2018.11.08 北海道クラブマンカップレース2018 特別戦VITA-01 RACE REPORT
北海道クラブマンカップレース特別戦 TOKACHI 3時間耐久レース VITA-01
開催日時:2018年9月2日(日)
開催地:十勝スピードウェイ(北海道)
ドライバー
#610:佐藤 元春、石崎 竜一朗
#310:久保 拓也、大島 雄一郎
#712:竹谷 和浩、中川 隆吾
#777:大島 良平、市川 篤
マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機、310号機、712号機、777号機
参戦クラス:北海道クラブマンカップレース VITA-01クラス
天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
#610 予選:2/19位(Dr.:佐藤 元春) 決勝1/19位
#310 予選:10/19位(Dr.:久保 拓也) 決勝6/19位
#712 予選:7/19位(Dr.:中川 隆吾) 決勝:9/19位
#777 予選:4/19位(Dr.:大島 良平) 決勝:7/19位
北海道クラブマンカップ第3戦から2週間が経過した9月2日。早くも3時間耐久レースとなる
特別戦が開催された。
例年、この特別戦は本州からの遠征もあり、いつもの北海道クラブマンカップよりも参加台数・
ドライバーともに多く、賑やかな様相を見せる。天候には恵まれ、練習日から晴れが続き、
路面もドライが維持された。
今回のKoshido Racingのドライバーラインナップは、チームオーナーでありエースである佐藤元春
と、今シーズン第2戦より連戦参戦している石崎竜一朗がタッグを組んで610号機に搭乗。310号
機、712号機は昨年の耐久戦同様で、大島雄一郎・久保拓也組が前者に、竹谷和浩・中川隆吾組が
後者をドライブした。
310号機 大島 雄一郎 ・ 久保 拓也
712号機 竹谷 和浩 ・ 中川 隆吾
777号機には、今期レギュラードライバーの大島良平に加え、夏のSUN耐参戦以来となる市川が
起用された。
777号機 大島 良平 ・ 市川 篤
<DAY1> 8月31日(金) 練習走行
佐藤、石崎、久保、中川、市川は公式練習日のさらに前日から十勝入りしていた。この日の気温は
23~24℃。例年であればまだまだ残暑の厳しい時期であるが、盆を過ぎ、北海道は少しずつ涼しく
なりつつある。レースの中でも耐久という長丁場においては、ヒトにもクルマにも大きな負荷を
与えるが、双方にとって優しい気候へと変わりつつあった。
今回610号機は試験的にフロントカウルを替えての走行となった。ホームストレートでの終速や
水温等、これまで使用していたカウルに比べてどのように変化するのかを実証する試みである。
まだ何の装飾も施されていない真っ白なカウルが、より一層試験走行であることを彷彿させる。
試験的にカウルを替えて走行する610号機。
しかしながら今シーズン使用しているエンジンのポテンシャルが今ひとつであるため、十勝
スピードウェイでの走行ではそれほど顕著な差は見られなかった。タイム的には佐藤・石崎両
ドライバーとも1分34秒台前半をマークしており、コンディションが整えば33秒台を安定して刻む
ことは可能と思われる。
久保は昨年のこの耐久戦で乗って以来、一年ぶりのVITAとなった。しかし、それをまったく感じ
させない走りで容易く1分34秒台にのせてくるあたりは、さすがモータースポーツ経験豊富な彼
ならではといえよう。全体的に概ね35秒台で周回し、安定した走りを見せている。決勝ではレース
巧者ならではの展開や駆け引きが楽しみである。
中川は第3戦に続いての耐久エントリー。前回のレースでは突如振り出した雨をものともせず、
自らの順位を押し上げる隙のない走りを見せた。VITAでは絶対的な練習時間が不足しているにも
かかわらず、ラストの一周できっちりと1分34秒半ばをマーク。こちらも決勝での活躍が期待
された。
市川は今回がVITA初乗りとなる。模索しながら走り続け、マシンの特性を掴むべく周回を重ねた。
これまで箱車での走行経験しかなかったが故に、その動きのシビアさに翻弄され続けていた。
走行の合間に他のドライバーたちのアドバイスを受け、脚回りの動かし方、タイヤの使い方、
