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2024.11.06 Fuji Champion Race Series 2024      FCR VITA Rd.1 RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.1

開催日時:2024年5月11日(土)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー   佐藤 元春、  浅井 康児、 三輪 英則

マシン
恒志堂レーシング CLASS VITA :佐藤 元春
恒志堂レーシング レブニーズVITA:浅井 康児
恒志堂レーシング 三光不動産VITA:三輪 英則

参戦クラス:FCR-VITA

天候  予選/晴れ、決勝/晴れ

路面  予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績
佐藤 元春  予選:6/42位 決勝:12/42位
浅井 康児  予選:18/42位 決勝:17/42位
三輪 英則  予選:36/42位 決勝:31/42位
※ジェントルマンクラス 予選:7/8位 決勝:6/8位

2024年もレースシーズンが開幕。KOSHIDO RACINGの初陣は富士スピードウェイからとなる。

例年通りFCR-VITAとKYOJO CUPにシリーズ参戦する今シーズン、FCRは15号機にチームオーナーでありエースドライバーでもある佐藤を筆頭に、昨年北海道クラブマンカップVITA-01で度々優勝争いを繰り広げた浅井が35号機に、実質的なVITA-01デビューを果たす三輪が610号機という布陣。一方のKYOJOは昨年から引き続きRINA ITOが15号機に搭乗する。

第1戦と第2・3戦は残念ながらRINA ITOの都合がつけられずKYOJOは休戦。第4戦からのエントリーを予定している。


<練習走行>

土曜日のレースに向けてチームはレースウィークの水曜日に現地入りし、練習走行開始は木曜日から。しかしながら初日はあいにくのフルウェット。佐藤と浅井は3月、4月とテスト走行に来ていたが、3月もウェットかつ降雪というコンディションであり、ドライに恵まれない日々が続く。VITA-01デビューの三輪に限っては実質的な初走行がウェットという厳しい状況からのスタートとなった。

初日のフリー走行は夕方になって少しずつ路面は乾き始め、ようやくドライコンディションでの走行。佐藤はコンスタントに1分59秒台を刻んでいく。調子は上々のようだ。浅井も2分フラットまでこぎつけ、ひとつの壁である2分切りまであと一歩というところまで迫る勢いを見せた。三輪は慣れないVITA-01の挙動をたった数枠の走行時間で見事に掴み、ドライコンデションとなった最終枠では2分3秒台半ばまで詰めてみせた。

2日目の公式スポーツ走行日は走行枠が2枠のみという厳しい状況。加えて今回のエントリー台数である42台に限りなく近い台数が一斉にコースインし、さらにインタープロトも混相するという混雑ぶり。クリアラップを取ることは至難の業であった。初日に比べて大幅に気温が上昇したこともあり、各マシンベストタイム更新は難しい状況。 そのような中、順当にコースに習熟していった三輪は前日から1秒短縮し、2分2秒台半ばを連続でマークしていた。本人もここまで詰められるとは想定していなかったようで、一筋縄ではいかないVITA-01の操り方を短期間で身につけたことに手応えを感じていた。

<予選>

42台という他のサーキットでは類を見ないエントリー台数。ピットレーンへの進入が可能となる2分前、全ピットガレージから一斉にVITA-01が咆哮を上げ、我こそは先にと飛び出していく。

15号機の佐藤。練習走行で新品タイヤのグリップ感を体に叩き込み、アウトラップの翌周から全開で攻めていく。アタックラップ1周目で2分フラット、そして早くも2周目にはこれまでの自己ベストとなる1分59秒07をマークし、5位という好ポジションにつける。この周、ほとんどスリップストリームの恩恵を受けられない位置ながら、自らの走りに徹した佐藤。タイヤの限界付近をうまく引き出し、走りをまとめ上げた。スリップストリームは富士スピードウェイの場合、フルで恩恵を受けると1秒近くタイムは変わることもある。それがない状況で叩き出した今回のタイムは紛れもなくこれまでの努力の積み重ねの証明。寧静致遠とはまさにこのことである。最終的に1台にポジションを譲ったものの、過去最高位となる予選6番手という戦績にKOSHIDO RACINGのピット内は大いに沸いた。

35号機の浅井もまた、前日までの壁を越えようと2分切りに向け闘志を燃やしていた。 ホームコースである十勝スピードウェイの路面と大きく異なる富士スピードウェイにおいて、新品タイヤでのアタックは初。発熱のタイミングも最もグリップを発揮する瞬間も未経験の中で予選アタックに臨む。2分1秒台前半からの順調な滑り出しから一番ベストタイムが狙える3~4周目に照準を合わせ、集中。しかしながら出走台数の多さがその行く手を阻み、2分切りまであとコンマ2.4秒というところまで迫ったものの目標としていた1分59秒台には届かなかった。一旦クーリングラップを置き、ラストチャンスとばかりに予選時間終了ぎりぎりを狙うも、2分フラット半ばでアタックは終了となった。

着実にタイムを伸ばしてきている610号機の三輪は予選においてもなお進化を遂げ続けていた。練習走行までの状況から一変してクリアラップなど易々ととれない42台がひしめくコース上で、じっとその機会を窺っていた。とはいえどもそれまでのベストラップである2分2秒台を安定して重ね、周回アベレージは間違いなく上がっている。そして迎えたアタックラップ4周目、初の2分1秒台をマーク。ここまでこれた昨日までの自分自身を信じられないと話していた三輪であったが、予選ではさらに超えてくるというハイパフォーマンスぶりを披露。これまで数々のマシンに乗って積み上げてきた経験値は間違いないものであったと自らの力で証明し、VITAデビュー戦とは思えない爪痕を残した。

予選タイム

・佐藤 元春   1:59.098
・浅井 康児   2:00.234
・三輪 英則   2:01.998

 

<決勝>

雲ひとつない晴天のもと、各ピットからVITA-01が次々とコースインしていく。年々増えているFCR-VITAの参加台数は今回42台にまで達した。全台ホームストレートに並ぶ姿は圧巻である。

予選過去最高順位の6位からスタートする佐藤、何としてもシングルポジションを獲りにいくと意気込む浅井、とんでもないところに来てしまったと口にしつつも着実に結果を残していく三輪。それぞれに強い思いを秘めて挑む決勝の幕がいよいよ切って落とされた。

まずは最も期待がかかる15号機。スタートはほぼ順当に決めた佐藤であったが、好スタートを切った後方の#86下野選手と#32武村選手に先行を許す。しかしその後のコカ・コーラコーナーでは前走車を凌駕する飛び込みを見せ、100Rに向けて一気に差を詰めた。ここで勝負をかけるべく、すぐ前を走る武村選手のオーバーテイクを狙って素早くアウトにラインを振る佐藤。そのまま100Rを並んで立ち上がり、続くアドバンヘアピンでインを刺す作戦であったが、32号車の後方から飛び出す瞬間のリアタイヤのグリップが想定していた以上に抜けており、弾かれるようにコース外に飛び出していった。100Rは路面のカントも十分にあり、コース内に留まっている間はリアのグリップが絶大で安定して抜けられるが、飛び出せば一転してフラットとなるため一気に姿勢を乱してしまう。スピンは免れたものの、コース内に復帰するまでに時間を要することとなり、4台ものライバルに先行を許す形となった。

レース序盤で手痛いミスとなったもののその後はひたすらにポジションを取り返すべく集中。しかし一度リズムが狂うとなかなか本来の走りに戻れないのが常であり、ダンロップコーナー進入のブレーキングで#2イノウエケイイチ選手にインを明け渡し、さらにポジションを下げてしまった。

2周目を迎えて佐藤は一旦冷静になり、ミスのない走りを見せる。前を行くイノウエ選手と#779大島選手のバトルが勃発し、ペースが上がらない中、虎視眈々と前に出るチャンスを窺う。イノウエ選手に先行を許した大島選手が佐藤のすぐ前に現れ、ここからは北海道勢同士のバトルへ。互いに信頼できる相手だけにラインを潰し合うことはなく、しかし一歩も引かないという北海道クラブマンカップさながらの展開。コカ・コーラコーナーでの飛び込みでは佐藤が前へ、その後のホームストレートからのTGRコーナー進入ブレーキングでは大島選手が抜き返す。そのバトルの隙をぬって#38佐々木選手が前に出るといった三つ巴の戦いに発展。そこにペースが上がらないイノウエ選手も加わって4台でのバトルへと移行する。この展開が続くかと思われた6周目のGRスープラコーナー、後方からインに切れ込んできた#87山本選手と15号機が接触。佐藤は盛大に弾かれ、アウト側のランオフエリアに飛び出した。

幸い走行不能となるようなダメージは残らなかったがこれで大きく後退。近接バトルをしていたライバルたちからは数秒離されてしまった。その後は山本選手とのバトルへ。アドバンコーナー進入で一旦は先行されたものの、テールトゥノーズの状態で追い続けていたところGRスープラコーナー立ち上がりで86号車のリアのトラクションが抜け単独スピン。そこを冷静に交わしてポジションを取り戻した。その頃ちょうど離されかけていたライバルたちとの距離も縮まっており、再び4台のバトルへ。この時点で残り2周。しかし15号機のリアタイヤは相応にグリップが落ちている状態。コーナー進入でも立ち上がりでも簡単にオーバーステアが出てしまう。そこを何とかねじ伏せる佐藤であったが、ファイナルラップのTGRコーナー進入にて下野選手に前に出られてしまう。この時ブレーキング競争に勝つだけのタイヤの余力が残っていなかったことを悟っていた佐藤は、先行を許すほかなかった。

100Rでのミスや複数回のトラブルに見舞われた佐藤であったが、都度気持ちをリセットしてレースに臨んだ結果ポジションダウンを最小限に留め、12番手でフィニッシュとなった。

次いで35号機の浅井。スタートを上手く決め、TGRコーナーまでに一気に2台の前へ。進入のブレーキングでは前方の数台が激しく競り合ってラインが交錯しているところを静観し、レース開始早々の混乱を回避。

しかしイン側から仕掛けてきた2号車に先行を許す。前方後方ともライバルたちがひしめくコース上でしっかりと走行ラインを確保し、危なげない走りとしながらもアグレッシブなバトルを展開。序盤は#36の荻原選手との競り合い。コカ・コーラコーナーで前に出られたものの遅れをとることなく追随し、2周目のホームストレートでスリップストリームに入る。前に出られるかと思ったもののコントロールラインを越えるあたりで横並びとなり、イン側を死守していた荻原選手がTGRコーナーでのブレーキング競争を制した。

バトルはまだまだこれから。ミスなく各コーナーを走り切り、3周目のホームストレートもまた同様に36号車のスリップを狙う。但し今回はそのさらに前方にも隊列ができており、荻原選手もスリップの恩恵を受けていたことから前に出るには至らず順位変動はなし。するとそこにアウト側から鋭いブレーキングで仕掛けてきたのは#87山本選手。1ポジションダウンしたもののその後に前走車のスピンもあり、順位変動はなし。後方からも迫りくるライバルたちを牽制しつつ、前を追う浅井。走り慣れていない富士スピードウェイとは思えないくらい器用なドライビングである。

一度は前に出た86号車にダンロップコーナーでのブレーキングで先行され、前との差も少しずつ開きつつある中盤ではあるが、決してあきらめることはなく走り続ける。次に襲い掛かってきたのは#213バートン選手。以前北海道に遠征してきたことがあり一度は戦っている相手ではあったが、その際は浅井の敵ではなかった。今回はコースに慣れている分、バートン選手に軍配が上がる形となった。少しずつタイヤがタレ始め、100Rでテールが流れるなど挙動変化が見られ始めた7周目、ダンロップコーナーの進入でイン側からブレーキング競争を仕掛けてきた#761の岩岡選手が目の前でスピン。ラインを交錯させる形で目の前に現れたため、フルブレーキングでも車速が落としきれなかった浅井のフロントと接触。ここでまた順位を2つ落としてしまうこととなった。

トラブルに見舞われながらも素早く戦線に復帰。残りは2周。挽回のチャンスはまだ残されている。現にすぐ前方を走るライバルたちに比べ、走行ラインは一枚上手。じわりじわりと差を詰め、迎えたファイナルラップ。あと1、2周あればというところまで迫ったものの、届かず予選から1ポジションアップの17位でチェッカーを受けた。

佐藤、浅井が荒れたレース展開となる中、堅実な走りで順位を上げたのが三輪。

絶好のスタートを決め、TGRコーナーまでに2台を軽々とパスし、目前で団子状態になっているライバルたちを大外いっぱいから仕掛けた。コカ・コーラコーナーから100Rにかけてはレコードラインを保持し、ダンロップコーナー進入ではコースアウトしていく1台を冷静にパス。オープニングラップから2周目までの間にポジションを3つ押し上げた。続く3周目のホームストレートでは後方につけていた#248Kuma.g.san選手にスリップストリームに入られ先行を許したが、コカ・コーラコーナーでは一気に間合いを詰め、プレッシャーを与える。セクター3ではオーバーステアを出しつつも上手く処理し、隙あらば前に出るという強い気概が感じられる走りを披露。後方から迫る#977関家選手にはTGRコーナーのブレーキングで仕掛けられるものの、自身の走りに集中し丁寧なブレーキングで応戦。結果、977号車はスピンアウトしていき、三輪は何事もなかったかのように抜けていった。その後しばらくは単走が続くが、コースアウトしていた#7村松選手を100R手前でパス。背後につけられ、翌周のホームストレートではスリップにつかれ先行を許す。サイドスリップで粘る三輪であったがTGRコーナー進入で前に出られ、ここでは1ポジションダウン。そのまま7号車に食らいついていくと徐々に前を走る数台のライバルたちに追いつき、再びバトルモードへ。走行ラインも周回を重ねるごとに理想的なものへと変化していく。決勝レースにおいてもなお進化を遂げていく。前方との間合いも詰まり、いよいよ競り合いかと思われた矢先のダンロップコーナー進入。248号車と7号車が接触しスピン。動きをしっかりと捉えていた三輪は焦ることなくイン側をしっかりとトレースし、前に出た。

残り周回数は2周となり、後方との距離も空いたことから再び単走状態へ。しかし慢心することなく走行精度を高め続け、チェッカーを受けた。FCR-VITAデビュー戦は36番グリッドからのスタートから5ポジションアップの31位というリザルトを残した。

 

 

<AIM Legend‘s Club CUP>

今回のFCRは往年の名ドライバーたちが熱いレースを魅せるレジェンドクラブカップも併催された。

KOSHIDO RACINGからは610号機がエントリー。搭乗するレジェンドドライバーはかつての日本トップカテゴリーであるF3000をはじめ、全日本GT選手権や全日本ツーリングカー選手権で活躍した黒澤琢弥氏。

現在もVITA-01のドライビングアドバイザーを担っているだけあり、他のドライバーに比べて抜きん出たタイムを刻む。前日の予選兼練習走行では文句なしのトップタイムをマーク。 悠々とポールポジションを獲得した。

無論レースにおいても最速であることに変わりはなく、関谷正徳選手からは予選の他に設けられていたフリー走行への出走を禁じられるほど。裏打ちされた速さは決勝レースにおいても如実に発揮され、しっかりとポールトゥウィンを決めた。レースウィークの最後でKOSHIDO RACINGに嬉しい結果をもたらしてくれた。

今回、それぞれのドライバーが未経験の領域でレースに挑むこととなった。

佐藤は予選最高位を獲得し、決勝でポジションこそ落としたもののかなりの手ごたえは感じられたはずである。いよいよ目標としている表彰台に大きく近づいたと誰もが確信している。

浅井も北海道クラブマンカップでの経験を活かし、富士スピードウェイに戻ってきた。実は2年前にもFCR-VITAに参戦しており、その時はほろ苦い思いでこの地を後にしたが、今回はしっかりと結果を残すことができた。浅井の本当の戦いはこれからが正念場である。

三輪は想像以上のパフォーマンスをみせ、チームの皆を圧倒させた。タイム・ポジション双方において富士スピードウェイとVITA-01でデビューとは思えないほどの結果である。次戦も参戦し、その先を見てみたくなったのは筆者だけではないだろう。ビジターレースへの期待が高まるKOSHIDO RACINGにこれからもご注目いただきたい。

 

2024.11.05 Fuji Champion Race Series 2023      FCR-VITA & KYOJO CUP Rd.4     RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.1/KYOJO CUP Rd.1

開催日時:2023年11月25日(土)~11月26(日)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー
FCR-VITA:佐藤 元春、上野 大哲、兼松 由奈
KYOJO CUP:RINA ITO、織戸 茉彩、兼松 由奈

マシン
恒志堂レーシング レブニーズVITA :佐藤 元春・RINA ITO
恒志堂レーシング CLASS VITA:上野 大哲・織戸 茉彩
恒志堂レーシング YOSHIMI VITA:兼松 由奈

参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP

天候
FCR-VITA:予選/曇り、決勝/曇り
KYOJO CUP:予選/曇り、決勝/晴れ

路面
FCR-VITA:予選/ドライ、決勝/ドライ
KYOJO CUP:予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績
佐藤 元春(FCR-VITA) 予選:19/41位 決勝:15/40位
上野 大哲(FCR-VITA) 予選:8/41位 決勝:6/40位
兼松 由奈(FCR-VITA) 予選:28/41位 決勝:31/40位

RINA ITO(KYOJO CUP) 予選:12/23位 決勝:12/23位
織戸 茉彩(KYOJO CUP) 予選:20/23位 決勝:19/23位
兼松 由奈(KYOJO CUP) 予選:15/23位 決勝:15/23位

 

KOSHIDO RACINGにとって今シーズン最後の富士スピードウェイでのレースとなるFCR-VITAおよびKYOJO CUP第4戦。チームは水曜日に現地入りし、木曜日から練習走行を開始していた。

気温は10℃前後で天候は幸いにして雨に降られることもなく、レースウィークは比較的良好な条件の日が続く。最終戦となる今回はFCR-VITA・KYOJO CUPともに過去最多レベルのエントリー台数。またLegend Driver’s Club主催でVITA-01を使ったレースも併催されるということもあり、平日のスポーツ走行からサーキットは賑わいを見せていた。

<11月25日 FCR-VITA Rd.4>

7:55、朝の冷たい空気の中予選がスタート。ホームの北海道ほどではないが、富士山の裾に位置する富士スピードウェイは十分に寒い。路面はドライではあるものの空は厚い雲で覆われており、路温上昇は見込めない状況であった。

15号機の佐藤はアウトラップから積極的にクルマを動かし、タイヤに熱を入れる。無論1周ではアタックするだけのコンディションまで上げられず、2周目突入直後もホームストレートでウェービングするなどしていち早くアタックラップに移行できるように努めていた。マシンの挙動が安定してきたのは3周目から。しかしレコードライン上にペースが上がらない車両がおり、セクター3で数周にわたってタイムロスが生じてしまう。過度にオーバーステアを出さないよう上手くコントロールしながら13コーナーとGRスープラコーナーをクリアし、ホームストレートでサイドバイサイド、TGRコーナーブレーキングで前へ。クリアラップはとれたものの、他車のスリップストリーム活用は見込めない位置のままセッションを走り続けた佐藤は1分59秒679で19位となった。14台がひしめき合う1分59秒台だっただけに、もし上手く活用できていたらより上位に食い込めたのではないかという悔しい思いが残った。

35号機の上野も同様にアウトラップ、2周目と丁寧にタイヤに熱入れ。実質3周目からのアタック開始。しかし序盤はコカ・コーラコーナーでラインが定まらず苦労が窺える。視界前方にライバル車両を据え、スリップストリームから好タイムを狙おうというところで100Rでライバルたちが失速、隊列は団子状態となる。混雑を避けるかの如く一時ピットに滑り込み、フロントタイヤの内圧を調整のうえ再アタックへと向かう。まずは前方がクリーンな状態でワンアタックし、その後ライバル達を先行させて改めてスリップストリームを狙う。しかしすぐには間合いが取れず、結局単走状態が続いた。少し時をおいて徐々に前方との差が詰まり、絶好の位置につけた上野。ただ、ライバルたちもそう易々と恩恵を与えてはくれない。最終パナソニックコーナー立ち上がりからホームストレートに出ると、しっかりラインを外して背後にはつけさせない。それは当然のことで国内屈指の高速サーキットである富士スピードウェイは丸1周スリップストリームに入ると簡単に1秒近くタイムが短縮される。シビアにタイム争いをしている上位陣同士ならなおのこと後方への意識が高いのである。上野も佐藤同様にもっと長い時間スリップに入っていれば…と思う展開。1分58秒896で8番手となった。

610号機の兼松由奈。走行ラインは常に理想的でミスも少ない走り。地味ながら押さえるところをしっかり押さえた堅実な走りで徐々にタイムを刻んでいく。コカ・コーラコーナーではかなり攻め込んだ走りでイン側の縁石をかすめるようにクリアする場面も見られ、走り自体はアグレッシブさに溢れている。しかしながら今ひとつスピードがのってこない。それでもシーズン集大成となる今回、ベストな走りを披露。2分フラットのタイムを連続でマークするなど、FCRとKYOJO CUPのダブルエントリーで着実に前進した姿を見せた。

予選タイム

・佐藤 元春   1’59.679

・上野 大哲   1’58.896

・兼松 由奈   2’00.847

決勝は11時20分スタート。総出走台数は40台。富士スピードウェイの長いホームストレートもこれだけの台数のVITA-01が並ぶと壮観である。

選手同士が固い握手とともに健闘を誓い合い、それぞれのグリッドへ向かう。

チーム代表の佐藤のグリッドには、友人であり経営者仲間である近藤氏も応援に駆け付けた。

近藤氏とは同じチームとしてドバイ24時間耐久レースに参戦したり、ブランパンGTアジアシリーズにスポット参戦するなど、レース仲間でもある。今回はインタープロトシリーズのプロアマクラスにスープラGT4でエントリーされていた。

