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2021.05.31 Fuji Champion Race Series 2020 FCR VITA & KYOJO CUP Rd.4 RACE REPORT

Fuji Champion Race  VITA-01 Rd.4/KYOJO CUP Rd.4

開催日時:2021年1月30日(土)

開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)

ドライバー(FCR-VITA):佐藤 元春、中川 隆吾

(KYOJO CUP):高橋 純子、RINA ITO

マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機(佐藤 元春・高橋 純子)

恒志堂レーシングVITA712号機(中川 隆吾・RINA ITO)

参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP

天候(FCR-VITA):予選/晴れ、決勝/晴れ

(KYOJO CUP):予選/晴れ、決勝/晴れ

路面(FCR-VITA)予選/ドライ、決勝/ドライ

(KYOJO CUP):予選/ドライ、決勝/ドライ

佐藤 元春(FCR-VITA) 予選:14/24位 決勝:7/24位

中川 隆吾(FCR-VITA) 予選:12/24位 決勝:19/24位

高橋 純子(KYOJO CUP) 予選:10/12位 決勝:11/12位

RINA ITO(KYOJO CUP) 予選:6/12位 決勝:6/12位

 

全世界がCOVID-19による脅威にさらされ、各国でレース開催が危ぶまれた2020年シーズン。
トップカテゴリーであるFormula1ですら何戦かの中止がアナウンスされる中、無観客レースを
前提にFuji Champion Race(以下FCR)は開催される運びとなった。

参戦クラスは例年通りFCR-VITAとKYOJO CUP。Koshido Racingは今シーズンから全戦2台体制
でのエントリーとなった。ドライバーラインナップは、FCR-VITAにおいては610号機にチーム
オーナー兼ドライバーの佐藤、712号機に中川、KYOJO CUPでは610号機に高橋、712号機に
RINA ITOという布陣。

また、ドライビングアドバイザーとして、Koshido Racingの母体である有限会社恒志堂がスポン
サードしている平中克幸選手と大湯都史樹選手も駆けつけ、それぞれのドライバーの技術支援に
あたった。

FCR-VITA 610号機  佐藤 元春

FCR-VITA 712号機  中川 隆吾

KYOJO CUP 610号機  高橋 純子

KYOJO CUP 712号機  RINA ITO

 

FCR-VITA公式予選> 

 

これまでFCR-VITAとKYOJO CUPの最終戦はシーズン年内に行われていたが、今期は年明けに
ずれ込み、2021年1月の開催となった。そのため標高545~580メートルに位置する富士スピード
ウェイの外気温は常に一桁。北海道から遠征しているKoshido Racingの面々においても、長時間
外の風に当たっていれば身に染みる寒さである。

そんな寒空の中、8:25に予選がスタートする。

晴れ渡る空と富士の稜線をバックにセクター3を駆け抜ける610号機

この時の気温は4℃。前述の通り、これまでのFCRにはないほど低い気温であることから、各車
タイヤの熱入れを入念に行いつつ、アタックラップに備える。

1周のアウトラップを終え、1コーナーに飛び込んでいく610号機の佐藤。しかし、フロント
タイヤはブレーキングでいとも簡単にロックし、VITAは白煙を上げながらまっすぐに滑走を
始める。空は快晴であり、路面温度も日差しによってじわじわと上昇しているようであったが、
タイヤにはまだまだ熱が入っていないようだ。幸い、フラットスポットが形成された様子は
なく、前車との間隔に余裕があったためすぐに姿勢を立て直し、再びタイヤのコンディション
づくりに集中する。その後も何度か1コーナーへのブレーキングでタイヤロックが見られたが、
ターンインまでに挙動を回復させ、大事には至らず。如何に毎周、攻めた走りでタイムを削り
取ることに挑み続けているかということを、このブレーキングが如実に物語っている。
4輪すべての挙動が安定し始め、ターンインのステアリングの切り込みも鋭くなっていく。
オーバーステアを上手く封じられる絶妙なスロットル開度を保ち、その後はマシンの姿勢を
乱すことなく周回。2分2秒台…1秒台とラップを重ねるごとに徐々にタイムを短縮し、6周目に
予選ベストとなる2分0秒939をマークしたところで14番手につけた。日本最長のストレートを
持つ富士スピードウェイにおいて、今回は不運にもスリップストリームを使える機会が与えら
れないまま予選時間終了が迫る。この時点で610号機の周りにはたくさんのライバル車がひし
めき合い、その後はクリアラップの獲得すら難しい状況。アウトラップ及びインラップを除い
て8周回したことになるが、実質的に6周回でアタックラップは終了していた。

一方の712号機中川。こちらは富士スピードウェイの走行が今回で2度目と、まだコースその
ものへの経験が十分でなかったこともあり、佐藤以上に慎重なペースでVITAを走らせる。
アウトラップから2周目、3周目と佐藤の後ろに付けつつマシンの動きを探り、同様に2分2秒台
から1秒台へとコンスタントにタイムを削っていく。

初めて富士スピードウェイを走行した際には「どこを走ってよいのかわからない」と悩みを
吐露していたが、2度目にして早くも走行ラインは確たるものへと変貌していた。100Rでは
美しい弧を描き、ダンロップでは力強く立ち上がり、セクター3を無駄なくまとめる。この時の
中川には既にそのような走りが身についていた。

最終的な結果は2分0秒857と、エースの佐藤をも上回るタイムを刻み、9周回を経て12番手へと
付けた。

 

FCR-VITA決勝>

スタート時刻は11:00。気温は予選時から1℃だけ上昇し、5℃。天候・路面コンディションとも
に大きな変わりはない。

610号機の佐藤は路面温度の低さを考慮し、3500rpmにてクラッチミート。順当にスタートを
決め、1コーナー進入までに#47 フジタ薬局アポロ電工MT VITAの徳升選手をパス。しかし、
1コーナーへのアプローチ中に7番手スタートのペトロナスBeFlat VITAの並木選手がタイヤ
ロックにてコース外に飛び出してしまい、これによって生じた混乱に佐藤も巻き込まれ、2台
に一気に抜かれてしまう。

スタート直後の1コーナー。早くも波乱含みの様相

 

気を取り直してコカ・コーラコーナーに向けて加速するが、そこでまた3台が絡むスピンと
接触があり、減速とライン変更を強いられることとなる。

続くコカ・コーラコーナーでも3台が絡むアクシデント

 

結果、上手くすり抜けて100Rへと突き進むが、この2つの混乱によって前との差を大きく
空けられてしまった佐藤。ここから巻き返しを図るべく、周囲の状況を注視しながら1台ずつ
攻略を開始した。

712号機の中川は、レッドシグナル消灯に素早い反応を見せ、絶妙なスタートを決める。
1コーナーでの混乱の最中に幅寄せを受けるなど、少なからず影響も受けたが、順位を落とすこと
なくコカ・コーラコーナーへ。すぐ前方を走行していた#5 ワコーズEDニルズVITAのタナカ
選手が進入のブレーキング中に挙動を乱したところをすかさず捕らえ、この時点で8位に順位を
上げる。このままトップ集団に食らいついていくか…そう思ったのも束の間、続くアドバン
コーナーで#37 KeePer VITAの翁長選手と#55 RaiseUP VITA-01の小西選手が接触。スピンを
喫し、コース中央で止まっていた翁長選手を避けるべく、中川は全力で回避行動に移る。

咄嗟の判断でアウト側へステアリングを切る中川

 

コースのアウト側へスピンしながら緊急回避し、互いのテールをかすめる程度に留めたことは
まさに神業であった。ただ、これにより一気にペースを乱した中川は、続くダンロップコーナー
で並走していた#47の徳升選手と接触、ダメージは残らなかったものの、混み合うコース内で
なかなか前に出られないといった状況から脱せずにいた。セクター3で前を走る2台のライバル車
に食らいついていった中川は、メインストレートでスリップストリームに入る。1台をコント
ロールライン付近でパスし、もう1台を1コーナーのブレーキングで刺そうとイン側にラインを
変えた際、さらに前方にいた#55の小西選手に追突してしまう。小西選手は前の周回で翁長選手と
接触した際に足回りにダメージを負い、スロー走行していたのだった。直前まで前走車の
スリップストリーム圏内にいた中川は、小西選手がスロー走行していたことに気づくことができ
なかった。その結果、スロットル全開で1コーナーを立ち上がった際に55号車のテールを押す格好
となってしまった。中川はこれが原因でレース後にコントロールタワーに呼び出されることと
なったが、状況を察したオフィシャルがペナルティなしの裁定を下し、順位変動はなかった。
今回のFCR-VITAはオープニングラップからまさに波乱の連続である。

 

最初の1コーナーでの混乱にこそ巻き込まれた佐藤であったが、その後はスピン車両の間隙を
ついて徐々に順位を上げていった。荒れるレースを見据え、自分の走行ラインを確保すると
ともに、確実にチェッカーを受けるべくVITAを走らせる。アドバンコーナーにおいては、チーム
メイトの中川が緊急回避にてコースアウトする中、着実に安全なラインをトレースし、ここでの
混乱もクリア。

 

その後はしばらく#522 佐藤工業IDI Racingの福岡選手の後を追う。つかず離れずの展開に、
佐藤も福岡選手もペースが上がっていく。1コーナー進入で大きくイン側にラインを変え、揺さ
ぶりをかけるも動じない福岡選手。鉄壁の走りで佐藤を前に行かせない。コース上での駆け引き
が続く中、福岡選手の前を走っていた#11 D.D.R vita01の瀧井選手との差も次第に詰まり、三つ巴
の戦いへと変化。4周目の最終コーナー立ち上がりをきれいにまとめた福岡選手と佐藤は、2台縦
並びで瀧井選手のスリップストリームへ。1コーナーまでに揃って瀧井選手をオーバーテイクし、
ここでまたひとつ順位を上げた。

#522 福岡選手とのバトルが続く

 

その後は再び福岡選手とのバトルが数周にわたって繰り広げられたが、タイヤを温存していた
ためか、終盤福岡選手のペースが上がり、軍配。佐藤は7位でチェッカーを受けた。

 

不運に見舞われ、大きく順位を落としてしまった中川であったが、すぐに気持ちを切り替え、
前走車を追いかける。元々高速域からのフルブレーキングを得意としているが、現在はそれに
加えてテクニカルセクションであるセクター3においても速さをみせており、ここでのライバル
車への差の詰め方が著しい。結果、メインストレートではしっかりスリップストリームに入る
ことができ、1コーナーまでに難なく前に出られる。2周にわたって#24 ENEOS☆CLA☆PMUの
見崎選手とのバトルを演じてきたが、5周目の1コーナー進入ブレーキングにてクリーンにパス。
続く6周目には前を行く#61 BBR VITA-01の山崎選手の一瞬の隙を突き、コカ・コーラコーナー
でインをかすめ、11番手までポジション回復を果たした。

#24 見崎選手との1コーナーブレーキングバトルを制す中川

 

ところが9周目のGR Supraコーナー。一瞬油断からステアリングとブレーキング操作を誤り、
単独スピン。これにより再び順位を落とし、19番手でチェッカーを受けた。

このレースで最も悔やまれるスピン

 

大波乱のFCR-VITA最終戦であったが、Koshido Racingの2名のドライバーは無事に完走する
ことができた。佐藤に至っては、その冷静なレース運びから予選順位を大きく上回る成績を
残し、今後に期待を寄せる走りを披露した。中川もトップ集団に十分加われるだけのラップ
タイムを刻んでおり、経験の少なさを感じさせない見事な走りだったといえよう。

 

 

610号機 佐藤元春 車載
https://www.youtube.com/watch?v=y1xazE9D5DQ

 

712号機 中川隆吾 車載
https://www.youtube.com/watch?v=X2ahwtHTLuM

 

 

 

 

 

KYOJO CUP公式予選>

FCR-VITAが幕を閉じ、間髪入れず女同士の熱いバトルが始まる。短いインターバルであった
が、メカニックたちは全力でマシンのコンディションを整え、出撃に備える。

 

KYOJO CUPは午後からのレースプログラムとなっているが、気温は依然として低く、午前中
のレース時とコンディションはほとんど変わらない。レース前々日の練習走行時には北海道を
彷彿とさせるような降雪がみられ、KYOJO CUPが始まる今まさにこの時においても、コース脇
に雪が残っていたほどである。

 

610号機の高橋は本レースでKYOJO CUPへの参戦から一旦離れることになっていた。
悔いを残すまいと、気合十分でコースイン。とはいえど、慎重なレース運びを信条としている
高橋は決して無理をせず、確実にタイヤのコンディションを作っていく。アウトラップを終え、
2分5秒台での周回から徐々に詰めていく。特にタイヤに大きな入力がかかるセクター1において、
最終的にはそこだけで1秒以上も短縮していた。時折シフトミスをする場面もあったが、大きな
ミスもなく予選時間を走り切る。スピンすることもなく、一見攻めていないような走りにも見受
けられるが、セクター2や3においても着実にタイムを詰めており、自己ベストを更新する
2分3秒220というタイムで結果は12台中10番手。決勝では変わらずミスなく走り切り、上位を
狙うことが期待された。

712号機のRINA ITOはピットアウト前、マシンをシェアする中川と新品タイヤでの走り方につい
て入念に確認し合っていた。

712号機の動きについて互いの経験からベストなドライビングを探るRINA ITOと中川

 

アウトラップではマシンを小刻みに左右に振り、動きを確かめつつ、深いブレーキングでタイヤ
に熱を入れていく。路面の状態を探り、アタックラップ2周目からは一気にVITAを攻め立てた。
元々全日本ラリーへの参戦も多数経験してきたRINA ITOは、悪路走破においても高い能力を
発揮する。現に、2020年のKYOJO CUP初戦では大雨の中2位表彰台を獲得。多少滑りやすい路面
でもものともしない走りを披露する。
肝心なタイムの方も、序盤から2分1秒台を連発。しかし、ドライブするVITAは驚くほどに姿勢が
安定しており、走りに余裕さえ感じられた。Koshido Racingからエントリーする以前より他の
エントラントにて参戦していたこともあり、富士スピードウェイをVITA-01で走行することは
かなり慣れている彼女ならではといえよう。さらにアタックをかけたRINA ITOは、タイヤの美味
しいところを使い終わっているであろうアタックラップ7周目に2分0秒918をマーク。6番手で予選
を終えた。

 

 

KYOJO CUP決勝>

時計は15時をまわり、日も少しずつ傾き始め、西日が眩しい時間帯となった富士スピードウェイ。
予選後もドライバー・サポート人員の皆に余念がなく、全力で決勝レースの準備に勤しむ。
ドライビングアドバイザーの大湯都史樹選手も、予選での走行データを解析し、高橋、RINA ITO
両ドライバーにアドバイスを送る。

AIMによるロガー解析から、わかりやすくアドバイスする大湯選手

 

そして迎えた決勝時刻。スターティンググリッドでは恒例のドライバー激励。


北海道代表として、佐藤とともに610号機で富士を走り続けてきた高橋純子選手

 

速さと走りの力強さを兼ね備えた712号機 RINA ITO選手

 

フォーメーションラップを終え、改めてそれぞれのスターティンググリッドにつく面々。12人の
競女たちによる戦いの火蓋が切られた。
610号機の高橋は、ややホイールスピン気味のスタートで11番手スタートの#7 ORCワコーズ
AFC・VITAに先行を許す形となる。その後のコカ・コーラコーナーでは、進入のブレーキング時
にややシフトロック気味となり、痛恨のスピン。
エンジンの再始動に時間を要してしまったこともあり、前との差はかなり開いてしまう。
しかし、この体たらくで終わるわけにはいかない。高橋は自分との戦いに切り替え、自己が持つ
タイムの更新と向き合い続ける。
決して諦めず、同じミスはしない。何かを吹っ切ったようにアグレッシヴなドライビングを見せる。
スロットル全開率は明らかにこれまでよりも上がっていた。

痛恨のスピン。この後再スタートまで時間を要してしまう

 

それでもドライビングそのものはラフなものではなく、タイヤの感触をしっかりと確かめながら
マシンを前に進める繊細さを失っていない。踏めるところは踏み抜き、抑えるところは抑える。
メリハリのある操作で、タイムは狙い通りに更新されていった。

ひとつでも高みに上がるべく、攻め続ける高橋

 

どのセクターも均等に詰めていき、8周目には自己ベストとなる2分2秒903をマーク。順位は
最後尾となったが、ここまで走り続けてきた成果は自己ベストの更新という形で証明した。

一方の712号機RINA ITOは、タイヤが冷えていることを考慮し、スタートは低めの回転で
クラッチミート。

これが功を奏し、1コーナー進入までに#522 佐藤工業 IDI Racingの岩岡選手の前に出る。大荒れ
に荒れたFCR-VITAの決勝レースとは異なり、 オープニングラップは各車トラブルなく周回。
この時点で5位のRINA ITOは、4位の#86 Dr. DRY VITAの猪爪選手を射程に捉え、追いすがる。
1位から4位まではほとんど差がなく、数珠繋ぎ状態。それに追随するべくVITAに鞭を入れるが、
猪爪選手との差は徐々に開き始める。
しかしある一定のところからは差が開かない。トップ集団の4台がもつれていることでラップタイ
ムがそれほど伸びていなかったためである。これを見たRINA ITOは俄然猛追。予選時と同等の
ペースで走り続けた。しかし、前走者がいないためスリップストリームが使えず、その差はなか
なか埋まらない。逆に後方から追い上げてきた岩岡選手が徐々に迫り、6周目のメインストレート
でスリップストリームに入られてしまう。7周目の1コーナー進入で真横に並びかけられるが、
ここはイン側でポジションを死守。ブレーキングでは一歩も引かない。立ち上がりからラインを
クロスし、コカ・コーラコーナーでアウトから再度仕掛けてくるが、ここでも辛うじて抑え
切った。100Rからアドバンコーナーでは速度を保ち、300Rからセクター3にかけても上手く
処理し、再びメインストレートへ。依然として後方にピタリと貼りつかれている状態であったが、
岩岡選手自身のミスもあり、8周目は抑え切った。

1コーナーで並びかけられながらも、ブレーキングで順位を死守するRINA ITO

 

9周目、急に712号機のリアタイヤがタレ始める。立ち上がり加速が一気に鈍り、最終パナソニッ
クコーナーで一瞬もたつく。その隙に一気に間合いを詰めてきた岩岡選手はスリップストリーム
を利用し、メインストレートで前へ。このまま行かせてなるものかと、RINA ITOは1コーナーの
ブレーキング競争でアウト側からしっかり並びかける。クロスラインで立ち上がり、コカ・コーラ
コーナーにむかって再度真横に並ぶが、アウト側にいたため、踏ん張り切れず岩岡選手に先行を
許した。しかし、続く100Rではテールトゥノーズでプレッシャーをかけ続け、ダンロップ
コーナーにおいても522号車の懐に飛び込むブレーキングを見せる。

1コーナーをクロスラインで立ち上がり、前に出るチャンスをうかがう

コカ・コーラコーナーにてイン側から再度仕掛けるRINA ITO

100Rではピタリと522号車をマークし、プレッシャーをかける

 

ただ、ここからは下ってきた分を一気に駆け上がる登り区間のセクター3。リアタイヤを消耗した
712号機には苦しい展開が待っていた。最終コーナーでミスなく立ち上がっても、次の1コーナー
でブレーキング競争に持ち込めるまでのストレートスピードは稼げない。岩岡選手のミスを誘う
べく、厳しい条件下で必死にプッシュを続けるが、一歩及ばず0.082秒差で6位でフィニッシュとなった。

惜しいという言葉だけでは括れない僅差の6位

高橋はベストラップでは8番手のタイムをマークし、RINA ITOは最後の最後まで手に汗握る展開
の白熱したレースを魅せてくれた。

今回のKYOJO CUPにて一旦参戦を休止する高橋純子選手

610号機 高橋純子 車載
https://www.youtube.com/watch?v=wiW8sG-4fT4

712号機 RINA ITO 車載
https://www.youtube.com/watch?v=c8jtTXMIogY&t=2s

 

