであるが、予選ではその上位4台のタイムがコンマ7秒以内にひしめき、レース開始直後からスプリントレースを彷彿とさせるようなテールトゥノーズ、サイドバイサイドの展開。
柴田はオープニングラップで早くも1台をパスし、1ポジションアップ。その後もトップの88号車をピタリとマークし、4周目に前へ。88号車はサクセスウエイトを55kg積んでおり、燃費のセーブか、はたまたタイヤ摩耗を抑えるためか、寧ろ若干ペースを落としたような格好である。ここでクラストップに立った柴田は後続の引き離しにかかり、2分15~17秒台でコンスタントに周回を重ねていった。33周回で2番手との差をなんと20秒以上確保。素晴らしい状態で佐藤にバトンを渡すべく、ピットへ帰還した。
セカンドドライバーの佐藤。ドライバーチェンジも迅速かつ確実にこなし、ロトスタ号とともにコースに戻っていく。
この時点で2番手は65号車。それぞれが初回のピット作業を終え、佐藤のピットアウト時には3秒程度まで差が縮まってしまっていた。しかしそこから佐藤は再び後続をじわじわと離していく。一周あたりコンマ5秒ずつ差を拡げ、65号車はピットへ。代わりにここで2番手に浮上してきたのはスタート後まもなくペースを落としていた88号車。これまでよりも明らかに速いタイムで周回し、ハイペースの追い上げをみせる。しかもここで追い打ちをかけるかのごとくロトスタ号に試練が襲いかかった。燃料系トラブルにより急にエンジンが吹けなくなってしまったのである。最高速で170数キロは出るはずが、160キロにも満たない状況。佐藤は苦しいドライビングを強いられることとなった。その間に一周あたり10秒近い速いタイムで後続に追い上げられ、これまで築いてきたマージンはほぼない状態となってしまう。
それでも佐藤は自分のスティントで最善を尽くすべく、持てる技術をフルに引き出しクラストップの位置をキープし続けた。そのような中、67周目に第3コーナーで他クラスのクラッシュによりFCYへ。そのままセーフティーカー(以降SC)導入となり、このタイミングで佐藤はピットへ。この時点で69周を消化。ドライバーはCドライバー浅井へとチェンジとなる。一度イグニッションをオフにし、祈りを込めて再びエンジンに火を入れたロトスタ号は元通りの状態に。一時は苦境に立たされたが息を吹き返し、浅井は2分17秒台で逃げる。バックマーカーもうまく利用し、88号車に背後まで詰められたその差を再び徐々に拡大していく。しかし88号車もST-5Rクラスシリーズトップの意地にかけて食らい付き、再びロトスタ号の背後へ。この展開を繰り返し、動きが出たのは90周目。第4コーナーのヘアピンアプローチでブレーキトラブルにより、浅井は成す術なくそのままグラベルへ。
何とか自力で脱出はしたものの大きくタイムロスし、88号車の先行を許した。一度でもミスを犯せば即先行を許す状況で浅井は懸命に走り、ここまでポジションをキープした。それも強豪の88号車相手にである。まったく走行経験のなかったオートポリスにおいて、覚醒したかのような浅井の走りはまさに鬼神の走りであった。
そして浅井は92周でピットイン。フィニッシュドライバーとなる山本にチェンジし、ピットアウト。この時点で65号車にも前に出られ、3位にポジションダウンしていた。しかしロードスター職人の山本は状況に左右されることなく2分15~16秒台というハイペースで淡々と周回し続け、確実に前との差を縮めていく。
そしてきたる100周目の1コーナー進入。メインストレートのスリップストリームから出て65号車を捉え、2位へ浮上。その後もペースを落とすことなく走り続け、後続との差をじりじりと拡げていく。前を行くのはトップ1台のみ。ししそれは常勝チームの88号車であり、ラップペースはもちろん作戦も完璧で付け入る隙がない。106周を終えたところで給油のためピットインするが、それでも差は22秒弱あった。ただ、山本はあくまでもペースを変えず猛追。88号車に対し、一周あたり1~1.5秒ずつ差を縮めていく。
一瞬たりとも追撃の手を緩めなかった山本であるが、燃料残量は限界に達していた。やむを得ず残り15分の段階で必要量を給油のためピットイン。ドライバーは山本のままコースに戻り、順位は2位のまま変わりはない。このまま表彰台は堅いか…そのような思いをチームの誰しもが抱いていたところ劇的な展開が訪れる。残り3分を切ったところで、総合トップの23号車とST-5Rクラストップの88号車がまさかの接触。23号車は自力でレースに復帰したものの、88号車は不運にもグラベルに足元をすくわれ身動きできない状況に。トラブルに見舞われながらも堅実に走り続けてきたロトスタ号がここでクラストップに立った。5時間の耐久で4時間57分経過時点で起こった衝撃の展開。レースは最後まで何が起こるかわからない。解説も観客もサーキット中がこのアクシデントに驚愕した。なによりドライブ中の山本自身が驚いていたはずであるが、残り2周回を冷静に走り切り、仲間たちが待つホームストレートへ。感動のチェッカーを受ける。
スタート後まもなくクラストップに躍り出て、圧倒的な速さで後続を引き離した柴田。突如のエンジントラブルに見舞われながらも経験とスキルの総動員でトップでマシンを帰還させた佐藤、オートポリス初走行ながらST-5Rクラス絶対王者の88号車の追撃をものともせず、強く粘りの走りで走り切った浅井、タイヤの消耗を抑えつつ最後まで勝利の可能性を信じてハイペースでトップを追い続けたロードスターマイスター山本。決して順風満帆ではなかったロトスタ号をここまで導いたエンジニアとメカニック、チームスタッフ全員を支え続けたスタッフ。そして全国各地からパワーを送っていただいたスポンサーやファンの方々。今回の勝利はKOSHIDO RACINGの総意で築き上げた強さが引き寄せたものと確信している。
次戦は少し間を空けての岡山国際サーキット戦。勝利の余韻に浸りつつも、KOSHIDO RACINGは既に次戦に向けて動き出している。シリーズタイトル獲得に向けて淀みなく前へと進み続ける。