友人の激励を受け、グリッドウォークが終了。各ドライバーはフォーメーションラップを経てスタートの瞬間を待つ。

シグナルオールレッドからのブラックアウトで全VITA-01が一斉に咆哮を上げる。

佐藤はスタートを順当に決めたものの、4グリッド前の#36岩岡選手がスタートを切れておらず、追突を避けるべく失速しながらアウト側へ回避。即元のラインに戻ったもののリズムを狂わせてしまい、シフトミスしながらTGRコーナーへ。その間に1台にパスされてしまう。TGR進入から立ち上がりはミドル→アウト→アウトのラインを強いられ、次のコカ・コーラコーナーにはイン側からの進入を余儀なくされる。苦しい立ち上がりとなったが、100Rでは前走車に食らいつき、ダンロップコーナー進入ではオープニングラップにもかかわらずアウト側からオーバーテイクを試みるなど、果敢に攻め続けた。佐藤はこれまでもタイヤが冷えた状態でVITA-01を如何に速く走らせられるかという訓練をホームである十勝スピードウェイで繰り返していた。それが功を奏してか、走り出しから挙動を乱すことなく安定して攻め込んでいくスキルが高められている。

前方で#87山本選手と#91首藤選手が競り合ってペースが上がらない中、冷静にチャンスを待つ佐藤。2周目のコカ・コーラコーナー立ち上がりで立ち上がり加速を鈍らせた首藤選手を捉えパス。その後は数周にわたって山本選手とその前方を走行する#225富下選手を追撃する。山本選手が先に富下選手の前に出て、それに続く形で佐藤も7周目のホームストレートでがっちりと真後ろにつき、スリップストリームを最大限活かしてパス。順調にポジションを上げていたがファイナルラップのホームストレートで後方より追い上げてきた#7有村選手に背後に入られ、パスされる。最終的に15位でフィニッシュ。冷静かつしっかりとチャンスをものにする走りで4ポジションアップとなった。

実はこのレースウィーク中、体調が思わしくなかった佐藤。同月初旬にドライバーとして参戦していたスーパー耐久をピークに、今回のFCRにおいても症状を引きずっていた。現状のコンディションの中搭乗することで最悪マシンを傷めてしまうかもしれないという懸念もあり、翌日のKYOJO CUPで同マシンを使用するRINA ITOのことも考えて今回自身の参戦を見合わせることも検討していたという。鍼灸にてレース直前まで加療を続け、何とかステアリングを握るまでに調整し、臨んだ今回のFCRであった。

8番手スタートの上野は問題なくスタートを決める。スタート直後のTGRコーナー立ち上がりから#44平川選手とコカ・コーラコーナーに向けて並走。ラインを潰すことなくクリーンにバトルを展開し、辛くも前へ出て1ポジションアップ。そこからは上位陣ならではの各車ミスのない淡々としたバトルが続く。地味ではあるがいくつコーナーをクリアしてもトップから上野まで車間がほとんど変わらない。これは各マシンが常に限界領域で走り続けていることの裏付けであり、相当にハイレベルであることを物語っている。

4周目あたりからレースに動きが出る。上野の前を行く#32見島選手とトップ集団との差がわずかに開き始め、スリップストリームの恩恵が薄くなった見島選手に上野が肉薄。とはいえども富士スピードウェイのホームストレートは長く、VITA-01では最も高いギアである5速でも最高速は頭打ちになってしまう。ストレートのみで前に出ることが難しいことを悟った上野はそのまま横並びで6周目のTGRコーナーのブレーキング競争へ。アウト側の見島選手も一歩たりとも引かない執念の走り。アウト→アウト→アウトのラインで横並び状態を崩さず、そのまま立ち上がってコカ・コーラコーナーに向かっていく。今度はイン側となる見島選手が有利な展開となるが、上野もまったく引かず2台並んで進入。立ち上がりアウトのホワイトラインから車幅半分ほどはみ出しつつも粘り、100R進入までにようやく前に出た。

以後はひたすらに前を行く#1大八木選手を追う展開。ファイナルラップのセクター3では肉薄し、プレッシャーを与え続ける場面もあったが、大八木選手もまたレース巧者。まったく動じる気配はなく、上野はあと一歩のところで6位チェッカーとなった。

 

兼松は28番グリッドからのスタート。ただ、KOSHIDO RACINGの3台の中で最もスタートを成功させたといえる絶妙なタイミングとクラッチワーク。そこからTGRコーナーに向けてアウトから目一杯ブレーキングを遅らせて進入。この時には佐藤の後方まで一気にジャンプアップしていた。その後もこの勢いのまま行くかと思われたが、セクター3にて#831YOSHIMA選手に接触され痛恨のスピン。一気に最後尾まで後退してしまう。スタートが良かっただけに悔しさ滲ませる兼松。最終戦、このままでは終われまいと怒涛の追い上げが始まった。3周目のホームストレートで1台、同周回のダンロップコーナー進入にてまた1台、5周目にはアドバンヘアピンへの進入でブレーキングの一瞬の隙を突いてまた1台の前へと、アグレッシブな走行をみせる。その後も追い上げの手を緩めることはなく7周目のホームストレートで1台、同7周目のセクター3でも1台、8周目のTGRコーナー進入ブレーキング競争でも競り勝って1台パス。フィニッシュラインを越えた時には9ポジションを取り返していた。

この力強い走りを目の当たりにし、レース開始直後のアクシデントさえなければ…と無念さがこみ上げる。まだKYOJO CUP最終戦を残しているものの、今期のFCR-VITAとKYOJO CUPダブルエントリーによる走り込みの成果は如実に表れていたといえよう。

FCR-VITAは本戦をもってシリーズが終了。35号機の上野がシリーズ6位入賞という戦績を納め、2023年の戦いに幕を閉じた。

 

 

<11月26日 KYOJO CUP Rd.4>

女たちの今期最後の戦いは7時50分の予選から開始される。前日のFCR-VITAからは約半数のエントリー台数となるが、KYOJO CUPならではの華やかさと緊張感が独特の空気感を作り上げている。

まずは15号機のRINA ITOからピットアウト。それに続く形で35号機の織戸、610号機兼松と続く。11月下旬の早朝ということもあり、気温は15℃と低い。アウトラップから2周目は全車慎重に挙動を感じ取りながらマシンの動きを探る。

3周目、アタックを開始するRINA。まずは2分1秒779の滑り出し。目立ったミスをすることもなく4周、5周と周回を重ねつつラップタイムを上げていく。4周アタックした時点で2分0秒241。2分切りを目前に煮詰まり、ここでピットへ。体勢を立て直し、ベストを更新すべくリスタート。但し残りのアタックラップは実質3周程度であり、前後の間隔を上手くとって集中力を高めてタイムを刻みにいく。ピットアウト後一周を経て、ラストアタックへ。セクター1は狙い通りベストを更新できたもののセクター2ではセカンドタイムに甘んじる。しかし大きなミスはなく、その勢いのままセクター3へ突入。上手くまとめ上げ、ここでも自己セクターベスト更新。これまでKYOJO CUPで記録した予選タイムを更新し、RINAとしては初の2分切りとなる1分59秒843をマークし、予選を終えた。

35号機の織戸。参戦2年目も最終戦となったが未だに予選は緊張するとコメントしている。その緊張とは裏腹に、マークするタイムはこれまでの走行履歴の中で最も速い。VITA-01の挙動に慣れ、攻めの走りが身に付いた2023シーズン。明らかに走り方が変わった。その現れとして明らかなミスのあった周回を除き、ベースは2分2秒台を記録。全セクターでタイムのばらつきが少なく、姉貴分のRINAや兼松に迫る勢いであある。スピンもなく、周りのライバルたちに圧倒されることなく自らのペースを貫いた結果、最終的に2分1秒台中盤まで削り取り、自身の記録を大きく塗り替えた。これを受けてチームメンバーやファンをはじめ、決勝でのバトルに期待が高まる予選となった。

610号機の兼松はトライアンドエラーを繰り返す。それは意味なくマシンを消耗させるようなものではなく、コンマ一秒を削り取るために前進した結果である。その証拠に予選中に記録されたタイムはばらつきが著しい。但し、決してペースが上がっていないというわけではなく、詰めるところはきっちりと詰めているのである。

シーズンを通してFCR-VITAとのダブルエントリーであったことから他のチームメンバーに比べて乗る時間は長くとれていた兼松。故に現状を打開するために貪欲に速さを求め続けた。サーキットだけでなくラリー参戦も積極的にこなす側面を持ち合わせ、クルマとの対話は誰よりも長い。そのストイックさが今期の成長を推し進めた何よりの要因である。限界付近を探りながら上手くつないだ7度目のアタックラップで2分フラット中盤をマークし、15番手を獲得した。

 

予選タイム

・RINA ITO  1‘59.843

・織戸 茉彩  2’01.495

・兼松 由奈  2’00.429

 

 

正午を回り、決勝の刻が迫る。

長女RINAから妹たちへ檄を飛ばされ、それぞれのマシンに乗り込みグリッドへと向かう。チームオーナー佐藤からはスタート前の最後のアドバイスと激励。

 

そして12時35分にスタートが切られたわけであるが、ここでちょっとしたトラブルが発生。スタートシグナル不良である。通常、レッドシグナルが5つ順に点灯し、それらが一斉に滅灯することでスタートとなるところ、レッドシグナルが4つで滅灯。これに対しKYOJOドライバーの面々は一瞬驚きを隠せなかったものの、素早く何事もなかったかのようにマシンを前に進めた。遅れは生じたもののTGRコーナーに向けてクリーンなスタートとなった。

12番手スタートだったRINAは周りのライバルたちよりも素早くスタートに順応し、2台をパス。イン側で粘る#37金本選手に得意のTGRコーナーへのブレーキングで競り勝ち、前へ。続くコカ・コーラコーナーから100Rでは#13の高野選手と並走し、辛くも前に出る。この時点で9番手まで順位を押し上げた。

ポジションキープのまま迎えた2周目のアドバンコーナー、すぐ後方につけていた金本選手にインを刺され、ポジションは10位へ。しかしそう簡単に食い下がるまいとダンロップコーナー進入でレイトブレーキングからインを突いたところ、左フロントと金本選手の右リアが接触。金本選手はそのままスピン、コースオフしてしまう。気を取り直し、RINAは前方のライバルたちの追撃へ。

しかしここで次の刺客が現れる。スタートで前には出たものの予選のラップタイムでは後れを取っていた#86の永井選手にスリップストリームに入られ、3周目のホームストレートで先行を許した。4周目以降はやや前との距離が離れ、5周目のホームストレートでは高野選手にも前に出られてしまう。次々と襲い掛かるライバルたち。更に後方からは#213のバートン選手も襲い掛かかり、6周目のTGR進入にてイン側をとられた。立て続けに抜かれてしまったがRINAは冷静であった。先行されてからも決して差を拡げられることはなく、抜き返すチャンスを窺う。前方では高野選手とバートン選手が激しく競り合っており、ペースが上がっていない。しかしその差を詰めるまでには至らず、10番手でチェッカーを受けた。しかしながら2周目の金本選手との接触がペナルティと判定され、正式リザルトでは10秒加算にて12位となった。

予選ではベストタイムをマークし、グリッドもまた過去最高位を獲得した織戸。スタートは周りに後れをとることなく上手くまとめ、順当な滑り出しとなった。しかし1周目に痛恨のシフトミス。これが響き、序盤はスタート順位から1ポジション落とす場面もあったが、徐々に周りのバトルに挑めるペースを作り上げ、レースを戦った。

これまでKYOJO CUPに参戦するたび下位争いばかりであったが、今回は予選からの良い流れを汲んで決勝でも2分2秒台をベースとしたレースラップで走行。前を走るライバルに何度も仕掛ける姿がこれまでとの違いを印象付けた。#34井下選手の前に出て、一度は前に出られてしまった#7おぎねぇ選手にもレース終盤では果敢にバトルを仕掛ける。あと一歩というところまで迫ったものの惜しくも届かずチェッカー。スタート時より1ポジションアップし、後方に4台を従えてフィニッシュした。

リザルトもレース中のポジション取りも着実に上がっている。ベストタイムの更新だけでなくその技量は間違いなく向上し、今後も伸び続けることが期待される。普段から様々な車に触れる機会もあり、その応用力は今後ますます発展していくであろう。これからが楽しみなドライバーであることは間違いない。

兼松もまたスタートを順当に決めた。周りのライバルたちが若干もたつく中、隙を突いて2つポジションアップし、前を行くバートン選手に追いすがる。しかし、想定以上に前を行くライバルたちのペースは速く、徐々に離されていく。次第に集団がいくつかに分かれ、トップ集団、8番手9番手争い、さらにその後方集団が形成される中、13番手争いの集団の中で常にバトルを繰り広げていた。ここで競り合っていたのは#28樋渡選手、#28坂上選手と兼松。序盤からフィニッシュラインを越えるまでこの三つ巴のバトルは続いた。そこに徐々に追い付いてきた#109保井選手も加わり、4台での争いに発展。どの選手も隙あらば前に出ようと巧みにラインを変えて仕掛けるが、逆にどの選手も決定的なミスをしないという僅差の攻防。スリップストリームに入るもののブレーキングで先行車が死守し、順位の入れ替えがほとんど起こらぬまま周回を重ねていった。その中で兼松は前後方を双方気にかけながらの走り。落ち着いて相手の走行ラインを見極め、攻めつつ抜かれないような走りを組み立てていった。

拮抗したバトルの行方はあまりにも順位の変動がなく、最終的にはスタート順位とまったく同じ15位でフィニッシュすることとなる。リザルトだけを見ると平凡かつ面白みに欠けるように感じられるが、実際のレース展開は小さな駆け引きが凝集された見ごたえ溢れる戦いの連続であったといえよう。数年でレースを戦う力を培った兼松への今後への期待が高まるところだ。

 

 

レースを終え、リラックスしつつも今回の自身の走りと向き合う。これが次につながる大切な時間である。

 

KOSHIDO RACINGにおける2023年シーズンの富士スピードウェイでの戦いは幕を閉じた。来季はどのような布陣での戦いとなるのか。北海道での活躍のみならず、これまで以上に死力を尽くし、本州においてもその名を轟かせることをチームは誓う。

 

2024.11.05 北海道クラブマンカップレース2023 Rd.5 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレースRd.5 VITA-01

■開催日時:2023年10月15日(日)

■開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

■ドライバー:上野 大哲(#11)、佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310)
山本 聖渚(#516)、工藤 大祐(#910)、

■マシン:恒志堂レーシングVITA 11号機、12号機、310号機、516号機、910号機

■参戦クラス:VITA-01クラス

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績

上野 大哲  予選:2/14位 Race1:2/14位 Race2:2/14位

佐藤 元春  予選:5/14位 Race1:4/14位 Race2:1/14位

浅井 康児  予選:1/14位 Race1:1/14位 Race2:10/14位

山本 聖渚  予選:9/14位 Race1:8/14位 Race2:6/14位

工藤 大祐  予選:11/14位 Race1:9/14位 Race2:9/14位

 

2023月最後の北海道クラブマンカップレース VITA-01。本戦はシーズン中唯一2ヒート制で争われ、それぞれが一レースとして扱われる。1ヒート目は第4戦までと同様に予選タイムがグリッドに反映されるが、2ヒート目は1ヒート目のベストラップが採択される仕組み。晩秋の北海道でエンジンも良く廻るこの時期、14台のVITA-01がラップタイムの短縮とライバルとのバトルにしのぎを削る。

KOSHIDO RACINGはレギュラー参戦の佐藤、上野、浅井、工藤に加え、弱冠20歳でポルシェスプリントチャレンジジャパンをはじめFIA-F4やS-FJなど多彩な経歴を持つ山本聖渚を迎えての5台体制。レース前日・前々日の練習走行では20℃を越える気温の中、各車1分30~31秒台をコンスタントにマークし、唯一310号機の浅井が1分29秒台という驚異の走りをみせ、その好調ぶりをアピールした。


<公式予選> 

天気は快晴。気温14度、湿度60度弱と、コンディションとしてはまずまず良好。
KOSHIDO RACINGでまずはじめにコースに出たのは佐藤。#778大島選手の後に続いてピットアウトしたがスリップストリームを狙う感じではなく、少し間隔をあけての走行をとなった。単走でひたすら集中してタイムを削っていくスタイルで、アウトラップからハイペースでタイムを刻んでいく。これまでの走り込みからタイヤの美味しいところは熟知しており、いち早くそこに到達するために時間を無駄にすることはない。

2周目からは早くもアタックラップに移行していく。最終的に計13周の全開走行となったが、セッション全体を通してクリップにつけなかったのはほんの数回。アンダーステア気味で最終コーナーがなかなか決まらない状況の中、苦しい思いをしつつも並外れた集中力で常に1分30秒台で周回を重ねていった。スリップストリームを得る場面には一度恵まれることがなく、5番手で予選を終える。

上野はアウトラップから2周目にわたって丁寧にタイヤに熱を入れていく。満を持して3周目からアタック開始。と思われたが1コーナーのブレーキングで早くも相当なアンダーステアに苦しみ、即時ブレーキバランスを2段階リア寄りへ。それでもなかなかラインが定まらないまま3周目を終えて4周目へ突入。やはり1コーナーでのアンダーが強く、ブレーキバランサーに手をかけ、リアにさらに1段階寄せる。ようやくマシンの姿勢が決まりだした5周目から1分30秒台を継続的にマーク。8周目をまわる頃には挙動はすっかり安定し、各コーナーのラインも美しい弧を描いていた。上野もまたスリップストリームの恩恵を受けることなく予選を走り切り、2番手のポジションを獲得した。

初の十勝スピードウェイかつVITA-01搭乗のため練習走行で苦労していた山本は、試行錯誤しながら走りを組み立ててきた結果、この予選までにようやく周りの強豪たちと渡り合えるタイムを刻めるようになっていた。それでもアンダーステア傾向の強い516号機には手を焼き、ありとあらゆる引き出しを駆使して周回を重ねていく。その走りはデータロガーに裏打ちされており、いかにしてクルマを曲げようとしているか、前に進めようとしているかが見てとれた。
序盤から1分31秒台を刻み、ラップタイムはほぼブレなし。途中走行しながらブレーキバランスをフロント寄りに変え、それに自身の走り方をアジャストして強アンダーと対峙し続ける。苦しいながらもようやく思い描くラインにのせ始めたところで、練習走行でのベストから約0.02落ちの1分31秒067をマークし、最終的に9位につけた。

工藤は練習走行初日から何度かセッティング変更を試みたものの、それがなかなか嚙み合わず苦しい展開を強いられていた。またトラブルにも見舞われ、精神的にベストなコンディションとはいえない中でのレースウィークとなった。とはいえどもこの予選においては毎周回1分31秒台前半を記録しており、決して遅いわけではない。ただ、本人の納得のいく方向にマシンが向かなかったことで本来のベストな走りからは遠ざかっていた状況である。今期の集大成である最終戦ながら改めてセッティングの奥深さというものを痛感していた。順位的には11番手と出遅れたものの、これまでの決勝レースでは逆境に屈しない粘りの走りを見せていた工藤。後方からの巻き返しに期待が寄せられた。

このレースウィークを通して最も好調ぶりを見せていたのは浅井。前述の通り練習走行ではチームトップのタイムをマークしていたのに続き、予選においても全体で唯一の1分29秒台を叩き出し、堂々のポールを獲得した。

今期はとにかく時間ができたところで単独でも十勝スピードウェイを走り込み、データ取りと様々なセッティングを試すことに勤しんでいた浅井。もちろん毎回ベストな結果が出るわけではなかったが、減衰調整を1段階ずつ試したりタイヤ内圧をコンマ1ずつ調整するといった微細なテストをたったひとりで続けていた。そのデータ収集と走り込みの集大成がここにきて開花したといえよう。本人的にはまだ詰めるべき箇所は残っていたようであるが、十分すぎる結果に北海道クラブマンカップ初優勝への期待が高まった。

予選タイム
上野 大哲:1’30.188
佐藤 元春:1’30.458
浅井 康児:1’29.923
山本 聖渚:1’31.067
工藤 大祐:1’31.137

 

Race1

予選時から少々気温は上昇したものの、ほぼコンディションに変化はなし。グリッド上には各マシンが整列し、レース前最後のチェックとチームの激励を受けている。予選ではトップから1秒以内のタイム差の中に過半数が凝集し、一触即発のバトルが予想された。そのような中、タイトル奪還がかかる佐藤であったが「楽しみながらオーバーテイクしていきます」とグリッド上で笑顔を見せ、気負いは感じられない。スポットで初の十勝スピードウェイ公式戦となる山本には少々緊張も窺えたものの、他のKOSHIDO RACINGドライバーもできるかぎりの走りをしつつ、最終戦を楽しむという気概が垣間みえた。

ほどなくしてグリッドと選手紹介を終え、フォーメーションラップがスタート。いよいよスタートの時を迎える。しかしここでポールポジションの浅井、なんとシグナルブラックアウト直前にクラッチをわずかにミートさせてしまいマシンが一瞬前へ…。ジャンプスタート裁定は免れないと素早く判断し、本スタートを一瞬遅らせて対応。その結果2・3・4番手スタートのライバルたちを先行させる結果となってしまった。しかしその後はひたすら冷静にトップ返り咲きを狙う。2周目のホームストレートでは#77村上選手のスリップストリームにしっかりと入り、 1コーナーのブレーキングでパス。続いて射程圏に#17坂本選手を捉え3周目のホームストレートでもスリップからのパスを狙う。しかし坂本選手もまたトップの上野のスリップの恩恵を受けており、#11・#17・#310の3台は横並びのまま1コーナーへ飛び込んでいく。最もイン側にいた上野は最大限ブレーキングを遅らせてトップの死守を図ったものの、ブレーキロックで姿勢を乱し後退。次にイン側を陣取っていた坂本選手は、もつれつつも上野に競り勝ち、辛うじて前に出る。しかし最もアウト側から飛び込んだ浅井は、この上野と坂本選手の競り合いで失速した隙を見逃さずすかさず前へ。1コーナーを立ち上がるまでに一気に2台をパスして早くもトップを奪還した。その後310号機の前はオールクリア。本レースウィークを通して抜きん出て速かった浅井はみるみるうちに後続を引き離していく。