~レース後、チームオーナーコメント~

予選はうまく前車のスリップを使うことができず、思うようなアタックができなかったため、
結果的に24台中14番手という結果で終わりました。1秒以内に10台以上がひしめき合っている
状況だったので、チャンスは必ずあると考え、決勝は気持ちを切り替えてひとつでも順位を
上げようという意識で臨みました。
決勝はスタート時のクラッチミートもミスなく、1コーナーで前走車集団が団子状態となって
いるところをアウトからかぶせていこうとしたところ、インから2台に先行されてしまいま
した。1コーナーの攻め方としては課題が残る形となりましたが、寧ろそこからは冷静になり、
いつもより集中力が研ぎ澄まされ、周りがよく見えるようになりました。コカ・コーラ、100R、
アドバンコーナーと、コースアウトやスピン、クラッシュする車両を見極め、自分は安全・
確実に順位をジャンプアップさせることができました。
おそらくオープニングラップで10位以内には上がっていたと思います。レースラップも前走車を
見る限り自分のペースの方が早かったため、無理にオーバーテイクを仕掛けるのではなく、
メインストレートでスリップストリームを使って確実に前に出ようという作戦をとりました。
しかし、1コーナーでイエローフラッグが出てしまったことでそれが適わなかったり、タイミ
ングよくオーバーテイクポイントが使えなかったことが残念であったとともに、もっと早くに
仕掛けておくべきだったと痛感しました。
ただ、イエローフラッグはいずれ解除されるわけで、それまでにしっかりと前走車の動きを
見て、どのタイミングで仕掛けようかと考えていました。やはりセクター3でチャンスが到来し、
前走車がオーバーステアを出した瞬間に大きく距離を縮めることができたので、スリップスト
リームを使って前に出ようと考えていたところ、その作戦が功を奏し、次周の1コーナーでオー
バーテイク、7番手までポジションアップすることができました。
6番手を走行していた522号車の福岡選手が、これまで温存していたのか最後の2~3周でペース
を上げたため、ついていくのがやっとの状況でした。ただ、いつ相手がミスするかもわからない
ため、最後まで虎視眈々と狙っていましたが、最終的にはとどかず7位でチェッカーを受けました。
レースラップや全体的なレース運びを通し、トップ集団とバトルできるようなレベルになってきた
ので、次戦では表彰台目指して頑張っていきたいと思います。

Koshido Racing 佐藤 元春

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020.07.27 Ferrari Clienti “4hours Endurance” RACE REPORT

 

開催日時:2019年7月16日(火)

開催地:袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ(千葉県)

ドライバー:佐藤 元春、 竹谷 和浩、 船越谷 和彦

マシン:#55 VITA-01

天候:予選/雨   決勝/雨

路面:予選/ウエット、決勝/ウエット

予選(佐藤 元春):1/8位

決勝:4/8位

 

モータースポーツ事業全般の企画やプロモ―ションを手掛ける株式会社ファーストレスポンダーと
フェラーリジャパンが共催する本レース。ドライバーはフェラーリチャレンジレースへの参戦者
やF1/XXオーナー等が対象となる。マシンはウエストレーシングカーズ製のVITA-01のワンメイク
とされ、イコールコンディションでのバトルを通してフェラーリオーナー間交流が図られる。

フェラーリのモータースポーツ部門を率いる「コルセ・クリエンティ」のトレーラー

 

Koshido Racingからはチームオーナー佐藤、北海道クラブマンカップ及び富士チャンピオンレース
に佐藤とともに参戦している竹谷、過去に北海道クラブマンカップレースでSAURUS Jrをドライブ
していた船越谷の3名体制で挑む。佐藤・竹谷はもとより、先日VITA-01初走行で好タイムをマーク
した船越谷という今回の布陣。優勝への期待が高まる中、千葉へと向かった。

 

予選9:3010:30

7月15日より現地入りしていた面々であったが、その日の走行時間は一切なく、当日の朝、シート
合わせから始まる。

天候は雨で路面はウエット。朝一、空を見渡した様子では、一日中雨天であることが容易に分かる
ほど厚い雲と雨脚にさらされていた。

長めにとられた予選時間は、VITA-01に不慣れな各ドライバーの練習時間も含むものであり、60分
間が設けられている。まずは袖ヶ浦の走行経験がある佐藤がコースイン。とは言ってもこれだけの
豪雨に見舞われると、もはやドライ路面とは走行ラインを大きく異にするため、これまでの経験が
頼りとなる。

1周目、セーフティーカー先導のもとでゆっくりと周回したが、コースのあちらこちらに大きな
水溜りができており、VITA-01のカウルの下からは多量の水しぶきが上がっている状況。セーフ
ティーカーはピットに入る様子はなく、そのまま2周目へ。セーフティーカーとの間合いを空け、
やや速度をのせてみるが、今にもハイドロプレーニングを起こすのではないかというコンディショ
ンである。

結局3周目もセーフティーカーはそのまま先導を続け、4周目にようやくレーシングスピードでの
走行が可能となった。水溜りの少ない箇所を選び、グリップを感じながらペースを上げていく
佐藤。しかし、油断するとあっという間に水の膜に四輪とも持っていかれ、コースアウトして
しまう。フロントタイヤで跳ねた水がカウルを通してドライバーに降りかかるなどいう場面も
あり、コンディションは過酷さを増していた。

奥に行くほど回り込んでいる5→6→7コーナーでは、奥目にクリッピングポイントをとるべく進入
でアウト側にマシンを振るが、常にオーバーステアとの闘いを強いられる。少しでもカウンター
が遅れるとたちまちスピンモードへ移行するが、同時にブレーキングも開始するため、ハイリスク
である。それでも徐々にマシンを手懐け、ラップタイムを削っていく佐藤。ドライバー交代ぎり
ぎりに1分32秒515をマークし、竹谷にステアリングを託した。
十勝のVITA-01レースではすっかり上位陣の顔ぶれとなった竹谷は慣れないコースということも
あり、インラップを丁寧かつ慎重に走行。しかし、マシンの特性とコースの特徴を1周で掴んだ
のか、2周目にはアタックを開始。その周を1分36秒台で周回し、3周目には1分35秒台と、確実に
タイムを短縮していく。

ヘビーウエットコンディションへの適応力も高く、いざ4周目といったところで他車のスピン・
コースアウトにより赤旗中断。余儀なくピットに戻った。車両が回収され、再びコースに繰り出す
竹谷。赤旗解除後ドライバーチェンジの時間が迫る中、1周のみ与えられたアタックラップにて
1分34秒238を記録し、走行を終えた。

十勝スピードウェイでの初VITA-01練習走行ではドライ路面でしか走行できていない船越谷。
マシンに乗り込み、コースインしようとしたちょうどこの時、雨脚が強くなった。

ここはやはり慎重にならざるを得ないであろう。数周にわたってマシンとコース、そしてウエット
路面の感触を確かめるべく、非常に丁寧にマシンを進めていく。しかし、過去にSAURUS Jrで
戦っていた経歴をもつだけにマシンへの順応性は非常に高く、3周目にはペースも上がり、オー
バーステアが出るくらいまで攻め込む姿が見られた。挙動にも慣れ、ペースを上げようかといっ
た矢先、再び赤旗中断となってしまい、ピットの中へ。解除されたとき、既に予選終了時刻を
迎えていたが、5分間の延長措置が取られた。コースに戻ってすぐ、ペースを上げようと奮闘する
船越谷であったが、他車が一斉にピットアウトしていったこともあり、コース上は混雑。周りに
合わせたペースを強いられ、タイムを伸ばすことは叶わなかった。

結果、佐藤が自身のスティント終了間際に記録した1分32秒515が全体のトップタイムとして残り、
見事ポールポジションを獲得した。

予選結果(ラップタイム)

佐藤 元春:1’32.515
竹谷 和浩:1’34.238
船越谷 和彦:1’36.924

 

決勝(1100~15:04

予選を終え、決勝スタートまでの時間は30分弱ほど。その間、予選結果を基にチームをマネジ
メントする中川により綿密な作戦が練られ、各員に伝達がなされる。彼もまたレース参戦経験は
豊富で、北海道クラブマンカップにおいては表彰台を獲得するなど、VITAレースに関しての見識
が深い。

予選の状況を基に、決勝での走行を組み立てる中川

 

また、佐藤よりVITAでは初レースとなる船越谷にアドバイスがなされる。

スターティングドライバーは佐藤が担当することとなった。10時50分コースイン。ホームストレー
トの1番グリッドにマシンを進める。言わずもがな天候は土砂降りのままである。

11時2分、フォーメーションラップがスタートし、各車コース状況を確認しながらゆっくりとVITA
を走らせる。雨量が多く、1周終えてもセーフティーカーはピットに戻らず先導のまま2周目へと
突入。

レーシングスピードでの走行を拒むかのように、袖ヶ浦の雨は一向に弱まらない。あちらこちらに
広がる水溜りがつながって川を形成し、ミッドシップのVITAにハイリスクなコース状況をつくり
出していた。

結局セーフティーカー先導が終わったのは4周後。その頃雨脚も若干弱まり、各車一斉に加速して
いく。佐藤は他車の追随を許さないと言わんばかりに1分32秒台のペースで後方とのマージンを
拡げていった。しかし、そんな予選さながらのレースラップも長くは続けられなかった。6周回
したところで再び雨量が増加、セーフティーカーが導入かと思いきや、そのまま赤旗中断となって
しまった。

その後リスタート予定は12時ちょうどとアナウンスされたが、コースコンディションの見極めから
正式にスタ―トが切られたのは12時30分。ドライバーは竹谷にチェンジしていた。佐藤が築いた
マージンはゼロになってしまったが、竹谷もまた悪天候にはめっぽう強いドライバーであり、善戦
が期待された。

リスタートもセーフティーカー先導となり、3周回したのち本スタートが切られた。意気揚々と
加速していく竹谷であったが、最初の1コーナーでのブレーキングポイントを見誤り、スピンを
喫してしまう。それに続く形で2位を走行していたマシンもスピン。

そのさらに後方を走っていたマシンには抜かれてしまったが、スピン後の的確なステアリング
ワークと対処により素早くレースに復帰したため、ポジションは2位をキープすることができた。
遅れを取り返すべく前を猛追する竹谷。しかし、5→6→7コーナーでトップを奪ったマシンがスピ
ン。これを慎重にかわし、再びトップへ浮上する。その後はマシンコントロールに集中し、再スピ
ンすることなく周回を重ねていったが、7周目に#77のチーム77にトップを奪われる。

チーム77は予選で佐藤のタイムのコンマ1秒落ちの僅差につけており、今回実質的なライバルチー
ムといえる。その中で3名いるドライバーのうち、都筑選手はポルシェカレラカップジャパンで
シリーズチャンピオンに輝いており、スーパーGTにもスポット参戦している経歴を持つレーシン
グドライバーである。その卓越したマシンコントロールは十分にKoshido Racingを脅かす存在で
あった。

先行を許した竹谷であったが、その後は離されまいと一定の間隔を保って追従する。

しかし、コースのいたるところでスピンが続出。12時44分、またもやセーフティーカー導入と
なる。

ここで給油を済ませ、船越谷にドライバーチェンジ。いよいよ船越谷のVITA初レースが始まった。
但しコースインした時はまだセーフティーカー先導中であるため、ゆっくりと隊列の後ろに加
わる。

 

アウトラップ後も3周にわたってスロー走行を強いられ、スロットルを全開にできたのは4周目
から。ところどころブレーキングでオーバーステアとなりながらもしっかりとコントロールし、
VITAを手中に収める船越谷。ラップタイムも1分35~36秒台を堅実にマークし、レースペースを
作り上げていく。ちょうど雨脚も若干弱まり、タイヤのグリップを感じ取りながら前を行く#77
との距離を詰める。危うく接触か、という位置まで肉薄するようなシビアな戦いが続いた。
なかなかにアグレッシブな走りで、確実にプレッシャーをかけ続ける船越谷。7周にも及んだ
テールトゥノーズのバトルを制し、ついにトップを奪還する。直後にピットインし、ポジション
を再び2位としたが、その走りは見事というに他ならないものであった。

次スティントはファーストドライバーに返り、佐藤が出撃。1スティント目の赤旗中断の鬱憤を
晴らすべく、ピットアウト直後から予選タイムのコンマ2秒落ちというハイペースで飛ばす。

その次の周には予選タイムを2秒以上超える1分30秒449という驚異的なタイムを叩き出し、1位を
猛追。やはりここまでのペースともなるとトップ返り咲きは時間の問題であった。2周後、最終
コーナー立ち上がりを上手くまとめた佐藤は一気に前走車との間合いを詰め、1コーナー進入まで
に難なくトップへ。その後も1分31秒台のタイムを安定して重ね、スティント後半には30秒台を
連発。こうなると次に狙うはレース中のファステストラップである。完璧な勝ちに拘り、プロ
ドライバーに真っ向勝負をかける佐藤は、慣れない袖ケ浦でしかも悪コンディションにもかかわ
らず、すべてのコーナーでVITAを攻め立てる。ロック寸前のシビアなブレーキング、路面状況を
見定め、4輪のグリップを最大限に活かし切るライン取り、パワーオーバーステアを出さない丁寧
な立ち上がりでのアクセルワークと、タイムを詰めるべく集中して走り続けた。しかし14周目の
1コーナー、一瞬の判断ミスがもたらしたブレーキロックによりコース外へオーバーラン。大きく
コースから飛び出したわけではないが、場所が悪くスタックしてしまう。

コース復帰からそのままピットに戻り、ドライバーは竹谷へとチェンジ。この時点でマージンは
30秒。再び差を拡げるべく奮闘する。しかしコースインしてすぐ1コーナーで予選3位の#74が
スタックしており、2分後またもセーフティーカー導入。解除されたのは約10分後。竹谷もまた、
佐藤に続くペースでラップを刻み、1分31~32秒台で周回する。ここで迫ってきたのは実質的な
ライバルともいえる#77。じわりじわりと差を詰め、何度も並びかけるが、竹谷も走行ラインを
巧みに変え、易々と前には行かせない。雨の中、見ている側にも緊張を強いるようなサイドバイ
サイドの戦いが続いた。一旦は前に出られるが、竹谷は行かせてなるものかと追いすがり、
一瞬の隙をついて1コーナーのブレーキング競争で再び抜き返す。

その後はギリギリのところでおさえていたが、2コーナーのクリッピングポイント付近で一瞬荷重
が抜け気味になっているところで#77と接触。2台ともにスピンを喫してしまう。#77はランオフ
エリアに吸い込まれていってしまったが、竹谷は幸いコース上にとどまった。これもまた、姿勢が
崩れた後の的確なステアリング操作がもたらした結果である。即時リカバリに転じた竹谷は動じる
ことなく戦線に復帰。ラストに1分31秒台を刻み、船越谷にステアリングを託した。

ラストスティントの船越谷であったが、ピットイン・ドライバーチェンジの間にポジションを5位
に下げてからのコースインとなった。走行を許された残り時間は実質5分ほど。少しでも順位を
挽回すべく、持てる力を発揮して攻め込んでいく。この日、自身のベストとなる1分34秒698を
マークし、4位のマシンへと肉薄。その走りが結実したか、ファイナルラップで前走車がスピン。
その横を冷静に通り抜け、4位にポジションアップし、ゴール。

終始このレースはセーフティーカーに左右される展開であり、その中での順位変動も目まぐるしく
起こった。ピットタイミングもあり、終盤に順位を落とす形となってしまったが、ペース的には
チームとして相当にハイレベルなものであったと言える。今後も耐久レースでの各ドライバーの
活躍が期待されるところである。

 

~レース後、チームオーナーコメント~

予選及び決勝と、非常に強い雨の中の走行となりましたが、悪天候の中でのトレーニングはこれ
までかなり積んできたため、自分としてはコンディションが悪い方が自信がありました。今回、
フェラーリチャレンジで常に表彰台に上がっているような速く、強いドライバーも複数人エント
リーしている中で、予選でポールポジションを獲得できたのは、これまでの雨の中のトレーニン
グの賜物であると思います。
途中でセーフティーカーが何度も導入されるようなレースだったため、それを見極めたピット
タイミングによって大きく順位が変わるレースでした。最も悔やまれるのは、自分がファステ
ストラップを刻みながらアタックしている途中、1コーナーでコースアウトしたこと。それに
よってスタックしたがために、それまで築いていたマージンをすべて失ってしまい、トップを
譲ることになってしまいました。やはりあのようなコンディションのレースこそ周りのクルマの
状況を見て、自分の持てる100%以内の力でドライビングすべきだったと痛感しています。少な
からずあれはチームで勝利するというよりも自分がファステストラップを記録したいという単独
での行為に起因したものであり、今後はやはりレースに勝つということに重きをおいて臨みたい
と思います。普段、北海道クラブマンカップで共に戦っている竹谷選手と、VITA-01では初レー
スとなる船越谷選手と一緒に走ることができ、良い意味で結束力が固まりました。この3名とは
これからもレースを続けていきたいと思います。

Koshido Racing 佐藤 元春

2019.09.26 2019 Blancpain GT World Challenge Asia Fuji Speedway RACE REPORT

Blancpain GT World Challenge Asia Rd.3

開催日時(RACE1):2019年7月6日(土)

開催日時(RACE2):2019年7月7日(日)

開催地:富士スピードウェイ(静岡)

参戦チーム:Kizashi Koshido Saccess Racing

ドライバー:近藤 保 ・ 佐藤 元春

マシン:Lamborghini Huracan GT3

参戦クラス:GT3 AM(アマチュア)

天候:レース1~予選/曇り、決勝/曇り   レース2~予選/曇り、決勝/曇り

路面:レース1~予選/ドライ、決勝/ドライ  レース2~予選/ドライ、決勝/ドライ

レース1~予選:クラス4位/5台(全体21位/31台)
決勝:クラス3位/5台(全体18位/31台)

レース2~予選:クラス5位/5台(全体24位/31台)
決勝:クラス5位/5台(全体19位/31台)

 

SROモータースポーツグループがオーガナイズする本レース。2014年から開催されており、スポ
ンサーはスイスの高級時計メーカーであるブランパンが務める。
富士スピードウェイでの開催は、スプリント各地域戦として「GTワールドチャレンジアジア」と
しての1戦として扱われ、日本では他に鈴鹿サーキットにて開催されている。現在、ヨーロッパや
アメリカにて開催されており、グローバルシリーズへの位置づけを確立しつつある。
これまで富士チャンピオンレースシリーズをはじめとし、Ferrari challenge Trofeo やCARGUY
スーパーカーレース、マクラーレントラックデイ等、富士スピードウェイにおいて数々のレース
や走行会に参加してきたKoshido Racingであったが、ブランパンGTシリーズは今回が初。これま
でとは違った雰囲気に、ドライバーもチームスタッフもより一層レースへの意気込みの高まりを
感じていた。
富士スピードウェイのピットはブランパン参戦車両のみで埋め尽くされており、その関心の高さ
をうかがわせる。

ランボルギーニ、フェラーリ、ポルシェ、メルセデス、アウディといった名立たるメーカーが
ピットを埋め尽くす。マクラーレンからも1台であるが、720S GT3で参戦していた。

今回のチームはKIZASHI×恒志堂。ドライバーは佐藤の良き友であり、良きライバルでもある
チームKIZASHIオーナーの近藤選手とタッグを組んでの参戦。

但し、ブランパンシリーズはエントラントをチームではなくマニュファクチャラーに移行されて
いるため、Saccess Racingからのエントリーとなっている。

 

<DAY1> 7月5日(金) フリープラクティス(45分間×2本)

ブランパンGTのフリー走行枠はこの日2本が設定されている。翌6日にも予選の直前に30分間の
走行枠が設けられているが、これをドライバー2名で走るとなるとひとりあたり僅か15分となって
しまうため、ここで可能な限りマシンに慣れ、コース攻略を組み立てておきたいところである。
そのための基本的な準備時間をとるために、ドライバーの佐藤と近藤は7月3日から現地入りして
いた。ここでコックピット内の説明やシート合わせを入念に行う。

7月4日には新ドライバーを対象とした筆記試験があり、佐藤・近藤とも受験必須である。日本での
開催とはいえ、国際規格のレースだけに問題はすべて英語表記。今年、海外レースを経験している
二人は難なく解読し、無事にパスした。内容的にはレースにおける事例やとるべき行動など、
難しい問題もあったようだ。
そして7月5日、ようやくフリー走行の日を迎える。この日の天候は曇り、路面コンディションは
ドライ。
12時40分、練習走行1本目が開始される。まずは佐藤がコースイン。走り慣れた富士スピード
ウェイとはいえ、初乗りのマシンということで慎重な走り出しである。2周目、まだタイヤに熱が
入っていないためか、オーバーステアが顔をのぞかせる。
4周目を過ぎたあたりから挙動が安定し始めるが、GR Supraコーナーではテールが落ち着かない
様子が続いた。まずは1分49秒807をマークし、そこから1周重ねるごとに約1秒ずつ短縮して
いく。一旦ピットへ戻り、状況をメカニックに伝える佐藤。コーナー進入においてアンダーステ
アが強く出現すること、またクリップから出口にかけてオーバーステアがみられ、特にセクター
3で顕著にみられることが伝えられた。時間に余裕があったため、ひとまずそのままコースに
戻り、周回を重ねる。最終的に1分46秒892をマークし、近藤にステアリングを譲った。

近藤もまた慎重にコースインし、少しずつウラカンGT3の挙動を感じ取りながらペースを上げて
いく。アタック1周目は初走行で様子見ながらではあるが、1分48秒221をマーク。そこから徐々に
詰めていこうというところであったが、2周目のアドバンコーナーを立ち上がろうとスロットルを
開けた瞬間、スピンで走行ラインを塞いでいるポルシェが近藤の眼前に現れる。近藤は緊急回の
ために自らもスピンを余儀なくされ、イン側のランオフに飛び出す。コース復帰しようとエンジン
を再始動し、リバースギアに入れるが、その場でスタックしてしまう。その後まもなくレッド
フラッグが出され、走行は終了となった。

