2024.11.12 北海道クラブマンカップレース 2024 Rd.2 TOKACHI 3時間耐久レース
HOKKAIDO Clubman Cup Race TOKACHI 3時間耐久レース
■開催日時:2024年6月30日(日)
■ドライバー:佐藤元春/大宮賢人、上野大哲/浅井康児、石崎竜一朗/市川篤、
工藤大祐/木下祐希
■マシン:VITA-01 11号機、12号機、310号機、910号機
■参戦クラス:1C
■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
■戦績
佐藤元春/大宮賢人 予選:5/12位 決勝:3/12位
上野大哲/浅井康児 予選:1/12位 決勝:2/12位
石崎竜一朗/市川篤 予選:7/12位 決勝:4/12位
工藤大祐/木下祐希 予選:4/12位 決勝:5/12位
KOSHIDO RACINGは今年もVITA-01耐久レースに参戦するため、十勝スピードウェイを訪れた。6月という事を忘れさせるほどの暑さの中3時間の耐久レースに挑むという事で、スプリントレースとは違った集中力と駆け引きが必要とされる。
今回のエントリー体制、11号車は富士S‐FJ石崎と恒志堂社員兼ドライバーの市川がタッグを組んで出場。
12号車はチームオーナー兼ドライバーの佐藤と今年度からスーパーGTへ参戦しているPONOS RACINGより現役F4ドライバーの大宮がスポット参戦しタッグを組んで出場。
310号車はRd.1で圧倒的な速さを見せた上野と昨年310号車にてシリーズ参戦していた浅井がタッグを組んで出場。
910号車は昨年に引き続きシリーズ参戦中の工藤と毎年耐久レースに道外から参戦している木下がタッグを組んで出場。
以上4台8名体制となる。
<練習走行>
6月28日。6月の北海道とは思えない暑さ、8月かと思わせる日差しと気温。人も車も間違いなく消耗するこのコンディションの中でどのような走りを見せてくれるのか、ドライバーはマシンに乗り込む。
初日の走行枠は5本。十勝スピードウェイ、VITAとどちらも初めてである大宮はマルボロカラーの旧12号機をドライブし走行枠全てを走行できる体制、十勝に慣れるところからスタート。現役F4ドライバーという事もあり、チームメイトからも期待が高まる。
佐藤、上野、浅井、はさすがの走りであった。この気温でありながら、30秒台から31秒台に入っておりラップタイムも安定している。上野は30秒台に入り前回レース優勝者の強さ速さをしっかりと見せつけ、チームメイト・ライバルにプレッシャーをかける。佐藤・浅井は31秒台を連続でマークし続け、長年十勝で走っているこの2人ならではの安定した速さと強さという耐久において必要不可欠な要素を見せつけた。今回十勝スピードウェイもVITAもはじめての大宮、一本目はブレーキとコーナリングにおいて限界を探っている様子だ。ステアリングを切り増ししマシンとタイヤの性能についても探りを入れている。さすが現役F4ドライバー、二本目走行枠から31秒台に連続で入るという驚異の適応力。チームメイトの上野が30秒台に入っており、31秒切りを目指して攻めるが最終枠でコースオフしてしまいそのままこの日の練習を終えた。一方市川は安定して周回はしているもののもうひと段階詰めた際に出るコーナー進入時のオーバーステアに苦戦していた。一本目の走行枠では32秒前半で周回していたが、その後ペースが上がらず33秒台での周回をしており翌日の練習走行も気が抜けない。工藤は今回耐久レースという事で、スプリントレースとは違ったセットで車を持ち込んだ。一発の速さより安定してそれなりに速く走れる耐久仕様のセッティングを二日間の練習走行で煮詰めいていく方針。1本目なかなかタイムが安定せずピットインの回数も多くみられたが調整の末31秒台をマークすることに成功。しかしながら安定といった意味ではまだ成熟しておらず初日の練習を終えた。道外から参加の木下、毎年耐久に参加しておりコースはしっかりインプットされている様子。1年ぶりの十勝のためリハビリからスタートかと思われたが、献身的な走りで32秒台を連続でマークし安定した走りを見せた。