その後も坂本選手と上野のバトルが続いたことで2位以下のレースペースが上がらず、その差は拡がっていく。ジャンプスタート判定を受けた浅井に課せられたタイムペナルティは5秒。サインガードのピットクルーは必死に更なるペースアップへの檄を飛ばす。それを見た浅井は直感的に勝つためにはそうしなければならないという指示であると感じたという。鬼の巻き返しを図るべく奮闘し、レース中のベストタイムをマークしながらより後方を突き放すことに成功。見事5.118秒の差をつけてチェッカー。自らの失敗は自らの手で取り返し、誰もが納得の勝利を収めた。

一方、浅井のスタートトラブルでトップに浮上した上野。オープニングラップをそのまま制し、2周目もトップをキープ。しかし3周目のホームストレートで坂本選手にスリップストリームに入られ、1コーナー進入までに横並びに。ブレーキング競争では余裕があったものの、坂本選手が早めにインに切り込むライン取りだったために余儀なくブレーキロックさせながら回避。さらに横に並んでいた浅井にも先行を許し、3番手に後退する。
一旦は前に出られたものの総合的なペースでは坂本選手に勝る上野。インフィールドでは容赦なくプレッシャーを与え続けた。何度もブロックラインで応戦する坂本選手。やきもきしていた上野であったが、レコードラインを外しながら走行することで逆にペースの安定性を欠く坂本選手の隙を突き、何度か前に出ては抜き返されるという展開を繰り返す。雌雄を決したのは6周目。5周目の最終コーナー立ち上がりから坂本選手の背後にピタリと付け、スリップから出た上野はアウトから1コーナー進入で仕掛ける。決して無理はせず、イン側の坂本選手がアウトに張らんでいくのを冷静に見極め、クロスラインで立ち上がり2コーナーまでに確実にパスした。その後は残り4周を浅井を追うことに注力していたものの、後方からは坂本選手をパスしてきた#778大島選手が迫り、再びバトルを強いられる。しかしあくまでも自身の走りに徹し、ミスなく走り切ったことでポジションを守り切り、2位でフィニッシュとなった。

スタートはミスなく決めた佐藤。前方では浅井のミスによる混雑もあり、混戦模様となったトップ争いに肉薄する。レースでは強さを発揮し、前を行くライバルたちがコーナーでクリップを外す中、一人丁寧にベストラインをトレースし差を詰める。まずは4周目、上野とのバトルで1コーナーの立ち上がり速度が鈍った村上選手を捉え、2コーナー進入までアウト側で並走。そのまま3コーナーアウト側で粘り、続く4コーナーでインとアウトが逆転し前へ。次なるターゲットは2位争いを展開していた坂本選手と上野。この二人のバトルが数周にわたって続き、ペースが上がらない中を何とかこじ開けようと試みるも前に出る機会が窺えず、その間に一気に後方に迫ってきた#778大島選手に先行を許す。大島選手はディフェンディングチャンピオンの意地にかけ、坂本選手も強烈にプッシュ。2コーナーでラインの自由を阻まれたものの驚異のコントロールで前に出る。これにより4位争いは坂本選手対佐藤の構図へと発展。残り周回数が3周と少なくなる中、確実に仕留めるべく7周目の最終コーナーを丁寧にクリアし、坂本選手のスリップへ。コントロールタワーを越えたところで横並びに。坂本選手もそう容易く前には出すまいとイン側1台分の車幅を残して牽制。これに動じることなく佐藤はイン側のまま1コーナーのブレーキング勝負を仕掛け、3速にシフトダウンして立ち上がりの蹴り出しで前に出た。その後は2番手争いに加わるべく上野と大島選手を追ったが、残り1周という状況では如何ともし難く4番手でフィニッシュした。この入賞によりシリーズタイトル奪還に一歩近づくこととなり、Race2への期待とプレッシャーが高まった。

516号機に手を焼いている山本。スタート前は緊張を隠せない様子であったが、シグナルがブラックアウトした瞬間にそんなことなど忘れさせるような蹴り出しと1コーナーへの飛び込みをみせる。スタートでもたついた#555の星野選手の前に出ると、続いて#779関選手にも積極的に仕掛けていく。若くして経験値が豊富な山本はオープニングラップの3コーナー進入で素早くラインを変え、インから関選手をパス。一気にトップ集団に迫る勢いでレースを展開する。それでも癖のある516号機では自身の本来の走りを発揮しきれず、集団からは徐々に離されていく。
奮闘を続け、一定の距離からは離されない走りを見せていた山本であったが、5周目の7コーナーで一瞬姿勢を乱し、切り返す8コーナーで一瞬の隙を突かれ星野選手にインに飛び込まれ前に出られてしまう。しかし続く最終コーナーで著しくオーバーステアを誘発し、立ち上がり加速がかなり鈍った星野選手をすかさず再オーバーテイク。以降一進一退の攻防が続き、7周目にはスリップに入った星野選手が再び山本の前に出て、フィニッシュラインを越えるまで激しいバトルを展開した。
次第に5位争いをしている坂本選手と村上選手に肉薄し、最後は4台での接戦にもつれ込む。ただ、ここで516号機のリアタイヤが根を上げ出し、付いていくのがやっとの状態。7位の星野選手からコンマ4秒差でチェッカーを受けた。

決勝直前まで試行錯誤を繰り返していた工藤は11番手からのスタート。しかし、やはり上手く波に乗れずスタート直後から勢いのある#129の梅田選手と#55の後藤選手に早々に先行を許していた。苦しい展開が続き、ようやく910号機の動きに馴染んできたのは3周目あたりから。最終コーナー立ち上がりをきれいにまとめ、#779関選手のスリップストリームへ。そのまま4周目の1コ-ナー進入ブレーキングで前へ。その勢いのまま梅田選手の背後につけて猛プッシュし続ける。

練習走行から予選、そしてレース1序盤までの納得のいかなかった走りを払拭すべく、続く5周目のホームストレートで梅田選手のスリップに入り、しっかり狙いを定めて再び1コーナーへの飛び込み勝負。ここでも工藤が前に出た。次なる勝負の相手は後藤選手。ペースは完全に工藤が上回っており、右へ左へとマシンを振りプレッシャーをかける。9周目のホームストレートから1コーナーへのブレーキング競争。往年の走り屋のようなドライビングで直前まで背後につけ、ブレーキング開始のタイミングで素早くインへ。ラインをこじ開け、立ち上がりで競り勝つ。これでスタート時から先行を許した2台へのリベンジは完了。ここからの2周弱は工藤を先頭に梅田選手・後藤選手・平中選手・関選手の5台による9番手争いが激化。ラインが交錯し、時に接触もみられトップ争いも霞んでしまうほどのバトルが展開されていた。何度も仕掛けられたものの守りの走行ラインを駆使し、ギリギリのところで逃げ切りに成功した工藤に軍配が上がった。

ポディウムには浅井が初のてっぺんを勝ち取った。レース1のベストラップでグリッドが決定されるレース2においても激しいトップ争いが予想される。

Race2

レース1のフィニッシュから2時間後、早くもレース2の開始時間が迫っていた。2023年シーズン北海道最後の公式戦を前に、各ドライバー後悔のない走りをすべく気合が入る。

レース1は10周で争われたが、レース2は12周回となる。

レース1で見事勝利を挙げた浅井は、今回もポールポジションスタート。二度同じミスをすることは許されず、完全勝利に向けて慎重にスタートの刻を待つ。シグナルブラックアウトとともに若干ホイルスピンさせながらもベストなスタートを切った。追随するセカンドポジションの大島選手を牽制しつつもラインを外すことはなく、独走を試みる。しかし、2周目の3コーナーにてアウト側に左後輪を落とすというらしくないミスを犯し、さらには3周目の1コーナーでも挙動を乱したことで一気に後続との距離が縮まってしまった。何とか体勢を立て直し、再び逃げ切り体勢を取ろうとした矢先の4周目、8コーナーの進入でインを刺そうとした大島選手と接触。あえなくスピンしてしまう。

幸いコースからは大きく外れず、自力で戦線復帰したものの、実質的にトップ争いからは脱落することとなった。レースに戻ってからは最後尾からポジションを全力で取り返しにいくべく奮闘したが、10番手フィニッシュが精一杯の結果となった。完全勝利を目論んでいただけに、この結果には相当悔しさが残る浅井であった。

レース1で2番グリッドだった上野はレース中のベストラップが伸びず、レース2は6番手からのスタート。スタート自体は問題なく決め、3番グリッドの#77村上選手がストール気味となったこともあり、その後方5番グリッドの#555星野選手も出遅れ、一気に4位にポジションアップする。その後すかさずトップ集団に食らいつき、まずは佐藤とのバトルへ。1コーナーではラインをアウト側に振ったため、佐藤が先行し後を追う展開。浅井、大島選手、佐藤と連なってのバトルは誰が前に出てもおかしくない状況。4周目のホームストレートで佐藤のスリップから出た上野は1コーナーのブレーキングで前へ。少し離れてトップ争いをしていた浅井と大島選手を追う体勢をとったところで、その2台が接触。双方コース外に飛び出していく中、その間隙をすり抜けトップに躍り出た。しかし、即コース復帰し直後の5周目ホームストレートで背後につけていた大島選手にオーバーテイクされ、再び2位へ。その次の周には同じくホームストレートで佐藤にスリップに入られ、先行を許しポジションは3位となる。そこからは大島選手→佐藤→上野の付かず離れずの構図が続く。

残り3周となったホームストレートで今度は佐藤のスリップについた上野が前へ。2番手を取り返す。チームメイト同士とはいえ、同じレーシングドライバーとしての意地のぶつかり合い。忖度なしのバトルが続く。そして佐藤も黙ってはいない。その次の周ではまったく同じ展開で上野から2位を取り返し、3位へ後退。最後の最後まで激しい競り合いは続いたが、チェッカーまでに再び前に出ることはかなわず、3番手でフィニッシュした。しかしこの後、浅井への接触で大島選手にペナルティ裁定が下り、リザルトは2位。予選。レース1、レース2すべてで2位の成績を収め、シリーズにおいても2位を獲得した。

レース1は8番手でチェッカーを受けた山本は、レース2も8番グリッドからのスタートとなった。予選から徐々に戦績を上げてきており、最後のレースではどのような走りを披露してくれるのか周囲の注目も集まっていた。
スタートはタイミングこそ平凡ではあったものの、絶妙なクラッチミートで一気に3台の前へ。5位からの滑り出しというファインプレーをみせる。すぐ後方には星野選手と#17の坂本選手とが控えており、一切油断できない状況。挙動が安定しない516号機を巧みにコントロールし、インフィールドではポジションを守り切った。2周目のホームストレートではしっかりとスリップストリームに入られていたこともあり、星野選手に先行を許す。その後の3周目でも同様に坂本選手に前に行かれたが、インフィールドでの走りが抜群に優れている山本は4コーナーの飛び込みでできた坂本選手の隙を見逃さず、すかさずインに切り込んでポジションを取り返す。ここから坂本選手との激しいドッグファイトが始まった。5周目でも坂本選手は容赦なく抜きにかかり、コントロールラインを越えたところでイン側から前へ。1コーナーでラインがクロスし、2コーナーへ向けて並走。坂本選手はラインの自由度を阻むべく山本にマシンを寄せる。しかし山本も一歩も引かず、2コーナーは3速に入れて応戦。立ち上がりの鋭さに勝る516号機が辛うじて前に出てポジションキープした。

数周は動きがなかったが9周目、スタートミスしつつ後方から追い上げてきた村上選手が山本の後方につけ、1コーナーまでに前へ。だがそこは山本。得意のクロスラインからポジションを取り返す。10周目も同じ展開となりかけたが今度は山本がインを守り、ブレーキングで刺し返した。11周目も再度まったく同じ展開となったが、さすがに3周続けて同様のレース運びは許さないという強い意志をみせた村上選手が辛抱の走りで山本の前へ。ファイナルラップでは後ろに控えていた坂本選手がホームストレートでスリップから山本に並びかける。1コーナーでは鼻先をインに入れていた山本であったが、半ば強引に切り込んできた坂本選手の右リアと516号機の左フロントが接触。あわや惨事に発展するかと思われたが双方冷静なコントロールで立て直し、バトルはギリギリまで続いた。マシンを左右に振り、至るところで仕掛け、8コーナーでは2速に叩き込んで逆転を試みたものの一歩及ばず山本は7番手でフィニッシュとなった。これに大島選手のペナルティの影響でリザルトは6位入賞。このレースウィークでの苦労が最後に良い形で実を結んだ。

 

不振にあえぐ工藤は10番手からのレース2スタート。前後には年齢をものともしない熱い走りをみせる#61の平中選手、今シーズン一気にタイムアップし、上位をも脅かす存在となりつつある#129の梅田選手、男性ドライバー顔負けの速さをもつ#778の関選手、レース1で熱いバトルを繰り広げた#55の後藤選手といった顔ぶれ。まさに前レースで激しく競り合った面々が今回もひしめいており、再びその戦いの続きが始まろうとしていた。
工藤の走りは唯一5周目のセクター1でのミスが響き、ポジションアップすることはかなわなかったものの、レースラップ自体は終始安定しており、詰め切れていないマシンを上手く前に進めることに注力していたことが窺える。フィニッシュライン通過時の順位こそ10位とスタート時と変わっていないものの、粘り強く走り続けたことで最終的なリザルトである9位に繋げた。

タイトル奪還がかかる佐藤は4番グリッドからフロントローを臨む。スタートはタイミングもクラッチミートもしっかりと決め。浅井・大島選手、そして後方の上野とともにトップ争いを繰り広げる。2周目のホームストレートで早くも大島選手のスリップからインへ。1コーナーのブレーキング勝負。スタート直後でタイヤは冷えているが、ここでまた日頃のトレーニングの成果がいかんなく発揮され、姿勢を乱すことなく進入。大島選手のラインを潰すことなく立ち上がり2番手へ。しかしディフェンディングチャンピオンの大島選手もまた強い。3周目の3コーナーでアウトに張らんだ佐藤の一瞬の隙を見逃さず、きっちりとインから前に出てポジションを取り返す。上野に前に出られ、そこから少し膠着した状況で迎えた4周目。勝負を急いだ大島選手と浅井の接触によりポジションは3位へ。大島選手は失速を最小に抑え、再びトップに躍り出たもののペナルティが課されたことで実質トップ争いからは脱落していた。こうなると上野との一騎打ち。5周目のホームストレートではスリップストリームからの1コーナー進入でしっかりと前に出たものの、残り3周というところで今度は逆に上野がストレートから1コーナー進入で前へ。シーズンタイトルを確実なものにするためにはここで離されるわけにはいかない佐藤はインフィールドで食い下がり、オーバーテイクの機会を窺う。

ここで前に出ておかなければかなり厳しくなるファイナルラップのホームストレート。慎重に上野のスリップから出て前へ。1コーナーへのブレーキングもしっかり決め、フィニッシュライン目指してひた走った。シーズン中、この2台のバトルを何度見てきたことか。傍から見ていれば見ごたえのある楽しいバトルになるかもしれないが、チームメンバーとしては毎回ハラハラさせられていた。というのもこの二人が前回常に全力で戦っているからだ。本気でぶつかり合い、勝ち取った栄冠にこそ真の価値がある。そしてチェッカーへ。佐藤は最後のレースを優勝という有終の美で飾り、だれもが納得のシリーズチャンピオンを決めた。

 

昨年は第2戦以降、走りとセッティングが上手くかみ合わず苦悩の連続であったが、それを経て今シーズンは一層強くなった。昨今強豪ぞろいの北海道クラブマンカップレースシリーズVITA-01において本成績を収められたことはKOSHIDO RACINGというチームの価値を大幅に高めることになったであろう。この勢いのままに来シーズンの飛躍に繋げたい。

 

 

 

 

 

2024.11.02 北海道クラブマンカップレース 2023 Rd.3 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレース Rd.3 VITA-01

開催日時:2023 年 8 月 20 日(日)

開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

ドライバー:上野 大哲(#11)、佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310) 市川 篤(#516)、工藤 大祐(#910)、

マシン:恒志堂レーシング VITA 11 号機、12 号機、310 号機、516 号機、910 号機

参戦クラス:VITA-01 クラス

天候:予選/雨、決勝/晴れ

路面:予選/ウェット、決勝/ドライ

戦績

上野 大哲 予選:3/20 位 決勝:1/16 位

佐藤 元春 予選:6/20 位 決勝:失格

浅井 康児 予選:9/20 位 決勝:16/16位

市川 篤 予選:13/20 位 決勝:7/16 位

工藤 大祐 予選:11/20 位 決勝:4/16 位

異例の暑さが続く8月の十勝スピードウェイ。過酷な気候の中更別村にて北海道クラブマンカップ第3戦が開催された。第1戦・第2戦同様の顔ぶれが揃う中、今回は86/BRZカップやFormula Beatが併催のため本州からもVITA出場者が来道しており、20台という北海道ではなかなか見ることのできない台数が集まった。予選ウェット、決勝ドライという変化するサーキットに各選手苦戦しながらも白熱したレースが繰り広げられた。

今回Koshido Racing からは、前戦同様に佐藤、浅井、工藤、市川、上野による5台体制での参戦。佐藤、浅井、上野は1・2・3フィニッシュもしており今回も表彰台独占への期待が高まる。

<練習走行>

各チーム第3戦ということもあり、少しずつニューコンパウンドのタイヤへの適応を見せ始めているがKoshido Racing のメンバーもとても順調な仕上がりである。

8月18日、今レースウィークは様々なカテゴリーのレースが併催されるため通常に比べ練習走行枠が2日前にして2本という限られた本数となっている。

猛暑もあってか他チームのドライバーたちがなかなか1分32秒台に入れられない中、佐藤が洗練された走りを魅せ30秒台をマーク。浅井も31秒台をマークし前回1・2フィニッシュの2人がチームを鼓舞する。

工藤、上野、市川はマシンのセットを探りながらの走行。32秒~33秒前半をしっかりキープするものの31秒台への壁はなかなか高い。2本という限られた本数だったため、セットが決まり切らず1日目が終了した。

翌日19日。チームオーナーでありエースドライバーでもある佐藤の12号機がニューカウルへと換装された。

ニューカウルを纏い走行に挑む。この日も流石のタイム、31秒台前半を連発しドライバー・マシンの総合値の高さを証明する走り。翌日の予選決勝は雨の予報、今シーズンの十勝においてウェットの走行がほとんどできていないため懸念点はあるが安定した走りを魅せ走行が終了。浅井・上野も佐藤に続き31秒台をマークする。1・2・3位でゴールした3台が圧倒的な走りを魅せライバルたちにプレッシャーをかける。市川はマシンのエンジンが絶好調とはいえない状況の中インフィールドを上手くまとめ32秒台をマークする。工藤は細かいセットを詰めながら前日のタイムをコンマ4秒ほど短縮した。

<練習走行結果>

佐藤 元春:1‘30.912(8/18)

浅井 康児:1‘31.433(8/18)

工藤 大祐:1‘32.477(8/19)

上野 大哲:1‘31.750(8/19)

市川  篤:1‘32.545(8/19)

<公式予選>

天気は雨。路面はウェット。前日までの予報が重要な時に限ってあたる。

KoshidoRacingの面々は今シーズンニューコンパウンドに変更後、十勝でのウェット走行がほとんどない。富士スピードウェイにおいて経験済みの佐藤・上野の感覚を頼りに各車アドバイスを受ける。

予選開始2分前の表示がコントロールタワーに出され、各マシン一斉にピットから飛び出す。

先頭でコースに入った佐藤、決してウェットが苦手なドライバーではないがなかなかタイムが上がらない。マシンが思うように動かない中、様々なラインやブレーキングを試すが先頭とは2秒の差がある。44秒台で常に走るが後半もペースを上げきれず6番手でチェッカー。予選終了後、ウェットという状況に対して脚が硬いセットのままという事が発覚したが、安堵するどころかさらに集中力を上げ決勝へと準備をする。

大雨の2023FCR-VITA初戦において2位という成績を収めている上野、ウェットは得意としている印象だが今年から走り始めたばかりの十勝に序盤苦戦している模様。44秒台となかなかペースが上がらない中、最終計測ラップにてアジャストさせタイムを更新。3番手でチェッカーを受けた。

工藤、市川はニューコンパウンドのタイヤになってから初のウェット走行に近い状況。しかしそんな言い訳などするわけもなく果敢に挑んでいく。難しい状況の中、序盤はタイヤの感触を探りながらの走行。後半になりラインの変更やブレーキングの調整、スリップを利用しながらタイムアップを試みるが、悔しくも45秒台でチェッカーを受けた。

Rd.2で2番手フィニッシュと好成績を収めていた浅井、前日の練習走行の際エンジントラブルが起きていた。幸いオイルが漏れたりする故障ではなかったが、パフォーマンスは落ちてしまう内容であった。載せ替えが望ましい状況であったが、スペアエンジンがなく現状での走行を余儀なくされた。そんな状況の中、ボトムスピード重視の走りと総合力の高さをみせ9番手でチェッカー。

