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2024.11.12 北海道クラブマンカップレース 2024 Rd.2 TOKACHI 3時間耐久レース

HOKKAIDO Clubman Cup Race TOKACHI 3時間耐久レース

 

■開催日時:2024年6月30日(日)

■ドライバー:佐藤元春/大宮賢人、上野大哲/浅井康児、石崎竜一朗/市川篤、

工藤大祐/木下祐希

■マシン:VITA-01 11号機、12号機、310号機、910号機

■参戦クラス:1C

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績

佐藤元春/大宮賢人 予選:5/12位 決勝:3/12位

上野大哲/浅井康児 予選:1/12位 決勝:2/12位

石崎竜一朗/市川篤 予選:7/12位 決勝:4/12位

工藤大祐/木下祐希 予選:4/12位 決勝:5/12位

KOSHIDO RACINGは今年もVITA-01耐久レースに参戦するため、十勝スピードウェイを訪れた。6月という事を忘れさせるほどの暑さの中3時間の耐久レースに挑むという事で、スプリントレースとは違った集中力と駆け引きが必要とされる。

今回のエントリー体制、11号車は富士S‐FJ石崎と恒志堂社員兼ドライバーの市川がタッグを組んで出場。

12号車はチームオーナー兼ドライバーの佐藤と今年度からスーパーGTへ参戦しているPONOS RACINGより現役F4ドライバーの大宮がスポット参戦しタッグを組んで出場。

310号車はRd.1で圧倒的な速さを見せた上野と昨年310号車にてシリーズ参戦していた浅井がタッグを組んで出場。

910号車は昨年に引き続きシリーズ参戦中の工藤と毎年耐久レースに道外から参戦している木下がタッグを組んで出場。

以上4台8名体制となる。

 

 

 

<練習走行>

6月28日。6月の北海道とは思えない暑さ、8月かと思わせる日差しと気温。人も車も間違いなく消耗するこのコンディションの中でどのような走りを見せてくれるのか、ドライバーはマシンに乗り込む。

初日の走行枠は5本。十勝スピードウェイ、VITAとどちらも初めてである大宮はマルボロカラーの旧12号機をドライブし走行枠全てを走行できる体制、十勝に慣れるところからスタート。現役F4ドライバーという事もあり、チームメイトからも期待が高まる。

佐藤、上野、浅井、はさすがの走りであった。この気温でありながら、30秒台から31秒台に入っておりラップタイムも安定している。上野は30秒台に入り前回レース優勝者の強さ速さをしっかりと見せつけ、チームメイト・ライバルにプレッシャーをかける。佐藤・浅井は31秒台を連続でマークし続け、長年十勝で走っているこの2人ならではの安定した速さと強さという耐久において必要不可欠な要素を見せつけた。今回十勝スピードウェイもVITAもはじめての大宮、一本目はブレーキとコーナリングにおいて限界を探っている様子だ。ステアリングを切り増ししマシンとタイヤの性能についても探りを入れている。さすが現役F4ドライバー、二本目走行枠から31秒台に連続で入るという驚異の適応力。チームメイトの上野が30秒台に入っており、31秒切りを目指して攻めるが最終枠でコースオフしてしまいそのままこの日の練習を終えた。一方市川は安定して周回はしているもののもうひと段階詰めた際に出るコーナー進入時のオーバーステアに苦戦していた。一本目の走行枠では32秒前半で周回していたが、その後ペースが上がらず33秒台での周回をしており翌日の練習走行も気が抜けない。工藤は今回耐久レースという事で、スプリントレースとは違ったセットで車を持ち込んだ。一発の速さより安定してそれなりに速く走れる耐久仕様のセッティングを二日間の練習走行で煮詰めいていく方針。1本目なかなかタイムが安定せずピットインの回数も多くみられたが調整の末31秒台をマークすることに成功。しかしながら安定といった意味ではまだ成熟しておらず初日の練習を終えた。道外から参加の木下、毎年耐久に参加しておりコースはしっかりインプットされている様子。1年ぶりの十勝のためリハビリからスタートかと思われたが、献身的な走りで32秒台を連続でマークし安定した走りを見せた。

十勝二日目となる6月29日の行程は午前2本午後2本設定されている。本日はドライバーチェンジや給油等ピット作業の練習も可能なため、明日の本戦に向けた本格的な練習が想定される。本日から石崎が遅れて十勝スピードウェイ入りし練習に参加した、VITAでのレース参戦は2年ぶりだがS-FJに乗っていた実績もあり期待が高まる。前日驚異の適応力を見せた大宮は30秒台を目指しアタックを続けていた、1本目の走行枠終盤で30秒台に入りこの日のチーム最速タイムをマークすることに成功。さすがの一言、大宮の早すぎる成長にチームメイトも鼓舞され前日のピットの雰囲気はとても良いものであった。前日31秒台で安定していた佐藤だが、練習後のインタビューで本人も語っていたようにスランプに陥っていた。32秒台から35秒台と安定せず明日へ不安を残すかと思われたが、最終枠で31秒台をマークし練習を終えた。同じく前日絶好調の310号車上野、1本目で31秒前半をしっかりマークしこのまま明日の予選へと思ったが迷走状態に突入してしまう。32秒台から33秒台を迷走しこの日の練習を終えたが、練習後には初心に帰り予選では本領発揮をすると自信あるコメントをくれた。相方の浅井は、一本のみの走行となったがしっかり31秒台をマークし相方上野との情報共有や作戦を練る1日となった。11号車をドライブする石崎は2年ぶりという事もあり、リハビリがメインの練習走行とはなったが走行はミスが少なくコンスタントに32秒台をマークしているため入賞に期待を抱き練習を終えた。相方市川は、十勝入りしたばかりの石崎がメインで走っていたため走行は一本のみとなった。前日抱えていた課題を石崎と共有し解消すべく走行に挑んだが、解消には至らなかった。セッティングを変更し乗りやすくはなったもののタイムアップとはならず、課題を残したまま練習を終えた。910号車の工藤と木下、こちらのペアはドライバー交代多めかつピットインの回数もかなり他車に比べると多い。セッティングを煮詰めることに注力し走って調整の繰り返し、工藤はシリーズ参戦している愛機のため体に馴染んでいるが木下は車に慣れることに時間を費やし練習を終えた。

<予選>

予選はAドライバー、Bドライバーと順に行われる。第一戦同様十勝も新品タイヤスタート、新品のAドラとその直後中古のBドラこのタイヤの変化がどのようにしてタイムに影響を与えるのか。VITAとヴィッツが混走となるためヴィッツをどのようにつかうかもまた勝負のカギを握る、各チームの戦略が楽しみである。

Aドライバー予選

12号車佐藤は序盤ヴィッツにひっかがるラップが多く、なかなかアタックが決まらない状態であった。前を走っていた上野との距離も空いてしまい単独アタック、32秒825をマークし2番手につける。その後ライバル上野と6号車平中克幸選手が佐藤を上回り3番手となる。果敢なアタックを続け11周目で32秒550をマークしたが4脱のためタイム抹消、セカンドベストである32秒704が起用され3番手で予選を終えた。

310号車上野は昨日の練習走行での反省点を生かし予選に挑む。1周目はしっかりタイヤを温め2周目からアタック開始、アタック最初の周から31秒8をマークすることに成功。その後も調子を落とすことなくアタックを続け7周目に31秒452をマーク、このタイムが予選の全体ベストタイムとなった。

11号車石崎は8周目まで33秒台で周回しておりタイミングを狙っている。前を走るチームメイトの工藤のスリップを使い32秒550をマークすることに成功、しかしこのラップ4脱判定となってしまいベストタイムが抹消。セカンドベストが起用され7番手で予選を終えた。

910号車工藤は1周目入念にタイヤを温めアタック開始。3周目に33秒41をマークするがなかなかタイムが伸びない、7周で一度ピットインしタイヤ空気圧を調整。この空気圧調整が功を奏し、ピットアウト後最初の計測ラップにおいて32秒898をマークすることに成功。5番手で予選を終えた。

Bドライバー予選

12号車大宮は前日の好感触を予選にぶつける。序盤ヴィッツや86に捕まる場面が多くみられたが、後半は最終コーナー手前から準備を整えアタック開始。やはりAドライバーの走行後という事もあってか全体のペースが少し遅いようだ、そんな中タイムを出すべく果敢にアタックを続け9周目に32秒470をマーク。しかし予選アタック中の走路外走行が目立ち2グリッド降格のペナルティとなってしまった。

310号車浅井も大宮と似た展開であった。序盤は混走に苦しみ中盤からアタック開始、少ないクリアラップの中10周目に32秒470をマークし3番手で予選を終えた。

11号車市川は練習走行同様にマシンの動きに苦戦していた。持ち前のテクニックで何とか車の動きを修正しようとするがなかなか1周にまとめることができない。アタックラップ最終周にベストラップを更新、4脱のない綺麗な走りをし7番手で予選を終えた。

910号車木下は車に完全に馴染めていない状態での予選となった。予選終盤まではライバル車にも複数回パスされなかなかペースが上がらない様子、スリップをもらうことも叶わなく33秒33がベストタイム。時間ギリギリのところでピットイン、空気圧を調整しアドバイザーの山本からアドバイスを受ける。ピットアウト後、時間的にも最後の計測ラップと思われたその周に32秒945をマークし4番手で予選を終えた。

予選タイム

11号車:1分32秒989(決勝7番グリッド)

12号車:1分32秒470(決勝5番グリッド)※ペナルティにより2グリッド降格のため

310号車:1分31秒452(決勝1番グリッド)

910号車:1分32秒898(決勝4番グリッド)

<決勝>

気温は30度。6月とは思えない真夏日のような暑さの中、スタートを担当するドライバー達がマシンに身を収める。

 

 

 

今回は3時間耐久ということで、いつものスプリントレースとは違いローリングスタートとなっている。

先頭上野が隊列を率いたまま最終コーナーを抜けホームストレートへ、シグナルレッドからブルーに変わりレーススタート。

310号車上野はポールポジションスタート、後ろには6号車現役GTドライバーの平中克幸選手が常に迫る。予選一発の速さでは上野が勝っていたが、レースの組み立てやバックマーカーの使い方という面で平中選手は長年培っており一度前を許すと抜き返すことは容易ではない。平中選手のプレッシャーに耐えながら近い距離で奮闘していたが、4周目1コーナー手前で前を許してしまう。5周目から別クラスのバックマーカーに追いつきここからが耐久というところ、その後もバックマーカーが絡み多少のバラつきはあったがしっかり平中選手の背中につきプレッシャーを与えた。

30周を超えたところで前を走る平中選手がピットイン、上野はピットアウトしてくる平中選手よりも前に出るためペースを上げる。34周目の1コーナー進入でピットアウトした平中と並ぶが、ここでは車速の乗っていた上野に軍配が上がる。このままペースを維持し後ろとの差を広げたいところだったが38周目に燃欠症状が出てしまいピットイン、浅井とドライバーチェンジをする。

浅井は同一周回のライバルと絡むことはなかったが、うまくバックマーカーをさばき33秒前半での周回を1スティント走り切った。速く走らなければいけないが頭の片隅に燃費走行という言葉の浮かぶ中、とても良いペースで周回し上野にバトンパス。

上野はピットアウト後耐久レースということもありマシン、ドライバーともに疲弊しているはずだがそんなことは感じさせない走りを魅せる。他車より1秒近く速いタイムで周回を積み重ね確実に後ろとの差を広げている、このまま単独トップかと思われた矢先不幸に見舞われてしまう。前を走る88号車に2コーナーで迫った際前の車が姿勢を崩してスピン、何とかかわそうとステアリングを切るがコーナー旋回中の修正はさすがに厳しく上野もスピンをしてしまう。このスピンにより20秒ほどタイムロスをしてしまうが上野のペースが落ちることはなかった、32秒台で周回し開いた差を確実に埋める走り。

ここで3回目のピットイン、上野浅井ペアはドライバーチェンジせずこのまま好タイムの上野がステアリングを握ることを選択。この選択は実質上野がチェッカーまで走るという事を意味している。3時間の耐久レースも残り20分弱にして1位と2位が僅差、上野の力強い走りと勝利を信じピットクルー、チームメイトの気持ちもこみ上げつつあるが決して気の抜けないスプリントレース以上の走りが必要であった。310号車は上野の好ラップタイムを見て3分という短いピットストップの中でリアタイヤの交換を決意、ピットクルーの正確かつ迅速な作業のおかげで20秒ほどを残し作業が完了。気持ちを背負い上野はピットアウト、1コーナーへ加速し始めると左後ろから白いマシンが迫る。6号車平中選手だ、上野は1コーナー前でパスされ前を走る現役GTドライバーを追いかける展開となった。途中チームメイトの市川が間に入るシーンもあったが、迅速な判断で上野を前に行かせエールを送る。上野は32秒フラットで周回し続け前を走る平中選手とは周回を重ねるごとに距離が縮まっていた、ここからの勝負は正直興奮が止まらない。バックマーカーを使った熾烈なバトルが繰り広げられたが、のころ6分のところで上野が平中選手を射程圏内に入る距離まで猛追することに成功。このままの距離を保持しホームストレートでオーバーテイクかと思われたが、途中平中選手が7コーナー手前にて86を使ったうまい駆け引きに成功し上野は86と衝突寸前の一大事。ここでまた前との差が開いてしまうが上野のラップタイムの速さは本物だ、諦めず果敢に前との距離を詰め最終週1コーナーブレーキングでまたしてもトップを射程圏内へ。とても近い距離のまま最終コーナーを立ち上がる、310号車の鼻先が6号車にかすめるほどの距離まで追い詰めたが悔しくも0.144秒差の2番手でチェッカーを受けた。上野はチェッカーと同時に気持ちがこみ上げ男泣き。プロを相手にとても力強い走りを魅せてくれた。