走行後の感想としては、まずタイヤのグリップ感が薄く、印象としてはタイヤが硬いと感じられ
た。それもそのはず、鈴鹿サーキットでの10時間耐久レースで使用しているタイヤと同じもので
あるため、耐久性には優れていてもここ一発のアタックではグリップ感が薄くなるのは当然のこと
である。


スピン車両を発見し、自らもスピンさせて緊急回避する近藤

この時ちょうどTOYOTA GAZOO Racing 86/BRZレース参戦のため富士スピードウェイに訪れて
いた平中克幸選手がアドバイザーとしてピットに訪れ、サクセスレーシングの坂本氏へタイヤ変更
のアドバイスがなされた。
その後、佐藤と近藤にもドライビングについての指南がなされる。まず近藤へは走行中の目線が
近いこと、そしてブレーキングの初期踏力が足りないという点である。
佐藤へはブレーキを余しており、そのためにコーナリング姿勢に持ち込む際の荷重が足りていない
こと、基本はオーバー寄りのセッティングのはずなので、進入のブレーキングでうまく飛び込めて
いないために荷重不足に陥ってアンダーを誘発しているという分析であった。このあたりはやはり
初乗りのマシンでの走行であるが故に、マシン特性を掴みきれていないところが最もな原因と言え
るであろう。ドライバー双方に共通してブレーキングに課題が残り、その後の練習走行に向けて
自らの走行を振り返った。


平中克幸選手による両ドライバーの走りの分析がなされ、アドバイスがとぶ

練習走行1本目の反省点を踏まえ、いざ2本目へ…といきたいところであったが、ここでトラブルが
発生する。エンジンに火が入らないのである。懸命に原因を検索するメカニック。しかし、ウラ
カンのエンジンは一向に咆哮をあげることはなく、練習時間が刻一刻と迫る。
2本目の練習走行の時間となったが、この時点でもまだ走行ができるか不明瞭な状態であった。
調査を進めていった結果、ミッショントラブルと判明し、メカニックは必死に修復に励む。
しかし、この日与えられた走行時間内での修復は難しく、その後の練習を諦めざるを得ない状況と
なってしまった。本レースウィークは、練習走行1本のみ、近藤に関しては実質1周のみという
厳しい状況でのスタートとなった。


メカニックの懸命な作業が続いたが、この日の走行は断念することに

 

<DAY2> 7月6日(土)

Official Practice(8:00~ 30分間)

レース1当日の朝を迎える。サクセスレーシングのメカニックたちの懸命な作業により、ウラカン
は再び戦える状態を取り戻していた。
この日はレース1の予選だけでなく、翌7日に行われるレース2の予選も一緒に行なわれるが、パラ
パラと雨が落ちている。8時から練習走行が組まれているが、今日のレースは誰もがウエットコン
ディションになるであろうと考えるような雲行きである。

この8時からの走行が最後の練習となるが、雨は止まず路面はウエット。レインタイヤでの走行と
なった。

今回は前日にほとんど練習できていない近藤が先行してコース入りする。マシンに慣れる時間も
極端に少なかった上にウエット走行を強いられたが、終始危なげない走りでラップを重ねていく。
アタック数周のラップタイムは2分をオーバーしていたが、次第にマシン特性と路面状況を掴み、
1分57秒329というタイムを刻んで佐藤に交代した。
前日に練習できてはいるが、ウエット路面という点ではまた走り方を変えなければならず、手探り
状態でマシンをピットアウトさせる佐藤。アウトラップを終え、計測周回に入ったところ、なんと
前日に引き続き再び赤旗終了を強いられる。2度の赤旗に阻まれ、満足に練習できないまま本番を
迎えることになってしまったサクセスレーシング。それでも前日に気になっていたコーナー立ち
上がり時のオーバーステアは車高調整により落ち着きをみせ、乗りやすくなったという佐藤の
コメントから、予選・決勝での躍進が期待された。
ここで練習走行は終えることとなったが、すべきことは走ることだけではない。

タイヤ交換やドライバーチェンジでも大幅に順位が入れ替わる可能性があるのがレースである。
ピットストップはピットレーン進入からピットアウトまで概ね97秒を要し、タイヤ交換なしだと
作業41秒で戻れる計算。ドライバーチェンジの他にタイヤ交換ありとなると10秒くらい余分に掛か
る見込みである。ドライバーだけではなく、メカニック・チームスタッフ全員で勝ちにいくべく、
各々が常にベストを尽くせるよう走行時間終了後の合間を縫ってピット作業の練習が行われた。

QUALIFYING 1(11:12~ 15分間)

練習走行では完全なウエット路面だった富士スピードウェイであったが、レース1の予選開始時に
は曇り空ではあるものの、ドライコンディションへと変わっていた。ここは近藤が担当すること
となる。
ドライ路面での練習不足から、コースイン直後のペースは抑え気味にマシンの動きを探りつつ
周回。後方から迫る他クラスの車両を上手くパスさせながら、アウトラップでウラカンと対話を
続ける。挙動を乱すことはなく、タイヤを傷めるようなステアワークもない。丁寧な走りでライン
をトレースしていく。

コースインから4周回時点での近藤のタイムは1分47秒台前半。これに対し、アマチュアクラスの
トップが1分44秒3。この時点ではトップにセクター2とセクター3で1秒づつ離される展開であった
が、5周目に1分46秒403をマークし、クラス4位につけた。本当はまだまだ詰められたはずである
が、予選1枠15分という短い時間が、練習時間の短い近藤に重くのしかかった。

QUALIFYING 2(11:34~ 15分間)

レース2の予選は佐藤が担当。直前に近藤が走行していたこともあり、タイヤはまだ熱を帯びてお
り、コースイン直後から攻めの走りを見せる。朝一の短い走行の中で、コーナー出口でのマシンの
動きが落ち着いていることを感触として得ていた佐藤。アタック1周目から初日の練習走行での
タイムを更新する。

1分45秒台で周回を続け、アタック5周目には1分44秒509まで詰めたが、周りのライバル達も順次
タイムアップしたことから順位はクラス5番手にとどまった。
今回のレースウィークはドライバーすべてが練習不足を強いられたが、その中でも佐藤、近藤は
ブランパンシリーズ初参戦ということもあり、そのハンデの大きさは言わずもがなといったところ
である。しかし、トップとの差は約2秒2。堅実な走りを続ければピット作業や相手のミスで順位が
入れ替わる可能性があるだけに、追い上げが期待された。

RACE 1(15:45~ 60分間)

レース1は近藤がスターティングドライバーを務めることとなった。
スタート方式はローリング。フォーメーションラップを終え、ホームストレートに戻ってきた各車
は周囲のライバルたちをけん制しつつ、スタートの瞬間を待つ。

グリーンシグナルが点灯し、各車スロットル全開。闘志をむき出しにしたGT3、GT4車両たちが
一斉に咆哮をあげ、1コーナーに向かって一気に加速していく。まずまずのスタートを決めた近藤
はアウト側1台分を残し、ライバルたちがひしめく中に飛び込んでいく。しかし、フォーワイドの
最もアウト側から仕掛ける形となった近藤はイン側から押し出され、減速を余儀なくされる。
何とか接触を避け、その後に続くコカ・コーラコーナーに向かっていくわけであるが、依然として
コース上の混雑は変わらず予断を許さぬ状況。そんなスタート直後のごった返している中、コカ・
コーラコーナーを立ち上がったところで1台のメルセデスがスピンし、コースの真ん中で停車。
後続車は慌てて回避動作に徹するが、すぐ後方を走っていた777号車CARGUY Racingの488GT3は
何とか避けたものの姿勢を崩し、スピンを喫してしまう。

これにより近藤は順位をひとつ上げたが、2周目にもダンロップコーナーで他クラスの2台が絡んで
止まっているところをすり抜け、3周目では一度は前に出られたプロクラスの99号車をGR Supra
コーナーでスピンしている間に交わす。4周目でもまたアドバンコーナーでスピンしているプロ・
アマチュアクラスのR8をパスし、同一周回内でスローダウンしている同クラス128号車のウラカン
の前に出た。毎周回ミスやトラブルに見舞われるライバルたちを尻目に状況を見定め、着実に周回
を重ねていった近藤が順位を上げていき、気付けばクラス3位に浮上していた。一旦は777号車に
前に出られ、ポジションを下げたが、13周目にはスピンしている60号車の前に出たことで再び順位
を取り戻す。


スタートして数周の間、周囲は荒れた展開に

自身のスティントも後半に差し掛かると走りが鋭くなっていく近藤。ミスすることなく予選と変わ
らぬペースで走り切り、1分46秒台を安定して刻んでいく。14周を走り切ったところで総合順位を
16位とし、ピットイン。ここで佐藤にステアリングを託す。
佐藤はこのレースウィークにおいてドライコンディションでの走行時間が少しとれていたことも
あり、ピットアウト直後からペースを上げていく。交代後2周目に60号車のポルシェに前に出られ
たものの、その後離されまいと追い縋る。60号車の方がラップタイムで1秒ほど速いが、引っ張ら
れる形で佐藤もペースが上がっていき、次第にピット作業中に前に出られた128号車のウラカンを
射程圏内に捉える。


128号車のウラカンを射程圏内に捉える佐藤

4周目の最終コーナーで上手く間合いを詰めた佐藤はそのままスリップストリームへ。同じウラ
カン同士であるため、コーナー立ち上がり直後は速度差が現れないが、コントロールラインを越え
た辺りからその距離はじわじわと縮まり、1コーナーでのブレーキング競争へ。

ここで辛くも前に出た後は、その差を徐々に広げていく。佐藤もまたノーミスで周回を重ね、
近藤が築き上げたポジションをキープ。タイムは予選時の2~3秒落ちと上がらなかったものの
堅実な走りが実を結び、クラス3位表彰台の結果をもたらした。


3位ゴールの瞬間


健闘をたたえ合う佐藤と近藤

初参戦で表彰台という快挙にチーム全員が歓喜した。

サクセスレーシングにとって良い流れの中、レース1は幕を閉じる。レース2に向け、チームとして
の結束をより強めることができた。

<DAY3> 7月7日(日)

RACE 2(13:05~ 60分間)


健闘を誓い、スタート前に固い握手を交わす佐藤と近藤

レース2は佐藤がスターティングドライバーを務める。このレースの予選も佐藤が担当しており、
好タイムをマークしていたものの、その時一緒に予選アタックしていたドライバーが強豪揃いで
クラス5位のポジションからのスタート。総合順位によるグリッドでは24番手と、スタート直後に
前方がごった返すことは必至であった。
そしてスタート。レース1同様にローリングスタートで各車一斉に加速する中、佐藤も遅れること
なく前を追従する。

1コーナー進入において早めに減速を始めた60号車のポルシェを一時はパスするも、立ち上がりで
車幅の半分以上をアウト側の縁石にのせていた佐藤は、加速体制に移るのが遅れたことで再び前に
出られてしまう。しかし、まだタイヤに熱が入らない状態ながら、真後ろについてプレッシャーを
かけ続け、アドバンコーナー進入で積極的にインを窺うなど、アグレッシブに攻める。練習走行時
に見られていたセクター3での挙動の乱れは見られなくなっており、3周目の1コーナーではついに
60号車を捉え、クラス4位に浮上。しかし同一周回のGR Supraコーナーで痛恨のスピンを喫し、
そのポジションを再び譲ることとなってしまう。復帰にやや時間がかかってしまったが、全開で
追撃を開始。GT4車両に至ってはアウト側から抜きにかかるなど、自らのミスを取り返すべく攻め
続けた。その後は大きなミスもなく、1分46~47秒台で周回。16周を走りきったところでセカンド
ドライバーの近藤にチェンジする。この時点で残り26分。

ライバルチームのピットインのタイミングで一旦は4位にポジションアップするが、これは暫定的
な順位であり、コースに戻った時点では再び5位となっていた。レース1にてドライ路面での感覚に
かなり馴染めてきた近藤は、1分48秒台前半での走り出しをみせる。

その後さらに詰めていこうというところでコース上にはセーフティーカ―の姿が。この時点で残り
13分。追い上げるには好都合な展開となった。しかし、6分間にわたって先導し続け、リスタート
となった時には残り7分。この短い時間で前を捉えるべく、再びペースを上げる近藤。セーフ
ティーカー導入前のタイムをさらに1秒近く縮めながらラップを刻み、60分が経過した。
クラス順位は5位のままでのチェッカーとなったが、レース1同様に堅実な走りを続けたことが功を
奏し、総合順位では19位にポジションアップしてのゴールとなった。

 

~レース後、ドライバーコメント~

今回初めてウラカンGT3での出場ということもあり、フリープラクティスで挙動をしっかり身体に
馴染ませようと思っていたところ、車両トラブルにてフリープラクティスでの練習時間が思った
ようにとれませんでした。そのため、ほぼぶっつけ本番での予選アタックとなりました。最初に
乗った状態では非常にリアが出やすく、ピーキーな状態だったため、もう少し後ろを落ち着かせる
方向性でセッティングしてもらいました。リアウイングを立たせたことによってリアの挙動が
落ち着き、コーナーリング中の姿勢は安定したものの、やはり若干アンダーステアが強くなった
ことと、ストレートスピードが落ちることによってメインストレートや300Rが活用できない状況
となりました。どちらを選ぶか悩みましたが、最終的には多少オーバーステアの方向に変更して
予選アタックに入りました。 ぶっつけ本番ではありましたが徐々に慣れることができ、自分とし
ては実力を発揮できたと思っています。但し、ヨーロッパ・アジアのプロドライバーたちが多く
出場しているレースであるが故に非常にレベルが高く、今の自分の実力では太刀打ちできるような
ものではありませんでした。
ブランパンアジアに関しても個人のスプリントレースではなく、チーム力が非常に生かされるもの
です。エンジニアやメカニックとより上手く連携できれば、もっと上を目指すことができたのでは
ないかと思います。レース1に関してはピットイン、そしてドライバー交代を無駄なく終えること
ができ、初出場3位表彰台は非常に嬉しいものでした。
レース2は自分がファーストスティントを担当したのですが、周りがほぼすべてプロという厳しい
状況での戦いとなり、GT3クラスの中では最後尾から追い上げという形になりました。脇阪薫一
選手を1コーナーでオーバーテイクできたことはよかったものの、プロドライバーから受ける
プレッシャーというものは凄まじいものがあり、スープラコーナーで圧力に負け、スピンを喫し
てしまいました。そのプレッシャーに対する精神的な耐性や、可能な限り自分のレーシングライ
ンを保つ走りが可能となるようなトレーニングが必要であると感じております。プロの方々と同じ
場でバトルができたことで非常に勉強になったので、今後の自分のレース活動に活かしていきたい
と思います。

Koshido Racing 佐藤 元春

2019.08.14 2019 HOKKAIDO Clubman Cup Race Rd.1 VITA-01 RACE REPORT

2019.6.23

北海道クラブマンカップレースRd.1 VITA-01

開催日時:2019年6月23日(日)

開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース

ドライバー:佐藤 元春(#12)、鶴賀 義幸(#310)、常松 巧(#516) 竹谷 和浩 (#712)、

大島 良平(#777)

マシン:恒志堂レーシングVITA 12号機、310号機、516号機、712号機、777号機

参戦クラス:VITA-01クラス

天候:予選/曇り、決勝/晴れ

路面:予選/ドライ、決勝/ドライ

佐藤 元春 予選:3/17位    決勝6/17位

鶴賀 義幸 予選:1/17位  決勝1/17位

常松  巧  予選:8/17位   決勝7/17位

竹谷 和浩 予選:4/17位 決勝:3/17位

大島 良平 予選:10/17位  決勝:9/17位

 

 

Koshido Racingとしては参戦3年目となる北海道クラブマンカップレースVITA-01。昨年までの4台
体制から、今期はさらに1名のレギュラードライバーと1台のマシンンが増え、5台体制でのエント
リーとなった。 エースカーは例年通りチームオーナー兼代表である佐藤元春が搭乗。昨年までの
グリーンを基調とした610号機に代わり、今期新たに準備された12号機を投入。“音速の貴公子”と
呼ばれたF1ドライバー、故アイルトン・セナが駆る往年の名車、マクラーレン・ホンダMP4/6を
イメージしたカラーリングが施された(TOP画)。 310号車には、富士スピードウェイにて開催
されている富士チャンピオンレースシリーズ(以下、FCR) VITAに昨年まで参戦し、常に上位争
いを繰り広げていた鶴賀義幸がそのシートに収まる。2019年の北海道シリーズをKoshido Racing
からのエントリーで戦うことになった鶴賀は、現在TOYOTA GAZOO Racing86/BRZレースにエキ
スパートクラスのドライバーとして活躍しており、ビジターながらその活躍が期待された。

310号機 鶴賀 義幸選手

今年新たに投入されたVITAには516のナンバーが与えられ、これまでのKoshido Racingにはない
イエローを基調としたカラーリングが施されていた。ドライバーもまた、今期新たに加わった
常松巧がレギュラードライバーとしてこれをドライブする。 チーム代表の佐藤とは旧知の中である
常松は、これまで様々なスポーツカーやチューニングカーをドライブし、十勝スピードウェイの
コースレコードホルダーの経歴を持つベテランドライバー。こちらも大きな期待を背に2019年
シーズンを戦う。

516号車 常松 巧選手

712号車はチーム代表の佐藤と同様、3シーズン目を迎える竹谷和浩が担当。今期の竹谷は十勝
スピードウェイだけでなく富士スピードウェイにも遠征するなど、その活動の場を拡げ、より多く
の経験値を得ている。昨年の本シリーズ最終戦では見事優勝を飾り、今年もその勢いは衰えること
を知らない。 そして777号機もまた、昨年同様に大島良平がドライブすることとなった。参戦2年
目の大島は日頃よりレーシングカートに勤しみ、またサーキット走行の度に自身の走行データ解析
に励んでおり、そのドライビングスキルは理論で裏付けされつつある。様々な走行経験からヒント
を得てVITA-01での戦いにフィードバックし、成長してきた。

 

 

DAY1> 621日(金) 練習走行

佐藤、竹谷、常松の3名は公式練習走行の前日から現地入りし、セッティングと修練に励んでい
た。この日は通常のフリー走行枠を利用。エースカーである12号機はアドバイザーである平中克幸
選手がセッティングを担当し、佐藤は参戦2年目までドライブしていた777号機のセッティングを
煮詰めていた。竹谷は712号機を、常松は516号機の感触をそれぞれ確かめつつ、今期初戦に向けて
のコンディションづくりに励む。

12号機のセッティングにあたる平中克幸選手

今年の北海道クラブマンカップレースシリーズの開幕は例年より遅めであり、4月から5月にかけて
練習に充てる機会が得られていた。今期から搭乗の常松は4月のVITA初乗りで1分33秒427を記録。
十勝スピードウェイレコードホルダーの経歴をもつことを裏打ちするかの如く、初乗りでは驚異的
なタイムである。これまでの経験が存分に活かされていることはその結果が物語っているといえ
よう。そして臨んだ今回の練習走行であるが、より速く走るために考えたが故の迷いが生じ、
序盤のタイムは1分34~35秒台にとどまっていた。

自らの走りを振り返り、悩む常松

それでも4スティント目には33秒台へと押し上げ、さらに走りをまとめ上げた結果、最終スティン
トでは1分33秒853まで短縮した。 竹谷の712号機はシーズンオフ中にエンジンオーバーホールを
受け、4月に入念に慣らしを重ねた後で本格的に始動。5月にはFCR VITAの第1戦を佐藤とともに
戦い、2年ぶりの富士スピードウェイでもそれを感じさせない走りを披露していた。そんな好調の
竹谷は1スティント目から1分33秒台を連発。やはり昨シーズンからVITAの走らせ方を掴んでいる
様子で、本人もその手応えを感じていた。最終スティントではついに32秒台へと突入し、平均的な
ラップタイムも33秒前半をマークし続けていた。 佐藤が数スティントをかけて仕上げた777号機
は、フロントの接地性を高める方向でセッティングが進められ、翌日の大島良平に託されること
となる。その後、佐藤は平中選手の手によって詰められたセッティングを確かめるため、本来の
12号機にてコースイン。1分33秒台を安定して刻み、限られた時間ではあったが、1分33秒103を
マークし、この日の練習走行を終えた。

 

練習走行結果

#12   佐藤 元春: 1’33.103

#516    常松 巧 : 1’33.853

#712    竹谷 和浩: 1’32.924

 

DAY2> 622日(土) 公式特別スポーツ走行(30分間×3本)

朝から大雨に見舞われた2日目。コース上のあちらこちらで川となって大きな水溜まりを形成して
いる。天気予報でも一日中雨が降り続くことが明らかとなっており、終日ヘビーウェットでの
走行を強いられた。 この日は常松が都合で参加できなかったが、鶴賀の到着に加え、大島良平の
合流により、4台での練習走行となった。