<決勝>

気温24℃と前日と比べると10℃以上涼しい。予選の路面はウェットであったが、決勝までの数時間でドライ路面に変化。予選では悩まされたドライバーたちも、ドライでの巻き返しに期待が高まる。

86/BRZレースで十勝に訪れていた鶴賀選手も応援に駆け付けてくれた。

各選手自らのグリッドにマシンを収め、精神を統一する。

20台すべてのマシンがフォーメーションラップを終え、グリッドに着く。シグナル点灯、消灯と同時に各車スタートを決める。順当に1コーナーへ進入するかと思いきや、2番手スタート#778大島選手がシフトミスにより5番手まで後退。6番手スタートの佐藤とサイドバイサイドの状態で1コーナーへと進入する。その後も距離が近い状態で走っていたが最終コーナー立ち上がりで佐藤のマシンが片輪コースアウトしてしまいペースダウン。後ろから迫っていた#77村上選手が半車体前に出るがサイドスリップにしっかり入りホームストレートで佐藤が抜き返し前へ。

前方では徳升選手・上野・坂本選手・四倉選手・大島選手がトップ争いを至近距離で展開している。佐藤は先頭集団がペースの上がらないうちに追いつきたいところ、3周かけじっくりと差を詰め4周目の第4コーナーでついに追いつく。先頭集団最後尾の坂本選手にプレッシャーをかけ続けチャンスを伺う。最終コーナー手前で射程圏内に入り、立ち上がり重視のコーナリングでスリップへ、ホームストレートで坂本選手をパスし5番手に浮上。その先では四倉選手・大島選手が激しい3番手争いを展開しておりペースがダウン、2台の後ろに張り付きプレッシャーをかけながらタイミングを伺う。またもや最終コーナー、激しく争う二台と少しスペースを空け完全立ち上がり重視のコーナリングでスリップに入る。ホームストレートで二台をパスし3番手まで浮上し、1コーナーへ進入。少し離れた先頭では、徳升選手と上野が激しいトップ争いを繰り広げている。バトル中はどうしてもペースが落ちてしまうため、3番手を単独走行している佐藤は少しでも早く前方二台に追いつき勝負を仕掛けたいところだ。ホームストレートで2台に並びかけるも順位変わらず2コーナーへと進入、ここからというところでだれも予想していなかったSC(セーフティーカー)が入ってしまう。残り3周までSCが入り解除、全車間隔が詰まっているためここからのワンミスの影響はかなり大きいというとてつもない緊張感の中レースが再開。最終コーナーからの立ち上がりを得意とする佐藤は、先頭2台にバトルを展開させホームストレートで2台をパスすることに成功、ここで遂に1番手へ浮上。最後までポジションを守り切り、先頭でチェッカーを受けた。

3番手スタートの上野はスタートを決め、2番手の大島選手がシフトミスにより後退した為2番手で1コーナーへと進入。先頭徳升選手とはFCR-VITA初戦でも先頭バトルを繰り広げており、上野は何としてもリベンジを果たしたいところだ。2周目までなかなか距離が詰まらなかった上野だが、3周目の2コーナーで徳升選手がやや大きめのオーバーを出しすかさず距離を詰めることに成功。その後も先頭2台の激しいバトルは続き、上野が先頭になったタイミングでSCが入ってしまう。残り3周でSC解除、全車両距離が詰まり、トレイン状態でレースが再開する。先頭の上野はスリップに入れないため1コーナーで2番手徳升がインを刺す、SC前同様やはりこの二台の激しい戦いは続く。最終コーナーを立ち上がりストレート、上野は先頭の徳升選手をオーバーテイクし1番手かと思いきやさらに外側からチームメイトの佐藤が先頭二台をオーバーテイク、レース終盤で佐藤→上野→徳升の順となり1コーナーを抜けていく。その後、前を走る佐藤の背中を追いたいところだが後ろからプレッシャーを放つ徳升を抑え2番手でチェッカーを受ける。

エンジンが不調の浅井。スタート後#55後藤選手にパスされてしまうが、後ろにつきチャンスを伺う。浅井を追いかけるかのように、後ろを工藤・市川が続く。トレイン状態のまま2周目に入った第2コーナーで#55後藤選手の幅寄せにより浅井がスピン、バートン選手→工藤→市川→平中選手の4台が集団になりレースを展開していく。2周目でスピンしてしまった浅井、決してレースを諦める姿勢を見せることはなかった。一度最後尾まで落ちたものの不調のエンジンでありながら、ボトムスピード重視の走りで不調を感じさせない走りを魅せる。6周目で12番手を走行している#95澤田選手をロックオン、8コーナーで澤田選手のインに飛び込み12番手にポジションアップ、ここからというところでSCが入ってしまう。SC解除後果敢に仕掛けるも前を走る市川をパスし11番手でチェッカーを受けた。

一方4台の集団でレースを繰り広げていた工藤・市川、工藤は前方を走るバートン選手の背後から常にプレッシャーをかける走り。後方には市川・平中選手が続いており無理に仕掛けペースを落とすわけにもいかず慎重にタイミングを狙い続ける。後ろを走る市川も平中選手からのプレッシャーを感じながらチームメイトの工藤に続く。工藤は前方を走るバートン選手ようやくパスし市川も続きたいところであったがここでSCが入ってしまう。工藤→バートン選手→市川→平中選手の順となった。

SC解除後、工藤は前方を走る後藤を捉えたいところであったが2周では追いつけず3ポジションアップの8番手でチェッカーを受けた。市川はSC解除後、前を走るバートン選手にプレッシャーをかけ続ける、ストレートでスリップに入るもストレートで劣ることをわかっている市川は無理することなく後ろにベッタリくっついている。パスし浮上したいところであったが、8コーナーでラインを乱してしまい後ろを走る平中選手とチームメイトの浅井に前を許してしまう。巻き返しを図るがコントロールラインは目の前、12番手でチェッカーを受けた。

第1戦、第2戦を経て迎えた第3戦。はじめてのウェットで迎えた予選、SCが長時間入る難しいレースであったが熱い戦い、劇的なドラマを魅せてくれた。この経験をバネにKoshidoRacinngの面々はこの先も成長し、お互いを高め合う強いチームとなり上位独占めがけて走り続ける。

<チームオーナーコメント>

レースウィーク前より車検を厳しくするという話がありましたので、事前にメカニックへ車両に不適切な部分がないかの確認を打診しておりました。結果、スロットルバルブの変更で失格という形となり寝耳に水の状況ではありましたが、ドライバーでありチームオーナーでもありますので今回の結果をしっかり受け止め次に繋げなければならないと思っています。

レースはルールに則るのが大前提として、レース前車検での項目を増やし事前に改善要求ができるようになるとよいのではないかと感じます。レースまでの運営時間や、人員など様々な制約の中ではあるので現時点ではやむを得ないと思います。

今回失格となってしまいましたが、本州から参戦しているドライバーの方もいたためとても走りごたえのあるレースとなりました。VITAの絶対的王者の一人でもある徳升選手が参戦しており、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットにおいては完敗を喫しています。今回は私のホームコースである十勝スピードウェイでのレースのため、徳升選手の壁になりたいという気持ちを強く持ち走りました。結果二人とも失格になってしまいましたが、バトル自体は非常にクリーンかつ白熱した戦いであり最終的に私が前でチェッカーを受け十勝スピードウェイ最速の座を守ることができました。

今レースでの様々な結果を糧に、ドライバーとしてチームとしてレベルアップを目指し頑張りたいと思います。引き続きご声援のほど、よろしくお願いいたします。

2024.10.30 Fuji Champion Race Series 2023       FCR VITA & KYOJO CUP Rd.3     RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.3/KYOJO CUP Rd.3

開催日時:2023年9月23日(土)~9月24日(日)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー
FCR-VITA:佐藤 元春、上野 大哲、兼松 由奈
KYOJO CUP:RINA ITO、後藤 玲香、兼松 由奈

マシン
恒志堂レーシング レブニーズVITA :佐藤 元春・RINA ITO
恒志堂レーシング CLASS VITA:上野 大哲・後藤 玲香
恒志堂レーシング YOSHIMI VITA:兼松 由奈

参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP

天候
FCR-VITA:予選/雨、決勝/雨
KYOJO CUP:予選/晴れ、決勝/晴れ

路面
FCR-VITA:予選/ウェット、決勝/ウェット
KYOJO CUP:予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績
佐藤 元春(FCR-VITA) 予選:17/41位 決勝:17/40位
上野 大哲(FCR-VITA) 予選:12/41位 決勝:8/40位
兼松 由奈(FCR-VITA) 予選:31/41位 決勝:27/40位

RINA ITO(KYOJO CUP) 予選:12/20位 決勝:9/21位
後藤 玲香(KYOJO CUP) 予選:20/20位 決勝:21/21位
兼松 由奈(KYOJO CUP) 予選:16/20位 決勝:15/21位

北海道クラブマンカップを終えたわずか4日後、KOSHIDO RACINGの面々は早くも次の戦いの場である富士スピードウェイに来ていた。

天候は雨。降ったり止んだりではあるものの午後には雨が強まり、練習走行初日はセッティングに時間を割きたいところではあったが、切り上げることとなった。

9月22日金曜日は走行枠によりコースイン可能なカテゴリが分けられている公式練習日。前半3本はFCR-VITA、後半2本がKYOJO CUPの走行枠となっていた。

この日も天候が安定せず、雨天は避けられたように思えたが、最後の1本は初日に引き続き雨で走行は見合わせることとなった。

 

<FCR-VITA予選>

レース当日となる9月23日は朝からコース上に濃霧が立ち込めていた。天候は目まぐるしく変わる予報で先が読めない一日。8時55分よりウェット路面の中、予選がスタートした。ところがセクター3から雨脚が強まり、実質的なタイムアタックができたのはわずか1、2周目のみ。35号機の上野は早々に切り上げ、ピットに戻る。35号機の佐藤、610号機の兼松もこれ以上のタイムアップは困難と判断し、早々にピットに戻ることとなった。予選は如何に序盤でアタックをかけられたかが明暗を分け、雨が強まったタイミングと計測ラップが重なってしまった選手は下位に沈む形となる。

最終的に上野が12位、佐藤が17位、兼松が31位とチームとしては悔やまれるリザルトとなった。

予選タイム

・佐藤 2’05.828
・上野 2’05.287
・兼松 2’08.945

 

<FCR-VITA決勝>

コースインは12時05分。雨が降りしきる中でのグリッドウォークとなる。

12時20分フォーメーションラップを終え、決勝レーススタート。

完全なウェット路面でのレーススタート。佐藤は回転抑えめでクラッチミート。しかし路面は想像以上にグリップする状態であったためか、周りの車はしっかりとスタートダッシュを決め、群衆に呑まれる。TGRコーナーまでに一気に差が開いていくが、進入からターンインで大混雑の様相。アウトいっぱいからそのままアウト側をキープし、前方集団に遅れをとることなく立ち上がってコカ・コーラコーナーへ。ここでも各マシンひしめき合い、ラインの自由度はなし。イン側進入からそのままインキープで立ち上がり順位変動はなくレースは進行。各ドライバーは慎重なドライビングでペースこそあげられないものの、トラブルなくオープニングラップを走りきる。佐藤はホームストレートで13号車高野選手のスリップストリームから前に出て、ポジションを一つ上げる。

2周目、オープニングラップに引き続きコース内は大混雑。ホームストレートはウォータースクリーンにより視界ゼロの状態。それでも佐藤は37号車金本選手の後方にピタリと付け、ポジションを上げる。しかし、TGRコーナーのブレーキングにて再び先行許す。各車ウェットでの走行ラインでは自由度がなく、簡単には抜けない膠着状態が続いた。100 Rの進入からターンイン直後に前走車がアウト側からコースオフ。直後を走っていた佐藤も連なるようにコースを外しかけたが最小限で止め、半車身ほどランオフエリアに出るのみでコースに復帰。

3周目、隊列が少しずつバラけ始め、タイヤに熱が入ったこともあり、各車に動きが出始める。積極的に仕掛けていく中で、佐藤がダンロップコーナー進入で痛恨のハーフスピン。進行方向に向いていたため、リカバリーは素早かったがエンジンストールからの復帰に少々時間がかかり、数台のライバルに抜かれる。雨脚はますます強くなっており、コース各所でスピンやコースアウトが見られる中、ミスを繰り返すことなくポジション回復に集中。しかし、ドライビングはさながら雪上を走るかのようなシビアさが要求された。常にアンダーステアとオーバーステアとの戦い。ドライコンディションとはまったく異なる走り方でとにかく挙動を安定させることを優先。TGRコーナーで止まりきれずランオフに消えていくもの、コカ・コーラコーナーで姿勢を激しく乱し、アウトに飛んでいくもの、ダンロップコーナーで止まりきれずシケインをカットするもの…ライバルたちがミスでコースから外れていくところを冷静にパスしていった。

安定してラップを刻むようになった頃、前との差も少しずつ詰まり、再びバトルの様相。しかし一台、また一台とスピンして消えていく。後半の佐藤の走りは安定そのもの。かといって決して攻めていないわけではなく、タイヤの限界付近を探りながら走っていることが見てとれる。レースは18番手でチェッカー。最終的には他車のペナルティにより、正式結果は佐藤が順位をひとつ上げることとなった。

予選では出走のタイミングを見誤り思うような結果が出せなかった上野。スタートは丁寧なクラッチミートできっちりと決めた。前方1台をTGRコーナーまでにパスし、続くブレーキングでアウト側から二台をパス。しかしすぐ前に行った車両が思いの外慎重なブレーキングであったため、危うく追突しそうになる展開。しかし上野は冷静にさらにアウト側へとラインをずらし、無駄のないブレーキングでオーバーランを最小限に収め、すぐにコースに復帰。しかし結局ポジションを2つ落とすこととなり、スタート順位からはワンポジションアップの展開となった。アドバンコーナーの進入でもアグレッシブにアウトから仕掛け、1台をパス。続くダンロップコーナーの進入に向け、前走車の背後につけて隙を伺う。前方がバトルでもみ合う中、ペースが落ちた好機を見逃さずラインを変えて前へ。オープニングラップの最終コーナーでは他車とラインが交錯し、ヒヤリとした場面もあったが、そこは冷静な上野の判断でトラブルを回避。続く2周目のTGRコーナー進入でもウェットの非常に悪いコンディションの中。スリーワイドでブレーキング競争。アウトいっぱいで粘り、簡単にライバルを前に出させることはしない。マシンが暴れてもそれをうまくトラクション方向に変え、マシンを前に進める上野のドライビングが光る。3周目のホームストレートで18号車大野選手にスリップストリームに入られ先行を許したが、ダンロップコーナー進入でインから刺し、再びポジションを戻す。その後2号車イノウエ選手との激しいバトルが勃発。各コーナー、ブレーキングで追突するのではないかという勢いで一気に差を詰め、左右から揺さぶりをかける。軽い接触はあるが、ハイレベルなドライバー同士の戦いは挙動を乱すことなくテールトゥーノーズの膠着状態が続いた。すぐ後方には18号車の大野選手もくらいついている。この三つ巴のバトルが何周にもわたって続いた。

今回と同じ大雨のFCR第1戦で2位表彰台を獲得している上野。その過酷なコンディションでのマシンコントロールは、目を見張るものがある。そして6周目、上野にチャンスが訪れる。最終パナソニックコーナーでイノウエ選手の間横に並ぶ形で立ち上がった。上野はサイドスリップを駆使し、ホームストレートを横並びの状態でTGRコーナーに飛び込んでいく。ここはブレーキング勝負。その直前にブレーキバランサーに手を掛け一段階フロント寄りへ。この判断が功を奏し、長きにわたって続いたバトルの末、辛くもイノウエ選手の前へ。コカ・コーラコーナーでクロスラインから一瞬前に出られかけるが、100Rで粘りを見せ、再び上野が前へ。その後も後続から追撃の手が止まない状況であるが、ギリギリのブレーキングと巧みなライン取りでポジションをキープ。前方に47号車を捉え、少しずつ差を詰めつつあったが、残り周回数が足りず8位でチェッカーを受けた。

610号機の兼松。スタートは無難に決める。しかし前には何台ものマシンが連なり、ファーストコーナーに向かってウォータースクリーンで一切前が見えない状況。それでも落ち着いて周りを見ながら慎重にマシンをコントロールし、群衆の中を抜けていく。オープニングラップは兼松も周囲のライバルたちもトラブルなく走り切り、順位の大きな変動はなし。2周目の時点で前方には同じKYOJOドライバーの24号車藤島選手。パナソニックコーナーを上手く立ち上がり、しっかりとスリップストリームに入る。もちろん水飛沫で前は見えない。繊細なブレーキタッチでTGRコーナーに進入し、24号車を確実に仕留めた。勢いづいた兼松は続く321号車横山選手の後方に付け、隙を窺う。しかし、後方からくるマシンも常に兼松を狙っている。17号車西濱選手には、3周目のTGRコーナーでインを刺され、再びポジションをひとつ落とした。ただ、そこから離れていくことはなく、続く4周目に向けて今度は兼松が西濱選手のスリップストリームへ。しかし前に出るには至らず、バトルは続く。そうこうしている間に、前方の差が少しづつ開き隊列へと変化。ベビーウェットで走行ラインに自由度がなく、各選手抜きあぐねている状況。これまでミスなく巧みにマシンをコントロールしてきた兼松であったが、6周目のTGRコーナー立ち上がりでトラクションを失い、スピン。しかし後方のライバルたちとの差も大きく、ポジションダウンすることなく戦線復帰する。その後はとにかく後方から迫るマシンを牽制しながら守りの走りへ。前を走るライバルがスピン・コースアウトで復帰に手間取る中、堅実な走りでひとつずつポジションを上げていく。最後のバトルの相手は38号車佐々木選手。それぞれに速いコーナーが異なり、付かず離れずの展開で3周に渡ってのドッグファイト。ファイナルラップのホームストレートでは、スリップストリームでピタリと後に付けてプレッシャーをかけ、ブレーキングでもインを窺い隙あらば抜きにいくという姿勢を見せる兼松。しかし佐々木選手も必死に応戦し、セクター3に至るまでその差は全く変わらず。微妙にラインを変えて抜きどころを探るが、どうしても立ち上がりでのトラクションの弱さから前に出ることができずにもつれ込み、そのままフィニッシュとなった。順位こそ27位と中段に落ち着いたが、ファイナルラップの最終コーナーで計測機器が外れるというトラブルに見舞われながらも冷静に元に戻してシフトチェンジするという場面もあり、非常に悪いコンディションの中でも落ち着いて対処できるくらいにレベルアップした姿が見られた。

 

 

<KYOJO CUP予選>

レースウィーク中降り続いていた雨がようやく止み、気持ちよく晴れた中でレース当日を迎えた。今回のレースウィークは金曜日からの合流で1本しか練習走行ができていないRINA。初参戦で緊張を隠せない後藤。前日、豪雨のFCR-VITAにも参戦していた兼松。それぞれどんな走りをするのか注目が集まる。

8時25分にスタート。まずはRINA。アウトラップでタイヤに熱入れし、前後の間合いを見つつアタックに入ったものの、ペースを上手く作れないと判断。後方からくるライバルたちを先行させ、ベストな周回を探る。やみくもに走り続けてマシンを消耗させることのないよう、来たるそのタイミングに備えて温存していた。結果的に単走の周回が多くなり、スリップストリームを有効に活用できぬままアタックは終了。12番手とRINAとしてはやや振るわぬ結果となった。

レース初参戦となる後藤は練習から徐々にタイムを上げてきていたものの、やはり強豪ひしめくKYOJO CUPにおいて結果を出すことの厳しさを目の当たりにしていた。それでも走行ラインやコースへの慣熟度を高め、決勝に向けて自身のコンディションづくりを進めた。何より周りの先輩ドライバーたちが全開アタックするところを間近で見られたことは大きかったであろう。リザルトとしてタイムが刻まれた選手の中では最後尾となったが、予選の20分間でさらに成長できたことは間違いない。

FCRとのダブルエントリーである兼松は前日までのウェットコンディションに慣れた身体をドライにアジャスト。ブレーキバランスも調整し、いざアタックへ。このレースウィークで最もVITA-01に乗っているだけあり、その走りはアグレッシブ。ライバルのスリップストリームも上手く使ってチャンスを窺う。しかし、RINA同様になかなか他車との間合いを取れず、時にTGRコーナーのブレーキングで詰まってしまったり、或いは空力が及ばないほどの間合いに拡大してしまったりと苦労が続く。走り自体にミスはなく、アグレッシブなドライビングの中にもマシンコントロールはいたって丁寧。タイムは長女RINAのコンマ5秒落ちに肉薄し、リザルトは16番手となった。

予選タイム

・RINA 2’01.267
・後藤 2’09.125
・兼松 2’01.795

 

<KYOJO CUP決勝>

予選に引き続き快晴に恵まれた第3戦の決勝。

レース中のバトルはかなり緊張感が高まるが、グリッドウォークは一転して和やかかつ華やかな雰囲気である。

 

レーススタートは13時50分。

スタートは順当に決めたRINA。そこから得意のオープニングラップのファーストコーナー進入。アウト側いっぱいにマシンを寄せ、一気に2台をパス。毎戦TGRコーナーの飛び込みには定評があるRINA。スタート直後の冷えたタイヤでも繊細にグリップをつかみ、ハードブレーキングでも絶対に破綻させない走りをみせる。そのまま縦一列で並びコカ・コーラコーナー、100R、アドバンコーナーと進んでいく。前方でライバルたちが右に左にと走行ラインを変える中、RINAもそれに応戦し、相手の隙をつくべく巧みにVITA-01を操る。オープニングラップは最終パナソニックコーナーを抜け、しっかりと前走車のスリップストリームに入った。225・38号車とダブルスリップとなり、38号車佐々木選手を難なくパス。TGRコーナー進入までに225号車富下選手の右横に並びかけ、得意のブレーキングでインから刺した。この時点で上がったポジションは4つ。2周目は逆に追われる立場となったRINAであるが、ミスをすることなくひとつひとつ丁寧にコーナーをクリアしていく。3周目のホームストレートではスリップストリームに入られつつも、守りのラインでミドルからTGRコーナーに進入し、ポジションをキープ。その後も追われる展開が続き、4周目に入った直後、追撃の手を緩めない富下選手がスリップストリームから出てRINAのイン側へ。TGRコーナーで前に出られてしまう。