十勝二日目となる6月29日の行程は午前2本午後2本設定されている。本日はドライバーチェンジや給油等ピット作業の練習も可能なため、明日の本戦に向けた本格的な練習が想定される。本日から石崎が遅れて十勝スピードウェイ入りし練習に参加した、VITAでのレース参戦は2年ぶりだがS-FJに乗っていた実績もあり期待が高まる。前日驚異の適応力を見せた大宮は30秒台を目指しアタックを続けていた、1本目の走行枠終盤で30秒台に入りこの日のチーム最速タイムをマークすることに成功。さすがの一言、大宮の早すぎる成長にチームメイトも鼓舞され前日のピットの雰囲気はとても良いものであった。前日31秒台で安定していた佐藤だが、練習後のインタビューで本人も語っていたようにスランプに陥っていた。32秒台から35秒台と安定せず明日へ不安を残すかと思われたが、最終枠で31秒台をマークし練習を終えた。同じく前日絶好調の310号車上野、1本目で31秒前半をしっかりマークしこのまま明日の予選へと思ったが迷走状態に突入してしまう。32秒台から33秒台を迷走しこの日の練習を終えたが、練習後には初心に帰り予選では本領発揮をすると自信あるコメントをくれた。相方の浅井は、一本のみの走行となったがしっかり31秒台をマークし相方上野との情報共有や作戦を練る1日となった。11号車をドライブする石崎は2年ぶりという事もあり、リハビリがメインの練習走行とはなったが走行はミスが少なくコンスタントに32秒台をマークしているため入賞に期待を抱き練習を終えた。相方市川は、十勝入りしたばかりの石崎がメインで走っていたため走行は一本のみとなった。前日抱えていた課題を石崎と共有し解消すべく走行に挑んだが、解消には至らなかった。セッティングを変更し乗りやすくはなったもののタイムアップとはならず、課題を残したまま練習を終えた。910号車の工藤と木下、こちらのペアはドライバー交代多めかつピットインの回数もかなり他車に比べると多い。セッティングを煮詰めることに注力し走って調整の繰り返し、工藤はシリーズ参戦している愛機のため体に馴染んでいるが木下は車に慣れることに時間を費やし練習を終えた。
<予選>
予選はAドライバー、Bドライバーと順に行われる。第一戦同様十勝も新品タイヤスタート、新品のAドラとその直後中古のBドラこのタイヤの変化がどのようにしてタイムに影響を与えるのか。VITAとヴィッツが混走となるためヴィッツをどのようにつかうかもまた勝負のカギを握る、各チームの戦略が楽しみである。
Aドライバー予選
12号車佐藤は序盤ヴィッツにひっかがるラップが多く、なかなかアタックが決まらない状態であった。前を走っていた上野との距離も空いてしまい単独アタック、32秒825をマークし2番手につける。その後ライバル上野と6号車平中克幸選手が佐藤を上回り3番手となる。果敢なアタックを続け11周目で32秒550をマークしたが4脱のためタイム抹消、セカンドベストである32秒704が起用され3番手で予選を終えた。
310号車上野は昨日の練習走行での反省点を生かし予選に挑む。1周目はしっかりタイヤを温め2周目からアタック開始、アタック最初の周から31秒8をマークすることに成功。その後も調子を落とすことなくアタックを続け7周目に31秒452をマーク、このタイムが予選の全体ベストタイムとなった。
11号車石崎は8周目まで33秒台で周回しておりタイミングを狙っている。前を走るチームメイトの工藤のスリップを使い32秒550をマークすることに成功、しかしこのラップ4脱判定となってしまいベストタイムが抹消。セカンドベストが起用され7番手で予選を終えた。
