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2024.11.05 北海道クラブマンカップレース2023 Rd.5 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレースRd.5 VITA-01

■開催日時:2023年10月15日(日)

■開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

■ドライバー:上野 大哲(#11)、佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310)
山本 聖渚(#516)、工藤 大祐(#910)、

■マシン:恒志堂レーシングVITA 11号機、12号機、310号機、516号機、910号機

■参戦クラス:VITA-01クラス

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績

上野 大哲  予選:2/14位 Race1:2/14位 Race2:2/14位

佐藤 元春  予選:5/14位 Race1:4/14位 Race2:1/14位

浅井 康児  予選:1/14位 Race1:1/14位 Race2:10/14位

山本 聖渚  予選:9/14位 Race1:8/14位 Race2:6/14位

工藤 大祐  予選:11/14位 Race1:9/14位 Race2:9/14位

 

2023月最後の北海道クラブマンカップレース VITA-01。本戦はシーズン中唯一2ヒート制で争われ、それぞれが一レースとして扱われる。1ヒート目は第4戦までと同様に予選タイムがグリッドに反映されるが、2ヒート目は1ヒート目のベストラップが採択される仕組み。晩秋の北海道でエンジンも良く廻るこの時期、14台のVITA-01がラップタイムの短縮とライバルとのバトルにしのぎを削る。

KOSHIDO RACINGはレギュラー参戦の佐藤、上野、浅井、工藤に加え、弱冠20歳でポルシェスプリントチャレンジジャパンをはじめFIA-F4やS-FJなど多彩な経歴を持つ山本聖渚を迎えての5台体制。レース前日・前々日の練習走行では20℃を越える気温の中、各車1分30~31秒台をコンスタントにマークし、唯一310号機の浅井が1分29秒台という驚異の走りをみせ、その好調ぶりをアピールした。


<公式予選> 

天気は快晴。気温14度、湿度60度弱と、コンディションとしてはまずまず良好。
KOSHIDO RACINGでまずはじめにコースに出たのは佐藤。#778大島選手の後に続いてピットアウトしたがスリップストリームを狙う感じではなく、少し間隔をあけての走行をとなった。単走でひたすら集中してタイムを削っていくスタイルで、アウトラップからハイペースでタイムを刻んでいく。これまでの走り込みからタイヤの美味しいところは熟知しており、いち早くそこに到達するために時間を無駄にすることはない。

2周目からは早くもアタックラップに移行していく。最終的に計13周の全開走行となったが、セッション全体を通してクリップにつけなかったのはほんの数回。アンダーステア気味で最終コーナーがなかなか決まらない状況の中、苦しい思いをしつつも並外れた集中力で常に1分30秒台で周回を重ねていった。スリップストリームを得る場面には一度恵まれることがなく、5番手で予選を終える。

上野はアウトラップから2周目にわたって丁寧にタイヤに熱を入れていく。満を持して3周目からアタック開始。と思われたが1コーナーのブレーキングで早くも相当なアンダーステアに苦しみ、即時ブレーキバランスを2段階リア寄りへ。それでもなかなかラインが定まらないまま3周目を終えて4周目へ突入。やはり1コーナーでのアンダーが強く、ブレーキバランサーに手をかけ、リアにさらに1段階寄せる。ようやくマシンの姿勢が決まりだした5周目から1分30秒台を継続的にマーク。8周目をまわる頃には挙動はすっかり安定し、各コーナーのラインも美しい弧を描いていた。上野もまたスリップストリームの恩恵を受けることなく予選を走り切り、2番手のポジションを獲得した。

初の十勝スピードウェイかつVITA-01搭乗のため練習走行で苦労していた山本は、試行錯誤しながら走りを組み立ててきた結果、この予選までにようやく周りの強豪たちと渡り合えるタイムを刻めるようになっていた。それでもアンダーステア傾向の強い516号機には手を焼き、ありとあらゆる引き出しを駆使して周回を重ねていく。その走りはデータロガーに裏打ちされており、いかにしてクルマを曲げようとしているか、前に進めようとしているかが見てとれた。
序盤から1分31秒台を刻み、ラップタイムはほぼブレなし。途中走行しながらブレーキバランスをフロント寄りに変え、それに自身の走り方をアジャストして強アンダーと対峙し続ける。苦しいながらもようやく思い描くラインにのせ始めたところで、練習走行でのベストから約0.02落ちの1分31秒067をマークし、最終的に9位につけた。