12号車佐藤は相方大宮の予選時複数回走路外走行により2グリッドダウンの5番手スタートとなった。順調にスタートを決め4番手スタートチームメイトである910号車工藤の後ろをかなり近い状態で走行。10号車、910号車、12号車この3台が固まった状態が続いている。4周目1コーナーでスリップを使い車速の伸びた佐藤は910号車工藤をパス、前を走る10号車に差し迫りプレッシャーをかけ続けている。佐藤は昨年シリーズチャンピオンを飾っており、その強さと経験を含めた意地の走りで先頭2台に追いつくつもりだ。6周目には目を走る10号車を射程圏内に入れオーバーテイクのチャンスを伺うが中里選手の粘り強い走りになかなか前へ出られない、11周目のホームストレートでようやく綺麗な状態でスリップをもらうことに成功。1コーナーブレーキングで10号車をパスし3番手に浮上、ここで先頭集団との差は15秒であった。先頭2台が32秒台前半でラップを刻む中佐藤のタイムは平均33秒前半、5周後には20秒の差が開き1ラップごとに約1秒離れている計算となる。少しでも前に追いつこうとバックマーカーのスリップを積極的に使いペースアップを試みるが差は縮まらなかった、しかし予選で下がった2グリッド分を取り返しピットイン、しっかりと仕事を果たし大宮へとドライバーチェンジをした。

大宮にドライバーが変わりコースイン、大宮は予選時の自分のミスで2グリッド降格させてしまったこともあり気合十分。練習2日間で驚異の適応力を魅せレースでの活躍にも期待が高まる。序盤なかなかタイムが上がらない様子の大宮は33秒前半での周回が続く、バックマーカーのいなし方も慣れてきた15周目32秒87をマーク。その後もタイム差はあるがノーペナルティでしっかり走り切りスティント終了際にベストラップを更新、ここでスティント終了の時間が来てしまいピットイン。

佐藤が自身最終スティントのステアリングを握りコースイン、ピットからはペースアップの指示があった。先頭集団との距離を縮めるべく果敢に走るが、前日からスランプ気味なのもあってかなかなかペースが上がらない。リアタイヤの状態が厳しい中ノーペナルティで綺麗に走り切り佐藤のスティントは終了した。

12号車も310号車同様に最終ピットストップにてリアタイヤを交換、ピットクルーの完璧な作業で時間内全工程を済ませ大宮が最終スティントを走る。タイヤを交換したこともあり大宮のペースが特段に上がった、32秒前半でラップを重ね3位という現在の順位を死守したいという気持ちのあふれる走り。レース終盤では32秒フラットと全体ベストラップもマークした、31秒に差し迫る渾身の走りで先頭集団との間にあった60秒ほどの差も45秒まで縮め先頭には届かなかったが3番手でチェッカーを受けた。

11号車スターティングドライバーは予選順位を決定させた石崎が担当。しかし、その予選ベストラップで唯一の4輪脱輪を犯してしまったことからセカンドタイム採択となり7番手スタートに。実質2グリッドを下げる形となった。これに対し悔しさと自身への責任を滲ませ、スタートから攻めていくと堅い意志をみせる。

グリーンシグナル点灯とともに絶妙なタイミングでスタートを切った石崎はすぐ前を行く129号機を1コーナーのブレーキングで捉え、ターンインで前へ。早速1ポジションアップの6位へ。その後も追撃の手を緩めることなく先行する12号機、910号機を追う。若干リアタイヤのキャパシティが勝っているような動きで全体的にアンダーステア傾向が出ている11号機を上手くコントロールし、4周目のホームストレートできれいに910号機のスリップストリームに入った石崎は1コーナーの飛び込みまでに無理なく前へ。ここは工藤も一歩引いた形で先行させた様子が窺える。

そこからさらに周回を重ねるとクラス違いの車両が絡み始めた。北海道クラブマンカップの3時間耐久は戦略上ここがポイントであり、如何にペースを保ったままバックマーカーをパスできるかというところが大きく結果に影響する。すぐ前では10号機と12号機がバトルを展開しており、ペースが上がらない状況の中、インフィールドで一気にその差を縮める。しかしストレートに出ると前方2台のVITAにエンジンの伸びで負ける11号機。スリップストリームにつきながらも離されていく。セクター2で追いつき、セクター1・3で離されるという展開が数周続き、12号機が10号機とのバトルの末に前へ。この直後から10号機との一騎打ちが始まる。耐久レースとはいえ、スプリントさながらの攻防。そこにバックマーカーも交え一瞬たりとも気が抜けない状況。2コーナー進入から3コーナーにかけてバックマーカーに詰まった2台はセオリー通りに4速で抜けようとするが、石崎はここで3速を選択し鋭く2コーナーを立ち上がる。一瞬の判断で順位が入れ替わり石崎は4位へ浮上。2018年に北海道クラブマンカップVITA-01にシリーズ参戦していたこともあり、十勝スピードウェイへの順応性が高い石崎はここで地元ならではの走りをみせる。

その後は隊列も少しずつ分かれ始め、一定の距離をおいて12号機を追う展開。深溝の状態ではトレッドが動いて動きに影響するタイヤの状態も徐々にコントローラブル方向にシフトし、ラップタイムは常に安定している。30周回を迎えたところでルーティンのピットインを迎えた。

セカンドスティントは市川。練習走行ではマシンの動きが掴み切れず苦労していたものの、予選からようやく順応し始めたこともあり、交代直後から安定したペースで周回を重ねていく。昨年の参戦時に走路外追い越しでペナルティ裁定を受けていた市川の今回の方針はとにかくノーペナルティ・ノートラブル。バックマーカーを無理なく慎重にパスし、自身もミスをしないように着実に走り続けた。まさに耐久レースの戦い方ができていたといえる。前後に同クラスのマシンもおらず、バトルもなくひたすら単走状態が続く。結果ノーミスで予定周回数である30周に達し、実質4位をキープしたまま予定通りピットインとなった。

リアタイヤがこのままもつのか危ぶまれるところであり、リア2本は交換となる。給油・タイヤ交換ともに迅速かつ確実に完了させたピットクルーに敬意を表しつつ、サードスティント担当の石崎が飛び出していく。

リアタイヤのみ交換したことで再びマシンの動きが変わった11号機を何事もなかったように走らせる。ファーストスティントのような目まぐるしいバトルはないものの、バックマーカーの処理は適切そのもの。一度最終コーナーでインを締めてきたVitzと危うく接触か!?という場面もあったが、全体を通して動きに無駄がなく、後先をしっかり見据えたうえでペースを作り出していく石崎の走りは目を見張るものがある。ここはやはり富士スピードウェイでFJチャンピオンを獲った実力の持ち主。数年のレースブランクを感じさせない攻めの姿勢と冷静な判断で着実にレース展開をものにしていく姿はさすがの一言である。

こちらも予定通りの周回をこなし、4位のままピットへ帰還。フォーススティントからチェッカードライバーとなる市川へバトンを託す。

タイヤの状態も良好で給油作業もミスなく終え、最終スティントに向かってピットアウト。セカンドスティント同様に自車前後のライバル車両は不在。前方は30秒の差で3位の12号機、後方にもチームメイトである5位の910号機という状況。ここでも作戦はあくまで問題なく走り続けること。無論ポジションを落とすことは許されず、4位以上を目指して周回を重ねていく。やがて若干日が傾き気温が落ち着いてくる中、ラップタイムは1分33~34秒台となり後方との差は一定以上をキープ。レースペース自体は全スティントの中で最も良い時間である。当初の作戦通り一切問題を生じさせることなく3時間を走破し、無事にフィニッシュラインを超えた。表彰台には一歩届かなかったが、この境遇の中での4位は11号機にとってベストリザルトといえるのではないだろうか。

910号機のスターティングドライバーはマシンオーナーの工藤が務める。

予選では12号機が2グリッド降格のペナルティ裁定により4番グリッドスタートとなった。スタートタイミングはしっかりと決め、ポジションをキープしたまま1コーナーへ。前方には6号機と10号機が競りつつ立ち上がっていく中、オープニングラップから虎視眈々とポジションアップを狙う。相方である木下との体重差が想定以上で、思いのほかバラストを積むことになった工藤は動きの変わった910号機に苦戦しながらもビジターとなる10号機の隙を突くべく積極的に仕掛けていく。しかし後方から迫る12号機にも牽制しつつの走行となっていたことでベストラインをトレースすることができず、インフィールドでは差が詰まるもののストレートでは離れるといった状況。3周目の1コーナー進入では一歩引く形で12号機にポジションを譲り、4周目には11号機にも同ポイントでポジションを譲り、6番手からの追い上げという展開となった。5周目からバックマーカーが絡み始めると、10号機を先頭に先行を許した12号機、11号機との距離が一気に縮まり、4台でのバトルへ突入。この景色を見ている限り、スプリントレースとなんら変わりはない。数周にわたって続いたこのバトルは1台ずつ10号機の前に出る結果となり、オープニングラップ同様に10号機対910号機の構図が浮上。クラス違いの86やVitzを交わす際、所々で3速を用い、鋭く立ち上がっては揺さぶりをかけるが、前を行く10号機のドライバーは西の強豪中里選手。そう容易くは前に出させてはくれない。10周以上にも及ぶバトルが続く中、徐々に10号機が離れていく。途中で同クラス周回遅れの88号車にも引っ掛かり、その間に10号車との差はますます開いてしまった。20周回あたりからは完全に単走状態となり、淡々と周回を重ねる。32周回あたりからガス欠症状が出始め、強制的に燃費走行を強いられる。しかもピットインのタイミングを計るためにその後2周回にわたって4~5秒落ちのペースで走行しなければならず、結構なロスとなった。

木下にドライバーチェンジした後は再び息を吹き返したようなペースでラップ。ほどなくしてピット作業中に前に出られた129号機とのバトルになるが、メインストレートで難なくパスし、その後も1分33秒台後半~34秒台前半のペースで走り続けた。この十勝3時間耐久が今回で3度目の参戦となる木下。その走りは地元ドライバーの如く安定した走りで不安要素も微塵も感じさせない。木下のスティントで12周を回る頃、先ほどとは逆にピットアウトしてきた129号機が再び前方に現れ、バトルへ。しかし展開は同様で難なく前へ。その後は後方からトップの6号機が迫り、パスさせたもののしばらくすぐ後ろを追う展開。この時の6号機は村上選手。北海道クラブマンカップVITA-01トップ勢ドライバーであるにもかかわらず数周にわたって追いすがる。その上で木下は燃費走行にも余念がない。バックマーカーが前方に現れ、将来的に明らかにラインが交錯する周回は一段高いギアを使って燃料消費を抑える。またKOSHIDO RACINGの他チームとは異なり、タイヤは無交換作戦を決行。労りのドライビングで3時間をそのまま走破することを念頭に、チーム910司令塔のRDS山本代表と密にやりとりを交わしながらゴールに向かって総合的な戦略を組み立てていく。そしてセカンドスティントは29周を回り、木下はピットへ。

サードスティントは再び工藤に戻り、問題なくピット作業を終えてコースへ。少々気張り過ぎていたのかコース復帰直後にシフトミスする場面も見られたが、その後はミスなく1分33秒半ば~34台という良好なペースで周回し続け、ポジション5位をキープ。わずか16周回でピットに帰還し、フィニッシュまでの残り時間のすべてを木下に託す。前を走るのは同じKOSHIDO RACINGの11号機。周回数は同じで、ワンチャンスものにできれば届く範囲内ということもあり、木下は全開ドライビングで追う。ペース的には1分33秒半ば~34台を安定して刻み続けるものの11号機もまったくと言っていいほど同様のペースで走行しており、その差はなかなか縮まらない。それでも諦める

ことなく攻め続けた。途中バックマーカーのVITAに進路を塞がれ、穏やかな木下としては珍しく怒りをあらわにすることも。しかしそれだけポジションアップへの意気込みが強いということの証明でもある。最後の最後まで手を抜くことなく前を追い続けたが、その差は埋まらず5位でチェッカーを受けた。2名のドライバーが精一杯の力を出し切って挑んだ3時間。木下がビジターバトルであることを考慮すると5位入賞は十分に輝かしい戦績である。来期以降も是非再チャレンジして結果を残してくれることを期待してやまない。

今回のKOSHIDO RACINGは今までとは違った雰囲気であった。今まではチームオーナー兼ドライバーの佐藤を筆頭にチームメイト同士仲間としてライバルとして鼓舞し合ってきたが、今回佐藤はもちろんほかのドライバーの成長が著しくみられた。特にSHADE RACINGよりスーパーGTに参戦している平中克幸選手を今回3時間の末0.144秒差まで迫った上野。初日から圧倒的な適応力をみせ底知れないドライバーとしての可能性を感じさせたPONOS RACINGより現役F4ドライバーの大宮。このようなドライバーの成長でKOSHIDO RACINGはチーム内で全員が刺激を与え刺激をもらえるという環境が生まれこの先チームとして間違いなく革命的な進化を遂げることだろう。

 

2024.11.12 北海道クラブマンカップレース 2024 Rd.1 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレース Rd.1 VITA-01

開催日時:2024 年 5 月 19 日(日)

開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

ドライバー:市川 篤(#11)、佐藤 元春(#12)、上野 大哲(#310)、工藤 大祐(#910)

マシン:恒志堂レーシング VITA 11 号機、12 号機、310 号機、910 号機

参戦クラス:VITA-01 クラス

天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績

市川 篤 予選:6/7 位 決勝:7/7 位

佐藤 元春 予選:3/7 位 決勝:3/7

上野 大哲 予選:1/7 位 決勝:1/7 位

工藤 大祐 予選:4/7 位 決勝:4/7 位

寒暖差の激しい5月の十勝スピードウェイ。花粉が飛び交う中更別村にて北海道クラブマンカップ第1戦が開催された。昨年に比べ総エントリー数7台と少ないが、うち4台はKoshido Racing車両のため表彰台独占を目指し熱い戦いが繰り広げられた。