910号車工藤は1周目入念にタイヤを温めアタック開始。3周目に33秒41をマークするがなかなかタイムが伸びない、7周で一度ピットインしタイヤ空気圧を調整。この空気圧調整が功を奏し、ピットアウト後最初の計測ラップにおいて32秒898をマークすることに成功。5番手で予選を終えた。
Bドライバー予選
12号車大宮は前日の好感触を予選にぶつける。序盤ヴィッツや86に捕まる場面が多くみられたが、後半は最終コーナー手前から準備を整えアタック開始。やはりAドライバーの走行後という事もあってか全体のペースが少し遅いようだ、そんな中タイムを出すべく果敢にアタックを続け9周目に32秒470をマーク。しかし予選アタック中の走路外走行が目立ち2グリッド降格のペナルティとなってしまった。
310号車浅井も大宮と似た展開であった。序盤は混走に苦しみ中盤からアタック開始、少ないクリアラップの中10周目に32秒470をマークし3番手で予選を終えた。
11号車市川は練習走行同様にマシンの動きに苦戦していた。持ち前のテクニックで何とか車の動きを修正しようとするがなかなか1周にまとめることができない。アタックラップ最終周にベストラップを更新、4脱のない綺麗な走りをし7番手で予選を終えた。
910号車木下は車に完全に馴染めていない状態での予選となった。予選終盤まではライバル車にも複数回パスされなかなかペースが上がらない様子、スリップをもらうことも叶わなく33秒33がベストタイム。時間ギリギリのところでピットイン、空気圧を調整しアドバイザーの山本からアドバイスを受ける。ピットアウト後、時間的にも最後の計測ラップと思われたその周に32秒945をマークし4番手で予選を終えた。
予選タイム
11号車:1分32秒989(決勝7番グリッド)
12号車:1分32秒470(決勝5番グリッド)※ペナルティにより2グリッド降格のため
310号車:1分31秒452(決勝1番グリッド)
910号車:1分32秒898(決勝4番グリッド)
<決勝>
気温は30度。6月とは思えない真夏日のような暑さの中、スタートを担当するドライバー達がマシンに身を収める。
今回は3時間耐久ということで、いつものスプリントレースとは違いローリングスタートとなっている。
先頭上野が隊列を率いたまま最終コーナーを抜けホームストレートへ、シグナルレッドからブルーに変わりレーススタート。
310号車上野はポールポジションスタート、後ろには6号車現役GTドライバーの平中克幸選手が常に迫る。予選一発の速さでは上野が勝っていたが、レースの組み立てやバックマーカーの使い方という面で平中選手は長年培っており一度前を許すと抜き返すことは容易ではない。平中選手のプレッシャーに耐えながら近い距離で奮闘していたが、4周目1コーナー手前で前を許してしまう。5周目から別クラスのバックマーカーに追いつきここからが耐久というところ、その後もバックマーカーが絡み多少のバラつきはあったがしっかり平中選手の背中につきプレッシャーを与えた。
30周を超えたところで前を走る平中選手がピットイン、上野はピットアウトしてくる平中選手よりも前に出るためペースを上げる。34周目の1コーナー進入でピットアウトした平中と並ぶが、ここでは車速の乗っていた上野に軍配が上がる。このままペースを維持し後ろとの差を広げたいところだったが38周目に燃欠症状が出てしまいピットイン、浅井とドライバーチェンジをする。
浅井は同一周回のライバルと絡むことはなかったが、うまくバックマーカーをさばき33秒前半での周回を1スティント走り切った。速く走らなければいけないが頭の片隅に燃費走行という言葉の浮かぶ中、とても良いペースで周回し上野にバトンパス。
