2023.10.17 Fuji Champion Race Series 2023 FCR VITA & KYOJO CUP Rd.1 RACE REPORT
Fuji Champion Race (以下FCR) VITA-01 Rd.1/KYOJO CUP Rd.1
開催日時:2023年5月13日(土)~5月14(日)
開催地:富士スピードウェイ レーシングコース(静岡)
ドライバー FCR-VITA:佐藤 元春、上野 大哲、兼松 由奈
KYOJO CUP:RINA ITO、織戸 茉彩、兼松 由奈
マシン 恒志堂レーシング レブニーズVITA :佐藤 元春・RINA ITO
恒志堂レーシング CLASS VITA:上野 大哲・織戸 茉彩
恒志堂レーシング YOSHIMI VITA:兼松 由奈
参戦クラス:FCR-VITA、KYOJO CUP
天候 FCR-VITA:予選/雨、決勝/雨
KYOJO CUP:予選/曇り、決勝/雨
路面 FCR-VITA:予選/ウェット、決勝/ウェット
KYOJO CUP:予選/セミウェット、決勝/ウェット
戦績 佐藤 元春(FCR-VITA) 予選:13/33位 決勝:14/31位
上野 大哲(FCR-VITA) 予選:2/33位 決勝:2/31位
兼松 由奈(FCR-VITA) 予選:24/33位 決勝:24/31位
RINA ITO(KYOJO CUP) 予選:7/22位 決勝:5/22位
織戸 茉彩(KYOJO CUP) 予選:16/22位 決勝:失格
兼松 由奈(KYOJO CUP) 予選:6/22位 決勝:18/22位
北海道でのレースを終え、5日後の5月12日金曜日。
タイヤの仕様が変わり、初のFCR-VITAおよびKYOJO CUPを迎えるメンバーたちが富士スピードウェイ入りをした。
5月13日のFCR-VITAおよび翌14日のKYOJO CUPでVITAへと乗り込むドライバーはこちら。
#15 恒志堂レーシング レブニーズVITA 佐藤 元春
#35 恒志堂レーシング CLASS VITA 上野 大哲
#610 恒志堂レーシング YOSHIMI VITA 兼松 由奈
※FCR-VITA/KYOJO CUPダブルエントリー
#15 恒志堂レーシング レブニーズVITA RINA ITO
#35 恒志堂レーシング CLASS VITA 織戸 茉彩
以上5名となる。
上野はKOSHIDO RACING から初参戦。
タイヤが変わってから初の富士スピードウェイ走行となるが、レース前日にして走行枠は僅か二枠。
限られた練習時間の中、レースに向け各選手練習に挑む。
https://x.com/koshidoracing/status/1656827885917995008?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw
練習走行日はドライで迎えたが、本戦はかなりの降水が想定される。
ドライ、ウェットどちらもぶっつけ本番という状況に不安を抱えながらも選手たちはニュータイヤの感触を掴むべく走り出す。
各選手ほとんど一枠しか走れない中、チームオーナーでありエースドライバーである佐藤がタイヤテストでの感触を共有し、万全の体制で挑む。
<5月13日 FCR-VITA Rd.1>
限られた練習が終わり、迎えたレース当日。
予報通り大雨が降る中での予選・決勝となった。
AM 9:25 より予選がスタート。
15号機 佐藤元春、35号機 上野大哲、610号機 兼松由奈の3名が予選に挑む。
31台かつ大雨、全車スピンも多く厳しい状況となった予選が終了。
3台とも無事に帰還したが、視界も悪く車の限界を探りながらの予選となり納得の行くタイムがなかなか出ない。
そのようなコンディションの中、上野がいち早く車の挙動を掴み、予選2位という非常に良いスタートを切る。
予選タイム
・佐藤 元春 2’21.803
・上野 大哲 2’18.519
・兼松 由奈 2’26.087
https://x.com/koshidoracing/status/1657198843795238912?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw
13時15分決勝スタートであるが、雨が止む気配はなく予選と近しい状況で迎えることを見据え、各選手予選の走行を振り返りつつ決勝に向けて準備を進める。