再び追う側となったRINA。その走りにミスはない。しかし後方の佐々木選手も追い続けていた。5周目のTGRコーナーにて1度は並びかけられるものの、コカ・コーラコーナー飛び込みにて我慢比べを制したRINAはポジションをキープ。6周目までもつれ込み、TGRコーナーのブレーキングにて再び隣に並ばれた。佐々木選手が若干アンダーステアで外に膨れる中、なんとかアウト側で持ちこたえコース内に留まる。しかしこれにより立ち上がり加速が鈍り、前に出られた後は少し離されてしまう。7周目に差し掛かるとさらに後続のマシンが襲いかかった。しかし、RINAも抜かれっぱなしでいるわけにはいかない。ブレーキングを目一杯遅らせ、TGRコーナーでは前に出させない走り。後方とのバトルもしつつ前方との差も一気に縮め、佐々木選手とのバトルが再び勃発。しかし8周目のTGRコーナー進入にて 13号車高野にも前に出られてしまう。ギリギリまでアウト側で粘り、クロスラインを狙うが高野選手の巧みなライン取りに後退を余儀なくされる。しかし、アドバンコーナーへの進入でミスをした高野選手は失速。300Rで並びかけたのちアウト側からダンロップ進入にて仕掛け、辛くも前へ。高速域からのブレーキングがとにかく得意なRINAの勝負どころである。依然として直後につけている13号車は9周目のホームストレートで再びRINAの前に出る。今度はイン側でTGRコーナー進入のブレーキング勝負。コカ・コーラコーナーまで並走が続きここも我慢比べを制したRINAが再び前へ。10周目も同様の展開が続く。残りは2周。ポジションを守り切れるかといった我慢の展開。11周目も一時は前に出られるがブレーキングで刺し、コカ・コーラコーナーもミドルラインからの飛び込みで高野選手を前に出させない。アドバンコーナーで周回遅れを安全にパスした後は再び後方に集中。セクター3はタイヤの限界付近を使い、見事な走りで鉄壁の走行ラインを描く。ファイナルラップでも展開は同様で、前周と同じ光景が繰り返されるがTGRのブレーキングで一旦は前に出られたところを差し返し、絶対に前に出させない。そのままミスなく走り切り、ポジションを死守したままチェッカー。12周すべてを常にバトルし続けたその強さと集中力の高さは特筆ものである。

初のKYOJO CUP参戦となる後藤。VITA-01には各地のサーキットで何度か走行を重ね、少しずつ慣れてきたところであるが、富士スピードウェイは初の走行となる。サーキットライセンスもこの日のために取得するというフレッシュさと気合の入りよう。緊張のスタートはシグナルブラックアウトとともにダッシュを決める。やはり初のKYOJO CUPということで、勝負どころのオープニングラップ、TGRコーナーでは少し引いたところからの進入。前方の混雑をしっかりと見極めながら食らいついていこうとペースを上げる。走行ラインは悪くないが、徐々にライバルたちから離されていく。ミスはなく練習そこで身に付けたことは着実に実践し、走り始めより大幅なレベルアップを果たしていることがわかる。

ラップタイムもこのレースウィークだけで大幅に短縮してきており、富士スピードウェイ初走行としては申し分ない結果と言えよう。しかし近年のKYOJO CUPのレベルは凄まじい早さで上昇しているだけに初レース、そして女性たちの中で戦うことの厳しさを味わった。

そして兼松。前日のFCRでは、非常に滑りやすい路面で散々苦労してからのこの舞台。スタートは難なく決める。TGRコーナーへの進入はイン側から。オープニングラップで混雑する中でも周りをしっかりと確認し、マシンを着実に前へと進める。2周目のTGRコーナーは後方を牽制し、ミドルラインからの進入。ポジションをキープし、そのままコカ・コーラコーナー、100R、アドバンコーナーをクリア。ダンロップコーナー進入ではしっかりと前との差を詰める兼松。長女RINA譲りの高速域からの鋭いブレーキングをみせる。3周目、前との差がやや開いた状態。コカ・コーラコーナーでは上手くオーバーステアを使い、理想的なラインと脱出速度を確保。高速域からのブレーキングでは一気に前をゆくライバルに迫る。4周目は前走車のスリップストリームをしっかりと使い、セクター3までもつれ込む。差は変わらないまま5周目突入。前方では、順位変動が目まぐるしく起こっている。前走者達がバトルを展開する中でペースが上がらないところを兼松は見逃さずキッチリと距離を詰め、抜くチャンスを待つ。6周目18号車坂上選手のスリップストリームを最大限に活用し、コントロールタワーを過ぎる頃には前へ。続く28号車樋渡選手とのバトルでは競り合いで失速した隙を見逃さず、本来であれば抜きどころとはいえない13コーナーでアウト側から前に出る。続いてのターゲットは24号車藤島選手。スリップストリームからしっかりと前に出てポジションを上げたと思われたが、そこに新たな刺客である213号車バートンハナ選手が現れ、TGRコーナー進入のブレーキングから一気に二台を抜き、前に出られる。今回のレースでは特に周りがよく見えている兼松。ライバルに抜かれる結果となったとしても、その巧みなラインで失速を最小限に抑え、食らいついていく。その後も藤島選手とのバトルは続き、7周目では一旦前に出られたものの後方に食らいつき離れない。その傍ら37号車金本選手が後方から迫り、スリップストリームに入られる。一瞬前に出られたものの落ち着いてブレーキング勝負に競り勝ち、ポジションキープ。守りのラインをトレースしながらその後も37号車を前に出さない走り。続く周回も同様にホームストレートで横に並びかけられるが、TGRコーナーでイン側を死守し、そのまま激しく競り合い続けた。横並びのままセクター3へ突入。しかし、13コーナーでインを開けてしまった隙を突かれポジションダウン。その続く最終コーナーでは大きくラインを外し差が開いてしまう。ホームストレートではスリップストリームの恩恵もあり食らいついていくが、その差は埋まらず15位でフィニッシュとなった。

ポジション的にはまだまだ課題が残るところではあるが、FCRに続きKYOJO CUPでも魅せる走りと見事なバトル展開を披露した兼松。レースを重ねる度に強い走りが身に付いてきていることから、今後も目が離せない存在である。

毎回ハイレベルな戦いとなるKYOJO CUP。その中でKOSHIDO RACINGのKYOJOドライバーは悔しい思いをしたレースだったといえる。この悔しさをバネに今後はトップ集団に加わるバトルが見られることを期待する。

 

 

 

 

 

2024.10.30 Fuji Champion Race Series 2023 FCR-VITA MEC120/KYOJO CUP Rd.2 RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) -VITA MEC120/KYOJO CUP Rd.2

開催日時:2023年7月22日(土)~7月23(日)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

FCR-VITA MEC120ドライバー:
佐藤 元春・鶴田 哲平、RINA ITO・織戸 茉彩、兼松 由奈・工藤 大祐

KYOJO CUPドライバー:RINA ITO、織戸 茉彩、兼松 由奈

マシン
恒志堂レーシング レブニーズVITA
恒志堂レーシング CLASS VITA
恒志堂レーシング YOSHIMI VITA

参戦クラス:FCR-VITA MEC120、KYOJO CUP

天候
FCR-VITA MEC120:予選/晴れ、決勝/曇り
KYOJO CUP:予選/晴れ、決勝/晴れ

路面
FCR-VITA NEC120:予選/ドライ、決勝/ドライ
KYOJO CUP:予選/ドライ、決勝/ドライ

戦績(FCR-VITA MEC120)
佐藤 元春・鶴田 哲平   予選:10/27位 決勝:6/31位
RINA ITO・織戸 茉彩    予選:25/27位 決勝:16/31位
兼松 由奈・工藤 大祐   予選:19/27位 決勝:22/31位

戦績(KYOJO CUP)
RINA ITO   予選:10/22位 決勝:7/21位
織戸 茉彩  予選:20/22位 決勝:17/21位
兼松 由奈  予選:17/22位 決勝:16/21位

昨年に引き続き、KOSHIDO RACINGは今年も富士スピードウェイ(以下、FSW)で開催されるFCR-VITA MECに参戦。レースの正式名はMEC120と称され120分、すなわち2時間の耐久レースとなる。7月には鈴鹿でも開催され、KOSHIDO RACINGからは15号機がエントリー。年に一度の走行にも関わらず15号機が入賞目前の成績をおさめている。

今回のFSWにはシーズン参戦している15号機、35号機、610号機3台全てのエントリーとなった。

ドライバーは15号機にチームオーナーの佐藤元春と、その相方には鈴鹿に引き続き鶴田哲平を起用。35号機は女性タッグとしてKYOJO CUP参戦中のRINA ITOと織戸茉彩が搭乗。610号機は今季FCRとKYOJO CUPにダブルエントリーしている兼松と、北海道クラブマンカップレギュラー参戦中の工藤大祐が参戦となった。

<FCR-VITA MEC120予選>

予選は9時5分から、各車新品タイヤでのスタート。

15号機は佐藤が1人で担当。鶴田は出走せずピットから佐藤の走りを見守る。

アウトラップを終え、前車のスリップストリームからスタートする絶好のアタックラップ。TGRコーナーにて若干ブレーキングでの深追いがあり、オーバーを出しつつもきれいなラインで立ち上がる。その後もアグレッシブな走りを展開する佐藤。タイヤの熱入れが済んでグリップが安定してきたためか挙動の乱れは次第になくなり、本腰を入れてアタックラップ2周目へと突入。セクター3はわずかなスリップアングルをうまく使いロスなく立ち上がる。

良いペースでアタックを続けていたが、コカ・コーラコーナー上にストップしてしまった他車の影響によりレッドフラッグ掲示。余儀なくピットに戻る。その後予選が再開。エントリー台数が51台にも及ぶ富士のMECだけあり、リスタート後のコース上は大混雑。前方も勿論詰まるが後方から迫るvGranzにも注意を払わなくてはならないため、なかなかペースを上げるに至らない。群衆が少し掃けてきたところでアタックを再開するが、気温の上昇もあってかタイムは伸び悩む。最終的なタイムは3周目に記録した2分00秒963でクラス10番手につけた。

35号機は先にRINA ITOがコースイン。姿勢を破綻させることもなく、きれいにマシンを走らせる。操作が非常に丁寧でコース幅も目一杯使い、目立ったミスなく走行を続けた。2周目に2分3秒508をマークし、3周目には2分2秒875と順当に削っていく。最終的なタイムは2:02.770でクラス25番手となり、レッドフラッグのためピットへ帰還。予選再開時に残り12分ということもあり、ここで織戸にドライバーチェンジとなる。

織戸は冷静に周りを見つつ、アウトラップを慎重に走る。参戦2年目でVITA-01の動きにも慣れてきた織戸。最終コーナーで一瞬乱れかけた姿勢をすばやく適正な量のカウンターでリカバリーし、ホームストレートに向かって立ち上がる。この辺は父親譲りのドライビングセンスであろう。走行開始から12分間という限られた中でのアタックで2分5秒296をマーク。全体的には概ねミスのない走りでまとめ上げ、予選終了間にはベストを若干短縮。2分4秒648を記録した。

610号機は兼松が担当。積極的にシミュレーターを活用し、VITA-01を乗りこなすべく精進し続けている。2周目に2分3秒692をマークした後は 6周目に2分3秒164、

7周目には2分2秒437と着実に記録を削っていった。最終的にはこのタイムがベストとなり、先輩ドライバーであるRINA ITOを上回る成果をみせた。

工藤は予選では出走せず、ピットで兼松のアタックを見守る。FSWでの公式戦が初となる工藤は今年の3月に仕様変更されたタイヤテストに合流して以来の走行となることから、やはり地元十勝スピードウェイ同様に攻め込むには時間が短すぎ、兼松に託す形となった。

予選タイム

・佐藤 元春   2’00.963
・RINA ITO    2’02.770
・兼松 由奈   2’02.437

 

<FCR-VITA MEC120決勝>

正午近くの炎天下の中、2時間の戦いはスタートする。

ホームストレートに並ぶ佐藤が搭乗する15号機はクラス10番手からのスタート。すぐ前のグリッドには兄弟チームの32号機ビーフラット号がいる。

11時45分、レース開始。ゆっくりとフォーメーションラップがスタートする。総勢何台ものマシンが連なりコース上は大混雑の様相。ホームストレートに戻った各マシンが一斉にスタート。TGRコーナーの飛び込みまで特に混乱もなく、順当なローリングスタートと言える。やはりスタート直後は混み合い、順位が目まぐるしく変わる。さながらスプリントレースのような展開を見せる。レース序盤、群衆に呑まれつつも隙を見て前車をパスする機会を伺う。3周目あたりから少しずつ隊列がばらけ、少し前との間隔が開くが、TGRコーナーのブレーキングで一気に詰めると言う展開。1周トータルではほぼ差が変わらないまま全開走行が続く。

数周を重ねても依然としてテールトゥーノーズのスプリントレース同様の展開。ホームストレートでスリップストリームに入り、14号車をパス。後方から来るvGranzをパスさせると同時にTGRコーナー進入のブレーキングで前車に並びかけ、プレッシャーを与える。但しパスさせる際はタイミングが重要で、そこを見誤るとライバルたちに簡単に抜かれてしまう。

後半にもなると、佐藤の走りは磨きがかかっていく。これまでアンダー気味で進入していたコカ・コーラコーナーもレコードラインを毎周正確にトレースするようになり、セクター3での挙動の乱れもほぼ見られなくなる。他車がvGranzと絡み大きくラインを外す中、的確なタイミングとベストラインをトレースしながら少しずつ順位を上げていく。

レースは1/4ほどを消化し、各チームピット作業が始まる。この頃佐藤は16周を終え、9位につけていた。23周を終え、鶴田にドライバーチェンジ。

鶴田は危なげない走りでvGranzをパスさせつつ、淡々とラップを重ねていく。一旦は前に出られた880号車をピタリとマークし、長きにわたってバトルが繰り広げられる。耐久でありながらもはやスプリントと言える走りを見せる鶴田。とにかくCS2クラスをパスさせるタイミングが絶妙で、それをうまく利用しながら前との距離を詰めていく。ここは多種多様なクラスが混走するスーパー耐久のドライバーとして参戦していることもあり、センスに長けている。安定の走りで第2スティントを引っ張り、第3スティントは再び佐藤へ。ピットアウト後まもなく数台のVITA-01とvGranz1台との絡み。そのvGranzのコーナリングスピードが遅く、ストレートで前に出られてはコーナーで詰まるという展開に手を焼く佐藤。そして、2周ほどが経過したところでのTGRコーナー進入。ブレーキングにて車速も十分に落ち、ターンインを始めた佐藤のイン側に明らかなオーバースピードで飛び込んできたvGranzは15号機の右サイドに接触。幸い15号機に大きな損傷はなかったが、飛び込んできたvGranzのカウルはコーナー立ち上がりで宙を舞い、コース上に散乱した影響でSC導入となる。

MECほどのエントリー台数ともなるとPro・Ama様々なドライバーが参戦しており、技術の差はまちまち。FCRをはじめGTワールドチャレンジやフェラーリチャレンジなど、FSWでの参戦歴も長くなった佐藤であったが、今回のようなトラブルは初めてである。

それにしてもSC中は大混雑。出走台数が50台も超えてくると隊列は長くなり、所々で止まってしまうことも。さながら東名高速の渋滞のようであった。落下したパーツの回収は長引き、SCも解除されることなく、佐藤はそのままフィニッシュを迎えることとなる。佐藤・鶴田組はクラス6位でレースを終えることとなった。

35号機のスタートはRINA ITOが担当。クラス25番手からの巻き返しを図るべく前走車のペースにうまく合わせてアクセルコントロールし、コントロールラインを越えると同時に一台パスするという絶妙なスタートを決める。

その後はRINAが得意とするスタート直後のTGRコーナー進入。臆することなくブレーキングで飛び込み、あっさりともう一台をパスした。

その後もVITA-01とvGranzが入り混じる周回の中、前と後を冷静に見極め、確実に1台ずつパスしていく。その後は同じKYOJOドライバーである213号機バートンハナ選手とのバトル。ストレートが速い213号機にベストな走行ラインで応対するRINA。しかし日本一ストレートが長いFSWでは最高速に勝るマシンが絶対的な強さを持ち、先行を許す。

数周の単独走行を挟み、さらに一台をパス。次のバトル相手となったのはチームメイト610号車の兼松。姉妹バトルが展開される。35号機がスリップストリームから出てTGRコーナー進入のブレーキングで前へ、その後610号機がクロスラインでTGRを立ち上がり前に出るという展開を繰り返す。vGranzも絡みはじめ、後方を警戒しながらつつも姉妹同士のバトルは続く。しかし、勝敗を決する瞬間はいきなり訪れた。610の兼松が最終パナソニックコーナーを前にブレーキングしつつアウト側へマシンを寄せた際、マシン左側をコース外に出してしまい芝に足元をすくわれスピン。背後につけていたRINAは余儀なくさらに左のランオフへとマシンを寄せてパス。好バトルを魅せた姉妹の戦いはあっけなくその幕を下ろした。

ここからまたしばらくの単独走行に入る35号機。順位変動もなく、耐久ならではの淡々とラップを刻む走りに徹しするRINA。26周を終え、織戸にドライバーチェンジ。

KYOJO CUPレギュラードライバー2年目でVITA-01ドライブにも慣れた彼女であるが、この日のマシンの動きを確かめつつ慎重にコースイン。完走することが前提の耐久レースではこの慎重さが最も重要である。ピットアウト後すぐに後方から何台も迫りくるCS2クラスに的確に進路を譲り、確実に周回を重ねていく織戸。そのドライビングはマシンに負担をかけないやさしい走り。ここも耐久レースを戦い抜く上では非常に重要なポイントとなる。

コカ・コーラコーナーでスピンすることはあったが、冷静に周りを見て問題なくコース復帰。その後は単走が続き、ミスやトラブルなく着実にラップを重ね、再びRINAへとマシンを託した。

ピットアウト時、なかなかエンジンスタートしない小トラブルはあったが、大きなロスには至らずRINAがコース復帰。アウトラップのダンロップコーナーで鶴田が乗る15号機に前を譲り、その後は追走へ。しかし、程なくしてそのままSCが入り、長いスロー走行の末にRINAがチェッカーを受けることとなる。RINA・織戸のKYOJOコンビはクラス16位でレースを終えた。

610号機はスタートに兼松を起用。クラス19番手からのスタートで危なげなく、かつアグレッシブな走りで前を行くライバルに食らいつく。予選タイムに対し、1~2秒ほどのマージンでレースペースをつくっていく。ただ、普段はここまでのエントリー台数の中で走ることはなかった兼松。混雑するコース内でやや群衆に呑まれつつあり、少しずつ順位を下げる展開に。走行しているうちに姉貴分のRINAが後方から迫り、身内同士のバトルへ突入。兼松も良いペースで走っていたが、ここはレース経験に勝るRINAに軍配が上がった。

工藤は序盤のラップ平均が2分5秒前半というペースでレースを展開。しかしベースにVITA-01の経験がしっかりと敷かれており、FSW走行もこのレースを通して経験値が蓄積されていくことによりラップを追うごとに走りの精度が増していく。それは数字として如実に現れ、スティントの後半には序盤のペースから1秒ほど速くなっている。元々VITA-01の動きを理解しているだけに、今回のMEC120への参戦を通しただけでも大躍進したといえる。610号機は兼松が経験の少ない工藤を引っ張る形となったが、完走車両の中では最も後方でのゴールとなった。最終スティントでは再び工藤にステアリングが託されたが、コースインと同時にSC導入。思うような活躍ができないままチェッカーを受けることとなってしまった。ただ、それぞれの走りから経験値に基づく速さは実証されている。あとは実戦の蓄積とミスのない走りでまとめ上げることができればおのずと成果はついてくるであろう。

 

<KYOJO CUP Rd.2 予選>

前日のMECに引き続き好天に恵まれたKYOJO CUP当日。ドライバーは日頃よりFCR-VITAにもダブル参戦しているケースも多く、新人からベテランまでめきめきとその頭角を現し、並み居る男性ドライバーの中に交じってもその存在感を増している。

15号機はベテランRINA ITOが搭乗。コースイン後、彼女にしては珍しく慎重な滑り出し。しかしその勘が当たってか、アタックラップ1周目は前を走る数台がTGRコーナーで早くもオーバーランやアンダーステアでラインを外す事態。これを無理なく冷静にパスし、徐々にペースを上げていく。最初のアタックは2分2秒154 。

35号機の織戸は相変わらず慎重な走り出しであるが、前日にかなりの時間走行していたこともあり、これまでのKYOJO CUPの予選よりも早い段階でタイムアップを果たす。序盤で2分4秒340をマークした。

610号機の兼松は最初のアタックラップで2分4秒706からのスタート。上位勢3台は2周目で2分フラットをマークしてくる。この時点で強豪三浦選手、翁長選手はまだ出走していない状況。