全車タイヤのエア圧を高め、しっかりと接地面圧を上げてコースイン。それでも常にハイドロ
プレーニングとの戦いとなっており、練習走行といえど常に緊張が強いられた。

 

車載から見るコースの様子。路面の大半は川や水溜りで覆われている。ここで頭角を現したのは
310号機の鶴賀。FCRの舞台となる富士スピードウェイは天候変化が激しく、雨天走行となること
も多い。それもヘビーウェットとなることが少なくないことから、今回その経験が大いに活かされ
ていたことは容易に想像できる。 タイムはファーストスティントで他の3台から抜きん出て2秒近
く速いペースを保持。ウェットではコントロールがシビアなVITAを、まったく危なげなく前に
進めていくドライビングは圧巻であった。
佐藤もまた、雨の中での走行経験は豊富である。というのも彼は練習魔なのである。これまで課題
を見つけては時間をつくり、ただひたすらに、ひたむきに練習し続けてきた。その中で幾度となく
雨の日もあった。勿論、レース本番においても台風が迫る富士スピードウェイをVITAやGT3マシン
で走り切るなど、過酷な状況での経験を積んできた。それを裏付けるかの如く、最初こそ慎重な
走り出しであるが、セカンドスティント、サードスティントと走行を重ねるごとに着実にタイムを
上げていく。路面がグリップするところを即時分析し、ラインを工夫しながらマシンを前に進める
佐藤。最終的には鶴賀と遜色ないタイムをマークするに至った。
ここ何戦かでマシンコントロール精度を飛躍的に高め、悪条件下ではチーム随一の力を発揮する
竹谷。ファーストスティントの1コーナー進入でオーバーランし、痛恨のコースアウトを喫したも
のの、その後の立ち直りは早く、臆することなく攻め込んでいく。セカンドスティント開始直後に
はコースアウト前と変わらぬタイムで周回し、雨量が減ってきたタイミングでベストラップをマー
ク。コースセクションごとにタイムを見ると、比較的アグレッシブに攻め込むセクター1やセク
ター3が速い竹谷であるが、ヘビーウェットの繊細なステア操作も兼ね備えているところがこの
コンディションにおいても強さを見せる所以である。
その場でのロガー分析から走り方を随時変え、いかなるコンディションにおいても貪欲に速さを
求める大島良平。脚回りのセッティングがやや荷重をのせて曲げるタイプの777号機は、他の
Koshido Racing VITAに比べて初期のステア操作における機敏性に劣るが、ウェット路面での操作
性には優れている。 この日ははるばる筑波よりガレージBe:Flat代表の関口氏も応援に訪れ、777
号機のセッティングについてともに考え、方向性を探った。関口氏は鶴賀とともにFCRを戦い、
VITA-01のセッティングにも非常に長けている。なお、今期鶴賀がVITAを降りたあとも他のドラ
イバーと組み、FCR-VITAの第1戦では見事ポディウムの頂上に導くことに成功している。

 

セカンドスティントでは試験的にECUを載せ替え、いつも以上によく廻るエンジンへと変貌。
シビアな挙動の12号機に乗る佐藤に肉薄する場面もあった。とはいえ雨量は多く、ラフにブレーキ
ングしながらコーナー進入しようものならたちどころにオーバーステアを誘発してしまう。走行中
ブレーキバランサーに手をかけ、挙動を安定させる姿も見受けられた。加えて素早いカウンター
ステアが功を奏し、スピンモーションに移行することなくマシンを前に進める。大島良平は冬季の
雪上走行会においてもその的確なステア操作により好タイムを記録していたことから、コンディ
ションの悪化をものともしない実力を兼ね備えているといえよう。

素早いカウンターステアによりコントロールを破綻させることなくコーナーをクリアしていく
大島良平

 

公式特別スポーツ走行結果

#12  佐藤 元春: 1’48.669
#310  鶴賀 義幸: 1’48.371
#712  竹谷 和浩: 1’49.089
#777  大島 良平: 1’48.731

 

 

 

DAY3> 623日(日) 予選(935955

 

曇天ではあるが前日の雨はすっかり上がっており、コース上はドライ。但し、ひとたびコースを
飛び出せば、多分に水分を含んだグラベルや芝が容赦なくVITAをスタックへと誘い込むであろう
ことから、油断は禁物といった状況。筆者の記憶が正しければ昨年の第1戦も同様のコンディショ
ンであったと思われる。気温16.8℃、湿度59%と、走行に関してのコンディションは悪くはない。
2019年の十勝初戦のエントリーは17台。予選時刻を迎え、その各車が次々とコースインしていく。
Koshido Racingからまず最初に飛び出していったのは310号機鶴賀。前走車がウォームアップ走行
している中、早々にペースを上げ、クリアラップを確保。1分34秒台、33秒台と着実に詰め、
アタックラップ3周目には1分32秒155のトップタイムを叩き出す。その後様子を見ながら走行して
いたが、32秒台前半を連続で記録し、少しばかり時間を残してピットへ戻った。以降も記録を更新
されることはなく、ポールポジションを獲得。
エースカーの佐藤もアタックラップ2周目にして1分33秒307をマーク。12号機もそれに呼応するか
の如く、余力を残している様子。しかし、佐藤がさらに詰めようとアタック3周目に入ったところ
で問題は起こった。ガス欠症状が出現したのだ。元々軽量のVITAはちょっとした燃料搭載量の差に
よって動きが簡単に変わってしまうため、一発のタイムを狙っていく予選では極限まで給油量を
絞る。無論、これまでのデータから算出された量を直前に入れるわけであるが、わずかな気候の差
によって燃料消費量は変わってしまう。今回それが災いとなったか、想定よりかなり早い段階で
アタックを終了せざるを得ない状況となってしまった。結局アタックわずか2周目にマークした
タイムがそのまま予選記録として反映され、3位で終えることとなる。佐藤は悔しさを滲ませた。
一昨日の練習走行から一日おいた516号機の常松は、アタックに入ってすぐ前走車のスピンに巻き
込まれそうになったものの、間一髪でかわし、リズムを崩すことなくアタックに復帰。

1コーナー進入は慎重なブレーキング姿勢を見せるが、コース幅を有効に活用したスムーズなライ
ン取りが特徴である。特に最終コーナーのライン取りはひとつのコーナーであると錯覚するような
美しいラインをトレースしていく。エンジンパワーがそれほど大きくないVITA-01は、ステアリン
グ舵角を与え過ぎると失速に直結してしまう。故に常松のドライビングはロスの少ない走りと言え
る。目立ったミスもなく、1分34秒618をマークし、予選8位につけた。
712号機の竹谷は前日のウェット走行の感覚が抜けず、アタック序盤はかなり苦労していた。しか
し、徐々にそのライン取りやブレーキングは精彩さを取り戻し、周回を重ねるごとにタイムが短縮
されていく。1分35秒台から1秒ずつ縮め、アタック4周目で1分33秒476をマーク。その後も貪欲に
タイムを追うべく攻め込むが、次の周でスピンを喫してしまう。上手く感覚が戻りつつあることを
感じていた竹谷は間髪入れずコースに復帰。記録更新を狙うが、ここで12号機の佐藤と同じくガス
欠症状が出現。手応えを感じていただけに、こちらも無念さを隠せないまま予選終了となった。
ポジションは4番手となったが、決勝のグリッドは2列目からのスタート。上位が狙える位置で
あり、決勝に向けての意気込みが強く感じられた。
777号機の大島良平は、セッティング変更後初のドライ路面走行となり、若干戸惑いながらの走り
出しとなった。これまでとコーナー進入での向きの変わり方が大きく変わっており、各所でテール
スライドさせながら走行している姿が目立つ。それでもウェット走行の時と同様、カウンターステ
アに移行するまでの動きが素早いため、スピンモードに陥ることなく、ドリフト状態を維持した
ままコーナーをクリアしていた。しばらくオーバーステアと戦い続けるうちに現状のセッティング
に順応し始め、コーナー進入初期の操舵角が小さくなっていく。それとともにリアの動きも落ち
着き始め、無駄のない操作へと変化していった。結果、タイムは1分34秒台後半から35秒台前半を
コンスタントに刻むという形で反映され、安定した走りをみせた。

 

 

 

~以下、公式予選終了後ドライバーコメント~

佐藤 元春

予選は3位という結果となったが、アタックラップ3周でガス欠症状が出てしまい、やむなくそこで
予選を終えることになってしまった。個人的には非常に残念な結果だったが、レースではまだまだ
ペースを上げられるので、決勝では予選ポールポジションの鶴賀選手と一緒に表彰台に登れるよう
に頑張りたい。

 

鶴賀 義幸

5月に練習した時からフィールは良かったので、このまま思った通りに攻めればタイムは出るだろ
うと思って挑んだ。ニュータイヤを入れたことで自己ベストを更新でき、ミスもなく走れたので
よかった。チームオーダーが出ていたためその後も走行を続けていたが、戻ってみたところトップ
タイムを記録できていて驚いた。ポールポジションから出られるので、決勝もこのままぶっちぎっ
て勝ちたい。

 

竹谷 和浩

昨日一日中ウェット走行を続けたことでドライの感覚がリセットされてしまい、本当はあと3、4周
重ねたかったがガス欠症状が出てしまった。4周目に1分33秒4が出てから、もう2、3周詰めたかっ
たが残念。決勝は12周と長いので、ドライの感覚を取り戻しつつ、攻めたい。

 

常松 巧

タイヤを新品としたが、まだ車に順応できてないという状況。タイムも予想以上に伸びず、1分33
秒台に届かなかった。それでも予選中に車の特性を把握できたので、決勝では完走を目指して、
できれば6位以内を目標として頑張りたい。

大島 良平

曲がるセッティングに変更してもらったが、それに慣れ切らない。ウェット路面の昨日は気持ちで
踏めたが、今日は曲げるセッティングに上手く適応できず、ブレーキングを終えてからアクセルを
踏むまでの空走時間が長くなっている。向きは変わるようになったが、ボトムスピードが遅くなっ
ている。これからロガーデータを確認して、どこが悪いのか考えて決勝に挑みたい。

 

決勝(1435~、12LAP

午後になり、順当に気温が上昇しているが、予選時のコンディションから大きな変化なく決勝の
時刻を迎える。

今年の十勝初戦での健闘とクリーンなバトルを誓い、恒例儀式から始まるKoshido Racingの面々。
予選での失敗を踏まえ、各車ゆとりをもって給油を済ませ、ピットアウト。グリッド上にはチーム
オーナー佐藤の計らいで、ドラゴンクエストの登場人物であるセーニャとベロニカに扮したスタッ
フがレース前のひとときを盛り上げた。

そしてフォーメーションラップへ。限られた時間の中で可能な限りタイヤに熱を入れるべく、各車
速度を上げていく。ホームストレートに姿を見せる頃には、最後の仕上げと言わんばかりにエンジ
ンを唸らせ、リアタイヤをしっかりと潰しにかかる。 すべてのVITAがグリッドに再整列し、ほど
なくしてシグナルブラックアウト。ポールポジションの鶴賀はそつなくスタートを決め、そのまま
の勢いで1コーナーへ。一瞬、後続車をけん制したと思いきや、その後はじわじわと2位との差を
広げていった。それとは対照的に、予選3位の佐藤はスタートで大きく出遅れる。4位スタートの
竹谷にイン側から並ばれ、1コーナー進入においてアウト側から精一杯粘るも、先行を許した。

スタート直後に横並びとなり、そのまま1コーナーへ向かう佐藤と竹谷

8番手スタートの常松も若干出遅れ、11番手から好スタートを決めた#89M.A.R.T☆STEP・VITA-01
の後藤選手にかわされ、9位へポジションダウン。その後10番手の大島良平にも並びかけられる
が、アウト側コース一杯に踏みとどまり、並走のまま3コーナーまでもつれる。インとアウトが
反転する4コーナーにて前に出たことで、9位をキープしたままレースは進む。

常松、大島良平、後藤選手の三つ巴の戦い

上手く前に出られた竹谷ではあるが、その後ろは佐藤がすぐ後ろに食らいつき、コーナーの度に
揺さぶりをかけられる。予選のタイムでは佐藤が前をいっていただけに、2コーナーを過ぎた辺り
から一気に差を詰め、オーバーテイクのチャンスをうかがう佐藤。2周目のホームストレートでは
スリップを使って抜きにかかる。しかし、1コーナーのブレーキングでインに飛び込めるほどの
アドバンテージは作れず、一歩退いては再びインフィールドで竹谷をも猛プッシュしていた。
しかし、竹谷の強靭な精神力はマシンコントロールの破綻を許さない。テールトゥノーズのバトル
となると必然的に守りのラインを走行することが多くなり、大きくペースを落とすのが通例である
が、わずかにラインを外すことはあってもオーバーテイクされるほどの隙を与えることなく走り
続けた。この竹谷と佐藤のバトルは4周にわたって繰り広げられるわけであるが、ここでレースは
動く。ホームストレート上で上手くスリップストリームを使い、何度も竹谷に並びかけた佐藤で
あったが、実はそのすぐ背後に1台迫るマシンがいた。#61 HDC日本平中自動車の平中繁延選手で
ある。彼は2台のバトルを後方から静観し、虎視眈々と隙が生まれるのを待っていた。4周目の
1コーナーでインから仕掛けた佐藤が一瞬失速したその時を見逃さず、すかさずインに飛び込む。
そのまま2コーナーで前に出ると、竹谷の追撃にかかった。 背後が平中選手に変わった後も変わら
ずひるまぬ竹谷。ここのバトルが始まることで佐藤が再び間合いを詰め、ここでも三つ巴のバトル
が展開される。この戦いは終盤までもつれ、10周目のコントロールタワーを過ぎた直後、佐藤の
後ろにもう一台の迫るマシンがいた。#30 十勝レーシングスクールSilent 01の鬼塚選手である。
上手くスリップストリームから抜けた鬼塚選手は1コーナー進入で難なく佐藤の前へ。佐藤はさら
にポジションをひとつ落とし、6番手となる。しかし、同一周回の4コーナーで平中選手が痛恨の
スピンを喫し、ポジションを再び5位へと戻す。3位以下はレース全般にわたって拮抗した戦いが
繰り広げられ、目まぐるしく順位が変動した。 その集団からやや後方を走る常松は、スタート
直後に前に出られた後藤選手が2周目の1コーナーでアウト側にはらんだ隙を見逃さずポジション
を取り返す。その後は1分35秒台前半をキープした堅実な走りでポジションを守り続けた。

 

走行ラインも周を重ねるたびに無駄のない、スムーズなラインへと変化していき、レースラップ
でも34秒台をマーク。挙動も終始安定しており、途中スピンからのコース復帰に時間を要した平中
選手をパスしたことで、予選順位から1ポジションアップの7位でチェッカーを受けた。
常松を追いすがる大島良平は、2周目の1コーナーで痛恨のコースアウト。練習走行の時と同様、
素早い対処によりマシンの姿勢を大きく崩すことなく復帰できたが、常松との距離が開いてしまっ
たことに加え、#48 さくらBreeze 01の山口選手に前に行かれてしまい、苦しい展開を強いられ
る。しかし、走行ラインに関しては常松同様、周回を増すごとに無駄のないものと変化していき、
ブレーキングポイントも奥へと詰めていく。そのため、コーナー進入から立ち上がり直前までは
一気に差が縮まっている。このままバトルにもちこみたいところであるが、エンジンパワー不足が
足枷となり、ホームストレートはもとより5コーナーや8コーナー等の立ち上がりに控える短いスト
レートにおいても777号機は後れをとってしまう。そのような展開を繰り返しているうちに前方で
後藤選手と山口選手のバトルが始まり、その間大島良平も一気に差を詰めていった。ストレート
スピードに勝る#48の山口選手は、8周目のホームストレートで#89の後藤選手を難なくパス。
以後もペースの上がらない後藤選手に肉薄していった。3台の差が詰まり、三つ巴のバトルが始ま
ろうとしていた矢先、山口選手が9周目の最終コーナーの進入でスピン。 ぎりぎりでかわした大島
良平はポジションを10位に戻し、前を行く後藤選手に照準を合わせる。しかし、この緊急回避の
間に大きく水をあけられた大島良平。残り周回数でのポジションアップが難しい状況であることは彼が最も痛感していたはずであるが、諦めることなく走り続けた。するとファイナルラップの4コーナーで#61平中選手が痛恨の2度目のスピン。ここで前に出たことでポジションを9位とし、フィニッシュした。

 

 

 

減速によるロスを最小限にし、わずかな間隙を縫って#48の前に出る大島良平

 

スタートからトップを走り続けてきた310号機の鶴賀は、レースラップを常に1分33秒台で走り切る
完璧なレース運びをみせる。2位の#3さくら眼科☆OWLwithRS-a01古井戸選手に7秒もの差を
つけ、ぶっちぎり状態でのトップチェッカー。

竹谷、鬼塚選手、佐藤が繰り広げる3位争いは、ファイナルラップの8コーナーで最後のチャンス
とばかりに竹谷を捉えようとイン側から仕掛けた鬼塚選手が立ち上がりでバランスを崩し、失速。
そこに一気に肉薄する佐藤であったが、前に出るまでには至らず、もつれたまま最終コーナーへ
飛び込む。ラインの自由度を確保できなかった佐藤はそれが引き金となり、ラストのストレート
速度が伸びず、フィニッシュラインの直前で#95幸伸建設Y’s・ステップ☆VITA01の坂本選手に
パスされ、6位でレースを終えた。竹谷はそのまま逃げ切り、3位チェッカーを受け、レースは幕を
閉じた。

 

 

 

鶴賀の優勝、竹谷の3位表彰台と、チームとしては2019年シーズンを勢いづかせたといってもよい
今回のレース。一方でそれぞれに課題が見えたドライバーやマシンもいたことは事実であり、
各々が次戦に向けて再び全力で向かうことになるであろう。

 

優勝の鶴賀義幸と3位の竹谷和浩

 

~レース後、チームオーナーコメント~

前日までの練習ではマシンの仕上がりもよく、自分のコンディションも非常に良好でした。予選
アタックでは不意のガス欠症状が出現したことで、クリアラップでのアタックが1周しかできませ
んでした。言い訳にはなってしまいますが、よりタイヤがベストな状況でアタックできなかった
ことが悔やまれます。今後、再度気温や湿度を確認した上での燃費計算をする必要があると考え
た次第です。結果的には予選3位ということで、自分の思うような走りはできなかったものの、
予選順位としてはトップを狙える位置につけることができました。 決勝は、結論から申し上げま
すとスタートミスが最大の失敗であり、先行を許した原因であります。ペース的には自分の方が
速いことはわかっており、1コーナーで何とか仕掛けましたが、竹谷選手をオーバーテイクする
には至らず、そのタイミングで後続車が距離を縮めてきたことで常に3~4台のバトルが続くよう
な状況でした。その状況下で後半、上手くスリップストリームを使われ、鬼塚選手と坂本選手に
先行を許す形となってしまいました。これらはスタートミスを誘発したことと、いち早く前走車
をオーバーテイクし、前に出られなかった自分の実力不足にあると思います。
次戦に向けてはスタート練習をしっかり行い、シグナルへの反応速度を高めること、そしてリア
へのトラクションをしっかりと確保したスタートができるようにトレーニングに励みたいと思い
ます。今後も引き続き応援のほど、よろしくお願いいたします。
レース自体は全員が非常にクリーンな戦いで集中して臨むことができ、楽しいレースを繰り広げ
ることができました。ライバルの皆様に感謝申し上げます。

Koshido Racing 佐藤 元春

2019.07.18 Fuji Champion Race Series 2019 FCR VITA & KYOJO CUP Rd.1 RACE REPORT

Fuji Champion Race  VITA-01 Rd.1
Fuji Champion Race  KYOJO CUP Rd.1
開催日時(FCR-VITA):2019年5月11日(土)
開催日時(KYOJO CUP):2019年5月12日(日)
開催地:富士スピードウェイ(静岡)
ドライバー(FCR-VITA):佐藤 元春、 竹谷 和浩
(KYOJO CUP):高橋 純子
マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機(佐藤・高橋)、VITA712号機(竹谷)
参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP
天候(FCR-VITA):予選/晴れ、決勝/晴れ
(KYOJO CUP):予選/晴れ、決勝/曇り
路面予選/ドライ、決勝/ドライ
佐藤 元春 予選:15/20位 決勝11/20位
竹谷 和浩 予選:16/20位 決勝13/20位
高橋 純子 予選:9/10位 決勝:7/10位

Koshido Racingの2019年初の公式戦となるFuji Champion Race(以下FCR)。
カテゴリーは昨年同様にVITA-01で戦うFCR-VITAとKYOJO CUPへのエントリーである。
今回の第1戦は、FCR-VITAにおいてレギュラー参戦している610号機の佐藤に加え、2年ぶりと
なる712号機の竹谷もエントリーしていた。竹谷は昨年、十勝クラブマンカップ最終戦での優勝
から走りに磨きがかかっており、富士スピードウェイでの活躍も期待された。
KYOJO CUPにおいては昨年同様、佐藤の610号機を高橋がシェアする形で挑んだ。