今回Koshido Racingからは、佐藤、市川、工藤、上野による4台体制での参戦となる。

昨年惜しくもシリーズチャンピオンを逃した上野、チャンピオンである佐藤とはチームメイトでありライバルでもあるがこの2人の戦いに注目だ。チーム内のレベルが高まり、今シーズンはどのようなドラマが繰り広げられるのか期待が高まる。

<練習走行>

今シーズンより使用タイヤについて新たにレギュレーションが追加された。昨シーズンまで北海道クラブマンカップでは新品中古問わずタイヤを選定することができたが、今シーズンより予選新品スタートへ変更となりFCR-VITAと同様になった。

これにより車両は新品タイヤに合わせた新たなセッティングが必要不可欠となり、決勝までにどれだけの完成度へ運べるかが勝負のカギを握る。

5月17日の1本目は雨が降っており全車走行を見送る。2本目の走行枠には路面も渇きはじめ各車感覚を取り戻すべく練習走行スタート。各ドライバー初日という事もあり、本気のアタックというよりは人とマシンのシンクロ率上昇に時間を費やすスタートとなるかと思われたがさすがの走り。上野は1分30秒台を連発しかなりの好感触。昨シーズンから十勝でのVITAに参戦しているが常に上位に君臨しシリーズチャンピオンまで僅かという位置まで登り詰めた実力の持ち主。今年こそはシリーズチャンピオンと本人も意気込んでいる。佐藤、市川はなかなかリズムが合わず苦戦している模様。とはいえ長年十勝スピードウェイ走っている2人は3本目の走行枠にて両者とも31秒台をマークし調子を取り戻しつつあるが、リズムが合わず車と人間のシンクロ率が上がり切らないまま一日目が終了。一方工藤はセッティングの大改造中であった。今年から変わったニュータイヤ基準のセッティングを出すべく、時間をかけ緻密なセッティングを一日かけて行った。

5月18日、5月とは思えない暑さの中各車前日の公式練習に挑む。

昨シーズンシリーズチャンピオンに輝いた佐藤は時間帯気温と決勝日にかなり似ているため1本目の練習を予選、2本目の練習を決勝といった実戦形式でのプランで走行。前半31秒台を連続でマークしここからかと思われたが熱の入った新品タイヤに苦戦している模様。その後も果敢にアタックするがなかなかアジャストする事が出来ず模擬予選が終了。2本目の走行枠にて模擬決勝スタート、決勝さながらの気合の入った走りを見せるも前日に続きコーナー進入がなかなか安定しない様子。レース同様12周走り切るが車のセットが合わず不安の残る走行となった。その後メカニックと細かい打合せや車のセット修正を行い最終枠を迎えた。各調整、佐藤の修正力がともない31秒台を連発、各コーナーの進入時オーバー傾向にあったがそれも収まり舵角修正のすくないとても綺麗な佐藤本来の走りが戻り、明日の本番に向け良い状態で練習を終える。

前日とても好感触に終わった上野は変わらず絶好調の様子。前日同様30秒台を連発し1本目3本目のみと車の感触を確かめつつも、現在の良い状態を当日にもっていくべく少ない練習時間で前日を終える。走行していない枠は各ドライバーと情報共有やアドバイスをするなどチームに貢献する姿も見せた。

市川は今大会から初めて乗るマシンという事もあり探り探りで乗っている様子。とはいえ2日目も1本目から31秒台をマークするなど相性は悪くないようだ。練習途中アクセルペダルの故障があり走行を中断、メカニックの迅速な修理により走行再開するがなかなかまとまらない。最終枠にてセクター1・2で当日ベストを出すものの、全セクターなかなかつながらず32秒台にてこの日の練習が終了。練習後の重量測定にて、前年乗っていたドライバーが25㎏ほどバラストを積んでいたためとても重たい状態で走っていたことが発覚、この結果が当日吉と出るのか凶とでるのか。

工藤は前日に引き続きセッティングを中心に走行している様子。セットが収まらない中緻密なセッティングの末迎えた最終枠、31秒台を連発し当日の自己ベストを更新。長時間に及ぶセッティングが終わりセット出しが完了、翌日の本番に向け気合が入る。

<練習走行結果>

佐藤 元春:1分31秒139(5/17)

市川 篤 :1分31秒837(5/17)

工藤 大祐:1分31秒376(5/18)

上野 大哲:1分30秒086(5/18)

<公式予選>

天気は晴れ、路面はドライ。5月とは思えないかなりの暑さの中予選を迎える。

北海道クラブマンカップ第1戦目、各ドライバー気合を入れマシンに身を収める。

予選開始二分前の表示とともに各マシン一斉にピットから飛び出す。

先頭でコースに入ったのは練習から絶好調の上野。前日まで中古タイヤで走っていたが本番は新品スタート、アウトラップ含め2周でタイヤを丁寧に温める。3周目からアタック開始、計測2周目で30秒台をマークするもその後なかなか更新できない。やはり新品の特性を完全にはつかみ切れていないのか予選の中で探っている様子。そんな中一つのミスからニュータイヤの可能性に気付き予選最終ラップでベストを更新、ポールポジションでチェッカーをうけた。

2番目にコースインしたのは昨シーズンシリーズチャンピオンを獲得した佐藤。上野同様に2周目までタイヤを入念に温め、3周目からアタックスタート。初日から悩まされている進入時のオーバーステアを修正しながら順調にタイムを上げアタック開始3周目で予選ベストラップをマーク。その後も果敢にアタックを続けるが、オーバーステアが強くなり32秒前後となったため一度ピットイン。内圧の確認を行い再度コースインするもアタックしきれず3番手でチェッカー、セッティングが決まり切っていないのがここにきて響く展開となった。

3番目のコースインは工藤。前日最終枠にてセットが決まり乗り手が完全に仕上がっていない状況ではあるが、予選の中でのタイムアップに期待が高まる。他選手同様にタイヤを温め3周目からアタック開始、車の姿勢も安定しており順調に攻めていく。アタック2周目で予選ベストラップをマーク、その後も新しいセットに体をなじませながらアタックを続けるが4番手でチェッカー。

市川は4番目でのコースイン、他選手同様に2周目まででタイヤの熱入れを行いアタックの態勢を整え3周目からアタックスタート。市川はアタック最初の周で予選ベストラップをマーク、その後も果敢にアタックを続けるが初めてのニュータイヤスタートにかなり苦戦している模様。グリップ力はあるが前に転がらないというこの特性をよい方向へ調整しようとするも、6番手でチェッカーを受けた。

<決勝>

気温25.8℃と昨年8月に行われたクラブマンカップより暑い異例の気温。ニュータイヤに変更され、異例の高気温と難しいコンディションの中各選手自らのグリッドにマシンを収める。

 

 

 

7台すべてのマシンがフォーメーションラップを終えグリッドに着く。シグナル点灯、消灯と同時に各車スタート1コーナーへと飛び込む。

ポールポジションスタートの上野はイマイチのスタート、2番手スタートの#77村上選手が良いスタートを切り上野と並んだ状態となるがコーナーでのマシンのポテンシャルをとても高く感じていた上野は並んだ状態で1コーナーを抜ける。ここから先頭集団での攻防が繰り広げられるのかと思われたが、絶好調の上野はレース序盤から各コーナーで後ろを走る村上選手・佐藤に差をつけ早くも完全独走状態へと突入。レース中でありながらとてもリラックスしており、レースラップ30秒後半から31秒前半ととても良いペースで走り続けた。他を寄せ付けない圧倒的な走りで優勝。

一方3番手スタートの佐藤、昨年のレースの中で1番手に浮上するという勝負強さが印象的だったため期待が高まる。スタート後2番手を走行する村上選手とかなり近い状態が続いたが、2周目最終コーナーで少し挙動を乱し村上選手との差が開いてしまう。先頭から上野・村上・佐藤の3選手は等間隔があいたまま3台とも単独走行が続いている状況だ。前方を走る車両に少しでも近づき、ホームストレートでのスリップを上手く使い追いつきたいところ。セッティングが完璧でないマシンを持ち前のテクニックと経験で操るもペースが上がらず追いかけきれない、果敢に攻めるも3番手でチェッカーを受けた。レース後、佐藤は悔しさの中にも可能性を大きく感じている様子、今大会は完敗とライバルたちを称えつつもその目はすでに次戦へと向かっていた。

4番手スタートの工藤、今年こそは表彰台と4番手からの追い上げに期待が高まる。無難にスタートを決め前方を走る佐藤とかなり近い状態、佐藤に食らいつきタイミングを伺ってポジションアップを狙いたいところである。前半2周は舵角修正の少ない綺麗な走りで佐藤に食らいついていたが3周目の最終コーナー、大きくリアの挙動を乱してしまい前方との差が開いてしまう。後方からは#129梅田選手が迫るなか、2周ほどでリズムを取り戻し梅田との間にマージンを築くも表彰台には届かず4番手でチェッカーをうけた。マシンのセットには納得している様子だが、乗り手がまだ乗りきれていないと謙虚な姿勢。練習を積んで迎える次戦に期待が高まる。

6番手スタートの市川は良いスタートを切る。前方を走る梅田選手と横並びの状態で1コーナーを立ち上がりこのままインをキープすれば2コーナーでパスできるかと思われた矢先、シフトミスにより後方#61平中選手にも前を許してしまう。このまま差が開くかと思われたが市川も長年十勝を走る選手の一人、早急にリカバリーし前方平中選手を追いかける。1周目、2周目と着実に前との距離を縮め3周目の4コーナー手前で完全に射程圏内まで追い詰める。しかしストレートでは平中選手のマシンに分があり、ここから数周インフィールドで近づきホームストレートで離れるという厳しい状態が続く。途中スリップに入れる距離でストレートに突入するもなかなか追いつけない、1コーナーブレーキングで距離を詰めるなど試行錯誤を繰り返すも同じような状態が続いたまま最終ラップを迎える。11周目終盤で再びかなり近い状態に、射程圏内に収めたままストレートに入りスリップをもらうことに成功。1コーナー進入時鬼の突っ込みで平中選手のインをとるも体制を崩し接触してしまう。その後平中選手の後ろに着くもブロックされてしまい7番手でチェッカーを受けた。

2024年の第1戦目。ニュータイヤへの変更がありセッティングの完成度に違いはあったが、予選では全車近いタイムでの戦いとなり前年と比べ少ないエントリー数ではあったが今年も熱い戦いが繰り広げられる予感を感じさせた。決勝レースではマシンとドライバーの完成度が顕著に出ている様子であったが、チーム内のレベルは確実に上がってきている。今年も表彰台独占を目指しKOSHIDO RACINGのチームメイトでありライバルでもあるという強みを生かして走り続ける。

 

2024.11.06 Fuji Champion Race Series 2024      FCR VITA Rd.1 RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.1

開催日時:2024年5月11日(土)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー   佐藤 元春、  浅井 康児、 三輪 英則

マシン
恒志堂レーシング CLASS VITA :佐藤 元春
恒志堂レーシング レブニーズVITA:浅井 康児
恒志堂レーシング 三光不動産VITA:三輪 英則

参戦クラス:FCR-VITA

天候  予選/晴れ、決勝/晴れ

路面  予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績
佐藤 元春  予選:6/42位 決勝:12/42位
浅井 康児  予選:18/42位 決勝:17/42位
三輪 英則  予選:36/42位 決勝:31/42位
※ジェントルマンクラス 予選:7/8位 決勝:6/8位

2024年もレースシーズンが開幕。KOSHIDO RACINGの初陣は富士スピードウェイからとなる。

例年通りFCR-VITAとKYOJO CUPにシリーズ参戦する今シーズン、FCRは15号機にチームオーナーでありエースドライバーでもある佐藤を筆頭に、昨年北海道クラブマンカップVITA-01で度々優勝争いを繰り広げた浅井が35号機に、実質的なVITA-01デビューを果たす三輪が610号機という布陣。一方のKYOJOは昨年から引き続きRINA ITOが15号機に搭乗する。

第1戦と第2・3戦は残念ながらRINA ITOの都合がつけられずKYOJOは休戦。第4戦からのエントリーを予定している。


<練習走行>

土曜日のレースに向けてチームはレースウィークの水曜日に現地入りし、練習走行開始は木曜日から。しかしながら初日はあいにくのフルウェット。佐藤と浅井は3月、4月とテスト走行に来ていたが、3月もウェットかつ降雪というコンディションであり、ドライに恵まれない日々が続く。VITA-01デビューの三輪に限っては実質的な初走行がウェットという厳しい状況からのスタートとなった。

初日のフリー走行は夕方になって少しずつ路面は乾き始め、ようやくドライコンディションでの走行。佐藤はコンスタントに1分59秒台を刻んでいく。調子は上々のようだ。浅井も2分フラットまでこぎつけ、ひとつの壁である2分切りまであと一歩というところまで迫る勢いを見せた。三輪は慣れないVITA-01の挙動をたった数枠の走行時間で見事に掴み、ドライコンデションとなった最終枠では2分3秒台半ばまで詰めてみせた。

2日目の公式スポーツ走行日は走行枠が2枠のみという厳しい状況。加えて今回のエントリー台数である42台に限りなく近い台数が一斉にコースインし、さらにインタープロトも混相するという混雑ぶり。クリアラップを取ることは至難の業であった。初日に比べて大幅に気温が上昇したこともあり、各マシンベストタイム更新は難しい状況。 そのような中、順当にコースに習熟していった三輪は前日から1秒短縮し、2分2秒台半ばを連続でマークしていた。本人もここまで詰められるとは想定していなかったようで、一筋縄ではいかないVITA-01の操り方を短期間で身につけたことに手応えを感じていた。

<予選>

42台という他のサーキットでは類を見ないエントリー台数。ピットレーンへの進入が可能となる2分前、全ピットガレージから一斉にVITA-01が咆哮を上げ、我こそは先にと飛び出していく。