工藤は練習走行初日から何度かセッティング変更を試みたものの、それがなかなか嚙み合わず苦しい展開を強いられていた。またトラブルにも見舞われ、精神的にベストなコンディションとはいえない中でのレースウィークとなった。とはいえどもこの予選においては毎周回1分31秒台前半を記録しており、決して遅いわけではない。ただ、本人の納得のいく方向にマシンが向かなかったことで本来のベストな走りからは遠ざかっていた状況である。今期の集大成である最終戦ながら改めてセッティングの奥深さというものを痛感していた。順位的には11番手と出遅れたものの、これまでの決勝レースでは逆境に屈しない粘りの走りを見せていた工藤。後方からの巻き返しに期待が寄せられた。

このレースウィークを通して最も好調ぶりを見せていたのは浅井。前述の通り練習走行ではチームトップのタイムをマークしていたのに続き、予選においても全体で唯一の1分29秒台を叩き出し、堂々のポールを獲得した。

今期はとにかく時間ができたところで単独でも十勝スピードウェイを走り込み、データ取りと様々なセッティングを試すことに勤しんでいた浅井。もちろん毎回ベストな結果が出るわけではなかったが、減衰調整を1段階ずつ試したりタイヤ内圧をコンマ1ずつ調整するといった微細なテストをたったひとりで続けていた。そのデータ収集と走り込みの集大成がここにきて開花したといえよう。本人的にはまだ詰めるべき箇所は残っていたようであるが、十分すぎる結果に北海道クラブマンカップ初優勝への期待が高まった。

予選タイム
上野 大哲:1’30.188
佐藤 元春:1’30.458
浅井 康児:1’29.923
山本 聖渚:1’31.067
工藤 大祐:1’31.137

 

Race1

予選時から少々気温は上昇したものの、ほぼコンディションに変化はなし。グリッド上には各マシンが整列し、レース前最後のチェックとチームの激励を受けている。予選ではトップから1秒以内のタイム差の中に過半数が凝集し、一触即発のバトルが予想された。そのような中、タイトル奪還がかかる佐藤であったが「楽しみながらオーバーテイクしていきます」とグリッド上で笑顔を見せ、気負いは感じられない。スポットで初の十勝スピードウェイ公式戦となる山本には少々緊張も窺えたものの、他のKOSHIDO RACINGドライバーもできるかぎりの走りをしつつ、最終戦を楽しむという気概が垣間みえた。

ほどなくしてグリッドと選手紹介を終え、フォーメーションラップがスタート。いよいよスタートの時を迎える。しかしここでポールポジションの浅井、なんとシグナルブラックアウト直前にクラッチをわずかにミートさせてしまいマシンが一瞬前へ…。ジャンプスタート裁定は免れないと素早く判断し、本スタートを一瞬遅らせて対応。その結果2・3・4番手スタートのライバルたちを先行させる結果となってしまった。しかしその後はひたすら冷静にトップ返り咲きを狙う。2周目のホームストレートでは#77村上選手のスリップストリームにしっかりと入り、 1コーナーのブレーキングでパス。続いて射程圏に#17坂本選手を捉え3周目のホームストレートでもスリップからのパスを狙う。しかし坂本選手もまたトップの上野のスリップの恩恵を受けており、#11・#17・#310の3台は横並びのまま1コーナーへ飛び込んでいく。最もイン側にいた上野は最大限ブレーキングを遅らせてトップの死守を図ったものの、ブレーキロックで姿勢を乱し後退。次にイン側を陣取っていた坂本選手は、もつれつつも上野に競り勝ち、辛うじて前に出る。しかし最もアウト側から飛び込んだ浅井は、この上野と坂本選手の競り合いで失速した隙を見逃さずすかさず前へ。1コーナーを立ち上がるまでに一気に2台をパスして早くもトップを奪還した。その後310号機の前はオールクリア。本レースウィークを通して抜きん出て速かった浅井はみるみるうちに後続を引き離していく。