FCR-VITA 610号機  佐藤 元春

FCR-VITA 712号機  竹谷 和浩


KYOJO CUP 610号機  高橋 純子

<DAY1> 5月10日(金)  公式練習走行(30分間×4本)

昨年のこの日は雨に見舞われた富士スピードウェイであったが、今年は快晴。朝9時前で気温は
21℃、路温は33.4℃と走行のためのコンディションは良好である。
今期、Koshido Racingのエースマシンである610号機は新調され、現地保管にてセッティングが
進められていた。
3月には鈴鹿サーキットに持ち込み、南コースにてシェイクダウン。初走行のコース、セッティン
グでありながら、前年のレコードタイムに1秒程度まで肉薄する走りを見せていた。ニューマシン
はエンジンの調子が良好で、ホームストレート終速で200キロを超えることがなかった昨年までの
スピードの伸び悩みは解消されており、この練習走行では204キロ(DigSpiceデータ)をマーク
していた。


新車の足回りのセッティングを進める藤巻・奥田両メカニック

 

タイムは1枠目の練習走行で2分2秒531と、昨年のベストをコンマ5秒近く上回る記録をマーク。
しかし、車載映像からも見てとれるほどセクター3で思うようにクルマの向きが変わっていない。
特にGR Supraコーナーではブレーキングもスロットルを開けることもできない我慢の時間を強い
られていた。また、それが直接的に影響し、立ち上がりでのアクセルオンが遅れがちでもある。
反対に乗り方を変えると簡単にオーバーステアを誘発し、直接的なタイムロスに繋がってしまう。
現状では荷重が上手くのらないためか、試行錯誤しながら乗っている姿がセクター3の至るところ
で見受けられ、タイムも1枠目早々に記録したものがこの日のベストとなった。
公式練習走行ではKYOJO CUPに出場する高橋とマシンと走行枠をシェアする必要があったため、
この日は2本の走行で終了となった。

GR Supraコーナーでなかなか向きが変わらず、苦戦する様子がうかがえる

 

一方、昨年の北海道クラブマンカップから良い流れに乗っている竹谷は今回が久々の富士。
前回の走行は台風で大雨の中の走行であった。

今回は天候に恵まれそうではあるものの、これまでドライコンディションの富士では十分な走行
時間がとれていなかったため、公式練習では与えられていた4本のすべての枠を走行した。
タイムは練習1枠目のアウトラップを除いた3周目から2分4秒フラットをマーク。2年ぶりではあっ
たものの、勘を取り戻すまでにそう長い時間を要しなかったようだ。しかし竹谷自身は納得いって
おらず、その後トライアンドエラーを繰り返す。CCS-Rやインタープロトとの混走であったため
ラインの自由が利かないこともあり、同程度のタイムは安定して刻んでいたものの、そこから
伸び悩んでいた。最終走行枠においては走り慣れた十勝スピードウェイではマシンとの一体感を
感じられていたが、ここ富士では愛機との距離感を埋められず、ロガーデータを見返しながら自身
の走りを組み立て直さなければならない局面に迫られていた。
KYOJO CUPエントリーの高橋も同日朝には現地入りし、練習走行に徹していた。前述の通り、
佐藤とのマシンシェアのため、走行枠は2枠となる。高橋は佐藤同様、初のマシン及びセッティン
グでありながら、アウトラップを除く1周目から2分4秒フラットをマーク。これがこの日のベスト
タイムとなった。修正舵の多さから、シビアな挙動である様子が車載から如実に伝わってくる。
セクター3では佐藤同様に終始挙動変化に悩み、13コーナーやGR Supraコーナーではノーズが
クリップの方向を向かない、パナソニックコーナーではオーバーステアが出やすいといった状況
が続き、以後タイム更新はならなかった。

公式練習走行結果

佐藤 元春:2’02.531
竹谷 和浩:2’04.082
高橋 純子:2’04.054

 

<DAY2> 5月11日(土)
FCR-VITA公式予選(8:55~9:15)

天候、路面コンディションともに良好に保たれ、FCR-VITAの予選時刻を迎える。富士山も頂上
までその稜線をくっきりと見せており、天候が崩れる心配はなさそうである。
今回のエントリーは21台であったが、1台が未出走となっており、20台のマシンが次々にコース
インしていく。佐藤も竹谷も他車に続き、順次アタックを開始した。
まずは610号機佐藤。水温は70℃台で安定しており、ホームストレートも他車のスリップスト
リームにつかずして200キロを超えている。足まわりも前日の練習走行の状況がメカニックに
伝えられ、セッティング変更をして臨んでいた。
アウトラップを終えていよいよアタック1周目へ。しかし、コカ・コーラコーナーで大きく縁石に
のってしまい、バンプした車体の制御に苦しみスピン。と、そんな場面もあったが、以後の周回に
おいての挙動はいたって安定しており、前日悩まされ続けたアンダーオーバーは見られなかった。
アタック3周目で予選ベストとなる2分3秒264をマークし、以後もペースをほぼ落とすことなく
走り続けた。1周目を除くすべての周回を2分3秒台でまとめ、安定的な走りを披露。予選順位は
15位となり、決勝での堅実な走りとポジションアップが期待された。

続いて712号機竹谷。前日の走行ではマシンとコースに馴染み切れていなかった様子であるが、
予選中に徐々にタイムアップし、アタック5周目には2分3秒台へと突入した。昨シーズンを終え、
今期が始まる前にエンジンオーバーホールと慣らしを完了させていたこともあり、エンジンはきれ
いに廻っている。しかし、旧型エンジンによるパワー差は否めず、ストレートスピードは新エンジ
ン搭載車には敵わない中で上手くマシンをコントロールし、ライバルたちに食らいつく。走行ライ
ンがまだ定まっていないコーナーも見受けられたが、終始安定した挙動で走り切り、7周目には
さらタイムを縮め、ベストとなる2分3秒423をマークし、佐藤に続く予選16番手につけた。

 

 

~以下、公式予選終了後ドライバーコメント~

佐藤 元春
「マシンの状態は昨年に比べて非常に良好でトラクションもかかっているため、速度もしっかり
伸びている。しかし、予選アタックの結果、セクター3で2秒強離されているということから、
そこに焦点を当てたセッティングが必要であると考える。決勝に向けて大幅にセッティングを変え
て勝負に出たい。車はコントロールできる状態に仕上がっているので、決勝では変えたセッティン
グでマシンの性能を引き出せるよう全力を尽くす」。

竹谷 和浩
「昨日の練習走行よりも落ち着いて走ることができ、自分の目標とするタイムはしっかり出せた。
決勝も引き続き落ち着いた走りで、今以下のポジションにならないよう頑張りたい。昨日の練習
走行では乗り方が全然わかっていなかったが、今日は丁寧に乗ることによってマシンに自分が
ついていけていると感じている」。

 

FCR-VITA決勝(12:45~ 10LAP)

午後に入り、徐々に気温も上がる中、決勝の時間を迎える。
マシンに乗り込む前、Koshido Racingの恒例儀式であるドライバー同士の堅い握手が交わされ、
互いの健闘を誓い合う。
ポールポジションは2分フラットを記録している0号車の眞田選手。上位5名が同じく2分フラット
で、1秒台・2秒台も同様に4~5台がひしめいている。3秒台の先頭に佐藤、次いで竹谷と続く。
各車コースインの時間を迎え、次々とピットからグリッドに向かう。


グリッドウォークではメカニックだけでなく、チームスタッフもドライバーのもとに向かい、
ともにスタートの時を待つ。

好天にも恵まれ、ホームストレートは各関係者で賑やかな雰囲気である。今年の公式戦の初戦で
あり、そのスタート直前であるにもかかわらず緊張を感じさせないFCR参戦3年目の佐藤、レース
を心から楽しんでいる竹谷。Koshido Racingのグリッドは穏やかな空気が流れていた。
スタート5分前、3分前と、チームスタッフやメカニックがグリッドを離れ、フォーメーション
ラップへ。いずれのドライバーもタイヤとブレーキの最後のコンディション作りに勤しむ。そして
再び自分のグリッドへ。
最後尾のグリッドが埋まり、20台のVITAが一斉にエキゾーストノートを轟かせる。シグナルが
一灯ずつ灯り、オールレッド。この瞬間はドライバーだけでなく、チーム全体にも緊張感が漂う。
そしてブラックアウト。各車一斉に飛び出す。
佐藤は順当にスタートを決め、#7小倉クラッチ・AFC VITAおぎねぇ選手の前へ。ポジションを
ひとつアップさせる。さらに前走車の前に出んばかりの勢いでTGRコーナーに向かっていき、
イン側のグリッドからそのままの走行ラインでブレーキングを我慢。刺そうと試みるもアウト側
からライバルに上手く被せられ、ポジションそのままに立ち上がっていく。
続くコカ・コーラコーナー。佐藤は、一度は前に出た#7にイン側から並ばれたものの、自らの
走行ラインを守り、立ち上がりで縁石を目いっぱい使い、ポジションをキープ。前方はまだ混み
合っているが、各車クリーンなレース運びで混乱はなく進行していく。しかし300Rからダン
ロップコーナーへの進入で1台がスピンし、コース外へ。後続車への影響はなく、セクター3を慎重
に走行し、2周目に突入する。
1周目の最終パナソニックコーナー立ち上がりで#522 佐藤工業IDI Racing福岡選手の背後につけて
いた佐藤は、スリップストリームを使い、アウト側からTGRコーナーまで真横に並ぶ格好に。
クロスラインから立ち上がりで前に出られないか伺うも、イン側を死守する#522の前には出られ
ない。そのまま順位変動なく、3周目へ。

アドバンコーナーにて2台前を走る#9 MP RacingニルズのJOE SHINDO選手がスピン。それをかわ
すべく佐藤が失速したところに後ろから#48 ワコーズEDニルズVITAの星七選手が一気に詰め、
ダンロップコーナーの進入までに前に出られる。但し、同コーナーで前方の#522のスピンにより
パスしたため、順位を戻した。
4周目のホームストレートでは#24 ENEOS☆CLA☆Pmu01の見崎選手にスリップストリームをと
られ、後退を許す。しかし、佐藤も黙ってこれを見過ごすわけにはいかない。TGRコーナーでの
ブレーキングを限界まで遅らせつつ、再び一車身前に出てアウト側からクリーンに仕掛ける。
そのまま並走する形で立ち上がろうというところであったが、イン側より縁石外にラインを押し
出され、接触を避けた佐藤はやむなくポジションをひとつダウンさせた。リズムを乱され、速度が
のらない中、同周回のダンロップコーナーブレーキングでも#87 おさきに☆どうぞVITAの山本選手
にポジションを譲ることとなる。
もうこれ以上のポジションダウンは許されない…5周目、6周目と、堅実な走りを心掛け、前を追う。
意外にも一旦前に出られたライバルとはそれほど差が開かない状況で、ラップライムも2分3秒台を
コンスタントにマークしていた。そのうちに前方の4台の差が詰まり、混雑状態に。何か起こり
そうな予感がしていたが、7周目のダンロップコーナー進入でそのうちの1台がスピン。佐藤はポジ
ションをひとつ上げた。
その後、8周目で他車とのバトルで挙動を乱し、ペースを落とした#48に肉薄。ひとつでもポジ
ションアップするべく貪欲に挑んでいく。セクター3での挙動は安定しており、初日の練習走行で
みられた乗りにくさは解消されたようであった。その分100Rではオーバーステアが顔を出し、
度々シビアなマシンコントロールを要求される場面も見受けられたが、9周目からファイナル
ラップまでテールトゥノーズの戦いを展開。最後のパナソニックコーナーまで追いすがったが、
一歩届かず11位でレースを終えた。予選順位からはポジションを4つアップさせ、また、レース
ラップながら予選でマークしたタイムをさらにコンマ2秒以上短縮し、ベストタイムは2分3秒039
とするなど健闘をみせた。

一方の竹谷はスタートで若干出遅れ、ポジションを落とす。しかし、焦ることなく周囲を見渡し、
安全にTGRコーナーをクリア。そのままポジション回復に向けて挑んでいくところであったが、
アドバンコーナー進入にて目の前で#20 ABBEY Racingの紀平選手が豪快にスピン。イン側にも
ライバルがおり、ライン変更でそれをかわすことができなかった竹谷はやむを得ず大きく減速を
強いられる。立ち上がりで大きく失速した竹谷は後方から#17 SSファクトリRS金谷VITAの花村
選手と、#28 AEON MALL VITAのRINA ITO選手の2台に一気に前に出られてしまった。また、セクター3ではオーバーステアが顕著で、さらにシフトミスも響き、前との差が少し開いてしまう。
だが、竹谷の気持ちはこのようなことでは屈しない。すぐに走りを立て直し、上手く#17のスリ
ップストリームに入っていた竹谷は、2周目のTGRコーナーにて難なくパス。その後も失った
ポジションを取り返すべく、コカ・コーラコーナーから100Rにて#28を猛プッシュ。前周同様に
スリップストリームにつけた竹谷は、3周目のホームストレートで#28の前に出てポジションを
回復させ、さらに追撃の手を緩めない。スピン車両を 1台、2台とかわし、6周目あたりから
視界にとらえていた#7との差をじわじわと詰め、8周目のホームストレートで前に出て、ポジ
ションを13番手とした。

その後も序盤に誘発させていたオーバーステアを上手く封じ、きれいな走りを披露。堅調に走り
続け、ポジションキープしたままチェッカーを受けた。
レース開始直後の混乱がなければ…と思うところであるが、レース全体を通して竹谷の執念と走り
の丁寧さが垣間見えるレースとなった。

 

 

<DAY3> 5月12日(日)
KYOJO CUP公式予選(9:00~9:20)
前日のFCR-VITA決勝の後、1枠のみ設けられた公式練習走行枠でタイムを短縮し、アドバイザー
として駆けつけた大湯都史樹選手から事前にレクチャーを受けたことで手ごたえを感じつつ、
予選に挑む高橋。

コースコンディションも練習走行時と同様に維持されており、入念にタイヤに熱を入れながら
コースイン。アタック1周目から全開で!といきたいところであったが、アウトラップの最終パナ
ソニックコーナーでアタック中のライバルにラインを譲ったため、この周は引き続きタイヤと
ブレーキの熱入れ、そしてコースコンディションの確認に徹する。しかし、その周はまだ十分に
熱入れが完了していなかったためか、100Rでスピンを喫する。即時立て直し、再び真剣アタック
へ。
2周目、全体的にきれいにまとめてコーナーをクリアしていく。しかし、100Rでは前周回のスピン
が災いしてか、かなり慎重なマシン姿勢で進入している姿がみられた。そこを除いては丁寧に
マシンの向きを変え、きれいにコーナーを立ち上がっていく。実質最初のアタックとなったこの周
のタイムは2分6秒755。練習走行のタイムからは3秒近く遅れている。
その後は大きなミスもなく、淡々と周回を重ねていく高橋。ダンロップコーナーではやや突っ込み
すぎなのか、タイヤが毎周回鳴いていたが、一周一周徐々にタイムを詰めていき、2分6秒台から
5秒台と更新していく。
高橋自身でもペダルの踏み替えが緩慢であることを課題として挙げていたが、そこを意識してか、
ラインや走らせ方を変えることなく、予選終盤に近づくにつれ安定して速くなっていく。最終的に
は6周目の2分4秒652がベストラップとなり、予選順位を9位とした。一発のタイムでは練習走行
ほど記録が伸びなかったが、予選周回全体で考えるとコンスタントに2分4~5秒台をマークできて
いたことから、決勝でのポジションアップが期待された。

 

 

 

KYOJO CUP決勝(13:25~ 10LAP)

気温は18℃。路面温度は35℃。この時期のこの時間としては日差しも穏やかで高くはない。
チーム全員で高橋のグリッドに集合し、スタートに向けて激励する。

日本各地に国際格式のサーキットは多数存在するが、中でも富士スピードウェイはやはり集客率が
高い。前日のFCRでも多くの人がグリッドを訪れていたが、KYOJO CUPとなるとさらに多くの
ファンが集い、フォトセッションにおいても、その人気の高さを物語っていた。

時は刻一刻とスタートに向けて動いている。エントリー台数的にはFCR-VITAよりも少ないが、
戦う女子たちの放つオーラや緊張感はそれに勝るとも劣らないただならぬ空気感をもっている。
やがてドライバー以外の人は離れ、フォーメーションラップ開始。10台と限られた台数である
ため、グリッドに再整列後間もなくシグナルが順に点灯し始める。
そしてスタートの瞬間。高橋は3000rpmにてクラッチミート。各車混乱もなく、順当な滑り出しで
KYOJO CUP決勝は幕を開ける。
そしてTGRコーナーに向かってブレーキング。タイヤが冷えた状態で突っ込む最初のこのコーナー
はどのドライバーにも緊張を強いる。すると集団の先頭の方で白煙が上がった。#33 SHOWA-SD
VITAの細川選手が痛恨のスピンを喫していた。その後方では各車避けようとラインを大きく外し、
立ち上がっていく。高橋もうまく避けることが出できたが大きく失速。その間に後方イン側から
迫っていた#11 D.D.R Vita01の粟野選手に先行を許してしまい、ポジションは9位のままレースが
続く。
その後のコカ・コーラコーナーではピタリと#11をマークし、予選では難儀していた100Rをアウト
側から丁寧に攻略し、インとアウトが逆転するアドバンコーナーにおいて再び前に出ることに成功
する。この時点でポジションは8位。決勝でもやはりダンロップコーナーでは苦労してマシンの
向きを変えている姿もみられたが、なんとか前との差を広げることなくセクター3を駆け抜ける。
しかし2周目のTGRコーナーでブレーキングが遅れ、大回りに。その間に少しずつ差を詰めてきて
いた#33に一気に間合いを詰められ、もつれたままセクター2及びセクター3へ。3周目のホーム
ストレートでスリップストリームに入られていた高橋は#33に先行を許す。9位にポジションを
落とした高橋であったが、いたって冷静に走り続ける。TGRコーナーでのオーバーステアを素早い
カウンターで上手く封じ、100Rもこれまで攻略できていなかった新たなラインをトレースし、
走りが鋭くなっていく。
6周目、急に前車に近づく。前方で混乱があったのか、その前にも数台連なっている状況。この
ままコンスタントにラップを重ねていけばチャンスは訪れると信じ、果敢に攻め続けた。そして
迎えた7周目、アドバンコーナーで前を走っていた#13 小倉クラッチVITAのおぎねぇ選手がスピ
ン。冷静に走り続けていた高橋は、自らの順位を8位に押し上げた。そんなレース中盤、トップの
#87 おさきに☆どうぞVITAの山本選手にスタートグリッド停止位置違反によりドライビング
スルーペナルティが科せられる。これによりポジションをさらに一つ上げ、7位となる。
レースラップが2分5~6秒台がベースとなっており、予選以上に安定した走りができていた高橋で
あったが、ドライビングスルーペナルティを消化し、徐々に差を詰めてきていた#87にファイナル
ラップのゴール目前にして前に出られ、レースは8位でのチェッカーとなった。しかし、レース後
車検において1台のマシンに失格処分が下され、高橋の最終リザルトは7位となった。堅実な走りで
着実に順位を上げていった高橋は、過去最高の7位で2019年初戦を終えた。

 

~レース後、チームオーナーコメント~

今年マシンを新調して、バランス自体は昨年のマシンより非常に良い感触を得ています。但し、
富士に合ったセッティングはまだ出ていないという現状なので、試行錯誤を繰り返しながらの予選
アタックおよび決勝となりました。練習時間がなかなか取れなかったことも要因のひとつですが、
6月中にセット出し・トレーニングのために再度富士スピードウェイに向かいます。やはりセク
ター3で他車に引き離される傾向があるため、しっかりとセッティングの方向を定め、トップ勢と
同じようなラップタイムを刻めるようにしたいと思います。手応え自体は感じているので、
しっかりと今期中にトップ争いに加われるよう、マシンづくりと自らの技術向上に努めたいと思い
ます。

Koshido Racing 佐藤 元春

2019.05.31 2019年シーズン スポンサーシップに関しまして

2019年度における「Koshido Racing」の活動に、ご理解とご協力を賜りまして、心より感謝申し上げます。

多くの企業様よりご協賛いただき、責任の重大さを感じるとともに、私どもができる限りの恩返しをしてまいりたいと考えています。

 

 

 

2019年シーズンもどうぞよろしくお願いします。

2019.01.30 24H DUBAI 2019 RACE REPORT

第14回 HANKOOK 24H DUBAI 2019
開催日時:2019年1月10日(木)・11日(金)・12日(土)
開催地:ドバイ オートドローム(アラブ首長国連邦)
チーム:MRS GT-Racing(#989)
ドライバー:横溝 直輝、近藤 保、Ken Seto、Xu Wei、佐藤 元春
マシン:Porsche 991 Cup Car(Type 991-Ⅱ)
クラス:991 – Porsche 991 Cup Cars
天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
予選~総合:41/75位、 クラス:11/11位
決勝~総合:43/75位(DNF)、 クラス:6/11位