15号機の佐藤。練習走行で新品タイヤのグリップ感を体に叩き込み、アウトラップの翌周から全開で攻めていく。アタックラップ1周目で2分フラット、そして早くも2周目にはこれまでの自己ベストとなる1分59秒07をマークし、5位という好ポジションにつける。この周、ほとんどスリップストリームの恩恵を受けられない位置ながら、自らの走りに徹した佐藤。タイヤの限界付近をうまく引き出し、走りをまとめ上げた。スリップストリームは富士スピードウェイの場合、フルで恩恵を受けると1秒近くタイムは変わることもある。それがない状況で叩き出した今回のタイムは紛れもなくこれまでの努力の積み重ねの証明。寧静致遠とはまさにこのことである。最終的に1台にポジションを譲ったものの、過去最高位となる予選6番手という戦績にKOSHIDO RACINGのピット内は大いに沸いた。

35号機の浅井もまた、前日までの壁を越えようと2分切りに向け闘志を燃やしていた。 ホームコースである十勝スピードウェイの路面と大きく異なる富士スピードウェイにおいて、新品タイヤでのアタックは初。発熱のタイミングも最もグリップを発揮する瞬間も未経験の中で予選アタックに臨む。2分1秒台前半からの順調な滑り出しから一番ベストタイムが狙える3~4周目に照準を合わせ、集中。しかしながら出走台数の多さがその行く手を阻み、2分切りまであとコンマ2.4秒というところまで迫ったものの目標としていた1分59秒台には届かなかった。一旦クーリングラップを置き、ラストチャンスとばかりに予選時間終了ぎりぎりを狙うも、2分フラット半ばでアタックは終了となった。

着実にタイムを伸ばしてきている610号機の三輪は予選においてもなお進化を遂げ続けていた。練習走行までの状況から一変してクリアラップなど易々ととれない42台がひしめくコース上で、じっとその機会を窺っていた。とはいえどもそれまでのベストラップである2分2秒台を安定して重ね、周回アベレージは間違いなく上がっている。そして迎えたアタックラップ4周目、初の2分1秒台をマーク。ここまでこれた昨日までの自分自身を信じられないと話していた三輪であったが、予選ではさらに超えてくるというハイパフォーマンスぶりを披露。これまで数々のマシンに乗って積み上げてきた経験値は間違いないものであったと自らの力で証明し、VITAデビュー戦とは思えない爪痕を残した。

予選タイム

・佐藤 元春   1:59.098
・浅井 康児   2:00.234
・三輪 英則   2:01.998

 

<決勝>

雲ひとつない晴天のもと、各ピットからVITA-01が次々とコースインしていく。年々増えているFCR-VITAの参加台数は今回42台にまで達した。全台ホームストレートに並ぶ姿は圧巻である。

予選過去最高順位の6位からスタートする佐藤、何としてもシングルポジションを獲りにいくと意気込む浅井、とんでもないところに来てしまったと口にしつつも着実に結果を残していく三輪。それぞれに強い思いを秘めて挑む決勝の幕がいよいよ切って落とされた。

まずは最も期待がかかる15号機。スタートはほぼ順当に決めた佐藤であったが、好スタートを切った後方の#86下野選手と#32武村選手に先行を許す。しかしその後のコカ・コーラコーナーでは前走車を凌駕する飛び込みを見せ、100Rに向けて一気に差を詰めた。ここで勝負をかけるべく、すぐ前を走る武村選手のオーバーテイクを狙って素早くアウトにラインを振る佐藤。そのまま100Rを並んで立ち上がり、続くアドバンヘアピンでインを刺す作戦であったが、32号車の後方から飛び出す瞬間のリアタイヤのグリップが想定していた以上に抜けており、弾かれるようにコース外に飛び出していった。100Rは路面のカントも十分にあり、コース内に留まっている間はリアのグリップが絶大で安定して抜けられるが、飛び出せば一転してフラットとなるため一気に姿勢を乱してしまう。スピンは免れたものの、コース内に復帰するまでに時間を要することとなり、4台ものライバルに先行を許す形となった。

レース序盤で手痛いミスとなったもののその後はひたすらにポジションを取り返すべく集中。しかし一度リズムが狂うとなかなか本来の走りに戻れないのが常であり、ダンロップコーナー進入のブレーキングで#2イノウエケイイチ選手にインを明け渡し、さらにポジションを下げてしまった。

2周目を迎えて佐藤は一旦冷静になり、ミスのない走りを見せる。前を行くイノウエ選手と#779大島選手のバトルが勃発し、ペースが上がらない中、虎視眈々と前に出るチャンスを窺う。イノウエ選手に先行を許した大島選手が佐藤のすぐ前に現れ、ここからは北海道勢同士のバトルへ。互いに信頼できる相手だけにラインを潰し合うことはなく、しかし一歩も引かないという北海道クラブマンカップさながらの展開。コカ・コーラコーナーでの飛び込みでは佐藤が前へ、その後のホームストレートからのTGRコーナー進入ブレーキングでは大島選手が抜き返す。そのバトルの隙をぬって#38佐々木選手が前に出るといった三つ巴の戦いに発展。そこにペースが上がらないイノウエ選手も加わって4台でのバトルへと移行する。この展開が続くかと思われた6周目のGRスープラコーナー、後方からインに切れ込んできた#87山本選手と15号機が接触。佐藤は盛大に弾かれ、アウト側のランオフエリアに飛び出した。

幸い走行不能となるようなダメージは残らなかったがこれで大きく後退。近接バトルをしていたライバルたちからは数秒離されてしまった。その後は山本選手とのバトルへ。アドバンコーナー進入で一旦は先行されたものの、テールトゥノーズの状態で追い続けていたところGRスープラコーナー立ち上がりで86号車のリアのトラクションが抜け単独スピン。そこを冷静に交わしてポジションを取り戻した。その頃ちょうど離されかけていたライバルたちとの距離も縮まっており、再び4台のバトルへ。この時点で残り2周。しかし15号機のリアタイヤは相応にグリップが落ちている状態。コーナー進入でも立ち上がりでも簡単にオーバーステアが出てしまう。そこを何とかねじ伏せる佐藤であったが、ファイナルラップのTGRコーナー進入にて下野選手に前に出られてしまう。この時ブレーキング競争に勝つだけのタイヤの余力が残っていなかったことを悟っていた佐藤は、先行を許すほかなかった。

100Rでのミスや複数回のトラブルに見舞われた佐藤であったが、都度気持ちをリセットしてレースに臨んだ結果ポジションダウンを最小限に留め、12番手でフィニッシュとなった。

次いで35号機の浅井。スタートを上手く決め、TGRコーナーまでに一気に2台の前へ。進入のブレーキングでは前方の数台が激しく競り合ってラインが交錯しているところを静観し、レース開始早々の混乱を回避。

しかしイン側から仕掛けてきた2号車に先行を許す。前方後方ともライバルたちがひしめくコース上でしっかりと走行ラインを確保し、危なげない走りとしながらもアグレッシブなバトルを展開。序盤は#36の荻原選手との競り合い。コカ・コーラコーナーで前に出られたものの遅れをとることなく追随し、2周目のホームストレートでスリップストリームに入る。前に出られるかと思ったもののコントロールラインを越えるあたりで横並びとなり、イン側を死守していた荻原選手がTGRコーナーでのブレーキング競争を制した。

バトルはまだまだこれから。ミスなく各コーナーを走り切り、3周目のホームストレートもまた同様に36号車のスリップを狙う。但し今回はそのさらに前方にも隊列ができており、荻原選手もスリップの恩恵を受けていたことから前に出るには至らず順位変動はなし。するとそこにアウト側から鋭いブレーキングで仕掛けてきたのは#87山本選手。1ポジションダウンしたもののその後に前走車のスピンもあり、順位変動はなし。後方からも迫りくるライバルたちを牽制しつつ、前を追う浅井。走り慣れていない富士スピードウェイとは思えないくらい器用なドライビングである。

一度は前に出た86号車にダンロップコーナーでのブレーキングで先行され、前との差も少しずつ開きつつある中盤ではあるが、決してあきらめることはなく走り続ける。次に襲い掛かってきたのは#213バートン選手。以前北海道に遠征してきたことがあり一度は戦っている相手ではあったが、その際は浅井の敵ではなかった。今回はコースに慣れている分、バートン選手に軍配が上がる形となった。少しずつタイヤがタレ始め、100Rでテールが流れるなど挙動変化が見られ始めた7周目、ダンロップコーナーの進入でイン側からブレーキング競争を仕掛けてきた#761の岩岡選手が目の前でスピン。ラインを交錯させる形で目の前に現れたため、フルブレーキングでも車速が落としきれなかった浅井のフロントと接触。ここでまた順位を2つ落としてしまうこととなった。

トラブルに見舞われながらも素早く戦線に復帰。残りは2周。挽回のチャンスはまだ残されている。現にすぐ前方を走るライバルたちに比べ、走行ラインは一枚上手。じわりじわりと差を詰め、迎えたファイナルラップ。あと1、2周あればというところまで迫ったものの、届かず予選から1ポジションアップの17位でチェッカーを受けた。

佐藤、浅井が荒れたレース展開となる中、堅実な走りで順位を上げたのが三輪。

絶好のスタートを決め、TGRコーナーまでに2台を軽々とパスし、目前で団子状態になっているライバルたちを大外いっぱいから仕掛けた。コカ・コーラコーナーから100Rにかけてはレコードラインを保持し、ダンロップコーナー進入ではコースアウトしていく1台を冷静にパス。オープニングラップから2周目までの間にポジションを3つ押し上げた。続く3周目のホームストレートでは後方につけていた#248Kuma.g.san選手にスリップストリームに入られ先行を許したが、コカ・コーラコーナーでは一気に間合いを詰め、プレッシャーを与える。セクター3ではオーバーステアを出しつつも上手く処理し、隙あらば前に出るという強い気概が感じられる走りを披露。後方から迫る#977関家選手にはTGRコーナーのブレーキングで仕掛けられるものの、自身の走りに集中し丁寧なブレーキングで応戦。結果、977号車はスピンアウトしていき、三輪は何事もなかったかのように抜けていった。その後しばらくは単走が続くが、コースアウトしていた#7村松選手を100R手前でパス。背後につけられ、翌周のホームストレートではスリップにつかれ先行を許す。サイドスリップで粘る三輪であったがTGRコーナー進入で前に出られ、ここでは1ポジションダウン。そのまま7号車に食らいついていくと徐々に前を走る数台のライバルたちに追いつき、再びバトルモードへ。走行ラインも周回を重ねるごとに理想的なものへと変化していく。決勝レースにおいてもなお進化を遂げていく。前方との間合いも詰まり、いよいよ競り合いかと思われた矢先のダンロップコーナー進入。248号車と7号車が接触しスピン。動きをしっかりと捉えていた三輪は焦ることなくイン側をしっかりとトレースし、前に出た。

残り周回数は2周となり、後方との距離も空いたことから再び単走状態へ。しかし慢心することなく走行精度を高め続け、チェッカーを受けた。FCR-VITAデビュー戦は36番グリッドからのスタートから5ポジションアップの31位というリザルトを残した。

 

 

<AIM Legend‘s Club CUP>

今回のFCRは往年の名ドライバーたちが熱いレースを魅せるレジェンドクラブカップも併催された。

KOSHIDO RACINGからは610号機がエントリー。搭乗するレジェンドドライバーはかつての日本トップカテゴリーであるF3000をはじめ、全日本GT選手権や全日本ツーリングカー選手権で活躍した黒澤琢弥氏。

現在もVITA-01のドライビングアドバイザーを担っているだけあり、他のドライバーに比べて抜きん出たタイムを刻む。前日の予選兼練習走行では文句なしのトップタイムをマーク。 悠々とポールポジションを獲得した。

無論レースにおいても最速であることに変わりはなく、関谷正徳選手からは予選の他に設けられていたフリー走行への出走を禁じられるほど。裏打ちされた速さは決勝レースにおいても如実に発揮され、しっかりとポールトゥウィンを決めた。レースウィークの最後でKOSHIDO RACINGに嬉しい結果をもたらしてくれた。

今回、それぞれのドライバーが未経験の領域でレースに挑むこととなった。

佐藤は予選最高位を獲得し、決勝でポジションこそ落としたもののかなりの手ごたえは感じられたはずである。いよいよ目標としている表彰台に大きく近づいたと誰もが確信している。

浅井も北海道クラブマンカップでの経験を活かし、富士スピードウェイに戻ってきた。実は2年前にもFCR-VITAに参戦しており、その時はほろ苦い思いでこの地を後にしたが、今回はしっかりと結果を残すことができた。浅井の本当の戦いはこれからが正念場である。

三輪は想像以上のパフォーマンスをみせ、チームの皆を圧倒させた。タイム・ポジション双方において富士スピードウェイとVITA-01でデビューとは思えないほどの結果である。次戦も参戦し、その先を見てみたくなったのは筆者だけではないだろう。ビジターレースへの期待が高まるKOSHIDO RACINGにこれからもご注目いただきたい。

 

2024.11.05 Fuji Champion Race Series 2023      FCR-VITA & KYOJO CUP Rd.4     RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.1/KYOJO CUP Rd.1

開催日時:2023年11月25日(土)~11月26(日)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー
FCR-VITA:佐藤 元春、上野 大哲、兼松 由奈
KYOJO CUP:RINA ITO、織戸 茉彩、兼松 由奈

マシン
恒志堂レーシング レブニーズVITA :佐藤 元春・RINA ITO
恒志堂レーシング CLASS VITA:上野 大哲・織戸 茉彩
恒志堂レーシング YOSHIMI VITA:兼松 由奈

参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP

天候
FCR-VITA:予選/曇り、決勝/曇り
KYOJO CUP:予選/曇り、決勝/晴れ

路面
FCR-VITA:予選/ドライ、決勝/ドライ
KYOJO CUP:予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績
佐藤 元春(FCR-VITA) 予選:19/41位 決勝:15/40位
上野 大哲(FCR-VITA) 予選:8/41位 決勝:6/40位
兼松 由奈(FCR-VITA) 予選:28/41位 決勝:31/40位