4周終わってRINAが2分1秒945で7番手。5周目で少し縮めて2分1分654へ。

兼松は2分3秒019。織戸も2分3秒889と縮めてくる。

5周終わって平川選手が1分59秒777でトップに躍り出る。次いで三浦選手の1分59秒896、翁長選手は1分59秒966と、ここまでが1分59秒台で以降より2分フラットのタイムが続く。兼松は少しづつタイムを削り取り、2秒台へ。ここで2分2秒486の17番手。織戸は2分3秒889からタイム短縮ならず21番手で予選を終える(他車の失格により織戸は正式リザルトで20番手へ)。

8周終わってRINAは2分1秒509と若干短縮したが、周りのライバルたちのタイムアップが顕著で10番手となる。その後ラストアタックを試みたが、RINAとしては珍しくダンロップコーナーでスピンを喫し、そのままピットへ。直後にここでレッドフラッグが掲示され、予選時間残り20秒でセッションはそのまま終了となった。

 

<KYOJO CUP Rd.2 決勝>

年々エントリー台数が増えているKYOJO CUPは今回21台がスターティンググリッドに並んだ。KOSHIDO RACINGは10番グリッドにRINA ITO、17番に兼松、20番手に織戸という布陣。天候は晴天で、前日のMEC120よりも気温は上昇しており、ドライバーにもマシンにも過酷さが増している。

緊張感高まるスタートも全車クリーンスタートでトラブルなくTGRコーナーへ飛び込んでいく。

RINAは無難にスタートを決め、得意のオープニングラップTGR進入。早速ブレーキングで109号車金本選手をイン側からパスし、9番手へ。続いてのターゲットは225号車の富下選手。仕掛けたのはダンロップコーナー進入のまたしてもブレーキング競争。辛くも前へ出てポジションを8番手とした。2周目のホームストレートではスリップストリームにつかれ、並びかけられるもやはりTGRのブレーキングでポジションを死守。立ち上がり、クロスラインで一旦前に出られるがイン側をキープし、コカ・コーラコーナーに向けて並走状態。そのままイン側で再び前に出た。そのままアドバンコーナーにもつれ込むが、前方をゆく車両同士が接触し1台がランオフエリアに弾かれる。これを横目にさらに1ポジションアップし7番手となる。続く300R後のブレーキングでは36号車岩岡選手に並びかけ、ダンロップS字2個目の左で前へ。ここで6番手と順調にポジションを上げていく。しかし抜かれたライバルたちも黙ってはいない。3周目ホームストレートでダブルスリップから富下選手が抜け出し、一気にRINAの前へ。同周のダンロップコーナー進入では岩岡選手にイン側を陣取られ、前に出られたことで8番手に後退してしまう。その後ミスなく走り続けていたが前との差が詰まることなく、他車のペナルティ消化の間にワンポジションアップしたことで7番手へ。87号車の山本龍選手がすぐ後方にまで迫ってきていたが何とか逃げ切り、7位でフィニッシュした。

兼松はスタートで回転数を抑え気味にしてクラッチミート。これが上手くかみ合い、TGRコーナー進入までに前方集団を抜ける間合いに捉える。そしてブレーキングでは肝の据わった飛び込みを見せ、スリーワイドの状態からアウト側の213号車バートン選手をパス。しかしコカ・コーラコーナーまで並走のままもつれ、一瞬前に出られるも再び100Rで前へ。序盤から力強い走りを披露する兼松。その後も前後を介して激しいバトルが続き、34号車井下選手、28号車樋渡選手、24号車藤島選手、38号車佐々木選手とポジション争いを展開する。その中でラインの自由度を度々制限されたことでライバルたちから一歩引けを取ってしまった兼松はずるずると後退し、ポジションは6周目終了時点で16番手に。途中、86号車にドライビングスルーペナルティが科せられたことにより一時的にポジションアップしたが、永井選手の猛烈な追い上げにより8周目にパスされ、ワンポジションダウンの17番手となった。久しくすぐ前を走行するライバルがおらず単走状態が続いていたが、18号車坂上選手のマシンにトラブルが発生し、その間に16 番手へ上昇。チェッカーを受けた。

織戸はスタート直後より混み合う前方の集団をやや後方から様子を見るように走り、隙を狙う。オープニングラップの最終コーナーで7号車おぎねぇ選手が上手くスピードを乗せられなかったところを見逃さず、すかさずスリップストリームから前に出てワンポジションアップ。その後また少し前との間隔が空いていたものの、激しいバトルが展開されていることを見ていた織戸は焦らず自身のドライビングに集中。するとほどなくして容易に前方集団のすぐ後ろにつけた。しかしそこからなかなか差が詰まらない。TGRコーナー進入でのブレーキングから立ち上がりにおいては前との差を詰めるものの、トータルではほぼ前と変わらぬラップタイムを刻んでいた。途中、86号車のドライビングスルーペナルティにより一時は18番手に上がったが、永井選手の猛烈な追い上げにより7周目に再び19番手となる。しかしその次の周で18号車坂上選手のスローダウンにより再び18番手、さらにその次の周回ではホームストレートで28号車樋渡選手のスリップストリームからアウト側へ、そこから得意のTGR進入ハードブレーキングにて一気に抜き去り17番手へとポジションを押し上げた。

1レースを通してのミスなく且つアグレッシブな走りは織戸の成長の証。そのままポジションキープで過去最高順位でのフィニッシュとなった。

昨~今シーズンにかけて上位陣の顔ぶれが固定されつつあるKYOJO CUPであるが、過去に2位表彰台を獲得しているRINA、一発のラップタイムでは上位陣に十分食い込める兼松、この第2戦において目覚ましい成長を遂げた織戸と、KOSHIDO RACINGの三姉妹にはこれから期待と希望に溢れている。さらなる躍進を見せてくれることは間違いないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023.10.22 北海道クラブマンカップレース2023 Rd.2 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレースRd.2 VITA-01

■開催日時:2023年6月18日(日)

■開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

■ドライバー:上野 大哲(#11)、佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310)
市川 篤(#516)、工藤 大祐(#910)、

■マシン:恒志堂レーシングVITA 11号機、12号機、310号機、516号機、910号機

■参戦クラス:VITA-01クラス

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績

上野 大哲  予選:6/14位 決勝:3/14位
佐藤 元春  予選:1/14位 決勝:1/14位
浅井 康児  予選:7/14位 決勝:2/14位
市川  篤   予選:10/14位 決勝:8/14位
工藤 大祐  予選:8/14位 決勝:6/14位

 

6月の十勝。初夏の風が心地よい更別村において北海道クラブマンカップ第2戦が開催された。本戦は14台のVITA-01がエントリー。基本的には第1戦同様の顔ぶれとなったが、昨年の耐久レースで平中繁延選手と優勝を飾っている#6四倉選手が久々の参戦となるほか、昨シーズン大きなクラッシュに見舞われ、一時はレース復帰も危ぶまれるかと思われた#30の鬼塚選手が見事に復活し、初戦以上の盛り上がりをみせた。
今回のKoshido Racingはレギュラー参戦組である佐藤、浅井、工藤に加え、#516に社員ドライバーである市川と、#11には京都からの遠征となる上野の2名を加えた5台体制。
上野は過去にVITA OF ASIA(アジア1決定戦)をはじめ、スーパーFJにおいても日本一決定戦で優勝を飾るなど、実績の多いドライバーである。

<練習走行>

今シーズンからのタイヤ仕様変更にまだ適応しきれていないドライバーもいる中、Koshido Racingの面々は前戦の感触をもとにマシンも順調な仕上がりをみせていた。
6月16日、他チームが1分32秒台をなかなか切れない中、佐藤と浅井が安定の1分31秒台をマーク。十勝スピードウェイ初走行の上野も1分32秒フラットと、間もなく31秒台に入れようという勢いでタイムを刻んでいく。

工藤はベストなマシンセッティングを探りながらの走行。いろいろ試しつつではあるが、1分32秒台前半をしっかりキープしていた。一方、市川はセットが決まらないマシンに手こずり1分34秒台が限界の状況。エースドライバーの佐藤にマシンテストを託すが、やはり厳しい状態であることに変わりはなく、結果足回り総交換となった。接地性と動きがかなり改善されたが、次はミッショントラブルに見舞われる。予兆はあったものの、3速がなくなりタイムは更新できず。ミッション交換にて初日の走行を終えた。
公式スポーツ走行日の翌17日は、他チームのドライバーも徐々にペースを上げてくる。しかし、弊チームも例外ではなく、ほぼ全員が順当にタイムアップし、佐藤は唯一1分30秒台へ。浅井もコンマ6秒ほど短縮してくる。上野もしっかりとまとめ上げ、31秒台へ突入。市川はようやく万全の状態となり、32秒台を安定してマークするようになった。工藤は数々のセッティングを試す中で答えが見出せず、前日のタイム更新とはならなかった。

練習走行結果
佐藤 元春:1’30.976(6/17)
浅井 康児:1’31.298(6/17)
工藤 大祐:1’32.065(6/16)
上野 大哲:1’31.884(6/17)
市川  篤:1’32.479(6/17)

<公式予選> 

天候は晴れ。路面もドライ。初夏の日差しが照りつけ、気温は実測以上に暑く感じられる。コントロールタワーに予選開始2分前を告げる表示が出され、各マシン一斉にピットから飛び出していく。

まずは#12佐藤が1分31秒台をマークし、トップに君臨。そのままポールの座を確実なものとすべくタイムを維持し続ける。スリップストリームを使うことなく、単独走行でトップタイムを叩き出し、そのまま少しずつ更新していく。タイヤが最もおいしところを佐藤は逃さない。最終的に1分30秒441にてポールポジションを獲得した。
スポット参戦で活躍が期待される#11上野は、練習走行に引き続き1分31秒台を刻み、トップからコンマ5秒遅れの6番手につける。次いで最近好調ぶりをみせる#310の浅井が1分31秒976で7番手。ここまでが31秒台となった。コンマ5秒の中に7台がひしめき合う接戦である。ライバルチームは、マシンが今ひとつ仕上がらず不調にあえいでいた#778の大島選手が最終的には走りをまとめあげ、佐藤に次ぐ1分31秒742で2番手につけ、ディフェンディングチャンピオンの意地をみせた。表彰台の常連になりつつある#77村上選手は31秒805で3番手につけ、同じく近年好調の#17坂本選手は31秒823で4番手。久々スポット参戦ながら速さを見せつけた#6四倉選手は、前に超僅差の31秒841で5番手に食い込んだ。
8番手以降は32秒台の戦い。その先頭となったのは#910の工藤。1分32秒391で後方6台を従えてのポジションを獲得。#516市川は32秒550で10番手につけた。常に上位陣にいるはずの#61号機レジェンド平中選手はマシンの不調に悩まされ続け32秒679で11番手に甘んじている。前戦まで旧マシンで奮闘し、その速さを十分に周りに知らしめた今回唯一の女性ドライバーである関選手は1分33秒747と、こちらもチームメイトの大島選手同様にマシンが決まらず苦労している様子であった。

<決勝>

気温23℃。しかしながら予選同様に体感温度はより高く、レーシングスーツの中はサウナ状態である。それでも各ドライバーはこれから始まる12周のバトルにすべてをぶつけるべく暑さに気を取られることはない。スタート前はドライバー同士健闘を誓い合う恒例の握手から始まる。

自らのスタート位置にマシンを進め、チームメイトの激励を受けるドライバーたち。

14台すべての車両がフォーメーションラップを終え、グリッドに着いたところでシグナル点灯。各車クリーンにスタートを決める。順当に加速していくと思いきや、ポールポジションの佐藤がまさかの2→3速へのシフトミスにより5位に後退。他の車両はトラブルなく1コーナーへ。この時、トップが#778大島選手、2位に#17坂本選手、3位に#77村上選手、4位#11上野と続く。素早くシフトミスをリカバリーした佐藤は5位で前4台に食い下がる形で1コーナーを立ち上がっていく。しかしその後も順位が激しく入れ替わり、トップの大島選手は3位へ、変わって坂本選手がトップ、2位には上野が上がる。3コーナーに村上選手と並んでアウト側からターンインした佐藤は続く4コーナーでインに変わり、前へ。
前方では、坂本選手・上野・大島選手が1位争いを至近距離で展開されており、絡んで走ることでペースが上がらない先頭集団の後方に佐藤が一気に追いつく。7コーナーまでにはほぼ差がなくなり、最終コーナーまでには縦一列きれいに並んだ状態へ。メインストレートに戻ってきた銘々は坂本選手を先頭にスリップストリーム合戦を展開し、トレイン状態で2周目の1コーナー進入へ。佐藤が仕掛けるかというところであったが、大島選手が守りのラインで巧みに前に出させない。順位は変わらずそのまま各マシン2→3→4コーナーとクリアしていく。
トップ4台は2周終了時点でも順位変わらず。最終コーナーを立ち上がり、3周目へ突入するところで2周目同様スリップ合戦が勃発。ここで佐藤、大島選手のアウトに並び1コーナーでブレーキング勝負。ここでも大島選手がインを死守し前には出られず。その後もトップ集団は5コーナーまで拮抗したレース展開を見せる。そして6コーナー、緊迫した争いに動きが出た。上野が坂本に仕掛けるべくアウトから被せていく。しかしレコードラインをトレースした坂本の前には出られず、しかも若干速度が乗りすぎていたためアウトに孕み、コース外へ。その間に大島選手に前に出られ、3位に後退する。そこに4位の佐藤も並びかけ、 8コーナーに並んでターンイン。ここでは上野の前には出られずそのまま9~10コーナーへなだれ込む。最終コーナー立ち上がりで速度が乗せられなかった上野はメインストレートで佐藤に並ばれる。サイドスリップから出た佐藤は1コーナーの進入でベストなラインをトレースし、3位へ。
トップ争いをしている坂本選手と大島選手が激しく競り合ってペースが上がらない中、佐藤がベストな走行ラインをトレースし、前2台に一気に襲いかかる。後方からの猛烈なプレッシャーを受けつつも必死にインを守る大島選手。ここもディフェンディングチャンピオンの意地といったところか。
4周目の最終コーナーを上手くまとめた佐藤はしっかりと大島選手のスリップストリームに入る。5周目に入った直後、1コーナー進入のブレーキングでアウト側から刺し、2位へポジションアップ。そのまま前を行く坂本選手を追う。最終コーナーまでもつれ込み、立ち上がりから再びスリップを狙う。メインストレートで難なく前へ出たのち、インを牽制しつつ1コーナーでアウトいっぱいからブレーキング。そのまま車速を乗せて立ち上がり、トップに返り咲いた。
その後は後方との差を少しずつ広げ、得意の独走態勢へ。レース中のファステストラップを叩き出し、ポールポジションかつ1位フィニッシュと完全勝利をあげた。

7位スタートの浅井は無難にスタートを決め、ポジションキープ。1コーナーはミドルラインから進入し、一瞬後方から迫る工藤に先行を許すかと思われたが1コーナー立ち上がりで速度を乗せた浅井は7位のまま2コーナー、3コーナーと#6の四倉とサイドバイサイドのバトルを展開。ギリギリの競り合いが6コーナーまで続き、7コーナー進入にて何とか前に出る。その後は即前方を行く村上選手をロックオン。2周目のメインストレートでは行く手を阻まれ前には出られなかったが、その後も付かず離れずの展開が続く。村上選手とバトルを展開しつつもトップ集団を常に視界に捉えていたところ、トップ集団の争いが激化し、ペースが乱れたところで一気に差を詰める。上位6台がもつれている状況の中、常に仕掛けていく。しかし前には出られないという展開を繰り返し、村上選手も抜くに抜けない展開に苛立ちを見せているようだ。ここで4位につけていた上野がメインストレート、立ち上がりで急な失速。村上と浅井はそれぞれ前に出てワンポジションアップ。しかし後方の上野も背後につけており、なかなか前を負うことに集中できない様子で挙動を乱す姿も見られた。

6周目に佐藤がトップに返り咲き、その後方が混戦の様相を呈する中、乗じて浅井が争いに加わる。6周目から7周目に移ろうかというメインストレート、村上選手とサイドバイサイドのまま1コーナーアウトからブレーキング勝負を仕掛ける。ギリギリのところを前に出て4位にポジションアップ。その勢いのまま3番手の坂本選手に肉薄し、常に隙を伺うがなかなか隙を見せず、大島・坂本・浅井ともつれた状態で8周目へ。この時、すでに坂本選手のスリップに入っていた浅井は隣から仕掛けようと試みるも、そのさらに前方でラインを変えた大島選手に進路を阻まれ減速を余儀なくされる。しかし、ここで鬼のようなブレーキングで1コーナーに突入した坂本が姿勢を見出し、コース外へスピンアウト。浅井は3位に上がる。ここからは大島との一騎打ち。なかなか調子の上がらないマシンに手を焼く大島。昨年のようなスピードが得られていない中、浅井を必死に抑えようと巧みなラインでコーナーを抜けていく。8周目の最終コーナーを抜けた後、ピタリと大島選手のスリップに入った浅井は、メインストレートにて難なくパス。9周目にしてポジションを2位へと押し上げた。その後トップの佐藤を追うが、この時すでに大差がついており、また佐藤もファステストラップをマークする走りであったことから差が縮まることはなく、2位のままフィニッシュした。

上野もまたスタートを順当に決め、順位をキープしたまま加速していく。シフトミスで遅れてた佐藤をインからパスし、4番手へ。さらに1コーナー立ち上がりから2コーナーブレーキングで村上選手をパスし、次いで立ち上がりで大島選手もパス。3コーナーまで2位につけた。オープニングラップは1位の坂本選手のすぐ後方につけ、プレッシャーを与える。2周目、スリップストリームに入るもそこまで距離が縮まらず順位変動はなし。3周目で挙動を乱した坂本選手の隙をつき、テールトゥーノーズの状態へ。マシンを左右に振り、プレッシャーを与えつつも6コーナーで痛恨のコースアウト。そこから大島選手と佐藤に前に出られ、ポジションを4位に下げる。但しそのまま後方に沈むことなく、佐藤に食い下がる形でトップ集団に一気に指を詰めていく。ここはレース経験豊富な上野ならではの切り替えの早さといえよう。1位争いが混戦を極めており、ペースが乱れ、あわや追突というところまでの距離感でバトルが続く。

5周目最終コーナー立ち上がり後の4速から5速へのシフトアップにて痛恨のミス。その間に村上選手と浅井に前に出られ、6位へポジションダウンとなる。
7周目に入り、依然としてトップ争いは熾烈を極めている中、チャンスを逃すまいと村上・浅井・上野がチャンスを伺う。1位を取り戻した佐藤が単独で離れ、2位の坂本選手以下がワンミスで2位から6位まで一気に順位がひっくり返る状況。上野はシフトミス等の細かい失敗はあったものの、周回を重ねていくごとに走りの精度が増していく。坂本選手がコースアウトしたことによりポジションを1つ上げ、大島・浅井・村上。上野の2位争いが続く。9周目、 2位は浅井へと変わり、浅井が少しずつ3位以下を離す。そして雌雄を決したのは10周目。3位争いが激化し、1コーナーのブレーキングでスリーワイドの展開。最もインにいた上野が2台を一気に抜き去り表彰台の最後の一枠をものにした。

スタートをしっかり決め、トップ集団に遅れをとることなく追随する工藤。1コーナーターンインまででは順位変動はないが、アグレッシブな走りで前を行く四倉選手と浅井を脅かす走りを披露。1位から8位まで塊になってバトルが進行する中、途中5位争いをしていた四倉選手が7コーナー進入でラインを外し失速。その隙を見逃さず、工藤はインから前に出る。しかしそこからは四倉がピタリと後方につき、プレッシャーを与え続けていた。市川も後方から走行ラインを変え、仕掛けてくるが守りの走りを見せる。
工藤・四倉選手ともにトップ集団から離れず、このまま行かせはするまいと食い下がる。1位から6位までの集団からやや遅れたところを走行しつつ、依然としてすぐ後方には四倉選手が付け激しいバトルを展開。予選では四倉選手の方が早かったにもかかわらず、全く隙のないドライビングでポジションを守り通した。レースラップにおいてもベストなラインで攻め続けた結果、前を走る集団がジリジリと近寄ってくる。前方は常に激しいバトルが展開されペースが上がらない状況。そこを工藤は見逃さず、虎視眈々と隙を狙う。

5周目。前を行くのは、チームメイトの浅井と上野。遠慮はない。全力で抜きにかかっていく。周回を重ねていくうちに前との差、後方からのプレッシャーに焦りが生じ、オーバーオーバーステアが散見されるが、うまくねじ伏せ姿勢を破綻させることなくマシンをコントロールしていく。トップ集団は常に見えている。工藤は2022年シーズンからこのレースシリーズへの参戦を開始したが、2年目シーズンにおいて既にトップ集団を視界に常にとらえて走るところまで成長した。日ごろのマシンメンテからセッティングを自ら積極的にトライし、試行錯誤を重ねては1戦1戦増すごとに速くなっていく。それはチームメイトだけでなく、他のチームのドライバーも認めている。後半、四倉の猛追がより激しさを増したメインストレートでは、スリップストリームを取られまいと巧みにラインを変え、1コーナーで上ブレーキング競争にもち込せることのない鉄壁の走り。ただし後方警戒するとどうしてもペースが上がらなくなり前方との差が開きがちである。苦しい戦いを強いられるが2シーズン目にして、このメンタルの強さはなかなか獲得できるものではないだろう。工藤は前から離されることもなく、また最後の最後まで四倉選手を前に出すこともなく7位でフィニッシュ。今回常にバトルが展開されるレース運びであったが、工藤にとって大きな経験となった事は間違いないだろう。