毎年1月にドバイ・オートドロームにて開催されている24時間レース。Koshido Racing代表である
佐藤元春は、MRS GT-Racingより989号車でエントリーしていた。

一緒に参戦する面々は、富士スピードウェイで開催されるCARGUY Super Car RaceやFerrari
Racing Daysではライバル関係にある近藤保選手、Ken Seto選手、またアジアルマンシリーズで
活躍しているWei Xu選手、そしてGTドライバーである横溝直輝選手という布陣。

今回、佐藤は海外レースへの出場は勿論のこと、ドバイオートドロームの走行、ポルシェカップ
カードライブ、24時間耐久、ナイトセッションと、初挑戦となることが目白押しで、緊張と期待に
満ち溢れていた。
まずはコース攻略として、2018年暮れよりドライビングシミュレーターによる特訓に通い詰め、
路面の起伏やライン取りを徹底的に叩き込んでいた。舞台となるドバイオートドロームは全長が
5390メートル、16個のコーナーからなるサーキットで、路面のうねりも所々に見られる。周りに
砂漠が広がっていることもあり、ラインを外すと砂に乗ってあっという間にコーナー外に膨らみ、
コースアウトや急な姿勢変化に見舞われる。また、気温も1月といえど日中は30度以上にも達し、
夜には15℃以下と寒暖差が大きく、現地の気候に慣れていない身には体調維持だけでも厳しい
コンディションである。

<DAY1> 1月9日(水) 練習走行(11:00~)

佐藤にはいよいよとなる国際レースデビューの日。今回のドバイ24時間は80台近くがエントリー
しており、走行中の混雑は容易に想像できる。しかも実質的な練習走行はこの日からということ
もあり、走行開始とともに各チームのピットより次々にマシンが射出されていく。無論、各車一斉
に出走した結果、コース内は即渋滞に見舞われることとなった。

程なくして赤旗が降られ、なかなかコース攻略に移ることができない佐藤。それでも日本にいる
間にシミュレーターで組み立てた走りのイメージを活かし、初乗りでのタイムは横溝選手の+3秒
につける。これはジェントルマンドライバーであるチームメイトの中ではトップタイムであった。
コース内は変わらず混雑している中でのタイムということを考えると、やはりこの辺は普段から
多数レースに参戦している経験が活きているといえよう。


横溝選手よりロガーデータからアドバイスを受ける

 

<DAY2> 1月10日(木)
予選(16:15~)

予選の朝、各ドライバーはブリーフィングのために一堂に会していた。各国から数多くの著明ドラ
イバーが集まる本レース。その全員が集まると圧巻の人数である。指定されたそこはまるで大学の
講堂のような広い空間。ドバイ24時間レースの規模の大きさを物語っている。ブリーフィング後は
フリー走行の時間が設けられ、各チームが予選前の最終調整を行っていた。
予選アタックは佐藤が担当することとなった。先に述べた通り、横溝プロを除くチームメイトの中
ではトップタイムをマークしていた佐藤。ジェントルマンドライバーでどこまで上位に食い込める
か期待が寄せられる。しかし、レースはそう甘くはなかった。そもそも今回のセッティングはアマ
チュアドライバーがメインのチームであることから、シビアな挙動は避け、極力ドライビングにお
ける負担を軽減することを目的とした安定的なものであった。そのため同じ991クラスの上位車両
に比べると、車の動きが穏やかな分、俊敏性に欠け、1周回ごとに3~4秒の差が生まれてしまう。
また、本人はヨーロッパのプロドライバーやポルシェ職人の壁が大きかったともコメントして
おり、ヨーロッパにおけるモータースポーツへの取り組み姿勢がいかに熱狂的なものであるかと
いうことを示唆していた。

 

 

ナイトプラクティス(19:00~)

24時間レースといえば夜間走行は避けられない。本番を前にいよいよナイトセッションが始まる。
佐藤は既に同日のフリー走行と予選アタックを終えており、疲労はピークに達しつつある中での
走行である。

やはり夜は視界がきかないこともあり、ラップタイムはどのチームのドライバーもベストから3~
4秒落ちる。最大の難所は1コーナーを抜けた後に続く4速での高速コーナー。コース照明の光も
ほとんど届かず、コーナーの先が見通せないといった状況で恐怖すら覚える。若かりし頃に峠で
慣らした腕前も、本場のナイトレースではまったく意味をなさないほどであったと佐藤。そのよう
な中、後ろからは容赦なくGT3車両が迫り、パッシングとともにぎりぎりのところをかすめ、抜き
去ってゆく。しかし、この頃には佐藤も911の乗り方をかなり掴めてきており、大きな疲労と引き
換えに決勝での走行前に充実したプラクティスができたと好感触を得ていた。

 

<DAY3> 1月11日(金)
決勝(15:00~ 24hours)

ドバイは1年を通して雨が降ることがなく、このレースウィークも常に快晴。
スタート前にチームで入念にミーティングが行われる。

長丁場を前に、レース運びや最終的な注意点についてしっかりと確認し合う
スターティングドライバーは佐藤が担当することとなった。ドバイ入りしてから3日が経過して
いるが、自身でも成長を自覚できるほどの様々な経験を積み、決勝に臨む。
午後に入り、スタート時刻が迫りつつあるが、これから始まる長い戦いを前にチームメンバーは、
緊張というよりも心からレースを楽しんでいるという雰囲気が伝わる。

スタート直前、リラックスムードの中での一コマ

そして時刻は15時。いよいよ24時間の幕が開ける。スターティンググリッドには様々なGTカーや
ツーリングカーが総勢75台も並び、ホームストレートは一層賑やかになる。989号車のグリッドは
41番。991クラスの中では最後尾である。
レースは予定通りにスタート。直後の大きな混乱はないが、とにかくエントリー台数の多さから、
コース上では所狭しと車が行き場を探している

この2日間のプラクティスや予選アタックで911の走らせ方を心得た佐藤は、快調にペースを上げて
いく。7周目にはプラクティスで記録していたベストの約1秒落ちである2分9秒025をマーク。
このタイムはプラクティス同様、横溝選手を除くチームメイトの中で、のちのレースラップベスト
となった。
1時間を経過し、総合順位は53位とポジションダウンしているが、991クラスではトラブルないし
クラッシュで早々に2台のリタイアが出たことで、989号車は9位にポジションを上げていた。
無事に30周を走破し、最初の佐藤のスティントは終了。近藤選手へと繋いだ。最初の佐藤の
スティントこそ30周回であったが、以後はおよそ40周回ごとのドライバーチェンジでレースは
進んでいく。

4時間経過後には88周回で総合順位を40位までアップ。クラス内ではトップと5ラップ差の8位に
つける。この時点で、989号車にトラブルの予兆は見られない。
4時間を回ると少しずつ日も傾き、各車ヘッドライトを点灯させ始める。いよいよ普段のスプリ
ントレースとは異なる雰囲気が漂い始め、24時間レースであることを改めて感じさせる情景が
広がる。

そして毎年多くのクラッシュが発生すると言われているナイトセクションへと突入していく。
ドバイオートドロームは華やかなドバイ市街地の中にあり、サーキット周囲は夜間でも明るい。

しかし、コース内はホームストレートを除き、そのほとんどが暗闇に覆われる。前日のナイト
プラクティスでは、各ドライバーが神経をすり減らしながら走行しており、日中の走行に比べて
何倍もの負担がかかる。この点に関してはいかにサーキット慣れしているかが大きな差となるが、
ほとんどのドライバーがドバイ初走行となる989号車メンバーには大きなハンデとなっていた。
他の991クラスのチームも、タイムは軒並み予選時に比べて3~6秒落ちとなってはいたが、安全
マージンを残しつつタイム差を最小限に抑えるには大きなハードルである。

それでもドライバー面々の努力の甲斐もあり、総合順位を大幅に落とすことなく、夜間走行は続い
ていく。クラス順位も7~8番手をキープしていた。
勿論、ナイトセッションが山場であることは989号車に限ったことではない。日中数件だった接触
やクラッシュは暗くなるにつれて一気に増え、コード60(他レースではセーフティーカー導入に
該当)の回数が大幅に増える。

参考までに、昨年は35回のコード60が発令されたが、その大半はナイトセクションであった。
レースは過酷を極める一方であるが、その傍らで花火が上がるなど、24時間レースならではの
楽しい雰囲気も垣間見られる。

7時間を経過し、周回数は155周。総合46位、クラス7位につけ、順調に周回を重ねていた989号車
であったが、22時頃ついにトラブルに見舞われる。

無線が使えなくなり、緊急ピットイン。幸いにして復旧に多くの時間を要することはなく、横溝
選手にドライバーチェンジし、ほどなくしてコースに戻っていく。7時間時点で後ろにつけていた
979号車とは7周のマージンがあり、このピットインでは順位変動なく、レースを続けることが
できた。その後は横溝選手の走りでトラブル対処に要した時間を少しずつ消化していく。ラップ
タイム的には、989号車の他ドライバーの日中走行のペースと遜色ないか、むしろ上回るくらい
である。そして時刻は日付が変わる時間帯へ。ちょうどその頃に再び佐藤のスティントが迫って
いた。

 

<DAY4> 1月12日(土)決勝( ~24housゴール)

日付は変わり、残り15時間。989号車は無線復旧後、再び問題なく走行を続けていた。アマチュア
としてはレース経験豊富な佐藤に、「怖くて本当に大変だった」と言わしめたナイトセッション。
その本番である決勝に挑むべく、レース開始から202周を数えたところで佐藤にドライバー交代の
時がやってきた。

佐藤としては意外にも消極的なコメントを残していた暗闇の中での走行であったが、いざ蓋を開け
てみれば2分12秒231と、日中同様に横溝選手を除くチームメイトの中でのトップタイムをマーク
していた。努力と適応能力の高さで、初走行となるコースも自分のものとしていく。約2時間を
走破し、次走者にバトンを渡す。この時点で順位は総合44番手、クラスでは7位とポジション
キープ。マシンセッティングにハンデがある中でのポジションキープ、まして決勝におけるナイト
セッションという条件下では、さすがに心身ともに疲労が大きい様子であった。

ドライバーやピットクルーの休息場所は隣接するサーキットホテルであったり、はたまたピット裏
に設置されたテントの中となるが、いずれもコース内を走行しているマシンたちの耳を劈くような
エキゾーストに苛まれ、十分な睡眠をとるには困難極まりない様子である。

次第に夜は明け、時刻は6時。夜間15度ほどだった気温は、日光が差すと同時に即23度まで上昇。
まさにドバイならではである。

7時を回る頃、再び989号車にトラブルの波が訪れる。ABSが作動しなくなったほか、ブレーキが
効かなくなったと近藤選手より報告が入った。走行に直接影響する類のトラブルだけに、今回ばか
りはさすがに慎重に対処せざるを得ない。ピットインし、左リアサスペンションを交換。40分ほど
を要した。

メカニックが必死に対処を試みたが、ABSトラブルは原因がわからず、やむを得ずそのまま安全
走行で完走を目指すという方針でコースに戻る。しかし、サスが原因だったのか、幸いにもABSは
復旧していた。前述の通り夜間はクラッシュが多くなるが、夜が明けたこの時間帯もドライバーの
疲労によるミスからクラッシュする車両も少なくない。ABSが再び使えるようになったことは、
疲労で集中力を欠きやすい状態にあるドライバー達にとって安心材料となったはずである。
この時点で18時間が経過。ピットストップに1時間以上を要していたが、991クラスのライバルが
クラッシュ・リタイアしていたため、順位はそのままに走行を続けることができた。

20時間を経過し、周回数も400周を数えるころ、前を走っていた991クラスのライバル一台が
クラッシュにて戦線を離脱する。元々40周以上の差があったが、コンスタントに周回を重ね、
残り1時間をまわったところでついに逆転。989号車はポジションを6位に上げる。
その後はトラブルの予兆もなく、このまま残りの数十分も無事に走り切り、感動のゴールの瞬間を
迎えるだろうといった安堵の空気が漂い始めるピット内。ラストスティントのドライバーに抜擢
されていた佐藤はチェッカーまでの15分で自身の仕事をきっちりこなすべく、ピットで準備して
いた。最後のドライバーチェンジも問題なく、コースに戻っていく989号車。その先に待っている
のは24時間の戦いを乗り越えた達成感と仲間たちと分かち合う大きな喜びであると、誰もが確信
していた。

しかし、最後の最後にドラマが待ち受ける。

23時間56分30秒。モニターに映し出された自車の姿に、ピット内は騒然。感嘆の声が響いた。
ピットでゴールの瞬間を待ちわびていたチームクルーも、日本で夜通し応援し続けていた友人や
チームあるいは会社のスタッフも、そしてなによりドライブしていた佐藤自身も、その現実を
受け入れられなかった。佐藤によると、バックストレートで突如ギアが入らなくなり、そのまま
止まってしまったとのこと。車内では試行錯誤し、再始動を試みる佐藤の姿が見られたが、エン
ジンが再び息を吹き返すことはなかったという。一瞬ガス欠とも思われたその症状であったが、
結果ECU系のバグによる燃料カットが原因と判明。タンク内には6リットルほど残っていた。
残り3分半。受け入れがたい結果であるが、これがレースの厳しさである。

直前で完走は逃したものの、リザルトは493周回で総合43位、クラス6位として記録された。
ドライバーもチームスタッフもこのままでは終われるはずもない。いずれ必ずリベンジすることを
誓い、ドバイを後にした。

~レース後、ドライバーコメント~
初めての海外レース、しかもそれが24時間耐久ということで、しっかりと体調を整え、全力を
出せるような状態で臨みました。今回は横溝プロの他、ジェントルマンドライバー4名(日本より
3名、中国より1名)の合計5名で戦ってきました。ドバイに着いたのが現地時間の朝5時過ぎという
ことで、時差呆けを生じないようにするために到着当日は一切仮眠をとらず、夜中まで起き続ける
ことに専念しました。それが功を奏し、現地時間に身体を順応させることができ、2日間のプラク
ティスも問題なく進めることができました。ドバイのコースレイアウトは周りが砂漠ということも
あり、ところどころ砂が浮いてスリッピーな場所もあれば、タイヤカスが溜まっている部分も
あり、プラクティスからライン取りを意識して取り組みました。特に1コーナーを抜けた後の高速
コーナーに関しては、リア荷重が抜けると車が飛んでいくようなところもあるので、フロント荷重
過多にならないようにリア荷重も意識しながら、4輪を沈めてコーナリング姿勢をつくっていくこ
とを念頭においてトレーニングしていました。その結果、徐々にタイムを短縮でき、自分としては
初めてのコースでは納得のいくプラクティスができました。
レース本番では予選アタック、オープニング、チェッカー担当という非常に重要な役割を果たす
ことになりました。予選アタックは当然GT3、GT4、TCR車両との混走であったため、レーシング
ラインを意識しつつもGT3をパスさせることによるロスタイムが最小限になるように努めました。
予選のタイムに関してはフリープラクティスの時よりも短縮でき、自分としてはさらに更新できる
という手応えは残しつつも、納得いくアタックができたと思っています。
そして約80台にも上る台数の中、決勝がスタートとなりました。本レースに関してはフォーメー
ションラップが2ラップありますが、2ラップ目の後半には隊列を組まなければならなかったため、
1ラップ目にしっかりタイヤとブレーキに熱を入れて、1.5周の間に車両をベストな状態に持って
いくことを意識しました。当然ながら多くの台数の中でのバトルなので、しばらくは他車との接触
を避けなければならず、前後左右に注意を払いながら、かつ自分の持てる走り、必ずマージンを
残すこと、後方から迫る車両のクラスを判断すること、これらに集中にしながらレースを組み立て
ていきました。無線でも混走車両の情報を送ってくれていたので、それも併せて確認し、ロスが
最小限になるように走りました。
自分は最初のスティントが終わり、次がナイトセッションになりましたが、夜間の走行に関しては
1コーナーを抜けた後のハイスピードコーナー、つまりはリア荷重が抜けると危険なゾーンが真っ
暗で縁石も見えない、クリッピングポイントも見えないという状況でした。徐々に修正を重ね、
特に最初に舵を当てるタイミングを調整しながらなるべく本来のレーシングラインに近づけるよう
専念しました。ナイトセッションはどうしてもクラッシュが多く、コード60が頻繁に出ていた
ため、単独はもとより、もらい事故に遭わないように注意し続けることも重要でした。その後の
スティントは明け方だったため、自分のコースへの慣れとレースへの感覚も掴めてきたことも
あり、もう少し詰めていこうという思いで挑みました。その3スティント目の中で、後方からGT3
のポルシェが近づいてきていたのを確認していたため、イン1台分を空けてヘアピンコーナーで
オーバーテイクさせてから追従しようと考えたのですが、相手の車両がアンダーステアを誘発
し、自車のホイールに当たったことで、大きく何かが破損したと認識したため、緊急ピットイン
をせざるを得ない状況になりました。そのタイミングでドライバーチェンジをし、最後は残り
20分をきったところでチェッカーを受けるべく、ラストスティントを担当しました。すべての
ドライバー、エンジニア、メカニック、監督の思いをのせ、あくまでもチェッカーを受けることが
目標であったため、安全マージンを確保しつつ、周りの状況をみてレース運びに専念しました。
残り5分のところで横溝プロから無線が入り、残り2ラップになるであろうと連絡を受け、無事に
走り切ろうと気持ちを新たにしていた矢先、残り3分のところでバックストレート上で6速に入れ
た瞬間にギアが抜けたような症状があり、失速していきました。続いてガス欠症状のアラームが
出たため、緊急用の燃料送油やミッショントラブル時のクラッチでミッションを繋ぐ応急装置を
発動させましたが、ギアが入らないという状況でやむなくコース外に停止し、車両は23時間57分
でストップしました。最終的には牽引され、ピットまで戻りました。チェッカーは受けられなか
ったですが、実際には完走扱いとなり、クラス11台中、6位という結果を残すことができました。
初めての海外、24時間耐久と初めてづくしだったのですが、みんなと喜びや悔しさを共有できた
ことは非常に有意義なものと思っております。またこのメンバーでドバイに限らず、24時間耐久
レースに参戦したいと思いました。
また、今回自分の所属チームのエンジニアもメカニックも女性だったのですが、良いカルチャー
ショックとなりました。ヨーロッパではドライバーに限らず、車のメンテナンスに携わるスタッ
フも女性が活躍しているということから、日本もそういった流れにしていくことが望ましいと
考えます。男性・女性という垣根をなくし、女性がメカニックとして、エンジニアとして活躍
できる場をつくっていくことができればという思いをチームオーナーとして強く感じました。

Koshido Racing 佐藤 元春

2019.01.20 Fuji Champion Race Series 2018 FCR VITA Rd.4 RACE REPORT

Fuji Champion Race  VITA-01 Rd.4
開催日時(FCR-VITA):2018年11月17日(土)
開催地:富士スピードウェイ(静岡)
ドライバー(FCR-VITA):佐藤 元春
マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機
参戦クラス:FCR-VITA
天候(FCR-VITA):予選/曇り、決勝/晴れ
路面予選(FCR-VITA):予選/ドライ、決勝/ドライ
佐藤 元春  予選:23/29位  決勝:17/27位

2018年のFuji Champion Race(FCR)もいよいよ最終戦。佐藤はいつも通りVITA-01クラスにエン
トリーしていた。北海道民とはいえ、この時期ともなると冠雪した富士山から吹き降ろす風が冷た
く感じられ、シーズンの終わりを肌で感じさせられる。空気も澄んでおり、富士山もくっきりと
その姿を見せていた。そんな凛とした11月の空気の中、VITA-01での今年最後の決戦の火蓋が切ら
れた。

<DAY1> 11月16日(金)
公式練習走行(30分×4本)

いつも通りであればレースウィークの木曜日には現地入りし、フリーでのスポーツ走行枠を使って
練習走行に励んでいるが、今回は専有イベントが入っていたために金曜の公式練習からの走行と
なった。
この日の1枠目は8:30からのスタート。第3戦に引き続きKoshido Racingドライビングアドバイザー
である平中選手がまずステアリングを握る。限られた時間で走りを組み立てていく必要がある
ため、最初のこの時間を平中選手がドライブし、セッティングの方向性を打ち出していく。

天候は快晴。冒頭でも述べたとおり空気は冷たく、エンジンの伸びには一役買いそうな気候である。
しかし実際に走り出してみると、今期常に悩まされ続けていたエンジンパワー不足に苛まれる。
コーナー進入では鋭く間合いを詰めていく平中選手。そのままの勢いでコーナーを立ち上がるが、
あっさりと他のVITAに離されていく。特に1(TGR)コーナー、アドバンコーナー、最終パナソ
ニックコーナーなど、低速まで減速した後に長いストレート区間を有する場所で顕著にみられて
いた。また、立ち上がりで上り勾配になっていくダンロップコーナーでもパワー不足がはっきりと
現れていた。