上野はピットアウト後耐久レースということもありマシン、ドライバーともに疲弊しているはずだがそんなことは感じさせない走りを魅せる。他車より1秒近く速いタイムで周回を積み重ね確実に後ろとの差を広げている、このまま単独トップかと思われた矢先不幸に見舞われてしまう。前を走る88号車に2コーナーで迫った際前の車が姿勢を崩してスピン、何とかかわそうとステアリングを切るがコーナー旋回中の修正はさすがに厳しく上野もスピンをしてしまう。このスピンにより20秒ほどタイムロスをしてしまうが上野のペースが落ちることはなかった、32秒台で周回し開いた差を確実に埋める走り。
ここで3回目のピットイン、上野浅井ペアはドライバーチェンジせずこのまま好タイムの上野がステアリングを握ることを選択。この選択は実質上野がチェッカーまで走るという事を意味している。3時間の耐久レースも残り20分弱にして1位と2位が僅差、上野の力強い走りと勝利を信じピットクルー、チームメイトの気持ちもこみ上げつつあるが決して気の抜けないスプリントレース以上の走りが必要であった。310号車は上野の好ラップタイムを見て3分という短いピットストップの中でリアタイヤの交換を決意、ピットクルーの正確かつ迅速な作業のおかげで20秒ほどを残し作業が完了。気持ちを背負い上野はピットアウト、1コーナーへ加速し始めると左後ろから白いマシンが迫る。6号車平中選手だ、上野は1コーナー前でパスされ前を走る現役GTドライバーを追いかける展開となった。途中チームメイトの市川が間に入るシーンもあったが、迅速な判断で上野を前に行かせエールを送る。上野は32秒フラットで周回し続け前を走る平中選手とは周回を重ねるごとに距離が縮まっていた、ここからの勝負は正直興奮が止まらない。バックマーカーを使った熾烈なバトルが繰り広げられたが、のころ6分のところで上野が平中選手を射程圏内に入る距離まで猛追することに成功。このままの距離を保持しホームストレートでオーバーテイクかと思われたが、途中平中選手が7コーナー手前にて86を使ったうまい駆け引きに成功し上野は86と衝突寸前の一大事。ここでまた前との差が開いてしまうが上野のラップタイムの速さは本物だ、諦めず果敢に前との距離を詰め最終週1コーナーブレーキングでまたしてもトップを射程圏内へ。とても近い距離のまま最終コーナーを立ち上がる、310号車の鼻先が6号車にかすめるほどの距離まで追い詰めたが悔しくも0.144秒差の2番手でチェッカーを受けた。上野はチェッカーと同時に気持ちがこみ上げ男泣き。プロを相手にとても力強い走りを魅せてくれた。
12号車佐藤は相方大宮の予選時複数回走路外走行により2グリッドダウンの5番手スタートとなった。順調にスタートを決め4番手スタートチームメイトである910号車工藤の後ろをかなり近い状態で走行。10号車、910号車、12号車この3台が固まった状態が続いている。4周目1コーナーでスリップを使い車速の伸びた佐藤は910号車工藤をパス、前を走る10号車に差し迫りプレッシャーをかけ続けている。佐藤は昨年シリーズチャンピオンを飾っており、その強さと経験を含めた意地の走りで先頭2台に追いつくつもりだ。6周目には目を走る10号車を射程圏内に入れオーバーテイクのチャンスを伺うが中里選手の粘り強い走りになかなか前へ出られない、11周目のホームストレートでようやく綺麗な状態でスリップをもらうことに成功。1コーナーブレーキングで10号車をパスし3番手に浮上、ここで先頭集団との差は15秒であった。先頭2台が32秒台前半でラップを刻む中佐藤のタイムは平均33秒前半、5周後には20秒の差が開き1ラップごとに約1秒離れている計算となる。少しでも前に追いつこうとバックマーカーのスリップを積極的に使いペースアップを試みるが差は縮まらなかった、しかし予選で下がった2グリッド分を取り返しピットイン、しっかりと仕事を果たし大宮へとドライバーチェンジをした。