ラインの取り方など、課題クリアに向けてひたすらに取り組んだ。
練習走行結果
佐藤 元春:1’34.120
石崎 竜一朗:1’34.184
久保 拓也:1’34.857
中川 隆吾:1’34.637
市川 篤 :1’36.406
<DAY2> 9月1日(土) 特別スポーツ走行(55分間×3本)
この日も天候は良好。設定される走行枠はいつとも同じように3本であるが、1単位55分と長く設け
られ、午後からの走行枠となっている。今回の耐久レースは2輪も開催されることになっており、
午前中は2輪の練習枠に充てられていた。天候は晴れ。午後からといえど気温の上昇は穏やかで
22.1℃。湿度は70%台。この日からは310号機の大島雄一郎と712号機の竹谷も合流し、練習走行に
励む。
今年は春に一度練習走行でVITAに乗っているが、実践は今回が久々となる大島雄一郎。今回の
セッティングに身体を慣らすべくコースイン。ミスなくまとめ、淡々と周回していく。
前日に比べて混走車種も多くなり、クリアラップがなかなか取れない状況になっている中、
1分36~37秒台をコンスタントに刻み続け、310号機の動きに自身の感覚を合わせていった。
走行開始を控え、集中する大島雄一郎。
一方の竹谷はレギュラードライバーとして参戦しているだけあり、乗り出して間もなく1分35秒台
に入れてくる。実は今回、712号機はセッティングの異なる310号機とカウルをチェンジして臨んで
いるが、これによりマシンの挙動はややピーキーな方向となった。しかし向きを変えるスピードは
上がっており、竹谷はこれに即時対応。むしろこれまでのセッティングよりも良い感触を掴んで
おり、早々に自分のものとしていた。第3戦は出場できていなかったが、それをハンデと感じさせ
ない走りで34秒台を記録し、練習走行を終えた。
左コーナーをシビアなラインで抜けていく竹谷。
前日入り組は混走車の増加やコースコンディションの変化からか、それぞれ若干タイムを落として
いた。この日は練習走行の途中でコース上に多量にオイルが撒かれ、スピンやオーバーランする
車両があちらこちらで続出。ただでさえピーキーなVITAは、オイルにのると一気に姿勢が乱れ、
ほぼコントロール不能に陥ってしまう。間もなくコース閉鎖され石灰処理がなされたが、今度は
その石灰が多量に舞い上がり、視界がほとんどきかない状態になっていた。
最終的に610号機の佐藤・石崎がそろって前日のコンマ3~4秒落ち、712号機の中川、310号機の
久保もコンマ8秒落ちの結果となった。777号機の市川はスピンを喫しつつも、マシンへの慣れと
前日のアドバイスが活き、タイムを徐々に短縮。最終コーナー立ち上がりでのアンダーステアが
気になっていたため、エンジニアの熊崎にリアの減衰調整を依頼し、1分35秒台へと更新した。
練習走行結果
佐藤 元春:1’34.457
石崎 竜一朗:1’34.592
大島 雄一郎:1’36.588
久保 拓也:1’36.680
竹谷 和浩:1’34.903
中川 隆吾:1’35.491
市川 篤 :1’35.791
<DAY3> 9月2(日)
予選(10:30~10:55)
レース当日、この日も好天に恵まれ、予選前の気温は20.6℃、湿度54%。
都合がつかず、練習走行に参加できなかった777号機の大島良平がようやく合流。
準備も早々に、予選時間を練習走行に充て、かつそのままアタックを担当することとなった。
いつものクラブマンカップに比べると出走台数が多く、クリアがとりにくい。そんな状況にもかか
わらず普段通りのペースでタイムを詰めていく大島良平。コースイン2周目より安定的に1分35秒台
前半にのせ、3周目には34秒台半ばをマーク。その後も34秒台で周回し続け、予選4番手につけた。
前日にリアの減衰を調整していたが、フィーリングとしては良かったとコメントを残している。
610号機は佐藤が予選を担当。コースイン後すぐに34秒台を連発し、さらなるタイム短縮をうかがう。
ほぼ同ペースで走る#7 NAMS楽しく走ろう.com制動屋と#77 モレキュール☆渚オートVITAと熾烈
なタイム争いを展開し、この3台は揃って33秒台へとタイムを詰めていく。最終的に佐藤は2番手の