ウェット路面への不安や緊張感はあるものの、各選手ひとつでも上のポジションを奪取しようと闘争心をあらわにしていた。
雨のレースのため、自身はもちろんのこと相手もミスと隣り合わせでの緊迫した走行を強いられる。リスクは平等であるが、逆に多くのチャンスが転がっている。
スタート時のクラッチミートにおける回転数など、佐藤から各ドライバーがレクチャーを受け、決勝に向けて気合を入れる。
https://x.com/koshidoracing/status/1657236667512786945?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw
13時00分。コースイン。
決勝レースの出走は31台。雨が降る中、各車グリッドにつく。
サポートスタッフやメカニックがスタートまでの短い時間で選手とコミュニケーションをとり、選手の士気を上げる。
13時15分。グリッドウォークが終了し、各選手緊張感が高まるなかフォーメーションラップを終え、グリッドにつき、決勝レースがスタート。
KOSHIDO Racingの各ドライバーはスタートを決め、ライバルをパスしながらのTGRコーナーに向かって飛び込んでいく。
予選2位の上野がスタートで前の選手をパスしトップへ浮上。
予選の段階でスタートに好感触を得ていた15号機の佐藤が事前にチームメイトと打ち合わせしていたことが見事にハマったといえよう。
佐藤はロケットスタートを決めTGRコーナーに進入、イン側が混雑するのを予測し大外からオーバーテイク。幸先の良いスタートを決めた。コカ・コーラコーナーでイン側につけ、さらなるポジションアップを狙ったが、イン側の縁石にのり、トラクションを一気に失う。ここでスピンを喫してしまい、10台ほどのライバルに抜かれてしまう。しかしマシンは進行方向を向いており、素早いリカバリーをみせた。ただ、ここで加速というところで後方を走行していたマシンが佐藤に追突。幸い既に加速体勢に入っていたことから致命的な損傷とはならず、気を取り直してレースに復帰する。31台もの出走台数がいるため、順位を落としたところで未だ群衆の真っ只中にいる状況。低μ路に細心の注意を払いながらも着実にVITA-01を前に進める慎重なドライビングで、ポジションを取り戻すべく健闘をみせる。
最終コーナーは毎周、路面コンディションを考慮してのラインからの立ち上がり重視。ヘビーウェットの激しいウォータースクリーンをものともせずきっちりとスリップストリームを使い、ストレートでは着実に前の車との差を縮め、1コーナーブレーキングで前に出る。
コカ・コーラコーナーではスタート直後のスピンからイン側を危惧し、立ち上がりでコースアウト側を上手く使おうと試みたが、再度スピンを期する場面も。しかし、この時も上手くリカバリーし、見事360°フルターンで即戦線に復帰。度々マシンの挙動を乱す姿が何度かあったが、このコンディションの中前に追いつこうという力強さと丁寧さ、時にアグレッシブさを併せもつ走りを魅せた。
610号機の兼松も良いスタートを切り、イン側を位置取ることに成功。その後コカ・コーラコーナー・100R・ダンロップコーナーとリズムよく走るが、集団が崩れて隊列になり始めた13コーナー進入でリアの荷重が抜け過ぎてしまいスピン。その後も隊列が続き、コース復帰に手間取ったことから大幅にポジションを落としてしまう。その後巻き返しを試みるがこのコンディションでは一歩踏み出せず、スロットルを開ける右足に躊躇が見え隠れしていた。それでもラリーで培ったマシンコントロールの勘が徐々に戻り始め、TGRコーナーのブレーキングでは積極的な姿勢をみせる。オープニングラップでのスピン後は大きなミスなく走りをまとめ、少しずつ順位を上げる。過酷な路面状況に慣れてきた頃にはアドバンヘアピンをアウト側から大外刈りという大胆さも見せつつ、このレース中に着実にレベルアップを果たしていった。最終的にはスタート順位である24番手を取り戻し、無事にチェッカーを受けた。