大宮にドライバーが変わりコースイン、大宮は予選時の自分のミスで2グリッド降格させてしまったこともあり気合十分。練習2日間で驚異の適応力を魅せレースでの活躍にも期待が高まる。序盤なかなかタイムが上がらない様子の大宮は33秒前半での周回が続く、バックマーカーのいなし方も慣れてきた15周目32秒87をマーク。その後もタイム差はあるがノーペナルティでしっかり走り切りスティント終了際にベストラップを更新、ここでスティント終了の時間が来てしまいピットイン。
佐藤が自身最終スティントのステアリングを握りコースイン、ピットからはペースアップの指示があった。先頭集団との距離を縮めるべく果敢に走るが、前日からスランプ気味なのもあってかなかなかペースが上がらない。リアタイヤの状態が厳しい中ノーペナルティで綺麗に走り切り佐藤のスティントは終了した。
12号車も310号車同様に最終ピットストップにてリアタイヤを交換、ピットクルーの完璧な作業で時間内全工程を済ませ大宮が最終スティントを走る。タイヤを交換したこともあり大宮のペースが特段に上がった、32秒前半でラップを重ね3位という現在の順位を死守したいという気持ちのあふれる走り。レース終盤では32秒フラットと全体ベストラップもマークした、31秒に差し迫る渾身の走りで先頭集団との間にあった60秒ほどの差も45秒まで縮め先頭には届かなかったが3番手でチェッカーを受けた。
11号車スターティングドライバーは予選順位を決定させた石崎が担当。しかし、その予選ベストラップで唯一の4輪脱輪を犯してしまったことからセカンドタイム採択となり7番手スタートに。実質2グリッドを下げる形となった。これに対し悔しさと自身への責任を滲ませ、スタートから攻めていくと堅い意志をみせる。
グリーンシグナル点灯とともに絶妙なタイミングでスタートを切った石崎はすぐ前を行く129号機を1コーナーのブレーキングで捉え、ターンインで前へ。早速1ポジションアップの6位へ。その後も追撃の手を緩めることなく先行する12号機、910号機を追う。若干リアタイヤのキャパシティが勝っているような動きで全体的にアンダーステア傾向が出ている11号機を上手くコントロールし、4周目のホームストレートできれいに910号機のスリップストリームに入った石崎は1コーナーの飛び込みまでに無理なく前へ。ここは工藤も一歩引いた形で先行させた様子が窺える。
そこからさらに周回を重ねるとクラス違いの車両が絡み始めた。北海道クラブマンカップの3時間耐久は戦略上ここがポイントであり、如何にペースを保ったままバックマーカーをパスできるかというところが大きく結果に影響する。すぐ前では10号機と12号機がバトルを展開しており、ペースが上がらない状況の中、インフィールドで一気にその差を縮める。しかしストレートに出ると前方2台のVITAにエンジンの伸びで負ける11号機。スリップストリームにつきながらも離されていく。セクター2で追いつき、セクター1・3で離されるという展開が数周続き、12号機が10号機とのバトルの末に前へ。この直後から10号機との一騎打ちが始まる。耐久レースとはいえ、スプリントさながらの攻防。そこにバックマーカーも交え一瞬たりとも気が抜けない状況。2コーナー進入から3コーナーにかけてバックマーカーに詰まった2台はセオリー通りに4速で抜けようとするが、石崎はここで3速を選択し鋭く2コーナーを立ち上がる。一瞬の判断で順位が入れ替わり石崎は4位へ浮上。2018年に北海道クラブマンカップVITA-01にシリーズ参戦していたこともあり、十勝スピードウェイへの順応性が高い石崎はここで地元ならではの走りをみせる。
その後は隊列も少しずつ分かれ始め、一定の距離をおいて12号機を追う展開。深溝の状態ではトレッドが動いて動きに影響するタイヤの状態も徐々にコントローラブル方向にシフトし、ラップタイムは常に安定している。30周回を迎えたところでルーティンのピットインを迎えた。