10番手スタートのとなった市川。前にはチームメイトの工藤、そして昨年大クラッシュに見舞われ、脅威の復活を遂げた#30鬼塚が並んでいる。スタートは差し障りなく決め、1コーナーへ。久々のレースで緊張もある中、前走車に食らいついていこうと必死に516号機をコントロールする。最初のバトルの相手は鬼塚選手。クリーンな走りでラインを潰しあうこともなく、正々堂々とした駆け引きが続く。同じ黄色のマシン同士がせめぎ合い1コーナー立ち上がりから2コーナーのブレーキングにて市川が仕掛け、鬼塚選手の前へ。ベースが拮抗している両名であったためしばらく後方に気をとられていたが、前を行く工藤と四倉選手に追いつこうと食い下がる。ここでチャンスが到来する。行く手を阻まれた四倉選手がラインを外し大きく失速。そこに工藤が7コーナーのインから刺し、それに続く形で市川もかわし、8番手にポジションを押し上げる。

次に狙うのはチームメイトの工藤。4周目の6コーナー、工藤のインがわずかに空いたところを狙い、プレーキング勝負。しかし、ここは工藤に軍配が上がる。そのまま7コーナーまでもつれるがインとアウトが逆転し、続く8コーナーにて後続の四倉にも前に行かれ、再びポジションは9番手となる。

その後は工藤・四倉・市川のテールトゥノーズのバトル。メインストレートでは、ほぼ車間は空いていないトレイン状態。しかし、周回を重ねるごとに徐々に工藤と四倉選手に差をつけられ、単独走行となる。途中坂本のスピンによりポジションを1つ上げて8位となるが、その後特にミスをすることもなく無難に走り切り8位をキープしてチェッカーを受けた。序盤はトップ集団も視界に捉え、良い刺激を受けた市川。時点での課題を明確にしつつ、次なる参戦の機会を伺う。

かねてからの目標であった表彰台の独占をついに達成したKoshido Racing。佐藤も完全復活したと言える連戦連勝。シリーズタイトル奪還に向けて大きな一歩となった。

 

浅井も佐藤に肉薄する走りをみせ、今後の活躍が期待される。本戦より北海道クラブマンカップに参戦を開始した上野もビジターバトルとは思えない3位表彰台獲得。その速さを周りに知らしめることとなった。
トップ集団を見据える工藤も含め、Koshido Racingはさらに強くなっていくであろう。今後の躍進が期待される。

 

2023.10.18 SUZUKA CLUBMAN RACE 2023  MEC120 RACE REPORT

SUZUKA CLUBMAN RACE MEC120
開催日時:2023年7月2日(日)
開催地:鈴鹿サーキット(三重県)
ドライバー:佐藤 元春/鶴田 哲平
マシン:VITA-01 15号機
参戦クラス:Ama-Ama
天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
予選:クラス13位/25台
決勝:クラス7位/25台

鈴鹿サーキットで開催されるVITAレースに挑むのは2年ぶりとなる。そのステージはMEC120。つまり120分耐久レースである。

今回は恒志堂レーシングVITA15号機を持ち込み、オーナー兼エースドライバーの佐藤と今期シェイドレーシングからスーパー耐久に参戦している鶴田哲平の2名でのエントリー。鶴田は昨年のスーパー耐久シリーズ富士24時間レースの時の佐藤のチームメイトで、北海道クラブマンカップにもビジター参戦経歴を持つ。

 

エントリーリストに並んだドライバー名は富士チャンピオンレースシリーズでも見慣れた選手ばかり。そこに今回地元勢も加わり、戦いは激しさを増すことが容易に予測された。
鈴鹿戦は毎回練習走行本数が少なく、ビジターには厳しいレース。加えて7月上旬ということもあり、北海道の気候に慣れている佐藤には、試練となることが明白であった。

<練習走行>

練習走行は6月30日から。鈴鹿を地元とする鶴田のアドバイスのもと、佐藤は少ない走行本数をしっかりとものにすべく濃密な練習走行としたいところである。前回走行した時と大きく異なるのはやはりタイヤ。今シーズンから新たに導入された新コンパウンドのタイヤが鈴鹿サーキットではどう出るのか。細かい修正を積み重ねながら走行時間を有意義なものとしたいところであったが、佐藤が出て数周回で赤旗中断。ビジターにとっては試練が続く。

鈴鹿サーキットはランオフエリアのグラベルが深く、VITA-01程度の車速のマシンであればクラッシュすることなく止まれる一方で、逆に一度出てしまうと自力で戻るのは困難極まりない。それ故に車両改修によるセッション中断が頻発する。この日は夕方にも1セッションあり、ここでは鶴田がテスト走行に出たが、14時頃から強い雨に見舞われ、コースは完全なウェット状態になっていた。鶴田はウェット用の走行ラインを丁寧にトレースし、鈴鹿での15号機の動きを読み取る。しかし、ここでまたコース外逸脱車両が発生し、赤旗中断。早々に走行を終えることとなってしまった。

翌7月1日も予選前に練習走行枠は2枠設けられており、前日の課題をひとつひとつクリアしていく。

 

<予選>

14時5分スタート。気温は27℃前後。予選は佐藤が担当することとなった。しかし、開始前から佐藤が痛恨のミス。ファストピットレーン進入開始時間をわずかに読み間違え、予選結果から3グリッド降格のペナルティーを受ける。

純然たるタイムは2分28秒286でクラス13番手につけたが、グリッド上はクラス16番手スタートとなった。

予選タイム:2’28.286

 

<決勝>

天候が不安定であった練習走行とは対照的に決勝は快晴。とはいえども高湿度と33~34℃の高気温で、北海道育ちのドライバーには過酷なコンディションである。

1分前。スターティングドライバーの佐藤はエンジンスタートとともに静かにヘルメットのバイザーを下ろし、臨戦態勢へ。120分もの長く、暑く、熱い戦いが始まる。フォーメーションラップ、コース内は激しく混み合い、ヘアピン手前では一旦停止してしまうくらいの混雑ぶり。鈴鹿MECのVITA-01エントリー台数はPro-Ama、Ama-Amaクラスを合わせると33チームにものぼる。そこにv.Granzのエントリーも加わると総勢47チームとなり、コース上は大混雑の様相を呈していた。

さてフォーメーションラップもそろそろ終わり日立アステモシケインを抜け、全車一斉にフル加速を始める。うまく加速姿勢をつくった佐藤はすぐ前をいく47号車を1コーナーまでに捉え、イン側からパス。続く2コーナーではラインを外し、アンダー気味に飛び込でしまうが何とか順位をキープし、前を追う。
前方はVITA-01の長蛇の列。まるで盆休みの帰省渋滞のごとく車列は途切れない。2周目のスプーン、立ち上がりで79号車に並びかけアウトから130Rに並んで進入。ターンインする頃までに前に出た。序盤の混雑の中を1台1台確実にパスし、ポジションを押し上げていく佐藤。3周目にはヘアピンでインから立ち上がり重視のラインをトレースし、前車にプレッシャーを与えた。しかし、その先のスプーンコーナーで2台のVITA-01が絡み、早々のセーフティーカー(以下、SC)導入。約2周にわたるスロー走行ののちレース再開。車両は大混雑。SC明け、次の周回でのスプーンにてまたもVITA-01同士の接触。しっかりと目視していた佐藤は冷静にアウト側のランオフエリアからかわしていく。この頃になると前方だけでなく、後方から迫るv.Granzにも注意を払わなければならない。前後しっかりと見渡し、慣れぬコースで奮闘を続ける。

数周走行し、ここでまたもSC導入。例によって2周回ほどスロー走行に費やし、レース再開。再開直後に日立アステモシケインにてスピン車両がいたが、これも冷静にパス。細かいミスはあるが最終的に前との差を詰めていく。前方でバトルしていた111号車と77号車を後方から虎視眈々と狙っていたところ、77号車が一瞬失速。そこを見過ごすことなくシケイン立ち上がりで横に並びホームストレートで前へ。そのままの勢いで111号車へも襲いかかる。しかし、デグナー2個目にて痛恨のアンダーステアを誘発、再び77号車に並ばれてしまう。そのままサイドバイサイドでヘアピン、スプーン、130Rと抜け、辛うじて抑えポジションキープ。耐久でありながら魅せるバトルを展開した。V.Granzが絡むことで111号車との距離が一気に縮み、再び佐藤にチャンスが訪れる。スプーンでアンダーステアをうまく消し、裏ストレートで横に並びかけた。佐藤は130Rのイン側からパス。続いては117号車と27号車のバトルに後方から接近、130Rの侵入で大きく失速した27号車をシケインまでに捉え、横並びブレーキング勝負。きっちりと前出る。ここで再びSC導入。スプーン奥のアウト側にはらみグラベルにつかまった車両の回収にてスロー走行3周を要した。耐久レースのファーストスティントであるにもかかわらず、まるでスプリントレースのような走りを見せた佐藤。SC明をきっかけに給油とドライバーチェンジのためピットイン。鶴田へ交代となる。ピットイン時はペナルティーを誘発しないよう。チーフメカニックの藤巻と各ピット要員が綿密に打ち合わせをし、時間管理を徹底。無駄なく作業を終え、鶴田を送り出す。

鈴鹿を地元とする鶴田はピットアウト早々にダンロップコーナーで23号車を難なくパス。その後は前方クリアとなり、常に2分30秒を切るペースでコンスタントに周回を重ねていく。うまくオーバーステアを誘発し、タイトコーナーはコンパクトにまとめ、高速コーナーはコース幅いっぱいに使って車速をのせる。インアウト関係なく、マシンの動きを見ながら会心の走りを披露していく。数ラップを重ねて次第に前走車が近づき、即ロックオン。スプーンアウト側から213号車を、デグナーひとつめのインから19号車をパス。初乗りの15号機を攻め立てる。快進撃は止まらず、その後の周回ではスプーンを絶妙に立ち上がり、58号車を裏ストレートにてパス。格上クラスである5号車の中里選手・服部選手組のマシンをもデグナー進入のブレーキングで容易に仕留め、同周回のシケインのブレーキングでは4号車を、次周回のスプーン立ち上がりで47号車を、さらに次の周の同ポイントで51号車を捉える。鈴鹿は道幅が決して広いサーキットではなく、サイドバイサイドでの緊張感は必然的に高くなるが、鶴田は物怖じすることなく130Rのアウト側から17号車をオーバーテイク。S字コーナーでは25号車を、888号車はデグナー立ち上がりからヘアピンのブレーキングにてパス。v.Granzにうまくラインを開けつつもマシンを失速させることなく、怒涛のポジションアップに大きく寄与した。ピットインで前に出られた車両含め、交代後数周で11台をパスする快進撃となった。16周回したところでSCが導入され、明けるまでに3周を費やす。この時なんとクラス2位までポジションを押し上げていた。しかし、ドライバーチェンジ及び給油のため、鶴田はここでピットへ。MECのレギュレーションにてピットおよびドライバー交代は最低2回を義務付けられている。多くの台数がエントリーする今回のレースでは予期せぬSCも多く、ファーストスティントの佐藤から鶴田がセカンドスティントを長く引っ張る作戦となっており、残りわずかな時間ではあるが最後は佐藤にドライバーチェンジしてチェッカーを受ける方針となった。佐藤がピットアウトした時点での順位はクラス7位。残すところ数周とみられた佐藤であるが、最後の最後までアタックは止めない。耐久レースともなれば無事に走り切るために走りが保守的になりがちであるが、スプリントレースの如く攻め込んでいく。ピットイン中に前に出られた23号車をピットアウト直後からマークし、S字ではテールトゥノーズの状態まで詰め寄る。そしてスプーン進入のブレーキングにて前へ。まさに鶴田の勢いを佐藤がそのまま引き継がれたようであった。しかし23号車は周回遅れのため順位変動はなし。6位とは10秒余りの差があり、これを覆すには残り周回数が足りなかった。

最終的にそのままクラス7位でチェッカー。入賞まであと一歩というところであったが、チームとしては鈴鹿の地で大躍進したといえよう。

次回の鈴鹿遠征は今のところ予定はない。しかし、2年ぶりの参戦とは思えない善戦ぶりに、再び鈴鹿の地に戻って躍進する日は必ずくるであろう。

2023.10.17 Fuji Champion Race Series 2023                       FCR VITA & KYOJO CUP Rd.1     RACE REPORT

Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.1/KYOJO CUP Rd.1

開催日時:2023年5月13日(土)~5月14(日)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー   FCR-VITA:佐藤 元春、上野 大哲、兼松 由奈
KYOJO CUP:RINA ITO、織戸 茉彩、兼松 由奈

マシン  恒志堂レーシング レブニーズVITA :佐藤 元春・RINA ITO
恒志堂レーシング CLASS VITA:上野 大哲・織戸 茉彩
恒志堂レーシング YOSHIMI VITA:兼松 由奈

参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP

天候  FCR-VITA:予選/雨、決勝/雨
KYOJO CUP:予選/曇り、決勝/雨

路面  FCR-VITA:予選/ウェット、決勝/ウェット
KYOJO CUP:予選/セミウェット、決勝/ウェット

戦績   佐藤 元春(FCR-VITA) 予選:13/33位 決勝:14/31位
上野 大哲(FCR-VITA) 予選:2/33位 決勝:2/31位
兼松 由奈(FCR-VITA) 予選:24/33位 決勝:24/31位

RINA ITO(KYOJO CUP) 予選:7/22位 決勝:5/22位
織戸 茉彩(KYOJO CUP) 予選:16/22位 決勝:失格
兼松 由奈(KYOJO CUP) 予選:6/22位 決勝:18/22位

北海道でのレースを終え、5日後の5月12日金曜日。

タイヤの仕様が変わり、初のFCR-VITAおよびKYOJO CUPを迎えるメンバーたちが富士スピードウェイ入りをした。

5月13日のFCR-VITAおよび翌14日のKYOJO CUPでVITAへと乗り込むドライバーはこちら。

 

#15 恒志堂レーシング レブニーズVITA  佐藤 元春
#35 恒志堂レーシング CLASS VITA  上野 大哲

#610 恒志堂レーシング YOSHIMI VITA  兼松 由奈

※FCR-VITA/KYOJO CUPダブルエントリー

#15 恒志堂レーシング レブニーズVITA  RINA ITO

#35 恒志堂レーシング CLASS VITA  織戸 茉彩

以上5名となる。

上野はKOSHIDO RACING から初参戦。

タイヤが変わってから初の富士スピードウェイ走行となるが、レース前日にして走行枠は僅か二枠。

限られた練習時間の中、レースに向け各選手練習に挑む。

https://x.com/koshidoracing/status/1656827885917995008?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw

練習走行日はドライで迎えたが、本戦はかなりの降水が想定される。

ドライ、ウェットどちらもぶっつけ本番という状況に不安を抱えながらも選手たちはニュータイヤの感触を掴むべく走り出す。

各選手ほとんど一枠しか走れない中、チームオーナーでありエースドライバーである佐藤がタイヤテストでの感触を共有し、万全の体制で挑む。

 

<5月13日 FCR-VITA Rd.1>

限られた練習が終わり、迎えたレース当日。

予報通り大雨が降る中での予選・決勝となった。

AM 9:25 より予選がスタート。

15号機 佐藤元春、35号機 上野大哲、610号機 兼松由奈の3名が予選に挑む。

31台かつ大雨、全車スピンも多く厳しい状況となった予選が終了。

3台とも無事に帰還したが、視界も悪く車の限界を探りながらの予選となり納得の行くタイムがなかなか出ない。

そのようなコンディションの中、上野がいち早く車の挙動を掴み、予選2位という非常に良いスタートを切る。

予選タイム

・佐藤 元春   2’21.803
・上野 大哲   2’18.519
・兼松 由奈   2’26.087

https://x.com/koshidoracing/status/1657198843795238912?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw

 

13時15分決勝スタートであるが、雨が止む気配はなく予選と近しい状況で迎えることを見据え、各選手予選の走行を振り返りつつ決勝に向けて準備を進める。

ウェット路面への不安や緊張感はあるものの、各選手ひとつでも上のポジションを奪取しようと闘争心をあらわにしていた。

雨のレースのため、自身はもちろんのこと相手もミスと隣り合わせでの緊迫した走行を強いられる。リスクは平等であるが、逆に多くのチャンスが転がっている。

スタート時のクラッチミートにおける回転数など、佐藤から各ドライバーがレクチャーを受け、決勝に向けて気合を入れる。

https://x.com/koshidoracing/status/1657236667512786945?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw

 

13時00分。コースイン。

決勝レースの出走は31台。雨が降る中、各車グリッドにつく。

サポートスタッフやメカニックがスタートまでの短い時間で選手とコミュニケーションをとり、選手の士気を上げる。

13時15分。グリッドウォークが終了し、各選手緊張感が高まるなかフォーメーションラップを終え、グリッドにつき、決勝レースがスタート。

KOSHIDO Racingの各ドライバーはスタートを決め、ライバルをパスしながらのTGRコーナーに向かって飛び込んでいく。

予選2位の上野がスタートで前の選手をパスしトップへ浮上。

予選の段階でスタートに好感触を得ていた15号機の佐藤が事前にチームメイトと打ち合わせしていたことが見事にハマったといえよう。

佐藤はロケットスタートを決めTGRコーナーに進入、イン側が混雑するのを予測し大外からオーバーテイク。幸先の良いスタートを決めた。コカ・コーラコーナーでイン側につけ、さらなるポジションアップを狙ったが、イン側の縁石にのり、トラクションを一気に失う。ここでスピンを喫してしまい、10台ほどのライバルに抜かれてしまう。しかしマシンは進行方向を向いており、素早いリカバリーをみせた。ただ、ここで加速というところで後方を走行していたマシンが佐藤に追突。幸い既に加速体勢に入っていたことから致命的な損傷とはならず、気を取り直してレースに復帰する。31台もの出走台数がいるため、順位を落としたところで未だ群衆の真っ只中にいる状況。低μ路に細心の注意を払いながらも着実にVITA-01を前に進める慎重なドライビングで、ポジションを取り戻すべく健闘をみせる。

最終コーナーは毎周、路面コンディションを考慮してのラインからの立ち上がり重視。ヘビーウェットの激しいウォータースクリーンをものともせずきっちりとスリップストリームを使い、ストレートでは着実に前の車との差を縮め、1コーナーブレーキングで前に出る。

コカ・コーラコーナーではスタート直後のスピンからイン側を危惧し、立ち上がりでコースアウト側を上手く使おうと試みたが、再度スピンを期する場面も。しかし、この時も上手くリカバリーし、見事360°フルターンで即戦線に復帰。度々マシンの挙動を乱す姿が何度かあったが、このコンディションの中前に追いつこうという力強さと丁寧さ、時にアグレッシブさを併せもつ走りを魅せた。

610号機の兼松も良いスタートを切り、イン側を位置取ることに成功。その後コカ・コーラコーナー・100R・ダンロップコーナーとリズムよく走るが、集団が崩れて隊列になり始めた13コーナー進入でリアの荷重が抜け過ぎてしまいスピン。その後も隊列が続き、コース復帰に手間取ったことから大幅にポジションを落としてしまう。その後巻き返しを試みるがこのコンディションでは一歩踏み出せず、スロットルを開ける右足に躊躇が見え隠れしていた。それでもラリーで培ったマシンコントロールの勘が徐々に戻り始め、TGRコーナーのブレーキングでは積極的な姿勢をみせる。オープニングラップでのスピン後は大きなミスなく走りをまとめ、少しずつ順位を上げる。過酷な路面状況に慣れてきた頃にはアドバンヘアピンをアウト側から大外刈りという大胆さも見せつつ、このレース中に着実にレベルアップを果たしていった。最終的にはスタート順位である24番手を取り戻し、無事にチェッカーを受けた。

一方、スタート直後1位に浮上した35号機の上野。トップ争いを繰り広げるが #470徳升選手のペースが非常に速く、一度は前に出たものの再びトップの座を明け渡してしまう。コカ・コーラやダンロップコーナー進入ではヘビーウェットとは思えない綺麗なライン取りで徳升選手との距離を詰めるが、1周のトータルではなかなか近づくことができない。とはいえどこの過酷なコンディションの中、素早いカウンターステアとスロットルコントロールでVITA-01の挙動を安定させ、3番手以下を寄せ付けないハイペースで一度も破綻させることなく走り切った素晴らしいドライビングは、流石は現役F4ドライバーとしか言いようがない。

ジリジリ離れる#470号車を視界に捉えつつ、難しいコンデションの中果敢に攻め続けるが、惜しくも徳升選手に次ぐ2位でチェッカーを受けた。しかしながら3番手とは15秒弱の差。いかにこの二人の走りが高次元であったかがわかるだろう。

 

https://x.com/koshidoracing/status/1657284629001551872?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw

初参戦の上野が厳しい状況の中2位でゴールし、表彰台に登ることができた。

コンディションも悪く、スピンに見舞われてしまった佐藤選手・兼松選手にとっては悔しさの残るレースとなったが、3名全員が予選のタイムを上回るタイムでレースラップを周回し、短い時間の中でもしっかり成果として残すことができた。

今期からのタイヤの主な仕様変更目的はウェット性能の向上であったが、それでもウェットの状況でのレースは難しい。

ドライでは可能なライントレースやブレーキングでの駆け引きも相当シビアになるため攻めきれない場面もあるレースとなったが、次戦はライバルチームもタイヤの感触を掴み始めるであろう。今後は現状を一段階も二段階も超えることが勝利への条件となる。

 

<5月14日 KYOJO CUP Rd.1>

春とはいえ、まだまだ冬の寒さを感じる5月14日。気温は15℃。

前日のFCR-VITAに続きKYOJO CUP(以下KYOJO) に参戦する三姉妹ドライバーはこちら!