その後も坂本選手と上野のバトルが続いたことで2位以下のレースペースが上がらず、その差は拡がっていく。ジャンプスタート判定を受けた浅井に課せられたタイムペナルティは5秒。サインガードのピットクルーは必死に更なるペースアップへの檄を飛ばす。それを見た浅井は直感的に勝つためにはそうしなければならないという指示であると感じたという。鬼の巻き返しを図るべく奮闘し、レース中のベストタイムをマークしながらより後方を突き放すことに成功。見事5.118秒の差をつけてチェッカー。自らの失敗は自らの手で取り返し、誰もが納得の勝利を収めた。

一方、浅井のスタートトラブルでトップに浮上した上野。オープニングラップをそのまま制し、2周目もトップをキープ。しかし3周目のホームストレートで坂本選手にスリップストリームに入られ、1コーナー進入までに横並びに。ブレーキング競争では余裕があったものの、坂本選手が早めにインに切り込むライン取りだったために余儀なくブレーキロックさせながら回避。さらに横に並んでいた浅井にも先行を許し、3番手に後退する。
一旦は前に出られたものの総合的なペースでは坂本選手に勝る上野。インフィールドでは容赦なくプレッシャーを与え続けた。何度もブロックラインで応戦する坂本選手。やきもきしていた上野であったが、レコードラインを外しながら走行することで逆にペースの安定性を欠く坂本選手の隙を突き、何度か前に出ては抜き返されるという展開を繰り返す。雌雄を決したのは6周目。5周目の最終コーナー立ち上がりから坂本選手の背後にピタリと付け、スリップから出た上野はアウトから1コーナー進入で仕掛ける。決して無理はせず、イン側の坂本選手がアウトに張らんでいくのを冷静に見極め、クロスラインで立ち上がり2コーナーまでに確実にパスした。その後は残り4周を浅井を追うことに注力していたものの、後方からは坂本選手をパスしてきた#778大島選手が迫り、再びバトルを強いられる。しかしあくまでも自身の走りに徹し、ミスなく走り切ったことでポジションを守り切り、2位でフィニッシュとなった。

スタートはミスなく決めた佐藤。前方では浅井のミスによる混雑もあり、混戦模様となったトップ争いに肉薄する。レースでは強さを発揮し、前を行くライバルたちがコーナーでクリップを外す中、一人丁寧にベストラインをトレースし差を詰める。まずは4周目、上野とのバトルで1コーナーの立ち上がり速度が鈍った村上選手を捉え、2コーナー進入までアウト側で並走。そのまま3コーナーアウト側で粘り、続く4コーナーでインとアウトが逆転し前へ。次なるターゲットは2位争いを展開していた坂本選手と上野。この二人のバトルが数周にわたって続き、ペースが上がらない中を何とかこじ開けようと試みるも前に出る機会が窺えず、その間に一気に後方に迫ってきた#778大島選手に先行を許す。大島選手はディフェンディングチャンピオンの意地にかけ、坂本選手も強烈にプッシュ。2コーナーでラインの自由を阻まれたものの驚異のコントロールで前に出る。これにより4位争いは坂本選手対佐藤の構図へと発展。残り周回数が3周と少なくなる中、確実に仕留めるべく7周目の最終コーナーを丁寧にクリアし、坂本選手のスリップへ。コントロールタワーを越えたところで横並びに。坂本選手もそう容易く前には出すまいとイン側1台分の車幅を残して牽制。これに動じることなく佐藤はイン側のまま1コーナーのブレーキング勝負を仕掛け、3速にシフトダウンして立ち上がりの蹴り出しで前に出た。その後は2番手争いに加わるべく上野と大島選手を追ったが、残り1周という状況では如何ともし難く4番手でフィニッシュした。この入賞によりシリーズタイトル奪還に一歩近づくこととなり、Race2への期待とプレッシャーが高まった。