セカンドスティントは市川。練習走行ではマシンの動きが掴み切れず苦労していたものの、予選からようやく順応し始めたこともあり、交代直後から安定したペースで周回を重ねていく。昨年の参戦時に走路外追い越しでペナルティ裁定を受けていた市川の今回の方針はとにかくノーペナルティ・ノートラブル。バックマーカーを無理なく慎重にパスし、自身もミスをしないように着実に走り続けた。まさに耐久レースの戦い方ができていたといえる。前後に同クラスのマシンもおらず、バトルもなくひたすら単走状態が続く。結果ノーミスで予定周回数である30周に達し、実質4位をキープしたまま予定通りピットインとなった。
リアタイヤがこのままもつのか危ぶまれるところであり、リア2本は交換となる。給油・タイヤ交換ともに迅速かつ確実に完了させたピットクルーに敬意を表しつつ、サードスティント担当の石崎が飛び出していく。
リアタイヤのみ交換したことで再びマシンの動きが変わった11号機を何事もなかったように走らせる。ファーストスティントのような目まぐるしいバトルはないものの、バックマーカーの処理は適切そのもの。一度最終コーナーでインを締めてきたVitzと危うく接触か!?という場面もあったが、全体を通して動きに無駄がなく、後先をしっかり見据えたうえでペースを作り出していく石崎の走りは目を見張るものがある。ここはやはり富士スピードウェイでFJチャンピオンを獲った実力の持ち主。数年のレースブランクを感じさせない攻めの姿勢と冷静な判断で着実にレース展開をものにしていく姿はさすがの一言である。
こちらも予定通りの周回をこなし、4位のままピットへ帰還。フォーススティントからチェッカードライバーとなる市川へバトンを託す。
タイヤの状態も良好で給油作業もミスなく終え、最終スティントに向かってピットアウト。セカンドスティント同様に自車前後のライバル車両は不在。前方は30秒の差で3位の12号機、後方にもチームメイトである5位の910号機という状況。ここでも作戦はあくまで問題なく走り続けること。無論ポジションを落とすことは許されず、4位以上を目指して周回を重ねていく。やがて若干日が傾き気温が落ち着いてくる中、ラップタイムは1分33~34秒台となり後方との差は一定以上をキープ。レースペース自体は全スティントの中で最も良い時間である。当初の作戦通り一切問題を生じさせることなく3時間を走破し、無事にフィニッシュラインを超えた。表彰台には一歩届かなかったが、この境遇の中での4位は11号機にとってベストリザルトといえるのではないだろうか。
910号機のスターティングドライバーはマシンオーナーの工藤が務める。
予選では12号機が2グリッド降格のペナルティ裁定により4番グリッドスタートとなった。スタートタイミングはしっかりと決め、ポジションをキープしたまま1コーナーへ。前方には6号機と10号機が競りつつ立ち上がっていく中、オープニングラップから虎視眈々とポジションアップを狙う。相方である木下との体重差が想定以上で、思いのほかバラストを積むことになった工藤は動きの変わった910号機に苦戦しながらもビジターとなる10号機の隙を突くべく積極的に仕掛けていく。しかし後方から迫る12号機にも牽制しつつの走行となっていたことでベストラインをトレースすることができず、インフィールドでは差が詰まるもののストレートでは離れるといった状況。3周目の1コーナー進入では一歩引く形で12号機にポジションを譲り、4周目には11号機にも同ポイントでポジションを譲り、6番手からの追い上げという展開となった。5周目からバックマーカーが絡み始めると、10号機を先頭に先行を許した12号機、11号機との距離が一気に縮まり、4台でのバトルへ突入。この景色を見ている限り、スプリントレースとなんら変わりはない。数周にわたって続いたこのバトルは1台ずつ10号機の前に出る結果となり、オープニングラップ同様に10号機対910号機の構図が浮上。クラス違いの86やVitzを交わす際、所々で3速を用い、鋭く立ち上がっては揺さぶりをかけるが、前を行く10号機のドライバーは西の強豪中里選手。そう容易くは前に出させてはくれない。10周以上にも及ぶバトルが続く中、徐々に10号機が離れていく。途中で同クラス周回遅れの88号車にも引っ掛かり、その間に10号車との差はますます開いてしまった。20周回あたりからは完全に単走状態となり、淡々と周回を重ねる。32周回あたりからガス欠症状が出始め、強制的に燃費走行を強いられる。しかもピットインのタイミングを計るためにその後2周回にわたって4~5秒落ちのペースで走行しなければならず、結構なロスとなった。