それでもタイム的には2分2秒340と、今期610号機で記録した富士スピードウェイでのタイムの中
では最も速かった。
9:50からの2枠目は佐藤がコースイン。やはりパワー不足は否めないが、挙動は安定している。
最終戦ということもあり、佐藤は今回悔いなく走り切りたいと練習走行より気合が入っていた。
燃料は満タンかほぼそれに近い状態での走行。ライバルのVITAと一緒にコーナーに飛び込むと
アンダーステアが顔を覗かせることもある。しかし、そんなトライ&エラーを繰り返しながら自ら
の走りを組み立てていく。
インタープロトやCCS-Rとの混走で、なかなか自分のラインに乗せて走ることができなかったが、
2分3秒930をマーク。続く3枠目では3秒フラットまで縮めた。

最終枠も時間いっぱい走り切り、ライバル車との駆け引きやマシンの動きのチェックに勤しんだ
佐藤。タイヤが喰いすぎることで100Rが失速気味といった状況ではあったが、3秒台半ばをコンス
タントにマークし、練習走行を終えた。

練習走行結果

佐藤 元春:2’03.050(AIM計測)

 

<DAY2> 11月17日(土)
公式予選(8:35~8:55)

上空にはところどころ雲がみられるものの、天候は前日に引き続き概ね晴れている。気温は前日
同様低く推移しており、水温管理には気を使う。他車にストレートで大きく水をあけられるという
現状を打開できないまま最終戦にもつれ込んだ今シーズン、オーバークールによるパワーロスを
最小限にとどめるべく、エアインテークのテーピングを入念に行う。

車両の準備が終わったところで、佐藤はしっかりとタイヤに熱を入れながらコースインする。練習
走行で走りの組み立てができていた佐藤は、2周目より即アタックを開始。最初のアタックラップ
で2分5秒507を記録したのち、周回を重ねるごとにコンマ数秒ずつ短縮していく。水温はコース
イン前にテーピングしたにもかかわらず最高で66.8℃と低めであった。参考までに、今年の610号
車の富士スピードウェイでのベストタイム記録時の水温に比べると5~10℃ほど低く、パワーが
潤沢に出ている状況ではないことが予測される。挙動を大きく乱すこともなく、すべてにおいて
まとまった走りではあったが、タイムは2分4秒1と伸び悩んだ。やはり今シーズンの富士スピード
ウェイでの戦いを象徴するストレートでの多大なる遅れが最後まで足枷となり、23番手という
順位で予選を終えた。

公式予選結果

佐藤 元春:2’04.129

この日はスーパーFJの最終戦も併催されており、北海道クラブマンカップシリーズVITA-01で
Koshido Racingから参戦していた石崎竜一朗が出場。今期シリーズ参戦しており、年間チャンピ
オンをかける重要なレースである。

予選2位からのスタートとなり、ポイントランキング2位の選手との僅差のバトルが続いたが、
ライバルより前でチェッカーを受け、見事シリーズチャンピオンを決めた。

 

決勝(12:30~ 10LAP)

天候は快晴となり、気温は少し上昇。予選ではなかなか期待通りの値に達しなかった水温も上昇が
見込まれる。いつもと同じようにピットロードを出たところから丁寧にタイヤを温め、自らの
スターティンググリッドに向かう。
サインボードの見落としのないよう、改めてピットの位置をチェックする佐藤。

今回のFCR-VITAは最終戦ということもあってか、エントリー台数がこれまでのレースに比べて
2割ほど多く、一層賑やかな様相を見せている。
グリッドについた佐藤は、緊張のスタートを待つ周囲の喧騒に流されることもなく、最後の戦いを
前に心頭を滅却する。悔いを残さないために。

いよいよスタートの時。
ここ最近のレースでのスタンディングスタートは安定の速さを見せる佐藤。今回は富士スピード
ウェイでのドライ路面ということもあり、4000rpmからのクラッチミート。これが絶妙なトラク
ションを生み、スタートから1コーナーで1台をパスする。そのままの勢いでさらにポジション
アップしたいところではあったが、タイヤはまだ冷えた状態であり、100Rではアンダーステアも
オーバーステアも出る。ここは素早い修正舵でマシンを抑え込み、ポジションをキープした。
タイヤも温まりつつある2周目は挙動が安定し、コカ・コーラコーナーでコースアウトしている
車両を横目にスムーズなステアワークでコーナーをクリアしていく。同一周回の最終コーナーでは
アンダーステアを出した前走車を立ち上がりでパスし、そのままイン側をキープ。ストレート
スピードに勝るライバルを相手に1コーナーで何とか前に出る。
インフィールドに入ってしまえば、ミスをしない限りほとんど抜かれることはない。次のストレー
トまでにマージンを稼ぐべく、アグレッシブに攻め続ける佐藤。これまでのレースより細かなカウ
ンターを何度も当てている姿が見受けられた。

レースは4周目。ダンロップコーナーでスピンしているライバル車両を冷静にかわし、それ以降は
単独走行が続く。レースラップも6周目に突入し、13コーナーで失速しているライバル1台をパス。
そのまま最終コーナーまで速度を維持し、スリップにつかれないようにホームストレートでは
ラインをずらす。


今年最後のレースを戦う佐藤を、チームスタッフ全員が見守る

7周目、100Rでアンダーステアを誘発し、アドバンコーナーでの進入スピードが落ちる。久々の
ドライビングミスに一瞬リズムが崩れかけたが、即修正。しかし、その周の最終コーナー立ち上が
りから後ろに張り付かれ、スリップストリームから抜け出た1台に1コーナーで再び前に出られる。
その後、ホームストレートで差を拡げられてはインフィールドで詰めるといった状況を繰り返し、
そのままフィニッシュ。最終的に17位まで順位を上げてのゴールとなった。

シーズン中、マシンを労わりながら走り続けてきた佐藤であったが、今回の最終戦では後悔しない
ためにも遠慮することなく、全力を出し切って走り切りたいとレース前より話していた。結果、
マシン性能のハンディを背負いながらもポジションを6つ上げたことは、来シーズンへの手応えと
なったはずである。

 

~レース後、チームオーナーコメント~

1年間全戦参戦したうえで、自分が考えていることすべてをお話ししたいと思います。 それは
マシンに個体差がありすぎるということです。これはプロドライバーに乗ってもらい、他のサー
キットでコースレコードを持っている若手ドライバーも乗せましたが、明らかに他のマシンより
3〜4秒遅かった。同じようなセッティング、同じようなエンジン・ミッション、同じような水温・
油温管理で臨んでもそれだけの差がありました。こればかりはどうしても覆すことができません
でした。セッティングと自分の実力で1秒は覆すことができても、3〜4秒という差は不可能です。
我々の見解としては、おそらくフレーム自体の個体差が大きいのではないかという判断になりま
した。来季に向けては新しい車両を購入して、それが皆と戦えるマシンであることを信じて、
本当の意味でのイコールコンディションで戦いたいと思います。それが実現した時にはしっかりと
結果を残し、メカニック、エンジニア、ドライバー、チーム全員の成果を見せたいと思います。

Koshido Racing 佐藤 元春


2019.01.20 北海道クラブマンカップレース2018 Rd.4 VITA-01 RACE REPORT

北海道クラブマンカップレースRd.4 VITA-01
開催日時:2018年9月30日(日)
開催地:十勝スピードウェイ(北海道)
ドライバー:佐藤 元春(#610)、石崎 竜一朗(#310)、竹谷 和浩(#712)、
大島 良平(#777)
マシン:恒志堂レーシングVITA 610号機、310号機、712号機、777号機
参戦クラス:北海道クラブマンカップレース (VITA-01クラス)
天候:予選/曇り、決勝Race1/曇り、決勝Race2/雨
路面:予選/ドライ、決勝Race1/ウエット、決勝Race2/ウエット
佐藤 元春  予選:1/14位 決勝Race1:1/14位 決勝Race2:2/14位
石崎 竜一朗  予選:2/14位 決勝Race1:6/14位 Race2:7/14位
竹谷 和浩   予選:9/14位 決勝Race1:5/14位 Race2:1/14位
大島 良平   予選:10/14位 決勝Race1:8/14位 Race2:5/14位

 

日中も肌寒い日が続き、日没後は明らかに寒さが増す9月の末日、北海道クラブマンカップ最終戦
となる第4戦が開催された。本レースは1~3戦とは異なり、2レース制で争われる。1レースは10周
で、いつもより2周ほど少なく設定されており、予選は1レース目に対してのみ行われる。2レース
目のグリッドは1レース目のベストタイム順に基づいて決定される。
今回は第3戦で都合がつかず参戦できなかった竹谷が712号機に戻り、310号車には石崎、610号車
は佐藤、777号車に大島良平と、この3台はいつもと同じラインナップ。全車レギュラードライ
バーでのエントリーとなった。
今期はこのシリーズでまだ優勝がないKoshido Racing。各々最終戦で何としてでも表彰台の頂点を
ものにしておきたいという思いが強くあった。

<DAY1> 9月28日(金) 練習走行

佐藤と石崎両名はこの日から十勝入りし、フリー走行枠での練習に励んでいた。同日は他にも数名
のライバルたちが走行しており、#61 HDC 日本平中自動車の平中繁延選手や#88 OPTech☆東北海
道ヤナセの坂野選手の他、同月初旬に開催された耐久戦に続いてエントリーしている選手たちも
走行していた。
この日は11:30からの走行開始となった。天候は晴れており、正午近くになるが、気温は15.5℃と
すっかり涼しい気候となっている。湿度は58%でコンディションとしてはまずまず良好といった
ところ。北海道クラブマンの最終戦ということもあり、ドライビングアドバイザーである平中克幸
選手も駆けつけ、一本目の走行枠でマシンとコースの感触を確かめるべくVITAに乗り込んだ。

決して暑くはないが、走り出して数周で水温が90℃まで上昇。最高速の伸びにも影響し、ラジエ
ターエアインテーク部のテーピングを調整して再度コースイン。調整後の水温は82℃。1分33秒
フラットをマークし、午前の走行を終える。
午後は車高を5ミリ下げ、タイムは1分32秒5とさらに短縮。気温は17.3℃まで上昇していたが、
水温は午前の走行時と変わらなかった。
佐藤は15:30からコースイン。遅いスタートとはなったが、練習に長い時間を費やしてきた十勝と
いうこともあり、マシンのセッティングの方向を確認しつつ、15周回ほどで走行を切り上げた。
ベースのタイムを1分33秒台前半とし、所々32秒台をマークする走りをみせていた。
同日十勝入りしていた石崎は、ドリフトコースを使用し、自らが乗るエンジンオーバーホール後
の310号機の慣らし走行に徹していた。

練習走行結果

佐藤 元春:1’32.896
平中 克幸:1’31.532

 

<DAY2> 9月29日(土) 特別スポーツ走行

前日の夜に竹谷が合流し、早朝には大島良平も十勝入りとなった。これでKoshido Racingのドライ
バーが勢揃いし、ピット内のムードもより賑やかなものとなる。併催のNetz Cup VITZレースに
参戦中の清水宏保選手も訪れていた。

一枠目の走行開始は9:40から。気温もまだ上昇しておらず、エンジンには好条件であるためか、
各車ベストに近いタイムをマークしていく。その後の走行枠は11:00~、12:20~、13:40~、
15:00~と続き、次第に気温・湿度ともに上昇していたが、一枠目で佐藤が1分32秒6、大島良平が
1分33秒8でこの日のベストとし、午後からは竹谷が1分34秒4、午前中の走行枠いっぱいを慣らし
に使った石崎が1分32秒8で午後にベストラップを記録した。


惜しみない努力を重ね、技術が熟成しつつある佐藤


参戦一年目にして目覚しい成長を遂げた大島良平

どのドライバーも全走行枠を通してタイムのばらつきが少なく、安定してベストタイム近辺を刻み
続けていた。これは一年間の走行経験を通して培ってきた技術が成せる業といえる。決勝での安定
した戦いにチームの期待も高まっていた。

練習走行結果

佐藤 元春 : 1’32.673
石崎 竜一朗: 1’32.865
竹谷 和浩 : 1’34.442
大島 良平 : 1’33.811

 


長い慣らし走行を終え、一息つく石崎。エンジンコンディションに手ごたえを感じている。

 

<DAY3> 9月30日(日)
予選(8:55~9:15)

天候は曇り。予選前の気温13.9℃、湿度88%。上空を覆う雲は厚く、高い湿度と相まって今にも
雨が落ちてきそうな空模様である。

雨天に変わる前にと、各車順序コースインしていく。
まず佐藤が1分33秒6で周回し、2周目には早くも32秒台へと短縮する。続いて石崎も33秒台前半を
マーク。その後周回を重ねていく毎にコンマ数秒ずつ短縮し、32秒7とした。竹谷・大島良平の
両ドライバーは、34秒台前半をコンスタントにマークし、Koshido Racing勢が順調に上位を占めて
いくと思われた。しかし、ライバル達も手をこまねいてみているわけではない。#88 OPTech☆東
北海道ヤナセの坂野選手が1分32秒台をマークしたのをはじめ、#61 HDC 日本平中自動車の平中繁
延選手や#11 さくら眼科十勝スクールの今野選手、#9 十勝レーシングスクールTAKUMI01の鬼塚
選手、また#3さくら眼科☆OWLwithRS-α01の古井戸竜一選手も相次いで33秒台を記録し、
Koshido陣営の行く手を阻む。
最終的に1分33秒台に4台が入り込み、竹谷・大島良平はそれぞれ9・10番手につけた。32秒7を
記録していた石崎は辛うじて坂野選手の追撃を振り切る形で2番手、佐藤はその後さらにタイムを
縮め、1分32秒489でポールポジションを獲得。

予選結果

佐藤 元春 : 1’32.489
石崎 竜一朗: 1’32.730
竹谷 和浩 : 1’34.205
大島 良平 : 1’34.288

 

決勝Race1(11:25~、10LAP)

スタート時こそ降ってはいないものの、予選後からそれまで続いた雨により路面はウエット状態と
なっていた。気温は14℃、湿度89%。コンディションが悪化しているにもかかわらずKoshido
Racingの面々には緊張している様子はない。気負いというより寧ろこれからのレース展開に期待を
寄せているようにすら見える。


応援に駆け付けた家族に囲まれ、良い表情を見せる竹谷


心からレースを楽しんでいることを窺わせる大島良平

各車グリッドへ。フロントローはKoshido Racingが独占している。
気温が低く、濡れた路面でスタートは一層神経を使う。フォーメーションラップでは到底タイヤが
温まる気配はない。ファーストグリッドについた佐藤は低めの回転でクラッチミート。これが絶妙
に決まり、トップを維持したまま1コーナーへ飛び込む。しかしなおも冷えたタイヤが牙を剥き、
2周目までは温まる様子はなく、アンダーステアもオーバーステアも襲ってくる。ウエット路面に
対応すべくラインは一車幅分ずらし、アウト側は縁石にのらない程度に目一杯コース幅を使って
立ち上がる。アウト側の縁石はのった途端に足元をすくわれるため、このコンディションで使う
のはご法度である。
石崎はスタートで一瞬出遅れる。それでもホイールスピンは最小限に抑え、冷静にトラクションを
確保した。しかし時すでに遅しといった勢いで、1コーナーまでに周りのライバルたちに一気に
並ばれ、苦しいラインを迫られた石崎は一気に6位に後退。そこで焦りが出てしまったか、2コー
ナー立ち上がりで痛恨のスピンを喫してしまう。コース外に半車身飛び出してしまったが、幸い
スタックはせず、最後尾ですぐにコース復帰。そこからは覚醒したかの如く、前走車を追い上げ
る。2周目だけで3ポジション取り返し、続く3周目ではSAURUS Jr.を捉える。ラインを塞がれ、
苛立つ場面も見られたが、挙動を乱した隙を見逃さず前に出る。その後も勢い止まらず、もう一台
パスする。

竹谷は絶妙なスタートを決め、#95 幸伸建設Y’sステップの坂本選手との1コーナーでの競り合いに
勝利し、その後2コーナーでの石崎のスピンによる混乱に乗じて一気にポジションを3つ上げる。
しかし、その後に背後から再び後続車に並ばれ、行き場をなくした結果、#89 M.A.R.T STEPの
後藤選手と#95坂本選手の2台に先行を許す。その後はすぐに後藤選手を抜き返し、ポジションを
ひとつ回復させ、坂本選手に追いすがる。
ルーキーイヤーにして上位陣に食い込む健闘ぶりをみせている大島良平は、大きなミスこそない
ものの、これといった決め手に欠け、スタート直後はなかなかライバルたちの前に出られない。
しかも2周目には70Rでの痛恨のミスで最後尾にまで後退。ここからの巻き返しは相当困難で
あった。
3周目からは各車挙動も安定するが、速度はそこまで乗せられない状況。佐藤は1コーナーで3速を
使うこともあるほど。挙動を安定させるためにシフトダウンのポイントもずらすなど、随所に佐藤
の工夫が見てとれた。この積み重ねで2位との間にかなりのマージンを稼いでおり、このままいけ
ば順当にトップチェッカーを受けられる…チームの誰もがそう考えていた矢先、ライバル2台が
絡んでコース上にマシンが残ってしまい、6周目にセーフティーカーが導入された。これにより
佐藤がこれまで築いてきたマージンはゼロに。今季、様々な試練に見舞われた佐藤であったが、
最終戦においてもなお試練は重なる。2周にわたってセーフティーカーが先導する中、リスタート
に向けてタイヤ及びブレーキが冷えないようスロットルとブレーキを巧みに使う。それでも油断
するとオーバーステアが顔を覗かせるため、終始気の抜けない状況が続く。
路面が一部乾きつつある中、セーフティーカー解除。石崎は次の一台をパスするべく真後ろに
つけたところでのセーフティーカーというタイミングとなり、#89の後藤選手を視界に捉えた
ままリスタートの時を待っていた。ファーストラップではまさかのスピンから一時は絶望的な
レース展開となることも予想されたが、セーフティーカー解除後に#9 十勝レーシングスクール
TAKUMI01の鬼塚選手とのバトルも制し、最終的にポジションを7位まで上げ、フィニッシュ
した。ラップタイムでは驚異的な追い上げをみせたことから出走車中トップタイムをマーク。
Race2でのポールポジションを決めた。一方、竹谷は前を行く坂本選手に1コーナーのブレーキン
グでラインを変え、揺さぶりをかける。オーバーが強い712号機を上手くねじ伏せ、残り周回を
常に全開で攻め続けた。予選では振るわなかったが、気が付けば巧みなレース運びとマシン
コントロールで5位にてチェッカーを受けた。しかもレース周回中で2番手のタイムを記録すると
いう健闘ぶりであった。
一時は巻き返し困難と思われた大島良平であったが、2周目以降は堅実な走りでひとつずつ順位を
上げていった。ライバルたちがスピンやコースオフで遅れていく中、最初のミスを感じさせない
走りで挽回していく。

この時、ウエット路面でのVITAの動きを確実に掴んでいた。ツボに嵌れば速いが、どことなく安定
したレース運びに課題が残っていた大島良平。Koshido Racing期待のルーキーは、レースを重ねる
ごとに確実に躍進し、その結果が今回、最後尾からの追い上げ8位という結果に結びついた。
そしてトップを守っていた佐藤。ピットロードに消えていくセーフティーカーを横目に、無事に
リスタートを切る。しかもこれまでよりもブレーキングが鋭くなっている。一時はどうなることか
と思われたが、コーナーを抜ける度に再び2位との差が拡がり、佐藤は安全マージンを残した走り
に切り替える。それでも他の追随を許さず、念願のトップチェッカー。

一年間紆余曲折しながらも努力を続けてきた佐藤に、ようやく勝利の女神が微笑んだ。苦労して
手にした優勝だけに、佐藤もチームの喜びもひとしおである。


完璧なレース運びでの勝利。難コンディションでの好レースをライバルたちと称え合う

 

決勝Race2(14:35~、10LAP)

Race1を終えたドライバーやチームスタッフの面々は数時間後のレースに備え、一息ついていた。
待ちに待ったKoshido Racingの今期初勝利に酔いしれつつ、Vitzレースに参戦する清水宏保選手の
応援のため、グリッドに駆け付ける。同じ北海道出身で、日本各地を転戦する仲間として活躍を
祈るばかりである。


Netz Cup Vitzレース参戦の清水宏保選手

清水選手のレース後、程なくしてRace2の時刻を迎える。
ポールは前述の通り石崎。セカンドグリッドには竹谷がつけ、またもフロントローをKoshido
Racingが独占する形となった。Race1優勝の佐藤は3番手で、こちらもまた好ポジションが狙える
位置につけている。大島良平はRace1のスタートポジションから2つ順位を上げ、今回は8番グリッ
ドからのスタートとなった。
Race1ではぱらつく程度だった雨が本降りとなっており、路面はよりハードウエットに。完全に
濡れてしまっているという点では突如挙動が乱れることはないが、路面温度はより低くなり、滑り
やすいことに変わりはない。スタートでは今回もシビアなクラッチワークとスロットルコント
ロールが求められる。しかし、そんな過酷な状況の中でもやはりKoshido Racingの面々に緊張の
様子は見られない。