一方、スタート直後1位に浮上した35号機の上野。トップ争いを繰り広げるが #470徳升選手のペースが非常に速く、一度は前に出たものの再びトップの座を明け渡してしまう。コカ・コーラやダンロップコーナー進入ではヘビーウェットとは思えない綺麗なライン取りで徳升選手との距離を詰めるが、1周のトータルではなかなか近づくことができない。とはいえどこの過酷なコンディションの中、素早いカウンターステアとスロットルコントロールでVITA-01の挙動を安定させ、3番手以下を寄せ付けないハイペースで一度も破綻させることなく走り切った素晴らしいドライビングは、流石は現役F4ドライバーとしか言いようがない。
ジリジリ離れる#470号車を視界に捉えつつ、難しいコンデションの中果敢に攻め続けるが、惜しくも徳升選手に次ぐ2位でチェッカーを受けた。しかしながら3番手とは15秒弱の差。いかにこの二人の走りが高次元であったかがわかるだろう。
https://x.com/koshidoracing/status/1657284629001551872?s=46&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw
初参戦の上野が厳しい状況の中2位でゴールし、表彰台に登ることができた。
コンディションも悪く、スピンに見舞われてしまった佐藤選手・兼松選手にとっては悔しさの残るレースとなったが、3名全員が予選のタイムを上回るタイムでレースラップを周回し、短い時間の中でもしっかり成果として残すことができた。
今期からのタイヤの主な仕様変更目的はウェット性能の向上であったが、それでもウェットの状況でのレースは難しい。
ドライでは可能なライントレースやブレーキングでの駆け引きも相当シビアになるため攻めきれない場面もあるレースとなったが、次戦はライバルチームもタイヤの感触を掴み始めるであろう。今後は現状を一段階も二段階も超えることが勝利への条件となる。
<5月14日 KYOJO CUP Rd.1>
春とはいえ、まだまだ冬の寒さを感じる5月14日。気温は15℃。
前日のFCR-VITAに続きKYOJO CUP(以下KYOJO) に参戦する三姉妹ドライバーはこちら!
右から
15号機 RINA ITO 選手(長女)
610号機 兼松 由奈 選手(次女)
35号機 織戸 茉彩 選手(三女)
前日のFCR-VITAにも出場していた610号車兼松選手以外の2名は、タイヤ変更後初のレースかつ初ウェット。
三姉妹の長女であり、エースドライバーである15号機RINA ITO選手はさすがの落ち着きで妹たちを引っ張る。引っ張られた妹たちもレースモードへと変わり、真剣な表情だ。
前日レースに参戦した佐藤・上野より、路面状況のより劣悪なポイントやドライビングについてアドバイスを受け、いざ予選へ。
8時00分 予選
前日に引き続き大雨かと思われたが、予選開始の段階ではなんとほぼドライ路面。
https://x.com/koshidoracing/status/1657525077200748544?s=53&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw
22台で開始となった予選であるが、決勝は雨予報で荒れることが予想されるため各選手少しでも前からスタートしたいところ。
前半あまり上位に食い込めていなかった三姉妹だが、後半に差し掛かりペースアップ。
RINA ITO選手、コースイン後渋滞気味でなかなかタイムが伸びなかったが、後半にようやくクリアラップが取れ、7番手タイムをマークすることに成功。
兼松選手はコースイン後から中盤まで全くクリアが取れず苦戦を強いられていた。粘り強くタイミングを探り続け、計測最終ラップに丸1周ライバル車のスリップストリームを有効活用し、6番手タイムをマークすることに成功。
昨年から参戦の織戸選手は途中まで単独走行が多くなかなかタイムアップができない。8周目後半、前走車のスリップストリームに入ることに成功し、チャンスをものにする。計測最終ラップに順位がアップし、16番手で予選を終えた。
予選タイム
・RINA ITO 2‘05.521
・兼松 由奈 2’05.500
・織戸 茉彩 2’08.001
12時15分 決勝
コースイン前にドライバー同士ポイントや注意事項を確認。決勝前に予報通り雨が降り始め、三姉妹も心配な様子。姉妹でお互いを高め合う。
チームオーナー佐藤よりスタートの極意を伝授し、各選手マシンに乗り込みいざ出陣。