タイムを記録したが、トップの差は僅か0.03秒。そして後車との差も0.03秒。いかに拮抗した戦い
であったかがわかる。
310号機は大島雄一郎、久保の両ドライバーがドライブ。最初に大島雄一郎が走り、37~38秒台
にて周回する。セッティングはそのままにドライバーチェンジ。時間的に久保に許されたアタック
ラップは4周程度。36秒台前半を記録し、10番手となった。本レースウイークで最初に乗った
セッティングでは34秒台をマークしていたが、現状では決勝で安定したラップを刻むべく、
深追いはしない形で予選を終えた。
712号機はまず竹谷がコースインし、軽く流してタイヤを温める。数周アタックしたのち、中川に
ステアリングを託した。タイヤ内圧を調整し、残された時間が限られる中、アタックに入る中川。
1周目に34秒台をマークするが、その後はクリアラップに恵まれず、結局最初の周に記録したタイ
ムで7番手という予選結果となった。全体の結果では、0.07秒というほんの一瞬に1位から3位まで
がひしめく。決勝での混戦は必至である。
予選結果
610号機(佐藤 元春):1’33.655
310号機(久保 拓也):1’36.134
712号機(中川 隆吾):1’34.785
777号機(大島 良平):1’34.533
決勝(14:38~)
気温21.6℃、湿度39%。この耐久レースはいつものスタンディングスタートではなく、ローリング
形式で始まる。スターティングドライバーは610号機が佐藤、310号機が久保、712号機が中川、
777号機は大島良平が担当した。
ドライバーに最高の状態のマシンを提供するため、ピットクルーたちも全力で挑む。
午前中に2輪の耐久レースが開催され、午後からが4輪の時間として組まれている本イベント。
気温の上昇が著しい時間であるが、この時期としては珍しく涼しめ。但し路面温度は高い。
長丁場を控え、タイヤのコンディションには特に気を使う。
耐久でもスプリントでも、レースでは常に緊張を強いられる。決勝コースインを前に、大島良平の
真剣なまなざしからそれが読み取れる。
各車グリッドにつく。ピットクルーたちがドライバーのもとに激励に訪れ、健闘を誓う。
そして3時間の決戦の幕が切って落とされた。
ローリングスタートで大きな混乱もなくレースは進行していく。しかし、数周してそれぞれの
ペースの差が明らかになり、ところどころ離れていたり詰まっていたりと、随所でスプリント
レースさながらの競り合いが展開されている。
712号機の中川は序盤から堅調なペースで前との差を詰めていた。そうしているうちに前走車に
詰まり、自分のペースを落とさざるを得ない状況へ。なんとかして前に出たいという焦りから
前走車を抜きに掛かるが、想定していたラインにのせられずたまらずスピン、コースオフを喫し
てしまう。自力でのコース復帰が困難となり、救援を待つことに。その間に大幅に順位を落とし
てしまうこととなった。
ここでセーフティーカーが入る。610号機はちょうどこの直前にチームクルーより指示を受け、
絶妙なタイミングでピットイン。給油とドライバーチェンジを済ませ、1位でコース復帰する石崎。
その後トップを守り続け、33周目にはファステストとなる1分34秒806を記録する。この時点で2位
の#95 HB☆幸伸建設☆VITA-01とは24秒差。その後も順調にギャップを拡げていった。
310号車は序盤から久保が安定したラップを重ね、トラブルのないレース運びを展開していった。
前述している通り、久保はレース経験が豊富。急遽異なるセッティングへと変更になったマシン
にも順応し、タイムは予選のものをコンマ6秒縮めた。マシンもよい状態で大島雄一郎へとチェン
ジ。こちらもまた予選の記録を1秒以上も上回るペースで周回し、レース後半への望みをつな
いだ。スピンで一時は数周回差をつけられ、クラス最下位となってしまった712号機ではあった
が、レースペース的には竹谷も中川もトップ集団に迫る34~35秒台をコンスタントに刻み続けて
いた。両ドライバーとも現状のセッティングに慣れる時間も十分に確保できないままレースに
臨むこととなったが、こちらの方が好感触を得ており、マシンを手なずけていた。
777号機のファーストドライバーである大島良平は、走り始めこそ本来のペースにのせられなかっ