RINA ITO(KYOJO CUP) 予選:12/23位 決勝:12/23位
織戸 茉彩(KYOJO CUP) 予選:20/23位 決勝:19/23位
兼松 由奈(KYOJO CUP) 予選:15/23位 決勝:15/23位

 

KOSHIDO RACINGにとって今シーズン最後の富士スピードウェイでのレースとなるFCR-VITAおよびKYOJO CUP第4戦。チームは水曜日に現地入りし、木曜日から練習走行を開始していた。

気温は10℃前後で天候は幸いにして雨に降られることもなく、レースウィークは比較的良好な条件の日が続く。最終戦となる今回はFCR-VITA・KYOJO CUPともに過去最多レベルのエントリー台数。またLegend Driver’s Club主催でVITA-01を使ったレースも併催されるということもあり、平日のスポーツ走行からサーキットは賑わいを見せていた。

<11月25日 FCR-VITA Rd.4>

7:55、朝の冷たい空気の中予選がスタート。ホームの北海道ほどではないが、富士山の裾に位置する富士スピードウェイは十分に寒い。路面はドライではあるものの空は厚い雲で覆われており、路温上昇は見込めない状況であった。

15号機の佐藤はアウトラップから積極的にクルマを動かし、タイヤに熱を入れる。無論1周ではアタックするだけのコンディションまで上げられず、2周目突入直後もホームストレートでウェービングするなどしていち早くアタックラップに移行できるように努めていた。マシンの挙動が安定してきたのは3周目から。しかしレコードライン上にペースが上がらない車両がおり、セクター3で数周にわたってタイムロスが生じてしまう。過度にオーバーステアを出さないよう上手くコントロールしながら13コーナーとGRスープラコーナーをクリアし、ホームストレートでサイドバイサイド、TGRコーナーブレーキングで前へ。クリアラップはとれたものの、他車のスリップストリーム活用は見込めない位置のままセッションを走り続けた佐藤は1分59秒679で19位となった。14台がひしめき合う1分59秒台だっただけに、もし上手く活用できていたらより上位に食い込めたのではないかという悔しい思いが残った。

35号機の上野も同様にアウトラップ、2周目と丁寧にタイヤに熱入れ。実質3周目からのアタック開始。しかし序盤はコカ・コーラコーナーでラインが定まらず苦労が窺える。視界前方にライバル車両を据え、スリップストリームから好タイムを狙おうというところで100Rでライバルたちが失速、隊列は団子状態となる。混雑を避けるかの如く一時ピットに滑り込み、フロントタイヤの内圧を調整のうえ再アタックへと向かう。まずは前方がクリーンな状態でワンアタックし、その後ライバル達を先行させて改めてスリップストリームを狙う。しかしすぐには間合いが取れず、結局単走状態が続いた。少し時をおいて徐々に前方との差が詰まり、絶好の位置につけた上野。ただ、ライバルたちもそう易々と恩恵を与えてはくれない。最終パナソニックコーナー立ち上がりからホームストレートに出ると、しっかりラインを外して背後にはつけさせない。それは当然のことで国内屈指の高速サーキットである富士スピードウェイは丸1周スリップストリームに入ると簡単に1秒近くタイムが短縮される。シビアにタイム争いをしている上位陣同士ならなおのこと後方への意識が高いのである。上野も佐藤同様にもっと長い時間スリップに入っていれば…と思う展開。1分58秒896で8番手となった。

610号機の兼松由奈。走行ラインは常に理想的でミスも少ない走り。地味ながら押さえるところをしっかり押さえた堅実な走りで徐々にタイムを刻んでいく。コカ・コーラコーナーではかなり攻め込んだ走りでイン側の縁石をかすめるようにクリアする場面も見られ、走り自体はアグレッシブさに溢れている。しかしながら今ひとつスピードがのってこない。それでもシーズン集大成となる今回、ベストな走りを披露。2分フラットのタイムを連続でマークするなど、FCRとKYOJO CUPのダブルエントリーで着実に前進した姿を見せた。

予選タイム

・佐藤 元春   1’59.679

・上野 大哲   1’58.896

・兼松 由奈   2’00.847

決勝は11時20分スタート。総出走台数は40台。富士スピードウェイの長いホームストレートもこれだけの台数のVITA-01が並ぶと壮観である。

選手同士が固い握手とともに健闘を誓い合い、それぞれのグリッドへ向かう。

チーム代表の佐藤のグリッドには、友人であり経営者仲間である近藤氏も応援に駆け付けた。

近藤氏とは同じチームとしてドバイ24時間耐久レースに参戦したり、ブランパンGTアジアシリーズにスポット参戦するなど、レース仲間でもある。今回はインタープロトシリーズのプロアマクラスにスープラGT4でエントリーされていた。

友人の激励を受け、グリッドウォークが終了。各ドライバーはフォーメーションラップを経てスタートの瞬間を待つ。

シグナルオールレッドからのブラックアウトで全VITA-01が一斉に咆哮を上げる。

佐藤はスタートを順当に決めたものの、4グリッド前の#36岩岡選手がスタートを切れておらず、追突を避けるべく失速しながらアウト側へ回避。即元のラインに戻ったもののリズムを狂わせてしまい、シフトミスしながらTGRコーナーへ。その間に1台にパスされてしまう。TGR進入から立ち上がりはミドル→アウト→アウトのラインを強いられ、次のコカ・コーラコーナーにはイン側からの進入を余儀なくされる。苦しい立ち上がりとなったが、100Rでは前走車に食らいつき、ダンロップコーナー進入ではオープニングラップにもかかわらずアウト側からオーバーテイクを試みるなど、果敢に攻め続けた。佐藤はこれまでもタイヤが冷えた状態でVITA-01を如何に速く走らせられるかという訓練をホームである十勝スピードウェイで繰り返していた。それが功を奏してか、走り出しから挙動を乱すことなく安定して攻め込んでいくスキルが高められている。

前方で#87山本選手と#91首藤選手が競り合ってペースが上がらない中、冷静にチャンスを待つ佐藤。2周目のコカ・コーラコーナー立ち上がりで立ち上がり加速を鈍らせた首藤選手を捉えパス。その後は数周にわたって山本選手とその前方を走行する#225富下選手を追撃する。山本選手が先に富下選手の前に出て、それに続く形で佐藤も7周目のホームストレートでがっちりと真後ろにつき、スリップストリームを最大限活かしてパス。順調にポジションを上げていたがファイナルラップのホームストレートで後方より追い上げてきた#7有村選手に背後に入られ、パスされる。最終的に15位でフィニッシュ。冷静かつしっかりとチャンスをものにする走りで4ポジションアップとなった。

実はこのレースウィーク中、体調が思わしくなかった佐藤。同月初旬にドライバーとして参戦していたスーパー耐久をピークに、今回のFCRにおいても症状を引きずっていた。現状のコンディションの中搭乗することで最悪マシンを傷めてしまうかもしれないという懸念もあり、翌日のKYOJO CUPで同マシンを使用するRINA ITOのことも考えて今回自身の参戦を見合わせることも検討していたという。鍼灸にてレース直前まで加療を続け、何とかステアリングを握るまでに調整し、臨んだ今回のFCRであった。

8番手スタートの上野は問題なくスタートを決める。スタート直後のTGRコーナー立ち上がりから#44平川選手とコカ・コーラコーナーに向けて並走。ラインを潰すことなくクリーンにバトルを展開し、辛くも前へ出て1ポジションアップ。そこからは上位陣ならではの各車ミスのない淡々としたバトルが続く。地味ではあるがいくつコーナーをクリアしてもトップから上野まで車間がほとんど変わらない。これは各マシンが常に限界領域で走り続けていることの裏付けであり、相当にハイレベルであることを物語っている。

4周目あたりからレースに動きが出る。上野の前を行く#32見島選手とトップ集団との差がわずかに開き始め、スリップストリームの恩恵が薄くなった見島選手に上野が肉薄。とはいえども富士スピードウェイのホームストレートは長く、VITA-01では最も高いギアである5速でも最高速は頭打ちになってしまう。ストレートのみで前に出ることが難しいことを悟った上野はそのまま横並びで6周目のTGRコーナーのブレーキング競争へ。アウト側の見島選手も一歩たりとも引かない執念の走り。アウト→アウト→アウトのラインで横並び状態を崩さず、そのまま立ち上がってコカ・コーラコーナーに向かっていく。今度はイン側となる見島選手が有利な展開となるが、上野もまったく引かず2台並んで進入。立ち上がりアウトのホワイトラインから車幅半分ほどはみ出しつつも粘り、100R進入までにようやく前に出た。

以後はひたすらに前を行く#1大八木選手を追う展開。ファイナルラップのセクター3では肉薄し、プレッシャーを与え続ける場面もあったが、大八木選手もまたレース巧者。まったく動じる気配はなく、上野はあと一歩のところで6位チェッカーとなった。

 

兼松は28番グリッドからのスタート。ただ、KOSHIDO RACINGの3台の中で最もスタートを成功させたといえる絶妙なタイミングとクラッチワーク。そこからTGRコーナーに向けてアウトから目一杯ブレーキングを遅らせて進入。この時には佐藤の後方まで一気にジャンプアップしていた。その後もこの勢いのまま行くかと思われたが、セクター3にて#831YOSHIMA選手に接触され痛恨のスピン。一気に最後尾まで後退してしまう。スタートが良かっただけに悔しさ滲ませる兼松。最終戦、このままでは終われまいと怒涛の追い上げが始まった。3周目のホームストレートで1台、同周回のダンロップコーナー進入にてまた1台、5周目にはアドバンヘアピンへの進入でブレーキングの一瞬の隙を突いてまた1台の前へと、アグレッシブな走行をみせる。その後も追い上げの手を緩めることはなく7周目のホームストレートで1台、同7周目のセクター3でも1台、8周目のTGRコーナー進入ブレーキング競争でも競り勝って1台パス。フィニッシュラインを越えた時には9ポジションを取り返していた。

この力強い走りを目の当たりにし、レース開始直後のアクシデントさえなければ…と無念さがこみ上げる。まだKYOJO CUP最終戦を残しているものの、今期のFCR-VITAとKYOJO CUPダブルエントリーによる走り込みの成果は如実に表れていたといえよう。

FCR-VITAは本戦をもってシリーズが終了。35号機の上野がシリーズ6位入賞という戦績を納め、2023年の戦いに幕を閉じた。

 

 

<11月26日 KYOJO CUP Rd.4>

女たちの今期最後の戦いは7時50分の予選から開始される。前日のFCR-VITAからは約半数のエントリー台数となるが、KYOJO CUPならではの華やかさと緊張感が独特の空気感を作り上げている。

まずは15号機のRINA ITOからピットアウト。それに続く形で35号機の織戸、610号機兼松と続く。11月下旬の早朝ということもあり、気温は15℃と低い。アウトラップから2周目は全車慎重に挙動を感じ取りながらマシンの動きを探る。

3周目、アタックを開始するRINA。まずは2分1秒779の滑り出し。目立ったミスをすることもなく4周、5周と周回を重ねつつラップタイムを上げていく。4周アタックした時点で2分0秒241。2分切りを目前に煮詰まり、ここでピットへ。体勢を立て直し、ベストを更新すべくリスタート。但し残りのアタックラップは実質3周程度であり、前後の間隔を上手くとって集中力を高めてタイムを刻みにいく。ピットアウト後一周を経て、ラストアタックへ。セクター1は狙い通りベストを更新できたもののセクター2ではセカンドタイムに甘んじる。しかし大きなミスはなく、その勢いのままセクター3へ突入。上手くまとめ上げ、ここでも自己セクターベスト更新。これまでKYOJO CUPで記録した予選タイムを更新し、RINAとしては初の2分切りとなる1分59秒843をマークし、予選を終えた。

35号機の織戸。参戦2年目も最終戦となったが未だに予選は緊張するとコメントしている。その緊張とは裏腹に、マークするタイムはこれまでの走行履歴の中で最も速い。VITA-01の挙動に慣れ、攻めの走りが身に付いた2023シーズン。明らかに走り方が変わった。その現れとして明らかなミスのあった周回を除き、ベースは2分2秒台を記録。全セクターでタイムのばらつきが少なく、姉貴分のRINAや兼松に迫る勢いであある。スピンもなく、周りのライバルたちに圧倒されることなく自らのペースを貫いた結果、最終的に2分1秒台中盤まで削り取り、自身の記録を大きく塗り替えた。これを受けてチームメンバーやファンをはじめ、決勝でのバトルに期待が高まる予選となった。

610号機の兼松はトライアンドエラーを繰り返す。それは意味なくマシンを消耗させるようなものではなく、コンマ一秒を削り取るために前進した結果である。その証拠に予選中に記録されたタイムはばらつきが著しい。但し、決してペースが上がっていないというわけではなく、詰めるところはきっちりと詰めているのである。

シーズンを通してFCR-VITAとのダブルエントリーであったことから他のチームメンバーに比べて乗る時間は長くとれていた兼松。故に現状を打開するために貪欲に速さを求め続けた。サーキットだけでなくラリー参戦も積極的にこなす側面を持ち合わせ、クルマとの対話は誰よりも長い。そのストイックさが今期の成長を推し進めた何よりの要因である。限界付近を探りながら上手くつないだ7度目のアタックラップで2分フラット中盤をマークし、15番手を獲得した。

 

予選タイム

・RINA ITO  1‘59.843

・織戸 茉彩  2’01.495

・兼松 由奈  2’00.429

 

 

正午を回り、決勝の刻が迫る。

長女RINAから妹たちへ檄を飛ばされ、それぞれのマシンに乗り込みグリッドへと向かう。チームオーナー佐藤からはスタート前の最後のアドバイスと激励。

 

