2025.06.20 ENEOS スーパー耐久シリーズ2025 Empowered by BRIDGESTONE 富士スピードウェイ公式テスト
スーパー耐久シリーズの山場となる富士24時間レースを月末に控え、チームは事前テストにて富士スピードウェイに来ていた。
今回のレースは以前にVITA-01の耐久レースでAドライバーの佐藤とタッグを組んだ経験もある大宮賢人選手をEドライバーとして起用し、5名体制で臨む。
富士スピードウェイは各ドライバーとも比較的走行経験が豊富なサーキットであるが、スーパー耐久用のロードスターで走行するのはあくまでも今回が初めて。参戦初年度というだけあり、手探りの状態からのスタートである。まして今回は鈴鹿でのクラッシュ後に応急対応にて乗り入れており、走行の目的はセッティングおよびトラブルシューティングが主なものとなった。
■Daytime Session
午前の1本目の走行枠は最終調整の時間に充て、走行は午後から。まずは柴田がファーストドライバーを務め、マシンの状態を見極める。
動きとしては特定のコーナーにおけるアンダーステアと何らかの原因によって起こる振動が悩ましい状況。しかしセッティングではない別の試みでマシンの動きは改善されており、寧ろそれがエビデンス取得を難儀させる要因となっていた。
車体自体は走行に問題ないレベルの状態であり、以降のセッションに向けてよい滑り出しとなっている。
2本目は1本目の走行枠で解明しきれていない問題を解決すべく、急遽スーパー耐久専有走行枠以外にも一般走行枠への出走を決行。このセッションも前半まずは柴田が搭乗し、1本目で試みたことを確証に変えるべく走行を重ねるが結論には至らなかった。しかしながらマシンの状態は問題なく、続いて搭乗の佐藤も良いペースで計測ラップへ。今回初めてこの車両に触れる大宮も、手探りの状態から徐々に自身の走りを組み立て、他ドライバーと遜色ないタイムをマークしていく。浅井・山本は消耗したタイヤながらレース本番を想定したようなペースを維持し、依然として不足していたマシンの走行データの取得にひと役買う形となった。
■Night Session
今回のテストはこの夜間走行がメインとなる。日没とともに一気に肌寒さが感じられる富士の夜。本セッションは18:30から2時間弱にわたって執り行われた。走行開始直後はマシンたちもまだ夕日に照らされていたが、ほんの数周回のうちに辺りは一気に暗くなっていく。
ドライバーは柴田からスタート。ピットアウト後早々に無線でエンジンが吹けないと連絡が入る。ピットではエンジニアがマシンの状態を常に確認しており、即時原因を特定。次第にマシンは元々の状態を取り戻し、柴田は本来のペースでの走行が可能に。常に2分6秒台のハイペースで周回していた。
続いての搭乗ドライバーは佐藤。ピットアウト後ほどなくして赤旗が降られ、計測できない状態となる。ほどなくしてコースオープンとはなったが、燃料満タンでタイヤもずるずるの状態ながら2分6秒台をマークし、本番想定としては十分すぎる結果となった。佐藤は前戦鈴鹿から好タイムを刻み続けており、今回もその良い流れを汲んでいる。24時間は長丁場なだけに油断はできないが、チームオーナー自ら勝ちに行く姿勢を見せることにチーム全体の士気が高まる。
次の搭乗者は大宮。この日初めて乗ったマシンでありながらかなり短い時間でマシンに順応していく。現役若手ドライバーならではの吸収の速さとセンスで周回するたびにタイムを短縮。最終的に佐藤、柴田に並ぶ2分6秒台とし、24時間レースの助っ人という枠を超える卓越した走りに皆が期待を寄せた。本人は最高速こそ高くはないものの、軽くてよく止まり、よく曲がるマシンにかなりの好感触を得ていた様子。ただ、それだけではなく普段搭乗しているF4にはない動きと速度域に合わせたドライビングを組み立てるなど、走りへの追及にも余念がない。何より初めての夜間走行が楽しいと口にする大宮。普通のドライバーであれば夜間の走行は疲労度合いも格段に上がる。そこを楽しいと話してしまうあたり、大物の片鱗を見せつけられたような気分である。
続く5人目は山本。ラップタイムは問題ないが、左のリアで異音を感じ取り、様子を見ながらの走行を強いられる。計測ラップはとれず、一旦ピットイン。マシンチェックの後、改めて2周の計測へと突入する。ピックアップ(タイヤかす)を回収したか、挙動にも影響が出ている様子。2分9秒フラットから7秒台へと押し上げ、限られた計測の中でしっかりと役割を果たした。
6人目は浅井。今シーズン初めて経験するS耐という空気の中、初戦から常に不安を訴えている浅井であるが、蓋を開けてみれば2分8秒台半ば~9秒台をコンスタントにマーク。やはりもてぎや鈴鹿よりは格段に走り慣れたステージということもあり、他クラス車両が入り乱れる、しかもナイトセッションという環境でありながら予想以上の結果を刻んでいく。
最後の搭乗は再び柴田。マシンの状態をチェックしつつ、余裕をもっての周回。このテストが終了後にはマシンのフルメンテナンスを控えており、それに向けての問題の洗い出しとメカニックへのフィードバックを以て走行を終了した。
本テストでは新たに参入した大宮を含めたドライバーチェンジの訓練も行われた。その分一人一人のスティントは短縮されてしまうが、ここも耐久レースで勝ち上がるためには非常に重要なファクターであり、その精度はレースやテストを経るごとに上がっている。
こうして富士のテストは幕を閉じた。マシンのチェック、課題の洗い出し、レース本番想定での安定したペースの獲得、現役若手選手の初走行と、非常に濃密な行程を修了できた。ここから3週間後、再びこの地で耐久の頂点ともいえる24時間の闘いが繰り広げられる。チームは全力で勝ちを取りに行くべく、それぞれに課された役割に対峙していく。