516号機に手を焼いている山本。スタート前は緊張を隠せない様子であったが、シグナルがブラックアウトした瞬間にそんなことなど忘れさせるような蹴り出しと1コーナーへの飛び込みをみせる。スタートでもたついた#555の星野選手の前に出ると、続いて#779関選手にも積極的に仕掛けていく。若くして経験値が豊富な山本はオープニングラップの3コーナー進入で素早くラインを変え、インから関選手をパス。一気にトップ集団に迫る勢いでレースを展開する。それでも癖のある516号機では自身の本来の走りを発揮しきれず、集団からは徐々に離されていく。
奮闘を続け、一定の距離からは離されない走りを見せていた山本であったが、5周目の7コーナーで一瞬姿勢を乱し、切り返す8コーナーで一瞬の隙を突かれ星野選手にインに飛び込まれ前に出られてしまう。しかし続く最終コーナーで著しくオーバーステアを誘発し、立ち上がり加速がかなり鈍った星野選手をすかさず再オーバーテイク。以降一進一退の攻防が続き、7周目にはスリップに入った星野選手が再び山本の前に出て、フィニッシュラインを越えるまで激しいバトルを展開した。
次第に5位争いをしている坂本選手と村上選手に肉薄し、最後は4台での接戦にもつれ込む。ただ、ここで516号機のリアタイヤが根を上げ出し、付いていくのがやっとの状態。7位の星野選手からコンマ4秒差でチェッカーを受けた。

決勝直前まで試行錯誤を繰り返していた工藤は11番手からのスタート。しかし、やはり上手く波に乗れずスタート直後から勢いのある#129の梅田選手と#55の後藤選手に早々に先行を許していた。苦しい展開が続き、ようやく910号機の動きに馴染んできたのは3周目あたりから。最終コーナー立ち上がりをきれいにまとめ、#779関選手のスリップストリームへ。そのまま4周目の1コ-ナー進入ブレーキングで前へ。その勢いのまま梅田選手の背後につけて猛プッシュし続ける。

練習走行から予選、そしてレース1序盤までの納得のいかなかった走りを払拭すべく、続く5周目のホームストレートで梅田選手のスリップに入り、しっかり狙いを定めて再び1コーナーへの飛び込み勝負。ここでも工藤が前に出た。次なる勝負の相手は後藤選手。ペースは完全に工藤が上回っており、右へ左へとマシンを振りプレッシャーをかける。9周目のホームストレートから1コーナーへのブレーキング競争。往年の走り屋のようなドライビングで直前まで背後につけ、ブレーキング開始のタイミングで素早くインへ。ラインをこじ開け、立ち上がりで競り勝つ。これでスタート時から先行を許した2台へのリベンジは完了。ここからの2周弱は工藤を先頭に梅田選手・後藤選手・平中選手・関選手の5台による9番手争いが激化。ラインが交錯し、時に接触もみられトップ争いも霞んでしまうほどのバトルが展開されていた。何度も仕掛けられたものの守りの走行ラインを駆使し、ギリギリのところで逃げ切りに成功した工藤に軍配が上がった。

ポディウムには浅井が初のてっぺんを勝ち取った。レース1のベストラップでグリッドが決定されるレース2においても激しいトップ争いが予想される。

Race2

レース1のフィニッシュから2時間後、早くもレース2の開始時間が迫っていた。2023年シーズン北海道最後の公式戦を前に、各ドライバー後悔のない走りをすべく気合が入る。

レース1は10周で争われたが、レース2は12周回となる。

レース1で見事勝利を挙げた浅井は、今回もポールポジションスタート。二度同じミスをすることは許されず、完全勝利に向けて慎重にスタートの刻を待つ。シグナルブラックアウトとともに若干ホイルスピンさせながらもベストなスタートを切った。追随するセカンドポジションの大島選手を牽制しつつもラインを外すことはなく、独走を試みる。しかし、2周目の3コーナーにてアウト側に左後輪を落とすというらしくないミスを犯し、さらには3周目の1コーナーでも挙動を乱したことで一気に後続との距離が縮まってしまった。何とか体勢を立て直し、再び逃げ切り体勢を取ろうとした矢先の4周目、8コーナーの進入でインを刺そうとした大島選手と接触。あえなくスピンしてしまう。