右から

15号機  RINA ITO 選手(長女)
610号機  兼松 由奈 選手(次女)
35号機  織戸 茉彩 選手(三女)

前日のFCR-VITAにも出場していた610号車兼松選手以外の2名は、タイヤ変更後初のレースかつ初ウェット。

三姉妹の長女であり、エースドライバーである15号機RINA ITO選手はさすがの落ち着きで妹たちを引っ張る。引っ張られた妹たちもレースモードへと変わり、真剣な表情だ。

 

前日レースに参戦した佐藤・上野より、路面状況のより劣悪なポイントやドライビングについてアドバイスを受け、いざ予選へ。

8時00分 予選

 

前日に引き続き大雨かと思われたが、予選開始の段階ではなんとほぼドライ路面。

https://x.com/koshidoracing/status/1657525077200748544?s=53&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw

 

22台で開始となった予選であるが、決勝は雨予報で荒れることが予想されるため各選手少しでも前からスタートしたいところ。

前半あまり上位に食い込めていなかった三姉妹だが、後半に差し掛かりペースアップ。

RINA ITO選手、コースイン後渋滞気味でなかなかタイムが伸びなかったが、後半にようやくクリアラップが取れ、7番手タイムをマークすることに成功。

兼松選手はコースイン後から中盤まで全くクリアが取れず苦戦を強いられていた。粘り強くタイミングを探り続け、計測最終ラップに丸1周ライバル車のスリップストリームを有効活用し、6番手タイムをマークすることに成功。

昨年から参戦の織戸選手は途中まで単独走行が多くなかなかタイムアップができない。8周目後半、前走車のスリップストリームに入ることに成功し、チャンスをものにする。計測最終ラップに順位がアップし、16番手で予選を終えた。

予選タイム

・RINA ITO  2‘05.521
・兼松 由奈  2’05.500
・織戸 茉彩  2’08.001

 

12時15分 決勝

コースイン前にドライバー同士ポイントや注意事項を確認。決勝前に予報通り雨が降り始め、三姉妹も心配な様子。姉妹でお互いを高め合う。

チームオーナー佐藤よりスタートの極意を伝授し、各選手マシンに乗り込みいざ出陣。

https://x.com/koshidoracing/status/1657580962954498048?s=53&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw

三姉妹、教え通りにばっちり回転数を合わせ、シグナルブラックアウト。

各機良い勢いでスタートを決める。

15号機RINA ITO、良い蹴りだしでスタートするが痛恨のシフトミス。しかしながら幸いウェットコンディションで周りのライバルたちも車速がのっておらず、かつTGRコーナーへのブレーキング直前であったため、それほど大きな影響とはならず胸をなでおろす。元々そのドライビングはアグレッシブであるが、本レースでは特にダンロップコーナー進入のブレーキングからターンインで積極的なアプローチをみせ、前との差を一気に詰める。しかし、ここからという2周目後半でSC(セーフティーカー)導入。長く続いたSCの先導は6周目まで続く。

7周目でようやく解除となり、レース再開。再開直後のコカ・コーラコーナー進入へのブレーキングで2台をパス。

その後#337斎藤選手、#86永井選手と張り合うがなかなか抜けない。11周目の最終コーナーで2位を走行していた#114翁長選手が大きくコースアウト。RINA ITOの目の前に復帰し、一時はストレートで前に出るが、その後のTGRコーナーブレーキングで再度抜き返されてしまう。その後の周回ではここぞとばかりにポジションアップを狙うが叶わず、5位入賞でチェッカーを受けた。

610号機の兼松はスタートを無難に決め、TGRコーナーに突入。立ち上がりでライバル車に詰まってしまい後方にパスされてしまう。コカ・コーラコーナー進入で長女RINA ITOにもオーバーテイクされてしまい、ポジションダウンするが、その後巻き返そうと長女に追いすがる。2周目のTGRコーナーでややブレーキングを深追いし過ぎたか、コースアウト。ここでさらに1台に前に行かれてしまう。1、2周目のミスを取り返そうと気合を入れなおしたところでSC導入。SC解除になりここからというところ、GR Supraコーナー立ち上がりで前を走る2台がスピンし、イン側へ。兼松は全力でかわそうとアウト側に回避を試みるが、スピン車両がアウト側に流れてきてしまう。車両の左側面にホイールのスポークが折れるほどの大ダメージを負ってしまい、規定周回数ギリギリクリアはしたものの、18位という結果でレースを終えた。

35号機の織戸。三姉妹でダントツのロケットスタートを決める。スタートで2台をパスするという素晴らしい出だし、このまま順位アップと思ったTGRコーナー。#36岩岡選手に接触してしまう。その接触がきっかけとなり、そのままスピン。リカバリーにかなりの時間を要してしまう。これによりライバルたちとは大幅な差が生まれてしまい、追いつこうと意地の走りを見せるがほどなくしてSC導入となる。SC解除後から、1周目の接触によるペナルティーが出されるが、経験の浅い織戸はそれに気付くことができないまま周回を重ねてしまう。裏を返せばそれだけスピンした遅れを取り戻そうという強い気持ちで走っていた。ペナルティーに気付かず規定周回を過ぎてしまったため、裁定は失格処分。KYOJOに出場し始めて2シーズン目の初戦、本人の中でもたくさんの葛藤があった。このような経験を経て、さらに強く速く賢いドライバーへと成長していくであろう。

失格になったとはいえ、その走りを振り返ってみると、ライバルたちがスピンやコースアウトで戦線を離れていく中、着実にラップを重ねられる走りを身に着けていたことがわかる。路面状況を常に注視し、最も水が掃けているラインを確実にトレース。前走車が巻き上げる水しぶきにも臆することなく積極的にスリップストリームを狙い、走りの組み立て方としては大きく成長したことを印象付けた。

ウェットコンディション、スピン・クラッシュ多数と全体的に少し荒れたレースとなってしまったが、三姉妹は毎戦高め合い成長を見せてくれる。ギリギリの状態で走るからこそトラブルは起きてしまう、そこを今後さらに洗練させていくことでまだまだ成長し、ファンやスポンサーの皆様の期待に応えてくれることは間違いないだろう。そんな期待を抱かせる面々の走りであった。

 

KOSHIDO RACINGは地元十勝スピードウェイだけでなく、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットをはじめとした幾多のビジターレースにこれからも挑戦し、チーム内やライバルたちと高め合うことで日々進化していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023.06.14 北海道クラブマンカップレース2023 Rd.1 VITA-01 RACE REPORT

 

北海道クラブマンカップレースRd.1 VITA-01

■開催日時:2023年5月7日(日)

■開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

■ドライバー:佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310)、工藤 大祐(#910)、

RINA ITO(#11)、織戸 茉彩(#516)

■マシン:恒志堂レーシングVITA 11号機、12号機、310号機、516号機、910号機

■参戦クラス:VITA-01クラス

■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ

■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

■戦績
佐藤 元春   予選:1/13位 決勝:1/13位

浅井 康児   予選:2/13位 決勝:5/13位

工藤 大祐   予選:5/13位 決勝:6/13位

RINA ITO    予選:6/13位 決勝:7/13位

織戸 茉彩   予選:13/13位 決勝:12/13位

 

 

例年より若干早めの開幕となった北海道クラブマンカップ第1戦。今年の道内は4月から比較的温暖な日が続いていたがレースウィークの十勝に吹く風は冷たく、朝方の気温は一桁台というコンディション。そのような中、13台のVITA-01が十勝スピードウェイに集結した。主な各チームのドライバーの今年の顔ぶれは昨シーズンとほぼ同じで、ディフェンディングチャンピオンである#778大島良平選手、常に表彰台圏内を争う#17坂本幸照選手、急激に速さを身につけてきている#77村上泰規選手、本シリーズでは唯一のレギュラー参戦女性ドライバーである#777関あゆみ選手、そして#61レジェンド平中繁延選手といったところ。
今回のKoshido Racingはチームオーナー兼ドライバーである佐藤を筆頭とし、レギュラードライバーである浅井、工藤、そしてスポット参戦となるRINA ITOと織戸の女性ドライバー2名を加えての布陣で挑む。

<練習走行>

今シーズンよりタイヤが大幅に仕様変更となり、開幕からセッティングに終われる各チーム。Koshido Racingも4月から走行を開始し、ニュータイヤの感触を確かめていた。

これまでのセッティングの方向性が今期のタイヤに上手く合致していたのか、シーズン初走行より好タイムを記録する佐藤と浅井の両ドライバー。工藤もこれに次ぐ形で昨年のタイムを大幅に上回って見せた。

今回のレースウィークから合流したRINA ITOも今期VITA-01に初乗りながらニュータイヤに素早く順応し、昨年の自己ベストから約1秒短縮してくる。

織戸はレース前日の公式特別スポーツ走行からの参加。この日はウエット路面ながら、各セクターベストを上手く1周にまとめ上げ、VITA-01二年目にして成長した姿を見せた。

しかし、すべてが順風満帆というわけではなかった。エースドライバー佐藤の12号機はエンジンとミッションに不安を抱えたままでの走行であったのだ。今ひとつエンジンに伸びが足りない状態であったとともに、普段はホームストレートでの4速から5速への素早いシフト操作を信条としている佐藤がゆっくりと、かなり慎重にシフトアップしている様子がみられた。これを受けて佐藤は練習走行を中断し、12号機はエンジン・ミッション換装という重整備がスタートする。また、11号機のRINA ITOはドライビングミスによりオーバーレヴを誘発。エンジンブローさせてしまう。
一気に2基のエンジンを要することになったKoshido Racing。スペアエンジンが1基のみであったことから第1戦に黄信号が灯りかけていたが、なんと他チームに快くスペアエンジンを供与いただけることとなり、ギリギリで窮状を凌ぐことができた。ライバルチームでありながら救いの手を差し伸べてくれたHDC日本平中自動車様とステップエンジニアリング様に心より御礼申し上げる次第である。
さて、エンジンが手に入ってからはメカニックの腕の見せ所。一部のサポートスタッフも協力し、いち早く走れる状態にしようとチーム総出で懸命な作業が続いた。結果2台ともエンジンは換装され、無事に火が入った。ただ、12号機のミッションは換装してもなおフィーリングに難が残る状態。致し方なくその状態のままレース本番を迎えることとなった。
チャンピオン奪還に燃える佐藤、昨年の最終戦で2位表彰台を獲得し勢いに乗る浅井、VITA-01搭乗二期目にしてトップ集団に肉薄するタイムをマークする工藤、KYOJO CUPにレギュラー参戦し、男性顔負けの強い走りで常連軍団を脅かすRINA ITO、同じくKYOJO CUPで昨年よりレギュラー参戦を果たし、目覚ましい成長を見せる織戸茉彩。Koshido Racingの活躍ぶりに期待が寄せられた。

 

練習走行結果
佐藤 元春:1’30.840 (5/4)
浅井 康児:1’30.920 (5/5)
工藤 大祐:1’31.539 (5/5)
RINA ITO:1’32.488 (5/4)
織戸 茉彩:1’36.540 (5/6 セミウェットコンディション)


<公式予選> 

天候は晴れ。気温11.7℃、湿度52%。前日の雨雲はいなくなり、青空が広がり始めている。早朝の公式車検の時間帯は気温も上がらずコースコンデションに不安が残ったが、路面はしっかりと乾いていた。
コントロールタワーにコースイン2分前の表示が出されると同時に、各車一斉にピットガレージから飛び出していく。Koshido Racingはまず浅井がコースイン。それに続く形で佐藤が、この後に工藤、RINA ITO、織戸と続く。浅井・佐藤はアウトラップから2周かけてしっかりとタイヤに熱を入れ、徐々にペースを上げていく。常に浅井の後方につき、スリップストリームを上手く活用しつつポールを狙う佐藤。浅井も後方を気にかけつつ、ミスなく周回を重ねる。
最初にベンチマークとなったのは#77村上選手で、1分30秒台の好タイムを序盤から連発。次いで#778の大島選手が近接タイムで肉薄する。そこに割って入る形で浅井が6周目から1分30秒台後半を連続でマークし、8周目にベストとなる1分30秒643で3位につけた。そして遅れること1周、ついに佐藤が動き出す。それまで1分31秒台に留まっていたが7周目に一気に縮め、1分30秒台中盤を記録。その後もアタックは続き、皆がアタックを終えたラスト周回で1分30秒361を叩き出し、トップに躍り出る。同時に予選時間は終了となり、佐藤が土壇場でポールポジションを獲得した。
上位陣のタイム順では2位に#77村上選手、3位に浅井、4位に#778大島選手となっているが、村上選手にトラックリミット違反が課せられベストタイム末梢のペナルティ。スターティンググリッドは3番手となった。
5位以降は1分31秒台の戦い。とはいえ面々昨年から軒並みタイムを短縮してきており、こちらもハイレベルな戦いが繰り広げられる。開幕前に何度か練習走行を重ねていた工藤は、試行錯誤の末に前日の特別スポーツ走行時間までも惜しみなくセッティングに割いていた。納得いくまでマシンの仕上げに注力し、乗り方も着実に今年の仕様にアジャストしていった結果、上位陣と僅差の1分31秒060までタイムを刻む。練習走行では1分32秒台に甘んじていたRINA ITOも予選で開眼し、1分31秒台前半を連発。予選アタック中にニュータイヤの特性を掴み、最終的には工藤に迫る1分31秒141を記録した。
最終的には5位に工藤、6位にRINA ITO、昨年から好調の#17坂本選手は7位となっている。マシンコンディションに泣いた#61レジェンド平中選手は、練習走行では1分31秒台をマークしていたものの、予選中は1分32秒113で9番手。唯一の旧エンジン車で奮闘中の#777関選手は、そのハンデを一切感じさせない1分32秒297という驚異的なタイムをマーク。しかし、ピットアウト時のホワイトラインカットにより10番手としながらも、グリッドは11番からのスタートとなった。
絶対的な練習不足に泣いた織戸は13位。それでも久々のVITA-01で、まして乗りなれないマシンということを考えれば十分なタイムである。20分間という短い予選の間だけでもピットアウト直後と終了時の走りを比較すればその差は歴然。コース幅の使い方や操作の精度が格段に高まっていた。現に同じ車両でエントリーした昨年と比較するとアベレージを2秒ほど短縮している。前日練習がすべてウエットコンディションとなってしまったために、ニュータイヤ初のドライ走行となった予選時間で多くの感触を得た様子。決勝での巻き返しが期待された。

<決勝>

気温は10.9℃、湿度50%。この時期としては若干肌寒い。但し日差しはあり、路面温度は涼しげな外気温に相反して上昇しつつあった。タイヤに熱を入れるには十分である。
各ピットからコントロールタワー下に向かって車列をなす色とりどりのVITA-01達。ワンメイクでありながら外装は各チーム個性に富んでおり、列を成すその姿は他のレースシリーズに引けをとらないくらい華やかである。
各車スタート練習を交え、それぞれのグリッドへ向かう。フロントローは佐藤と浅井でKoshido Racingが独占。中盤にも工藤とRINA ITOが並び、後方には好機をものにすべく織戸が目を光らせている。

グリッドでは各チームスタッフや仲間たちとともに和やかな時が流れる。スタート前、ドライバーの緊張をほぐしてくれるひとときである。グリッドウォークを終え、ここからスタート1分前の表示が出されるまでの間、サーキットは一変して静寂に包まれる。数は少ないが筆者も本シリーズにはスポット参戦の経験があり、この静寂がえもいわれぬ緊張感を作り出す。今期初戦ということもあり、その緊張感はいやが上にも高まっていた。スタートまで1分を切ると全マシンがエンジンスタートし、グリーンフラッグとともにフォーメーションラップへ。それぞれのグリッドに戻ったマシンたちはスタート5秒前の表示で一斉に咆哮を上げ、レッドシグナル点灯、ブラックアウトで最初のコーナーに向かって飛び出していく。
タイヤの規格が変わったことはこれまで何度も触れてきたが、これはレーススタートにおいても絶大な変化をもたらした。横のみならず縦グリップも大幅にアップし、昨年までの感覚でのクラッチミートではパワーが喰われてしまう。したがってある程度スロットルをしっかりと開けないとスタンディングスタートは決まらない。各車まずまずの蹴り出しでトラブルなくスタートする中、浅井が痛恨のシフトミス。2速、3速と立て続けにギアを蹴られ、スピードを乗せられないまま2位のポジションからずるずると後退していく。浅井の順位変動はあったものの、他車はスタート直後に特に混乱もなく、各マシンきれいな隊列を成して2、3、4コーナーへとなだれ込んでいった。
佐藤はミスなくスタートし、ホイールスピンを避けるべく早めに2速へ叩き込むと同時にイン側をけん制。トップのまま1コーナーへ飛び込む。タイヤに熱が入っていないため走行ラインはぶれるが、可能な限り車速をのせていく。予選を含め依然としてミッションに不安を抱えながらの走行を強いられていたが、2周目の5コーナー立ち上がりでは4速に蹴られ、ホームストレートでは5速にシフトアップするところでほぼ毎回のようにギア鳴りするなど、やはり普段通りとはいかない様相である。それでも致命的な失速とならないよう慎重な操作を心掛け、1周1周を大切にラップしていく。周回を重ねれば重ねるほどにその走行ラインは鋭さを増していった。

同時に隙もみせず、このミスしない走りそのものが佐藤の最大の強みといえよう。結果、ブッチギリというわけにはいかなかったが、後方との差をみながらレースをコントロールし、ただの一度もトップの座を明け渡すことなくチェッカーを受けた。トラブルを抱えながらも、まさに完璧なレース運びである。
一方、スタートで後方に沈んだ浅井。1コーナー進入までの間に6番手まで後退し、その後も各コーナーで後続車にラインを奪われ、4コーナーを立ち上がるまでに9番手まで後退してしまう。しかし、予選2位の底力はここから遺憾なく発揮されることになる。まずオープニングラップの最終コーナーを丁寧に立ち上がり、2周目のホームストレートで#61 平中選手のスリップストリームについたのちパス。1コーナー進入で姿勢を乱しながらもそのまま#55後藤選手の追撃に入る。コーナー1つクリアするたびに前との差を確実に縮めていく浅井。同周回の7コーナー進入までにはテールトゥノーズの状態にまで詰めていた。前周同様うまく最終コーナーをまとめた浅井は再び前走車のスリップを狙う格好の位置にマシンをつける。後藤選手の前にはチームメイトであるRINA ITOがいたが、ホームストレート上で後藤選手の前に出た浅井は3周目の1コーナーのブレーキングでRINA ITOもパス。一気に2台の前に出た。そこからは2秒ほど前を行く工藤と#17 坂本選手に追いすがる。ストレートもインフィールドもバランスよく速い310号機。浅井もそれに呼応する形で十勝スピードウェイを駆けていく。

そのような中、4番手争いを展開していた工藤と坂本選手のバトルが勃発。昨シーズンからレギュラー参戦を開始し、見る間に速さを身に着けてきた工藤。2022年シーズン最終戦ではトップ集団に肉薄するタイムをマークするほどの成長ぶりを見せており、VITAベテランドライバーの坂本選手をも唸らせるほどの走りを見せた。しかしながら表彰台の常連となっている坂本選手は手ごわく、4周目の4~5コーナーで先行を許してしまう。ただ、クリーンなバトルの末に工藤が得たものは大きかったはずである。

2台以上が絡んでの走行はラインの自由度が少なくなり、走行ペースは落ちてしまう。そんな戦況を後方から見ていた浅井はチャンスとばかりに追撃の手を緩めなかった。坂本選手に前に出られた工藤を同周回のうちに捉え、ピタリと後ろにつけてプレッシャーを与える。チームメイト同士とはいえ、お互い手は抜かない。工藤・浅井で強みが異なり、右コーナーでグッと差を詰める浅井に対し、左コーナーでは工藤が離す。但し、コースの大半を右コーナーが占める十勝スピードウェイだけあり、後方の浅井が優勢。5周目のホームストレートで工藤のスリップに入った浅井は6周目の1コーナーのブレーキングで前へ。5位争いを制す。浅井はその後も1分31秒台前半~中盤のペースを維持するが、追撃もここまで。最終的には5位フィニッシュとなった。それでも猛追する中で意地を見せ、4周目にレース中でのファステストをマークした。工藤はそこからポジションを守り、6位でチェッカー。
スタンディングスタートを成功させ、中盤で戦っていたRINA ITOは#55 後藤選手とのバトルを長きにわたって展開。幾度となく前に出られそうになりながらも鉄のようなメンタルがそれを許さず、工藤に続く7位フィニッシュとなった。富士スピードウェイで開催されているKYOJO CUPで鍛え上げられた精神力は並大抵のものではないことがわかる。

織戸は低めの回転に合わせ、無難にクラッチミート。スタート直後は#777 関選手の後ろにつけていたが、1コーナー進入にて大外から仕掛け、ブレーキングで前に出る。するとそのまま2コーナーへ猛進し、#48 山口選手の背後につけた。しかしその後は後方の関選手とのバトルに費やし、前方との距離は拡がっていく。2周目に入ったところで1~2コーナーで痛恨のアンダーステアを出し、何とか抑えていたものの4コーナー立ち上がりから5コーナーにかけて関選手に先行を許した。その後はミスなく自身の走りに徹し、チャンスをうかがい続けた織戸。すると11番手を走行していた#48 山口選手がスピン。これに乗じ、ポジションをひとつ上げる。その後は山口選手の猛烈なプッシュがあったものの、守り切って12番手のままゴール。最後の最後は0.149秒差という超僅差でポジションを勝ち取った。

昨年第1戦以来の勝利となった佐藤の活躍に沸いたKoshido Racingのピット。しかし、浅井や工藤をはじめ、各ドライバーが上位に食い込めるチャンスがあっただけに悔しさも残る今回のレースであった。次戦は今回の結果を挽回すべく、より修練を重ねての再挑戦となることは間違いない。ただ、フレームに難を抱えながらも3位表彰台を獲得したディフェンディングチャンピオンである#778の大島選手やエンジン不調に悩まされていた#61の平中選手、次戦より新車投入予定の#777 関選手など、周りもさらに手強くなることは明白である。Koshido Racingはより高みを目指して走り続けるのみだ。