木下にドライバーチェンジした後は再び息を吹き返したようなペースでラップ。ほどなくしてピット作業中に前に出られた129号機とのバトルになるが、メインストレートで難なくパスし、その後も1分33秒台後半~34秒台前半のペースで走り続けた。この十勝3時間耐久が今回で3度目の参戦となる木下。その走りは地元ドライバーの如く安定した走りで不安要素も微塵も感じさせない。木下のスティントで12周を回る頃、先ほどとは逆にピットアウトしてきた129号機が再び前方に現れ、バトルへ。しかし展開は同様で難なく前へ。その後は後方からトップの6号機が迫り、パスさせたもののしばらくすぐ後ろを追う展開。この時の6号機は村上選手。北海道クラブマンカップVITA-01トップ勢ドライバーであるにもかかわらず数周にわたって追いすがる。その上で木下は燃費走行にも余念がない。バックマーカーが前方に現れ、将来的に明らかにラインが交錯する周回は一段高いギアを使って燃料消費を抑える。またKOSHIDO RACINGの他チームとは異なり、タイヤは無交換作戦を決行。労りのドライビングで3時間をそのまま走破することを念頭に、チーム910司令塔のRDS山本代表と密にやりとりを交わしながらゴールに向かって総合的な戦略を組み立てていく。そしてセカンドスティントは29周を回り、木下はピットへ。
サードスティントは再び工藤に戻り、問題なくピット作業を終えてコースへ。少々気張り過ぎていたのかコース復帰直後にシフトミスする場面も見られたが、その後はミスなく1分33秒半ば~34台という良好なペースで周回し続け、ポジション5位をキープ。わずか16周回でピットに帰還し、フィニッシュまでの残り時間のすべてを木下に託す。前を走るのは同じKOSHIDO RACINGの11号機。周回数は同じで、ワンチャンスものにできれば届く範囲内ということもあり、木下は全開ドライビングで追う。ペース的には1分33秒半ば~34台を安定して刻み続けるものの11号機もまったくと言っていいほど同様のペースで走行しており、その差はなかなか縮まらない。それでも諦める
ことなく攻め続けた。途中バックマーカーのVITAに進路を塞がれ、穏やかな木下としては珍しく怒りをあらわにすることも。しかしそれだけポジションアップへの意気込みが強いということの証明でもある。最後の最後まで手を抜くことなく前を追い続けたが、その差は埋まらず5位でチェッカーを受けた。2名のドライバーが精一杯の力を出し切って挑んだ3時間。木下がビジターバトルであることを考慮すると5位入賞は十分に輝かしい戦績である。来期以降も是非再チャレンジして結果を残してくれることを期待してやまない。
今回のKOSHIDO RACINGは今までとは違った雰囲気であった。今まではチームオーナー兼ドライバーの佐藤を筆頭にチームメイト同士仲間としてライバルとして鼓舞し合ってきたが、今回佐藤はもちろんほかのドライバーの成長が著しくみられた。特にSHADE RACINGよりスーパーGTに参戦している平中克幸選手を今回3時間の末0.144秒差まで迫った上野。初日から圧倒的な適応力をみせ底知れないドライバーとしての可能性を感じさせたPONOS RACINGより現役F4ドライバーの大宮。このようなドライバーの成長でKOSHIDO RACINGはチーム内で全員が刺激を与え刺激をもらえるという環境が生まれこの先チームとして間違いなく革命的な進化を遂げることだろう。