https://x.com/koshidoracing/status/1657580962954498048?s=53&t=ISW3TJ7YJZPlYUjj9ikIZw
三姉妹、教え通りにばっちり回転数を合わせ、シグナルブラックアウト。
各機良い勢いでスタートを決める。
15号機RINA ITO、良い蹴りだしでスタートするが痛恨のシフトミス。しかしながら幸いウェットコンディションで周りのライバルたちも車速がのっておらず、かつTGRコーナーへのブレーキング直前であったため、それほど大きな影響とはならず胸をなでおろす。元々そのドライビングはアグレッシブであるが、本レースでは特にダンロップコーナー進入のブレーキングからターンインで積極的なアプローチをみせ、前との差を一気に詰める。しかし、ここからという2周目後半でSC(セーフティーカー)導入。長く続いたSCの先導は6周目まで続く。
7周目でようやく解除となり、レース再開。再開直後のコカ・コーラコーナー進入へのブレーキングで2台をパス。
その後#337斎藤選手、#86永井選手と張り合うがなかなか抜けない。11周目の最終コーナーで2位を走行していた#114翁長選手が大きくコースアウト。RINA ITOの目の前に復帰し、一時はストレートで前に出るが、その後のTGRコーナーブレーキングで再度抜き返されてしまう。その後の周回ではここぞとばかりにポジションアップを狙うが叶わず、5位入賞でチェッカーを受けた。
610号機の兼松はスタートを無難に決め、TGRコーナーに突入。立ち上がりでライバル車に詰まってしまい後方にパスされてしまう。コカ・コーラコーナー進入で長女RINA ITOにもオーバーテイクされてしまい、ポジションダウンするが、その後巻き返そうと長女に追いすがる。2周目のTGRコーナーでややブレーキングを深追いし過ぎたか、コースアウト。ここでさらに1台に前に行かれてしまう。1、2周目のミスを取り返そうと気合を入れなおしたところでSC導入。SC解除になりここからというところ、GR Supraコーナー立ち上がりで前を走る2台がスピンし、イン側へ。兼松は全力でかわそうとアウト側に回避を試みるが、スピン車両がアウト側に流れてきてしまう。車両の左側面にホイールのスポークが折れるほどの大ダメージを負ってしまい、規定周回数ギリギリクリアはしたものの、18位という結果でレースを終えた。
35号機の織戸。三姉妹でダントツのロケットスタートを決める。スタートで2台をパスするという素晴らしい出だし、このまま順位アップと思ったTGRコーナー。#36岩岡選手に接触してしまう。その接触がきっかけとなり、そのままスピン。リカバリーにかなりの時間を要してしまう。これによりライバルたちとは大幅な差が生まれてしまい、追いつこうと意地の走りを見せるがほどなくしてSC導入となる。SC解除後から、1周目の接触によるペナルティーが出されるが、経験の浅い織戸はそれに気付くことができないまま周回を重ねてしまう。裏を返せばそれだけスピンした遅れを取り戻そうという強い気持ちで走っていた。ペナルティーに気付かず規定周回を過ぎてしまったため、裁定は失格処分。KYOJOに出場し始めて2シーズン目の初戦、本人の中でもたくさんの葛藤があった。このような経験を経て、さらに強く速く賢いドライバーへと成長していくであろう。
失格になったとはいえ、その走りを振り返ってみると、ライバルたちがスピンやコースアウトで戦線を離れていく中、着実にラップを重ねられる走りを身に着けていたことがわかる。路面状況を常に注視し、最も水が掃けているラインを確実にトレース。前走車が巻き上げる水しぶきにも臆することなく積極的にスリップストリームを狙い、走りの組み立て方としては大きく成長したことを印象付けた。
ウェットコンディション、スピン・クラッシュ多数と全体的に少し荒れたレースとなってしまったが、三姉妹は毎戦高め合い成長を見せてくれる。ギリギリの状態で走るからこそトラブルは起きてしまう、そこを今後さらに洗練させていくことでまだまだ成長し、ファンやスポンサーの皆様の期待に応えてくれることは間違いないだろう。そんな期待を抱かせる面々の走りであった。
KOSHIDO RACINGは地元十勝スピードウェイだけでなく、富士スピードウェイや鈴鹿サーキットをはじめとした幾多のビジターレースにこれからも挑戦し、チーム内やライバルたちと高め合うことで日々進化していく。