そして12時35分にスタートが切られたわけであるが、ここでちょっとしたトラブルが発生。スタートシグナル不良である。通常、レッドシグナルが5つ順に点灯し、それらが一斉に滅灯することでスタートとなるところ、レッドシグナルが4つで滅灯。これに対しKYOJOドライバーの面々は一瞬驚きを隠せなかったものの、素早く何事もなかったかのようにマシンを前に進めた。遅れは生じたもののTGRコーナーに向けてクリーンなスタートとなった。

12番手スタートだったRINAは周りのライバルたちよりも素早くスタートに順応し、2台をパス。イン側で粘る#37金本選手に得意のTGRコーナーへのブレーキングで競り勝ち、前へ。続くコカ・コーラコーナーから100Rでは#13の高野選手と並走し、辛くも前に出る。この時点で9番手まで順位を押し上げた。

ポジションキープのまま迎えた2周目のアドバンコーナー、すぐ後方につけていた金本選手にインを刺され、ポジションは10位へ。しかしそう簡単に食い下がるまいとダンロップコーナー進入でレイトブレーキングからインを突いたところ、左フロントと金本選手の右リアが接触。金本選手はそのままスピン、コースオフしてしまう。気を取り直し、RINAは前方のライバルたちの追撃へ。

しかしここで次の刺客が現れる。スタートで前には出たものの予選のラップタイムでは後れを取っていた#86の永井選手にスリップストリームに入られ、3周目のホームストレートで先行を許した。4周目以降はやや前との距離が離れ、5周目のホームストレートでは高野選手にも前に出られてしまう。次々と襲い掛かるライバルたち。更に後方からは#213のバートン選手も襲い掛かかり、6周目のTGR進入にてイン側をとられた。立て続けに抜かれてしまったがRINAは冷静であった。先行されてからも決して差を拡げられることはなく、抜き返すチャンスを窺う。前方では高野選手とバートン選手が激しく競り合っており、ペースが上がっていない。しかしその差を詰めるまでには至らず、10番手でチェッカーを受けた。しかしながら2周目の金本選手との接触がペナルティと判定され、正式リザルトでは10秒加算にて12位となった。

予選ではベストタイムをマークし、グリッドもまた過去最高位を獲得した織戸。スタートは周りに後れをとることなく上手くまとめ、順当な滑り出しとなった。しかし1周目に痛恨のシフトミス。これが響き、序盤はスタート順位から1ポジション落とす場面もあったが、徐々に周りのバトルに挑めるペースを作り上げ、レースを戦った。

これまでKYOJO CUPに参戦するたび下位争いばかりであったが、今回は予選からの良い流れを汲んで決勝でも2分2秒台をベースとしたレースラップで走行。前を走るライバルに何度も仕掛ける姿がこれまでとの違いを印象付けた。#34井下選手の前に出て、一度は前に出られてしまった#7おぎねぇ選手にもレース終盤では果敢にバトルを仕掛ける。あと一歩というところまで迫ったものの惜しくも届かずチェッカー。スタート時より1ポジションアップし、後方に4台を従えてフィニッシュした。

リザルトもレース中のポジション取りも着実に上がっている。ベストタイムの更新だけでなくその技量は間違いなく向上し、今後も伸び続けることが期待される。普段から様々な車に触れる機会もあり、その応用力は今後ますます発展していくであろう。これからが楽しみなドライバーであることは間違いない。

兼松もまたスタートを順当に決めた。周りのライバルたちが若干もたつく中、隙を突いて2つポジションアップし、前を行くバートン選手に追いすがる。しかし、想定以上に前を行くライバルたちのペースは速く、徐々に離されていく。次第に集団がいくつかに分かれ、トップ集団、8番手9番手争い、さらにその後方集団が形成される中、13番手争いの集団の中で常にバトルを繰り広げていた。ここで競り合っていたのは#28樋渡選手、#28坂上選手と兼松。序盤からフィニッシュラインを越えるまでこの三つ巴のバトルは続いた。そこに徐々に追い付いてきた#109保井選手も加わり、4台での争いに発展。どの選手も隙あらば前に出ようと巧みにラインを変えて仕掛けるが、逆にどの選手も決定的なミスをしないという僅差の攻防。スリップストリームに入るもののブレーキングで先行車が死守し、順位の入れ替えがほとんど起こらぬまま周回を重ねていった。その中で兼松は前後方を双方気にかけながらの走り。落ち着いて相手の走行ラインを見極め、攻めつつ抜かれないような走りを組み立てていった。

拮抗したバトルの行方はあまりにも順位の変動がなく、最終的にはスタート順位とまったく同じ15位でフィニッシュすることとなる。リザルトだけを見ると平凡かつ面白みに欠けるように感じられるが、実際のレース展開は小さな駆け引きが凝集された見ごたえ溢れる戦いの連続であったといえよう。数年でレースを戦う力を培った兼松への今後への期待が高まるところだ。

 

 

レースを終え、リラックスしつつも今回の自身の走りと向き合う。これが次につながる大切な時間である。

 

KOSHIDO RACINGにおける2023年シーズンの富士スピードウェイでの戦いは幕を閉じた。来季はどのような布陣での戦いとなるのか。北海道での活躍のみならず、これまで以上に死力を尽くし、本州においてもその名を轟かせることをチームは誓う。

 

2024.11.05 北海道クラブマンカップレース2023 Rd.5 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレースRd.5 VITA-01

■開催日時:2023年10月15日(日)

■開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

■ドライバー:上野 大哲(#11)、佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310)
山本 聖渚(#516)、工藤 大祐(#910)、

■マシン:恒志堂レーシングVITA 11号機、12号機、310号機、516号機、910号機

■参戦クラス:VITA-01クラス

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績

上野 大哲  予選:2/14位 Race1:2/14位 Race2:2/14位

佐藤 元春  予選:5/14位 Race1:4/14位 Race2:1/14位

浅井 康児  予選:1/14位 Race1:1/14位 Race2:10/14位

山本 聖渚  予選:9/14位 Race1:8/14位 Race2:6/14位

工藤 大祐  予選:11/14位 Race1:9/14位 Race2:9/14位

 

2023月最後の北海道クラブマンカップレース VITA-01。本戦はシーズン中唯一2ヒート制で争われ、それぞれが一レースとして扱われる。1ヒート目は第4戦までと同様に予選タイムがグリッドに反映されるが、2ヒート目は1ヒート目のベストラップが採択される仕組み。晩秋の北海道でエンジンも良く廻るこの時期、14台のVITA-01がラップタイムの短縮とライバルとのバトルにしのぎを削る。

KOSHIDO RACINGはレギュラー参戦の佐藤、上野、浅井、工藤に加え、弱冠20歳でポルシェスプリントチャレンジジャパンをはじめFIA-F4やS-FJなど多彩な経歴を持つ山本聖渚を迎えての5台体制。レース前日・前々日の練習走行では20℃を越える気温の中、各車1分30~31秒台をコンスタントにマークし、唯一310号機の浅井が1分29秒台という驚異の走りをみせ、その好調ぶりをアピールした。


<公式予選> 

天気は快晴。気温14度、湿度60度弱と、コンディションとしてはまずまず良好。
KOSHIDO RACINGでまずはじめにコースに出たのは佐藤。#778大島選手の後に続いてピットアウトしたがスリップストリームを狙う感じではなく、少し間隔をあけての走行をとなった。単走でひたすら集中してタイムを削っていくスタイルで、アウトラップからハイペースでタイムを刻んでいく。これまでの走り込みからタイヤの美味しいところは熟知しており、いち早くそこに到達するために時間を無駄にすることはない。

2周目からは早くもアタックラップに移行していく。最終的に計13周の全開走行となったが、セッション全体を通してクリップにつけなかったのはほんの数回。アンダーステア気味で最終コーナーがなかなか決まらない状況の中、苦しい思いをしつつも並外れた集中力で常に1分30秒台で周回を重ねていった。スリップストリームを得る場面には一度恵まれることがなく、5番手で予選を終える。

上野はアウトラップから2周目にわたって丁寧にタイヤに熱を入れていく。満を持して3周目からアタック開始。と思われたが1コーナーのブレーキングで早くも相当なアンダーステアに苦しみ、即時ブレーキバランスを2段階リア寄りへ。それでもなかなかラインが定まらないまま3周目を終えて4周目へ突入。やはり1コーナーでのアンダーが強く、ブレーキバランサーに手をかけ、リアにさらに1段階寄せる。ようやくマシンの姿勢が決まりだした5周目から1分30秒台を継続的にマーク。8周目をまわる頃には挙動はすっかり安定し、各コーナーのラインも美しい弧を描いていた。上野もまたスリップストリームの恩恵を受けることなく予選を走り切り、2番手のポジションを獲得した。

初の十勝スピードウェイかつVITA-01搭乗のため練習走行で苦労していた山本は、試行錯誤しながら走りを組み立ててきた結果、この予選までにようやく周りの強豪たちと渡り合えるタイムを刻めるようになっていた。それでもアンダーステア傾向の強い516号機には手を焼き、ありとあらゆる引き出しを駆使して周回を重ねていく。その走りはデータロガーに裏打ちされており、いかにしてクルマを曲げようとしているか、前に進めようとしているかが見てとれた。
序盤から1分31秒台を刻み、ラップタイムはほぼブレなし。途中走行しながらブレーキバランスをフロント寄りに変え、それに自身の走り方をアジャストして強アンダーと対峙し続ける。苦しいながらもようやく思い描くラインにのせ始めたところで、練習走行でのベストから約0.02落ちの1分31秒067をマークし、最終的に9位につけた。

工藤は練習走行初日から何度かセッティング変更を試みたものの、それがなかなか嚙み合わず苦しい展開を強いられていた。またトラブルにも見舞われ、精神的にベストなコンディションとはいえない中でのレースウィークとなった。とはいえどもこの予選においては毎周回1分31秒台前半を記録しており、決して遅いわけではない。ただ、本人の納得のいく方向にマシンが向かなかったことで本来のベストな走りからは遠ざかっていた状況である。今期の集大成である最終戦ながら改めてセッティングの奥深さというものを痛感していた。順位的には11番手と出遅れたものの、これまでの決勝レースでは逆境に屈しない粘りの走りを見せていた工藤。後方からの巻き返しに期待が寄せられた。

このレースウィークを通して最も好調ぶりを見せていたのは浅井。前述の通り練習走行ではチームトップのタイムをマークしていたのに続き、予選においても全体で唯一の1分29秒台を叩き出し、堂々のポールを獲得した。

今期はとにかく時間ができたところで単独でも十勝スピードウェイを走り込み、データ取りと様々なセッティングを試すことに勤しんでいた浅井。もちろん毎回ベストな結果が出るわけではなかったが、減衰調整を1段階ずつ試したりタイヤ内圧をコンマ1ずつ調整するといった微細なテストをたったひとりで続けていた。そのデータ収集と走り込みの集大成がここにきて開花したといえよう。本人的にはまだ詰めるべき箇所は残っていたようであるが、十分すぎる結果に北海道クラブマンカップ初優勝への期待が高まった。

予選タイム
上野 大哲:1’30.188
佐藤 元春:1’30.458
浅井 康児:1’29.923
山本 聖渚:1’31.067
工藤 大祐:1’31.137

 

Race1

予選時から少々気温は上昇したものの、ほぼコンディションに変化はなし。グリッド上には各マシンが整列し、レース前最後のチェックとチームの激励を受けている。予選ではトップから1秒以内のタイム差の中に過半数が凝集し、一触即発のバトルが予想された。そのような中、タイトル奪還がかかる佐藤であったが「楽しみながらオーバーテイクしていきます」とグリッド上で笑顔を見せ、気負いは感じられない。スポットで初の十勝スピードウェイ公式戦となる山本には少々緊張も窺えたものの、他のKOSHIDO RACINGドライバーもできるかぎりの走りをしつつ、最終戦を楽しむという気概が垣間みえた。

ほどなくしてグリッドと選手紹介を終え、フォーメーションラップがスタート。いよいよスタートの時を迎える。しかしここでポールポジションの浅井、なんとシグナルブラックアウト直前にクラッチをわずかにミートさせてしまいマシンが一瞬前へ…。ジャンプスタート裁定は免れないと素早く判断し、本スタートを一瞬遅らせて対応。その結果2・3・4番手スタートのライバルたちを先行させる結果となってしまった。しかしその後はひたすら冷静にトップ返り咲きを狙う。2周目のホームストレートでは#77村上選手のスリップストリームにしっかりと入り、 1コーナーのブレーキングでパス。続いて射程圏に#17坂本選手を捉え3周目のホームストレートでもスリップからのパスを狙う。しかし坂本選手もまたトップの上野のスリップの恩恵を受けており、#11・#17・#310の3台は横並びのまま1コーナーへ飛び込んでいく。最もイン側にいた上野は最大限ブレーキングを遅らせてトップの死守を図ったものの、ブレーキロックで姿勢を乱し後退。次にイン側を陣取っていた坂本選手は、もつれつつも上野に競り勝ち、辛うじて前に出る。しかし最もアウト側から飛び込んだ浅井は、この上野と坂本選手の競り合いで失速した隙を見逃さずすかさず前へ。1コーナーを立ち上がるまでに一気に2台をパスして早くもトップを奪還した。その後310号機の前はオールクリア。本レースウィークを通して抜きん出て速かった浅井はみるみるうちに後続を引き離していく。

その後も坂本選手と上野のバトルが続いたことで2位以下のレースペースが上がらず、その差は拡がっていく。ジャンプスタート判定を受けた浅井に課せられたタイムペナルティは5秒。サインガードのピットクルーは必死に更なるペースアップへの檄を飛ばす。それを見た浅井は直感的に勝つためにはそうしなければならないという指示であると感じたという。鬼の巻き返しを図るべく奮闘し、レース中のベストタイムをマークしながらより後方を突き放すことに成功。見事5.118秒の差をつけてチェッカー。自らの失敗は自らの手で取り返し、誰もが納得の勝利を収めた。