たものの、7、8周もすれば「らしさ」を取り戻し、35秒台での周回を続けた。それに続くBドラ
イバーの市川も、前日までの練習でつかみかけていたVITAの挙動に少し慣れた様子で、35秒台を
マークする周回が増えていた。
日も傾きつつある中、各車トラブルもなく走行を続けていく。
給油やドライバーチェンジもまた滞りなく行われ、メカニックやクルーの活躍が光る。
610号機はペースを落とすことなくラップし続ける。Vitzとも混走であるため、所々ラインが保
てずペースが乱れることがあるが、佐藤は極力タイムを変動させないよう上手くバックマーカーを
かわしながらVITAを走らせていた。現に第3スティントを26周回しているうち、ペースを乱した
のはたったの2周で、それ以外は概ね34~35秒台をキープしている。これまでの公式戦では自分の
ラインが保てず、余儀なく順位を落とすこともあった佐藤。その時の経験がこのレースで大いに
活かされていた。再び石崎に替わり、60周を超えて610号機と2位#19 十勝レーシングスクール
鬼塚兄弟VITAとは1周差がついていたが、82周目には2位が#77 モレキュール☆渚オートVITAに
変わっていた。依然610号機がトップをキープしているが、こちらが35秒台に対し、#77は34秒台
で周回。ただ、この時点で1分15秒のギャップはある。残り25分、90周を過ぎたところで1分10秒
に縮まる。負けじと石崎も34秒台に入れるが、さらにコンマ2秒削る渚オート77号車。連なって
走行していた時も、ストレートが610号機に比べて格段に速く、インフィールドで詰めてはスト
レートで離されるという状況を繰り返していた。この後さらに1分33秒894の自己ベストを出し、
1分10秒差の戦いが長きにわたって続く。
残り10分を切ってマージンが一時的に縮まったが、なんとかその差を維持し、最終的には1分22秒
の差をつけてトップチェッカーを受けた。
310号機は一時3位を走行していたが、36周目に4位へと後退。前走車とはラップタイムが1秒近く
遅れていた。33周目には6位となるが、終始変わらぬペースを保ち続け、そのままの順位でレース
を終える。しかし、大島雄一郎・久保ともに堅実な走りで4つ順位を押し上げる結果となった。
耐久ではこの安定感こそが求められる大きな要素である。
777号機も大島良平が上位集団に迫るラップタイムを連続してマークし、残り20分のところで前を
行く310号機とは44秒差。
平均的なレースペースにすると1周あたり1~2秒310号車より速く、レース後半には18秒差まで
詰め寄るも、7位でのゴールとなった。
序盤の遅れを取り戻すべく奮闘した竹谷・中川両名は、その後ミスのない走りで少しづつ挽回。
37周目には竹谷が自己ベストをマークし、猛追する。最終的には2台をパスして9位へと順位を上げ
フィニッシュ。しかしチェッカー後にセーフティーカー中の追い越しが判明し、30秒が加算され、
さらに燃料補給作業違反から40秒も加算されてしまう。それでも順位に影響はなかった。
~レース後、チームオーナーコメント~
昨年は平中克幸選手と組んで3時間耐久レースにて見事優勝を飾ることができました。今回はV2を
かけて、若手ルーキーの石崎竜一朗選手とのタッグで臨んだレースでした。本州の遠征組が速い
ことを知っていたので地元の意地を見せてなんとしてでも頂点をとりたいと思って挑みました。
予選アタックは自分が担当し、0.03秒差で2位という結果になりました。1~3位までが非常に僅差
である予選だったので、決勝ではミスをしないことと、チームとしての作戦を上手く絡み合わせて
勝利しようということで臨みました。セーフティーカーが入る直前でピットインできたのも、
チームプレイが功を奏し、上手く意思疎通が図れたことが要因であると思われます。このピット
タイミングで1位に上がることができ、そのままトップを守り続け、チェッカーを受けることが
できたことを非常に嬉しく思いました。これは監督、エンジニア、メカニック、ドライバーが一体
となって戦った結果です。なにより皆様の声援があったおかげでよい結果を残すことができま
した。来年もV3 を目指して頑張りたいと思います。引き続きご声援のほど、よろしくお願いいた
します。
Koshido Racing 佐藤 元春