ヘビーウエットながらまったく気負いを感じさせない竹谷。同じ712号機で戦う中川が激励する

Race1でトップタイムをマークし、Race2での善戦を誓う石崎
いよいよ北海道クラブマンカップシリーズVITAレースの2018年最後の戦いが幕を開ける。
ポールの石崎はややストール気味のスタート。好スタートを切ったイン側2番手の竹谷に先行を
許す。しかし1コーナー立ち上がりですぐさまポジションを取り返した。
一方の竹谷は、トップ石崎のすぐ後ろでぴったりとマーク。守りのラインの石崎に対し、雨に臆す
ることのない一歩攻めのラインで肉薄する。
3番手の佐藤はスタートでややホイールスピンが多くなったものの、ポジションをキープしつつ
ペースを作っていく。70Rで一瞬トラクションが抜け、姿勢を乱したが即修正し、引き続き前を
追う。すぐ前方で石崎と竹谷が競り合うのを冷静に見つつ、丁寧にマシンを前に進めていった。

大島良平はミスなくスタートを決めるが、ファーストラップ中で一つ順位を落とす。しかし、
前レースである程度ウエット路面のコツを掴むことができていたためか、2周目以降の挙動は終始
安定。早々に元のポジションを取り返し、前を行くライバルたちの隙を虎視眈々と狙う。ラップ
タイムは2周目に1分54秒であったのに対し、周回を重ねるごとにコンマ3秒ずつ、あるいは1秒近く
短縮していき、レース後半には1分50秒台まで縮めてきた。その後半のペース上昇ぶりに、周りの
ライバルたちも驚きを隠せなかったはずである。残り2周のところで前方2台がスピンしている横を
冷静に通過し、ファイナルラップではさらに1台の前に出てトータルでポジションを3つ上げ、
今シーズンの最高順位である5位でフィニッシュした。

石崎はRace1でのスタート直後のスピンのこともあり、慎重にファーストラップを走り切る。
その後堅実に周回を重ねていたが、2位竹谷プッシュがやまず、ミラーに目を運ぶ回数が増える。
レースも後半になると、いよいよ竹谷が真後ろまで迫っていた。前を走る310号機によって水しぶ
きが激しく舞い上げられ、前がほとんど見えない中、7周目の2コーナーで竹谷が仕掛ける。インに
飛び込まれた石崎は、そのままトップの座を明け渡す。クロスラインでのポジション挽回を試みた
が、立ち上がり車速がうまくのらず、そのまま2位に甘んじた。そこから追撃態勢に入るが、焦り
が出たか、8周目の6コーナーで痛恨のスピン。一気に7位までポジションダウンしてしまった。
その同一周回の最終コーナーにて前の2台が姿勢を崩し、コースオフしている間にポジションを
二つ戻した後、9周目の3コーナーで前走車のインぎりぎりをかすめ、#11 さくら眼科十勝スクール
の今野選手の前へ。辛くもポジションを一つ上げ、4位まで復帰する。しかし、この路面にセッ
ティングを合わせきれなかったのか、ファイナルラップの6コーナーにてまたしてもスピン。再び
順位を落とし、7位でゴールした。
レース序盤の石崎のミスで2番手にポジションアップした佐藤は、何度か前に仕掛けにいくが、
竹谷のブレーキングに追いきれない。実際、レース後にも「どんどん離れていった。追いつく気が
しなかった」と称賛のコメントを残している。より強くなる雨脚の中、路面μはさらに低下し、
シビアな挙動に神経をすり減らす戦いが続いたが、決して追うことはやめず、アグレッシブに走り
切り、2位でのゴールとなった。
基本的にターンインで早めに向きを定め、トラクションをかけながらコーナーを脱出する竹谷。
車の姿勢は終始安定しており、大きなミスはほぼ皆無であった。7周目で石崎の前に出た竹谷は
その後さらに勢いを増す。しかし、熱くなりすぎることはなく、ひたすら冷静にマシンを前に
進める丁寧な走りに徹していた。

結果、2位の佐藤以下を徐々に引き離し、そのままゴール。悲願のトップチェッカーである。
シリーズ参戦し、初めてのポディウム中央を勝ち取った竹谷。Race1に続き、またもKoshido
Racingのピットは歓喜に沸いた。


竹谷初の表彰台、そして優勝。ピットも一層の盛り上がりを見せた


初のシャンパンファイトに歓喜の表情を見せる竹谷

 

なお、佐藤は最終戦での優勝・準優勝で一気にポイントを獲得し、シリーズ2位でクラブマン
カップを終えることとなった。
北海道クラブマンカップ最終戦は、まさにKoshido Racing Dayとなった。今期苦労を重ね、時には
辛い結果にも向き合わざるを得なかったこともあったが、努力の継続とチームワークで勝ち取った
結果といえよう。この一年間で積み上げた経験をもとに、来期以降もメンバー全員が善戦を誓った。

~レース後、チームオーナーコメント~
今年は再三再四にわたるエンジントラブル、ミッショントラブル、ECUトラブルに見舞われ、非常
に悔しい思いをしてきました。最終戦ということもあり、ここでしっかり表彰台の頂上に上って
登ってやろうという気持ちで臨みました。事前の天気予報で雨に移行する予報だったので、予選で
しっかりアタックしてポールポジションを獲得し、ポールトゥウィンで逃げ切るしかないと考えて
いました。雨になりコンディションが悪くなってくると、視界も遮られ、オーバーテイクのリスク
も高まります。そのため先行逃げ切りが最も勝利に近い戦法であると考えました。故にスタート時
のクラッチミートもいつもより回転を低めに、かつ丁寧につなぐこと、そしてタイヤが冷えた状態
でのスタートであることから、トラクションが抜けやすいことを念頭に置き、路面にパワーがしっ
かり伝わるよう早めのシフトアップを心掛けました。かつインとアウトに入られないよう、ミドル
より若干外のラインから1コーナーに進入し、きれいに立ち上がることができました。
これまでドライのみならず、セミウエット、ウエット、台風と、様々な状況下で練習を重ねてきた
ため、どのコンディションでも戦える自信はありました。やはり重要となってくるのは、オープニ
ングから2ラップ目でいかに後続車を引き離すかというところにあったので、そういった練習も
意識的に行ってきました。タイヤが冷えた状態でグリップの限界値を掴み、そこを引き出せるよう
な練習をしてきたことが功を奏し、スタートを上手く決めることにつながったと思います。1コー
ナーをトップのまま抜けられたこと、続く2,3コーナーでウエットにおけるレーシングラインを
トレースできたことで、後続が徐々に離れていく姿が確認できたことから、2周目からは若干の
マージンを残しながら少しずつ引き離すという戦法に切り替えました。ところが6周目にセーフ
ティーカーが入り、リスタートが切られる状況になったことで、築き上げてきたマージンがゼロに
なりました。セーフティーカーが先導している間、タイヤの熱が逃げないようブレーキングによる
熱入れを続けていましたが、2周スロー走行する間に想定以上の内圧低下が感じられたため、
セーフティーカーが戻った後は焦らずに1コーナーを抜けることを意識しました。予想以上に雨も
強くなり、タイヤの熱も逃げてしまったことからグリップ感がかなり低下していたため、後続車を
大きく離すことよりしっかりと自分のラインを確保して、少しずつマージンを稼ぐということに
意識を集中させました。ウエットコンディションではミスを誘発しやすくなります。ミスなく走り
切れば勝てるということがオープニングラップで体感できていたので、丁寧な走りを心掛け、その
ままチェッカーを受けることができました。
最後のレースで優勝、準優勝という好成績を残すことができたのは、北海道クラブマンカップ
レースに出場しているライバルの皆様が素晴らしい走りをしていること、自分もそれに負けじと
練習を重ね、レースバトルのスキルを向上させなければならないという意識を持つことができた
ことが大きな要因です。良きライバルの皆様に感謝いたします。

Koshido Racing 佐藤 元春


2019.01.20 CARGUY SUPER CAR RACE 2018 Rd.3,4 RACE REPORT

CARGUY Super Car Race Rd.3・4
開催日時:2018年10月6日(土)・7日(日)
開催地:富士スピードウェイ(静岡)
ドライバー:佐藤 元春、平中 克幸
マシン:恒志堂レーシング SLS AMG GT3
クラス:Ⅰクラス
天候:予選/曇り、決勝Rd.3/曇り、Rd.4/曇り
路面:予選/ウエット、決勝Rd.3/ドライ、Rd.4/ドライ
予選(平中克幸):1/7位
決勝Rd.3:リタイア、Rd.4:1/7位

 

木村武史氏が代表を務めるスーパーカーエンターテイメント「CARGUY」が主催するSuper Car
Race(以下、SCR)。CARGUYといえば自動車をこよなく愛し、様々なカテゴリの自動車を使っ
たイベントを精力的に開催する集団で、そのパフォーマンスで観る者を次々と圧倒する。真冬
の雪山をフェラーリF40で爆走したり、メルセデスベンツGクラスでオフロードコースを激走
したり、また国内トップカテゴリーであるスーパーGTにGT300クラスでエントリーするなど、
その活動は多岐に及ぶ。そのスーパーGTには代表の木村氏自らがNSX -GT3のステアリングを
握り、毎戦参戦するという本気ぶりである。
恒志堂レーシングは2017年よりSCRに参加しており、今年は二度目の参戦。前年はフェラーリ
458チャレンジとSLS AMG GT3の二台体制でエントリーし、双方ともクラス優勝を果たしている。
今回はSLS1台に絞っての参戦となった。マシンはAMG SLS GT3を駆り、チームオーナーであり、
ジェントルマンドライバーである佐藤と、プラチナドライバーである平中の両名でクラスⅠにエン
トリーした。第3・4戦のステージは、昨年に引き続き富士スピードウェイ。平中はもとより佐藤も
Fuji Champion Race(以下、FCR)やMcLaren TRACK DAYなどで走り慣れたコースである。

 

<DAY1> 10月5日(金) 専有走行(14:30~15:30)

FCRと併催される本レース。この日はインタープロトやスーパーFJ、Vitzレースなど、他の競技の
練習走行も目白押しとなっていた。FCR-VITA第3戦にもエントリーしている佐藤は、SCR練習枠の
前までVITA-01での走り込みを重ね、午後のSLSでの走行時間を迎えていた。
SCRのこの日の練習走行枠は1時間のみ。まずはマシンの調子をみるため平中がコースイン。数周
走って状況を見たのち、マシンを佐藤に委ねる。しかし、この頃から雨がパラつき始め、見る見る
うちに路面はウエットへと移行していく。今シーズン何度も同じ文言をレポート上に記してきた
が、やはり恒志堂レーシングの富士スピードウェイでのレースは雨が多い。急遽レインタイヤへ
チェンジし、佐藤がコースイン。

走り出して数周で1分57秒台をマークし、その後56秒台前半まで詰めたところで一旦ピットへ。
今回の乗り味としてはアンダーステアが強めであった。そのためブレーキをこれまでより少し
ゆっくり気味にリリースすることでコーナー進入での姿勢を保つ方向に乗り方を変え、残りの
スティントに臨む。結果、ピットアウト直後の周回からさらにタイムを短縮し、1分55秒台に記録
を更新した。この時点での各セクターベストタイムを繋げば54秒台は見えている。
その後は再び平中がステアを握り、3周のみアタック。過去にスーパーGTを戦った愛着あるマシン
で1分52秒台をマークし、この日のSLSでの練習枠は終了した。

公式練習走行結果

佐藤 元春:1’55.397
平中 克幸:1’52.514

<DAY2> 10月6日(土)
公式予選(9:50~10:05)

前日に引き続き天候はすっきりとせず、路面はウエットのまま。空には曇が広がっている。
気温22.3℃、湿度は85%と高い。
予選は平中が担当することとなった。


陽も差しつつあるが、明け方まで続いた雨の影響で路面は乾かず。

予選時間として設けられている20分のうち、アウトラップ、インラップを除いて5周計測となった
が、いずれも1分53秒台をマーク。しかもその周回内での差も0.16秒以内と僅少であった。限られ
た時間でのアタックをほぼ同タイムで周回し続けていることから、常にいかに精度の高いマシン
コントロールをしているということが窺い知れる。結果は1’53.281で、ポールポジションを獲得。
しかし、予選後平中はマシンのバランスが悪いとコメントしていた。アタックに入る前、2周に
わたってタイヤに熱を入れ、マシンと路面のコンディションを入念にチェックした後、アタックに
入っている。ウエットであったため、挙動もシビアであったと推察されるが、2位との差も0.072秒
差と、決勝でも決して楽な展開にはならない様相を示していた。

Rd.3 決勝(15:00~ 50分間)

気温は24.2℃、湿度70%。天候は一時晴れ間が差していたものの、小雨がぱらつきいており路面は
辛うじてドライといったところ。タイヤはスリックを選択。スターティングドライバーは佐藤が
務めた。前日スリックで練習走行できていない佐藤は、マシンの動きを確かめつつゆっくりと先頭
グリッドまでマシンを進める。

スタートはローリング形式。フォーメーションラップを終え、シグナルブラックアウトとともに
前車一斉に加速を始める。

エントリー車種はイベント名の通りすべてがスーパーカー。見た目の美しさ、加速の力強さ、
コース内に轟くエンジン音、そのどれもが観客を高揚させる凄みを持つ。
1コーナーへ力強く加速し続けたかと思えば、そこからは強烈なブレーキング競争が繰り広げられ
る。ファーストラップでまだタイヤが冷えており、グリップもままならない状況の中、佐藤は
ブレーキペダルからのインフォメーションをくまなく察知するべく神経を研ぎ澄ませる。トラブル
なく1コーナーに進入したものの、好スタートを決めた#10 SALIH & CHARLIE HURACANにアウト
側から並ばれ、脱出で先行を許した。その直後に一瞬の挙動の乱れもあり、さらに後方5番手
スタートからジャンプアップしてきた#777 CARGUY RUF 488challengeにアドバンコーナーで前に
出られ、この時点で3番手となる。やはり今期SLSでのドライコンディションでの走行時間がとれ
ておらず、実質一年ぶりのドライビングとなっただけに、マシンに慣れるための時間が十分で
なかったことは明らかであった。それでもタイヤに熱が入り、SLSのドライコンディションでの
感覚が戻ってきた2周目以降は佐藤の本来の走りが戻り、安定したラップを重ねていく。それと
ともに前を行く777号車との差も見る見るうちに縮まっていき、8周目には完全に捉える格好と
なった。

9周目、ホームストレートで真後ろにつける佐藤。しかしながら最高速に勝る488 challengeとの
間合いがなかなか詰められず、そのまま勝負は10周目までもつれ込む。最終コーナーをきれいに
立ち上がった佐藤は、ホームストレートで再び777号車の真後ろへ。しかしここでも前に出ること
まではかなわず、11周目の1コーナーへのブレーキング勝負へ。レイトブレーキングからのイン
へのライン変更でようやく前に出る。その後もまた順調な走りで、バックマーカーも安全にパス
しつつ周回を重ねていこうとしたが、コーナー進入でリアが落ち着かなくなる。タイヤの性能が
ピークを越え始めた13周目でピットイン。平中へとドライバーチェンジする。
平中は慣れたマシンでコースイン直後からSLSを攻め立てる。ピットイン中に前に出られた777号
車もあっさりとパスし、ポディウムを堅いものとするべくリードを拡げていく。そのまま順調に
レースが展開されていくと思っていた矢先、トラブルは発生した。
平中に交代して3周目、レーストータルでは16周目となったレクサスコーナーの進入で突如ギアが
3速固定となってしまう。周回を続けながらミッションの調子を窺っていたが一向に戻る気配は
なく、17周目やむなくピットイン。メカニックによって状況が確認される。

この時点での残り周回数を考えても、ミッションを載せ替えるとなるとレース終了までには到底
間に合わず、このまま走り続けてもマシンに負担をかけるだけである。苦渋の選択ではあるが、
そのままリタイアを届け出てRd.3を終了することとなった。
ピットではGAINERのメカニックたちを中心に、すぐさま翌日のRd.4向けてギアボックス交換が
開始されていた。

<DAY3> 10月7日(日)
Rd.4 決勝(10:05~ 40分間)

気温は22.2℃、湿度82%。天候こそ曇りであるものの、路面は完全にドライコンディションが維持
されている。
ミッショントラブルでリタイアしたRd.3終了後、GAINERメカニックたちの懸命な作業により、
同日の夜にはスペアミッションに換装されていた。
Rd.4には予選はなく、前日のRd.3のベストタイムでそのスターティンググリッドが決まるという
方式である。リタイアを喫したものの、レース中の周回で1分40秒983のトップタイムを記録して
いたことから、Koshido Racingはまたもポールポジションを獲得する形となった。


扱いなれたメカニックの手によって万全の状態に戻されたKoshido Racing SLS AMG GT3

前日同様、スターティングドライバーは佐藤。Rd.3のリタイアもあり、今日は絶対に負けられない
と一層集中力を高める。

グリッドには愛娘も応援に駆け付け、勝利を誓う。

スタート前に家族の激励を受け、勝利を誓う佐藤。
そしてレースはスタートする。フォーメーションラップを終え、セーフティーカーがピットへと
入っていく。佐藤はシグナルを見つめ、ブラックアウトするその瞬間を見逃すまいと集中力を
さらに高めていた。横一列に並んでいた赤いシグナルが消え、冷えたタイヤで最大のトラクション
を生むべくスロットルを開ける。スタートは決まった。しかしその後も1コーナーへのブレーキン
グから立ち上がり、コカ・コーラコーナー、100Rと挙動が安定しないファーストラップは緊張を
強いられる。

続くアドバンコーナー、300Rとトップをキープし、ダンロップコーナーへ。立ち上がりではトラ
クションを確実に路面に伝えるために早めのシフトアップを意識するなど、攻めの中にも守りの
走りを織り交ぜ、13コーナーからレクサス、最終コーナーを立ち上がり、ポジションキープした
ままホームストレートに帰ってくる。2位には僅差で#10のSALIH & CHARLIE HURACANがつけ
ており、予断は許されない状況である。
2周目も無難にまとめられたと思われたが、最終コーナーのクリップ辺りで競り合っていた10号車
と軽く接触。姿勢を乱すことはなく、幸い大事には至らなかったが、そこで若干リズムを崩した
か、次の周回では終盤までなんとかポジションを死守していたものの、最終コーナー立ち上がりで
アウトから並ばれ、サイドバイサイドのまま1コーナーへ。わずかに前に出ていた10号車にアウト
側からかぶせられ、立ち上がり加速が鈍ったところで前に出られてしまう。


Rd.4序盤は#10 SALIH & CHARLIE HURACANとの激しいバトルを展開

その後は激しいブレーキングや積極的なライン取りで一定の差を保ちながら前半スティントを攻め
続ける佐藤。2位のポジションをキープしたまま、11周目にピットイン。平中へとバトンを渡す。
平中はトップを奪還すべく、猛チャージをかける。一度は前に行かれた#10にドライバー交代後
6周目で追いつく。#10の前に出た後も、ライバル達とは一線を画すスピードでピットインの間に
前に出られたマシンたちをどんどん抜き去っていく。

乗り慣れたSLSは平中のコントロール下でさらにペースを上げていき、マージンを稼いでいく。
終始安定したペースでもはや独走状態となっていた。
そして40分間の戦いが終わりに近づき、最後となる最終パナソニックコーナーを立ち上がりゴール
の瞬間が訪れる。

紆余曲折はあったが、Koshido Racingは勝利を手にすることができた。待ち望んだポディウムの
中央である。

ドライバーもチームクルーもこの瞬間を心から慶んだ。

2018年のSCRはリタイアと優勝という両極の結果で幕を閉じた。トラブルさえなければRd.3でも
勝利を手にしていたかもしれない。しかし、この展開もまたレースならではといえる。これからも
Koshido Racingのあくなき挑戦は続く。

 

~レース後、チームオーナーコメント~

FCR-VITAのうっ憤もあったので、必ず優勝しようという思いで挑みました。パートナードライ
バーである平中克幸選手、そして今回はメカニックとして、スーパーGTで活躍しているゲイナー
からお越しいただいたので、万全の体制で臨むことができました。第3は途中のミッショントラ
ブルにより余儀なくリタイアとなりましたが、翌日の第4戦では見事ポールポジションからの
スタート、そして優勝という結果を残すことができました。これはひとえにチーム力の賜物で
あり、二人のドライバー、エンジニア、メカニック、サポートメンバーが一致団結して勝ち取った
栄光であると思っています。来年度以降もスーパーカーレースが開催される場合は積極的に参戦
し、Koshido Racingとして少しでも知名度を上げていきたいと考えておりますので、スポンサーの
皆様に今後ともサポートのほどお願い申し上げる所存です。

Koshido Racing 佐藤 元春