幸いコースからは大きく外れず、自力で戦線復帰したものの、実質的にトップ争いからは脱落することとなった。レースに戻ってからは最後尾からポジションを全力で取り返しにいくべく奮闘したが、10番手フィニッシュが精一杯の結果となった。完全勝利を目論んでいただけに、この結果には相当悔しさが残る浅井であった。

レース1で2番グリッドだった上野はレース中のベストラップが伸びず、レース2は6番手からのスタート。スタート自体は問題なく決め、3番グリッドの#77村上選手がストール気味となったこともあり、その後方5番グリッドの#555星野選手も出遅れ、一気に4位にポジションアップする。その後すかさずトップ集団に食らいつき、まずは佐藤とのバトルへ。1コーナーではラインをアウト側に振ったため、佐藤が先行し後を追う展開。浅井、大島選手、佐藤と連なってのバトルは誰が前に出てもおかしくない状況。4周目のホームストレートで佐藤のスリップから出た上野は1コーナーのブレーキングで前へ。少し離れてトップ争いをしていた浅井と大島選手を追う体勢をとったところで、その2台が接触。双方コース外に飛び出していく中、その間隙をすり抜けトップに躍り出た。しかし、即コース復帰し直後の5周目ホームストレートで背後につけていた大島選手にオーバーテイクされ、再び2位へ。その次の周には同じくホームストレートで佐藤にスリップに入られ、先行を許しポジションは3位となる。そこからは大島選手→佐藤→上野の付かず離れずの構図が続く。

残り3周となったホームストレートで今度は佐藤のスリップについた上野が前へ。2番手を取り返す。チームメイト同士とはいえ、同じレーシングドライバーとしての意地のぶつかり合い。忖度なしのバトルが続く。そして佐藤も黙ってはいない。その次の周ではまったく同じ展開で上野から2位を取り返し、3位へ後退。最後の最後まで激しい競り合いは続いたが、チェッカーまでに再び前に出ることはかなわず、3番手でフィニッシュした。しかしこの後、浅井への接触で大島選手にペナルティ裁定が下り、リザルトは2位。予選。レース1、レース2すべてで2位の成績を収め、シリーズにおいても2位を獲得した。

レース1は8番手でチェッカーを受けた山本は、レース2も8番グリッドからのスタートとなった。予選から徐々に戦績を上げてきており、最後のレースではどのような走りを披露してくれるのか周囲の注目も集まっていた。
スタートはタイミングこそ平凡ではあったものの、絶妙なクラッチミートで一気に3台の前へ。5位からの滑り出しというファインプレーをみせる。すぐ後方には星野選手と#17の坂本選手とが控えており、一切油断できない状況。挙動が安定しない516号機を巧みにコントロールし、インフィールドではポジションを守り切った。2周目のホームストレートではしっかりとスリップストリームに入られていたこともあり、星野選手に先行を許す。その後の3周目でも同様に坂本選手に前に行かれたが、インフィールドでの走りが抜群に優れている山本は4コーナーの飛び込みでできた坂本選手の隙を見逃さず、すかさずインに切り込んでポジションを取り返す。ここから坂本選手との激しいドッグファイトが始まった。5周目でも坂本選手は容赦なく抜きにかかり、コントロールラインを越えたところでイン側から前へ。1コーナーでラインがクロスし、2コーナーへ向けて並走。坂本選手はラインの自由度を阻むべく山本にマシンを寄せる。しかし山本も一歩も引かず、2コーナーは3速に入れて応戦。立ち上がりの鋭さに勝る516号機が辛うじて前に出てポジションキープした。