一方、浅井のスタートトラブルでトップに浮上した上野。オープニングラップをそのまま制し、2周目もトップをキープ。しかし3周目のホームストレートで坂本選手にスリップストリームに入られ、1コーナー進入までに横並びに。ブレーキング競争では余裕があったものの、坂本選手が早めにインに切り込むライン取りだったために余儀なくブレーキロックさせながら回避。さらに横に並んでいた浅井にも先行を許し、3番手に後退する。
一旦は前に出られたものの総合的なペースでは坂本選手に勝る上野。インフィールドでは容赦なくプレッシャーを与え続けた。何度もブロックラインで応戦する坂本選手。やきもきしていた上野であったが、レコードラインを外しながら走行することで逆にペースの安定性を欠く坂本選手の隙を突き、何度か前に出ては抜き返されるという展開を繰り返す。雌雄を決したのは6周目。5周目の最終コーナー立ち上がりから坂本選手の背後にピタリと付け、スリップから出た上野はアウトから1コーナー進入で仕掛ける。決して無理はせず、イン側の坂本選手がアウトに張らんでいくのを冷静に見極め、クロスラインで立ち上がり2コーナーまでに確実にパスした。その後は残り4周を浅井を追うことに注力していたものの、後方からは坂本選手をパスしてきた#778大島選手が迫り、再びバトルを強いられる。しかしあくまでも自身の走りに徹し、ミスなく走り切ったことでポジションを守り切り、2位でフィニッシュとなった。

スタートはミスなく決めた佐藤。前方では浅井のミスによる混雑もあり、混戦模様となったトップ争いに肉薄する。レースでは強さを発揮し、前を行くライバルたちがコーナーでクリップを外す中、一人丁寧にベストラインをトレースし差を詰める。まずは4周目、上野とのバトルで1コーナーの立ち上がり速度が鈍った村上選手を捉え、2コーナー進入までアウト側で並走。そのまま3コーナーアウト側で粘り、続く4コーナーでインとアウトが逆転し前へ。次なるターゲットは2位争いを展開していた坂本選手と上野。この二人のバトルが数周にわたって続き、ペースが上がらない中を何とかこじ開けようと試みるも前に出る機会が窺えず、その間に一気に後方に迫ってきた#778大島選手に先行を許す。大島選手はディフェンディングチャンピオンの意地にかけ、坂本選手も強烈にプッシュ。2コーナーでラインの自由を阻まれたものの驚異のコントロールで前に出る。これにより4位争いは坂本選手対佐藤の構図へと発展。残り周回数が3周と少なくなる中、確実に仕留めるべく7周目の最終コーナーを丁寧にクリアし、坂本選手のスリップへ。コントロールタワーを越えたところで横並びに。坂本選手もそう容易く前には出すまいとイン側1台分の車幅を残して牽制。これに動じることなく佐藤はイン側のまま1コーナーのブレーキング勝負を仕掛け、3速にシフトダウンして立ち上がりの蹴り出しで前に出た。その後は2番手争いに加わるべく上野と大島選手を追ったが、残り1周という状況では如何ともし難く4番手でフィニッシュした。この入賞によりシリーズタイトル奪還に一歩近づくこととなり、Race2への期待とプレッシャーが高まった。

516号機に手を焼いている山本。スタート前は緊張を隠せない様子であったが、シグナルがブラックアウトした瞬間にそんなことなど忘れさせるような蹴り出しと1コーナーへの飛び込みをみせる。スタートでもたついた#555の星野選手の前に出ると、続いて#779関選手にも積極的に仕掛けていく。若くして経験値が豊富な山本はオープニングラップの3コーナー進入で素早くラインを変え、インから関選手をパス。一気にトップ集団に迫る勢いでレースを展開する。それでも癖のある516号機では自身の本来の走りを発揮しきれず、集団からは徐々に離されていく。
奮闘を続け、一定の距離からは離されない走りを見せていた山本であったが、5周目の7コーナーで一瞬姿勢を乱し、切り返す8コーナーで一瞬の隙を突かれ星野選手にインに飛び込まれ前に出られてしまう。しかし続く最終コーナーで著しくオーバーステアを誘発し、立ち上がり加速がかなり鈍った星野選手をすかさず再オーバーテイク。以降一進一退の攻防が続き、7周目にはスリップに入った星野選手が再び山本の前に出て、フィニッシュラインを越えるまで激しいバトルを展開した。
次第に5位争いをしている坂本選手と村上選手に肉薄し、最後は4台での接戦にもつれ込む。ただ、ここで516号機のリアタイヤが根を上げ出し、付いていくのがやっとの状態。7位の星野選手からコンマ4秒差でチェッカーを受けた。

決勝直前まで試行錯誤を繰り返していた工藤は11番手からのスタート。しかし、やはり上手く波に乗れずスタート直後から勢いのある#129の梅田選手と#55の後藤選手に早々に先行を許していた。苦しい展開が続き、ようやく910号機の動きに馴染んできたのは3周目あたりから。最終コーナー立ち上がりをきれいにまとめ、#779関選手のスリップストリームへ。そのまま4周目の1コ-ナー進入ブレーキングで前へ。その勢いのまま梅田選手の背後につけて猛プッシュし続ける。

練習走行から予選、そしてレース1序盤までの納得のいかなかった走りを払拭すべく、続く5周目のホームストレートで梅田選手のスリップに入り、しっかり狙いを定めて再び1コーナーへの飛び込み勝負。ここでも工藤が前に出た。次なる勝負の相手は後藤選手。ペースは完全に工藤が上回っており、右へ左へとマシンを振りプレッシャーをかける。9周目のホームストレートから1コーナーへのブレーキング競争。往年の走り屋のようなドライビングで直前まで背後につけ、ブレーキング開始のタイミングで素早くインへ。ラインをこじ開け、立ち上がりで競り勝つ。これでスタート時から先行を許した2台へのリベンジは完了。ここからの2周弱は工藤を先頭に梅田選手・後藤選手・平中選手・関選手の5台による9番手争いが激化。ラインが交錯し、時に接触もみられトップ争いも霞んでしまうほどのバトルが展開されていた。何度も仕掛けられたものの守りの走行ラインを駆使し、ギリギリのところで逃げ切りに成功した工藤に軍配が上がった。

ポディウムには浅井が初のてっぺんを勝ち取った。レース1のベストラップでグリッドが決定されるレース2においても激しいトップ争いが予想される。

Race2

レース1のフィニッシュから2時間後、早くもレース2の開始時間が迫っていた。2023年シーズン北海道最後の公式戦を前に、各ドライバー後悔のない走りをすべく気合が入る。

レース1は10周で争われたが、レース2は12周回となる。

レース1で見事勝利を挙げた浅井は、今回もポールポジションスタート。二度同じミスをすることは許されず、完全勝利に向けて慎重にスタートの刻を待つ。シグナルブラックアウトとともに若干ホイルスピンさせながらもベストなスタートを切った。追随するセカンドポジションの大島選手を牽制しつつもラインを外すことはなく、独走を試みる。しかし、2周目の3コーナーにてアウト側に左後輪を落とすというらしくないミスを犯し、さらには3周目の1コーナーでも挙動を乱したことで一気に後続との距離が縮まってしまった。何とか体勢を立て直し、再び逃げ切り体勢を取ろうとした矢先の4周目、8コーナーの進入でインを刺そうとした大島選手と接触。あえなくスピンしてしまう。

幸いコースからは大きく外れず、自力で戦線復帰したものの、実質的にトップ争いからは脱落することとなった。レースに戻ってからは最後尾からポジションを全力で取り返しにいくべく奮闘したが、10番手フィニッシュが精一杯の結果となった。完全勝利を目論んでいただけに、この結果には相当悔しさが残る浅井であった。

レース1で2番グリッドだった上野はレース中のベストラップが伸びず、レース2は6番手からのスタート。スタート自体は問題なく決め、3番グリッドの#77村上選手がストール気味となったこともあり、その後方5番グリッドの#555星野選手も出遅れ、一気に4位にポジションアップする。その後すかさずトップ集団に食らいつき、まずは佐藤とのバトルへ。1コーナーではラインをアウト側に振ったため、佐藤が先行し後を追う展開。浅井、大島選手、佐藤と連なってのバトルは誰が前に出てもおかしくない状況。4周目のホームストレートで佐藤のスリップから出た上野は1コーナーのブレーキングで前へ。少し離れてトップ争いをしていた浅井と大島選手を追う体勢をとったところで、その2台が接触。双方コース外に飛び出していく中、その間隙をすり抜けトップに躍り出た。しかし、即コース復帰し直後の5周目ホームストレートで背後につけていた大島選手にオーバーテイクされ、再び2位へ。その次の周には同じくホームストレートで佐藤にスリップに入られ、先行を許しポジションは3位となる。そこからは大島選手→佐藤→上野の付かず離れずの構図が続く。

残り3周となったホームストレートで今度は佐藤のスリップについた上野が前へ。2番手を取り返す。チームメイト同士とはいえ、同じレーシングドライバーとしての意地のぶつかり合い。忖度なしのバトルが続く。そして佐藤も黙ってはいない。その次の周ではまったく同じ展開で上野から2位を取り返し、3位へ後退。最後の最後まで激しい競り合いは続いたが、チェッカーまでに再び前に出ることはかなわず、3番手でフィニッシュした。しかしこの後、浅井への接触で大島選手にペナルティ裁定が下り、リザルトは2位。予選。レース1、レース2すべてで2位の成績を収め、シリーズにおいても2位を獲得した。

レース1は8番手でチェッカーを受けた山本は、レース2も8番グリッドからのスタートとなった。予選から徐々に戦績を上げてきており、最後のレースではどのような走りを披露してくれるのか周囲の注目も集まっていた。
スタートはタイミングこそ平凡ではあったものの、絶妙なクラッチミートで一気に3台の前へ。5位からの滑り出しというファインプレーをみせる。すぐ後方には星野選手と#17の坂本選手とが控えており、一切油断できない状況。挙動が安定しない516号機を巧みにコントロールし、インフィールドではポジションを守り切った。2周目のホームストレートではしっかりとスリップストリームに入られていたこともあり、星野選手に先行を許す。その後の3周目でも同様に坂本選手に前に行かれたが、インフィールドでの走りが抜群に優れている山本は4コーナーの飛び込みでできた坂本選手の隙を見逃さず、すかさずインに切り込んでポジションを取り返す。ここから坂本選手との激しいドッグファイトが始まった。5周目でも坂本選手は容赦なく抜きにかかり、コントロールラインを越えたところでイン側から前へ。1コーナーでラインがクロスし、2コーナーへ向けて並走。坂本選手はラインの自由度を阻むべく山本にマシンを寄せる。しかし山本も一歩も引かず、2コーナーは3速に入れて応戦。立ち上がりの鋭さに勝る516号機が辛うじて前に出てポジションキープした。

数周は動きがなかったが9周目、スタートミスしつつ後方から追い上げてきた村上選手が山本の後方につけ、1コーナーまでに前へ。だがそこは山本。得意のクロスラインからポジションを取り返す。10周目も同じ展開となりかけたが今度は山本がインを守り、ブレーキングで刺し返した。11周目も再度まったく同じ展開となったが、さすがに3周続けて同様のレース運びは許さないという強い意志をみせた村上選手が辛抱の走りで山本の前へ。ファイナルラップでは後ろに控えていた坂本選手がホームストレートでスリップから山本に並びかける。1コーナーでは鼻先をインに入れていた山本であったが、半ば強引に切り込んできた坂本選手の右リアと516号機の左フロントが接触。あわや惨事に発展するかと思われたが双方冷静なコントロールで立て直し、バトルはギリギリまで続いた。マシンを左右に振り、至るところで仕掛け、8コーナーでは2速に叩き込んで逆転を試みたものの一歩及ばず山本は7番手でフィニッシュとなった。これに大島選手のペナルティの影響でリザルトは6位入賞。このレースウィークでの苦労が最後に良い形で実を結んだ。

 

不振にあえぐ工藤は10番手からのレース2スタート。前後には年齢をものともしない熱い走りをみせる#61の平中選手、今シーズン一気にタイムアップし、上位をも脅かす存在となりつつある#129の梅田選手、男性ドライバー顔負けの速さをもつ#778の関選手、レース1で熱いバトルを繰り広げた#55の後藤選手といった顔ぶれ。まさに前レースで激しく競り合った面々が今回もひしめいており、再びその戦いの続きが始まろうとしていた。
工藤の走りは唯一5周目のセクター1でのミスが響き、ポジションアップすることはかなわなかったものの、レースラップ自体は終始安定しており、詰め切れていないマシンを上手く前に進めることに注力していたことが窺える。フィニッシュライン通過時の順位こそ10位とスタート時と変わっていないものの、粘り強く走り続けたことで最終的なリザルトである9位に繋げた。

タイトル奪還がかかる佐藤は4番グリッドからフロントローを臨む。スタートはタイミングもクラッチミートもしっかりと決め。浅井・大島選手、そして後方の上野とともにトップ争いを繰り広げる。2周目のホームストレートで早くも大島選手のスリップからインへ。1コーナーのブレーキング勝負。スタート直後でタイヤは冷えているが、ここでまた日頃のトレーニングの成果がいかんなく発揮され、姿勢を乱すことなく進入。大島選手のラインを潰すことなく立ち上がり2番手へ。しかしディフェンディングチャンピオンの大島選手もまた強い。3周目の3コーナーでアウトに張らんだ佐藤の一瞬の隙を見逃さず、きっちりとインから前に出てポジションを取り返す。上野に前に出られ、そこから少し膠着した状況で迎えた4周目。勝負を急いだ大島選手と浅井の接触によりポジションは3位へ。大島選手は失速を最小に抑え、再びトップに躍り出たもののペナルティが課されたことで実質トップ争いからは脱落していた。こうなると上野との一騎打ち。5周目のホームストレートではスリップストリームからの1コーナー進入でしっかりと前に出たものの、残り3周というところで今度は逆に上野がストレートから1コーナー進入で前へ。シーズンタイトルを確実なものにするためにはここで離されるわけにはいかない佐藤はインフィールドで食い下がり、オーバーテイクの機会を窺う。