数周は動きがなかったが9周目、スタートミスしつつ後方から追い上げてきた村上選手が山本の後方につけ、1コーナーまでに前へ。だがそこは山本。得意のクロスラインからポジションを取り返す。10周目も同じ展開となりかけたが今度は山本がインを守り、ブレーキングで刺し返した。11周目も再度まったく同じ展開となったが、さすがに3周続けて同様のレース運びは許さないという強い意志をみせた村上選手が辛抱の走りで山本の前へ。ファイナルラップでは後ろに控えていた坂本選手がホームストレートでスリップから山本に並びかける。1コーナーでは鼻先をインに入れていた山本であったが、半ば強引に切り込んできた坂本選手の右リアと516号機の左フロントが接触。あわや惨事に発展するかと思われたが双方冷静なコントロールで立て直し、バトルはギリギリまで続いた。マシンを左右に振り、至るところで仕掛け、8コーナーでは2速に叩き込んで逆転を試みたものの一歩及ばず山本は7番手でフィニッシュとなった。これに大島選手のペナルティの影響でリザルトは6位入賞。このレースウィークでの苦労が最後に良い形で実を結んだ。

 

不振にあえぐ工藤は10番手からのレース2スタート。前後には年齢をものともしない熱い走りをみせる#61の平中選手、今シーズン一気にタイムアップし、上位をも脅かす存在となりつつある#129の梅田選手、男性ドライバー顔負けの速さをもつ#778の関選手、レース1で熱いバトルを繰り広げた#55の後藤選手といった顔ぶれ。まさに前レースで激しく競り合った面々が今回もひしめいており、再びその戦いの続きが始まろうとしていた。
工藤の走りは唯一5周目のセクター1でのミスが響き、ポジションアップすることはかなわなかったものの、レースラップ自体は終始安定しており、詰め切れていないマシンを上手く前に進めることに注力していたことが窺える。フィニッシュライン通過時の順位こそ10位とスタート時と変わっていないものの、粘り強く走り続けたことで最終的なリザルトである9位に繋げた。

タイトル奪還がかかる佐藤は4番グリッドからフロントローを臨む。スタートはタイミングもクラッチミートもしっかりと決め。浅井・大島選手、そして後方の上野とともにトップ争いを繰り広げる。2周目のホームストレートで早くも大島選手のスリップからインへ。1コーナーのブレーキング勝負。スタート直後でタイヤは冷えているが、ここでまた日頃のトレーニングの成果がいかんなく発揮され、姿勢を乱すことなく進入。大島選手のラインを潰すことなく立ち上がり2番手へ。しかしディフェンディングチャンピオンの大島選手もまた強い。3周目の3コーナーでアウトに張らんだ佐藤の一瞬の隙を見逃さず、きっちりとインから前に出てポジションを取り返す。上野に前に出られ、そこから少し膠着した状況で迎えた4周目。勝負を急いだ大島選手と浅井の接触によりポジションは3位へ。大島選手は失速を最小に抑え、再びトップに躍り出たもののペナルティが課されたことで実質トップ争いからは脱落していた。こうなると上野との一騎打ち。5周目のホームストレートではスリップストリームからの1コーナー進入でしっかりと前に出たものの、残り3周というところで今度は逆に上野がストレートから1コーナー進入で前へ。シーズンタイトルを確実なものにするためにはここで離されるわけにはいかない佐藤はインフィールドで食い下がり、オーバーテイクの機会を窺う。

ここで前に出ておかなければかなり厳しくなるファイナルラップのホームストレート。慎重に上野のスリップから出て前へ。1コーナーへのブレーキングもしっかり決め、フィニッシュライン目指してひた走った。シーズン中、この2台のバトルを何度見てきたことか。傍から見ていれば見ごたえのある楽しいバトルになるかもしれないが、チームメンバーとしては毎回ハラハラさせられていた。というのもこの二人が前回常に全力で戦っているからだ。本気でぶつかり合い、勝ち取った栄冠にこそ真の価値がある。そしてチェッカーへ。佐藤は最後のレースを優勝という有終の美で飾り、だれもが納得のシリーズチャンピオンを決めた。

 

昨年は第2戦以降、走りとセッティングが上手くかみ合わず苦悩の連続であったが、それを経て今シーズンは一層強くなった。昨今強豪ぞろいの北海道クラブマンカップレースシリーズVITA-01において本成績を収められたことはKOSHIDO RACINGというチームの価値を大幅に高めることになったであろう。この勢いのままに来シーズンの飛躍に繋げたい。