ここで前に出ておかなければかなり厳しくなるファイナルラップのホームストレート。慎重に上野のスリップから出て前へ。1コーナーへのブレーキングもしっかり決め、フィニッシュライン目指してひた走った。シーズン中、この2台のバトルを何度見てきたことか。傍から見ていれば見ごたえのある楽しいバトルになるかもしれないが、チームメンバーとしては毎回ハラハラさせられていた。というのもこの二人が前回常に全力で戦っているからだ。本気でぶつかり合い、勝ち取った栄冠にこそ真の価値がある。そしてチェッカーへ。佐藤は最後のレースを優勝という有終の美で飾り、だれもが納得のシリーズチャンピオンを決めた。

 

昨年は第2戦以降、走りとセッティングが上手くかみ合わず苦悩の連続であったが、それを経て今シーズンは一層強くなった。昨今強豪ぞろいの北海道クラブマンカップレースシリーズVITA-01において本成績を収められたことはKOSHIDO RACINGというチームの価値を大幅に高めることになったであろう。この勢いのままに来シーズンの飛躍に繋げたい。

 

 

 

 

 

2024.11.02 北海道クラブマンカップレース 2023 Rd.3 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレース Rd.3 VITA-01

開催日時:2023 年 8 月 20 日(日)

開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

ドライバー:上野 大哲(#11)、佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310) 市川 篤(#516)、工藤 大祐(#910)、

マシン:恒志堂レーシング VITA 11 号機、12 号機、310 号機、516 号機、910 号機

参戦クラス:VITA-01 クラス

天候:予選/雨、決勝/晴れ

路面:予選/ウェット、決勝/ドライ

戦績

上野 大哲 予選:3/20 位 決勝:1/16 位

佐藤 元春 予選:6/20 位 決勝:失格

浅井 康児 予選:9/20 位 決勝:16/16位

市川 篤 予選:13/20 位 決勝:7/16 位

工藤 大祐 予選:11/20 位 決勝:4/16 位

異例の暑さが続く8月の十勝スピードウェイ。過酷な気候の中更別村にて北海道クラブマンカップ第3戦が開催された。第1戦・第2戦同様の顔ぶれが揃う中、今回は86/BRZカップやFormula Beatが併催のため本州からもVITA出場者が来道しており、20台という北海道ではなかなか見ることのできない台数が集まった。予選ウェット、決勝ドライという変化するサーキットに各選手苦戦しながらも白熱したレースが繰り広げられた。

今回Koshido Racing からは、前戦同様に佐藤、浅井、工藤、市川、上野による5台体制での参戦。佐藤、浅井、上野は1・2・3フィニッシュもしており今回も表彰台独占への期待が高まる。

<練習走行>

各チーム第3戦ということもあり、少しずつニューコンパウンドのタイヤへの適応を見せ始めているがKoshido Racing のメンバーもとても順調な仕上がりである。

8月18日、今レースウィークは様々なカテゴリーのレースが併催されるため通常に比べ練習走行枠が2日前にして2本という限られた本数となっている。

猛暑もあってか他チームのドライバーたちがなかなか1分32秒台に入れられない中、佐藤が洗練された走りを魅せ30秒台をマーク。浅井も31秒台をマークし前回1・2フィニッシュの2人がチームを鼓舞する。

工藤、上野、市川はマシンのセットを探りながらの走行。32秒~33秒前半をしっかりキープするものの31秒台への壁はなかなか高い。2本という限られた本数だったため、セットが決まり切らず1日目が終了した。

翌日19日。チームオーナーでありエースドライバーでもある佐藤の12号機がニューカウルへと換装された。

ニューカウルを纏い走行に挑む。この日も流石のタイム、31秒台前半を連発しドライバー・マシンの総合値の高さを証明する走り。翌日の予選決勝は雨の予報、今シーズンの十勝においてウェットの走行がほとんどできていないため懸念点はあるが安定した走りを魅せ走行が終了。浅井・上野も佐藤に続き31秒台をマークする。1・2・3位でゴールした3台が圧倒的な走りを魅せライバルたちにプレッシャーをかける。市川はマシンのエンジンが絶好調とはいえない状況の中インフィールドを上手くまとめ32秒台をマークする。工藤は細かいセットを詰めながら前日のタイムをコンマ4秒ほど短縮した。

<練習走行結果>

佐藤 元春:1‘30.912(8/18)

浅井 康児:1‘31.433(8/18)

工藤 大祐:1‘32.477(8/19)

上野 大哲:1‘31.750(8/19)

市川  篤:1‘32.545(8/19)

<公式予選>

天気は雨。路面はウェット。前日までの予報が重要な時に限ってあたる。

KoshidoRacingの面々は今シーズンニューコンパウンドに変更後、十勝でのウェット走行がほとんどない。富士スピードウェイにおいて経験済みの佐藤・上野の感覚を頼りに各車アドバイスを受ける。

予選開始2分前の表示がコントロールタワーに出され、各マシン一斉にピットから飛び出す。

先頭でコースに入った佐藤、決してウェットが苦手なドライバーではないがなかなかタイムが上がらない。マシンが思うように動かない中、様々なラインやブレーキングを試すが先頭とは2秒の差がある。44秒台で常に走るが後半もペースを上げきれず6番手でチェッカー。予選終了後、ウェットという状況に対して脚が硬いセットのままという事が発覚したが、安堵するどころかさらに集中力を上げ決勝へと準備をする。

大雨の2023FCR-VITA初戦において2位という成績を収めている上野、ウェットは得意としている印象だが今年から走り始めたばかりの十勝に序盤苦戦している模様。44秒台となかなかペースが上がらない中、最終計測ラップにてアジャストさせタイムを更新。3番手でチェッカーを受けた。

工藤、市川はニューコンパウンドのタイヤになってから初のウェット走行に近い状況。しかしそんな言い訳などするわけもなく果敢に挑んでいく。難しい状況の中、序盤はタイヤの感触を探りながらの走行。後半になりラインの変更やブレーキングの調整、スリップを利用しながらタイムアップを試みるが、悔しくも45秒台でチェッカーを受けた。

Rd.2で2番手フィニッシュと好成績を収めていた浅井、前日の練習走行の際エンジントラブルが起きていた。幸いオイルが漏れたりする故障ではなかったが、パフォーマンスは落ちてしまう内容であった。載せ替えが望ましい状況であったが、スペアエンジンがなく現状での走行を余儀なくされた。そんな状況の中、ボトムスピード重視の走りと総合力の高さをみせ9番手でチェッカー。

<決勝>

気温24℃と前日と比べると10℃以上涼しい。予選の路面はウェットであったが、決勝までの数時間でドライ路面に変化。予選では悩まされたドライバーたちも、ドライでの巻き返しに期待が高まる。

86/BRZレースで十勝に訪れていた鶴賀選手も応援に駆け付けてくれた。

各選手自らのグリッドにマシンを収め、精神を統一する。

20台すべてのマシンがフォーメーションラップを終え、グリッドに着く。シグナル点灯、消灯と同時に各車スタートを決める。順当に1コーナーへ進入するかと思いきや、2番手スタート#778大島選手がシフトミスにより5番手まで後退。6番手スタートの佐藤とサイドバイサイドの状態で1コーナーへと進入する。その後も距離が近い状態で走っていたが最終コーナー立ち上がりで佐藤のマシンが片輪コースアウトしてしまいペースダウン。後ろから迫っていた#77村上選手が半車体前に出るがサイドスリップにしっかり入りホームストレートで佐藤が抜き返し前へ。

前方では徳升選手・上野・坂本選手・四倉選手・大島選手がトップ争いを至近距離で展開している。佐藤は先頭集団がペースの上がらないうちに追いつきたいところ、3周かけじっくりと差を詰め4周目の第4コーナーでついに追いつく。先頭集団最後尾の坂本選手にプレッシャーをかけ続けチャンスを伺う。最終コーナー手前で射程圏内に入り、立ち上がり重視のコーナリングでスリップへ、ホームストレートで坂本選手をパスし5番手に浮上。その先では四倉選手・大島選手が激しい3番手争いを展開しておりペースがダウン、2台の後ろに張り付きプレッシャーをかけながらタイミングを伺う。またもや最終コーナー、激しく争う二台と少しスペースを空け完全立ち上がり重視のコーナリングでスリップに入る。ホームストレートで二台をパスし3番手まで浮上し、1コーナーへ進入。少し離れた先頭では、徳升選手と上野が激しいトップ争いを繰り広げている。バトル中はどうしてもペースが落ちてしまうため、3番手を単独走行している佐藤は少しでも早く前方二台に追いつき勝負を仕掛けたいところだ。ホームストレートで2台に並びかけるも順位変わらず2コーナーへと進入、ここからというところでだれも予想していなかったSC(セーフティーカー)が入ってしまう。残り3周までSCが入り解除、全車間隔が詰まっているためここからのワンミスの影響はかなり大きいというとてつもない緊張感の中レースが再開。最終コーナーからの立ち上がりを得意とする佐藤は、先頭2台にバトルを展開させホームストレートで2台をパスすることに成功、ここで遂に1番手へ浮上。最後までポジションを守り切り、先頭でチェッカーを受けた。

3番手スタートの上野はスタートを決め、2番手の大島選手がシフトミスにより後退した為2番手で1コーナーへと進入。先頭徳升選手とはFCR-VITA初戦でも先頭バトルを繰り広げており、上野は何としてもリベンジを果たしたいところだ。2周目までなかなか距離が詰まらなかった上野だが、3周目の2コーナーで徳升選手がやや大きめのオーバーを出しすかさず距離を詰めることに成功。その後も先頭2台の激しいバトルは続き、上野が先頭になったタイミングでSCが入ってしまう。残り3周でSC解除、全車両距離が詰まり、トレイン状態でレースが再開する。先頭の上野はスリップに入れないため1コーナーで2番手徳升がインを刺す、SC前同様やはりこの二台の激しい戦いは続く。最終コーナーを立ち上がりストレート、上野は先頭の徳升選手をオーバーテイクし1番手かと思いきやさらに外側からチームメイトの佐藤が先頭二台をオーバーテイク、レース終盤で佐藤→上野→徳升の順となり1コーナーを抜けていく。その後、前を走る佐藤の背中を追いたいところだが後ろからプレッシャーを放つ徳升を抑え2番手でチェッカーを受ける。

エンジンが不調の浅井。スタート後#55後藤選手にパスされてしまうが、後ろにつきチャンスを伺う。浅井を追いかけるかのように、後ろを工藤・市川が続く。トレイン状態のまま2周目に入った第2コーナーで#55後藤選手の幅寄せにより浅井がスピン、バートン選手→工藤→市川→平中選手の4台が集団になりレースを展開していく。2周目でスピンしてしまった浅井、決してレースを諦める姿勢を見せることはなかった。一度最後尾まで落ちたものの不調のエンジンでありながら、ボトムスピード重視の走りで不調を感じさせない走りを魅せる。6周目で12番手を走行している#95澤田選手をロックオン、8コーナーで澤田選手のインに飛び込み12番手にポジションアップ、ここからというところでSCが入ってしまう。SC解除後果敢に仕掛けるも前を走る市川をパスし11番手でチェッカーを受けた。

一方4台の集団でレースを繰り広げていた工藤・市川、工藤は前方を走るバートン選手の背後から常にプレッシャーをかける走り。後方には市川・平中選手が続いており無理に仕掛けペースを落とすわけにもいかず慎重にタイミングを狙い続ける。後ろを走る市川も平中選手からのプレッシャーを感じながらチームメイトの工藤に続く。工藤は前方を走るバートン選手ようやくパスし市川も続きたいところであったがここでSCが入ってしまう。工藤→バートン選手→市川→平中選手の順となった。

SC解除後、工藤は前方を走る後藤を捉えたいところであったが2周では追いつけず3ポジションアップの8番手でチェッカーを受けた。市川はSC解除後、前を走るバートン選手にプレッシャーをかけ続ける、ストレートでスリップに入るもストレートで劣ることをわかっている市川は無理することなく後ろにベッタリくっついている。パスし浮上したいところであったが、8コーナーでラインを乱してしまい後ろを走る平中選手とチームメイトの浅井に前を許してしまう。巻き返しを図るがコントロールラインは目の前、12番手でチェッカーを受けた。

第1戦、第2戦を経て迎えた第3戦。はじめてのウェットで迎えた予選、SCが長時間入る難しいレースであったが熱い戦い、劇的なドラマを魅せてくれた。この経験をバネにKoshidoRacinngの面々はこの先も成長し、お互いを高め合う強いチームとなり上位独占めがけて走り続ける。

<チームオーナーコメント>

レースウィーク前より車検を厳しくするという話がありましたので、事前にメカニックへ車両に不適切な部分がないかの確認を打診しておりました。結果、スロットルバルブの変更で失格という形となり寝耳に水の状況ではありましたが、ドライバーでありチームオーナーでもありますので今回の結果をしっかり受け止め次に繋げなければならないと思っています。

レースはルールに則るのが大前提として、レース前車検での項目を増やし事前に改善要求ができるようになるとよいのではないかと感じます。レースまでの運営時間や、人員など様々な制約の中ではあるので現時点ではやむを得ないと思います。

今回失格となってしまいましたが、本州から参戦しているドライバーの方もいたためとても走りごたえのあるレースとなりました。VITAの絶対的王者の一人でもある徳升選手が参戦しており、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットにおいては完敗を喫しています。今回は私のホームコースである十勝スピードウェイでのレースのため、徳升選手の壁になりたいという気持ちを強く持ち走りました。結果二人とも失格になってしまいましたが、バトル自体は非常にクリーンかつ白熱した戦いであり最終的に私が前でチェッカーを受け十勝スピードウェイ最速の座を守ることができました。

今レースでの様々な結果を糧に、ドライバーとしてチームとしてレベルアップを目指し頑張りたいと思います。引き続きご声援のほど、よろしくお願いいたします。