2023.06.14 北海道クラブマンカップレース2023 Rd.1 VITA-01 RACE REPORT
北海道クラブマンカップレースRd.1 VITA-01
■開催日時:2023年5月7日(日)
■開催地:十勝スピードウェイ クラブマンコース
■ドライバー:佐藤 元春(#12)、浅井 康児(#310)、工藤 大祐(#910)、
RINA ITO(#11)、織戸 茉彩(#516)
■マシン:恒志堂レーシングVITA 11号機、12号機、310号機、516号機、910号機
■参戦クラス:VITA-01クラス
■天候:予選/晴れ、決勝/晴れ
■路面:予選/ドライ、決勝/ドライ
■戦績
佐藤 元春 予選:1/13位 決勝:1/13位
浅井 康児 予選:2/13位 決勝:5/13位
工藤 大祐 予選:5/13位 決勝:6/13位
RINA ITO 予選:6/13位 決勝:7/13位
織戸 茉彩 予選:13/13位 決勝:12/13位
例年より若干早めの開幕となった北海道クラブマンカップ第1戦。今年の道内は4月から比較的温暖な日が続いていたがレースウィークの十勝に吹く風は冷たく、朝方の気温は一桁台というコンディション。そのような中、13台のVITA-01が十勝スピードウェイに集結した。主な各チームのドライバーの今年の顔ぶれは昨シーズンとほぼ同じで、ディフェンディングチャンピオンである#778大島良平選手、常に表彰台圏内を争う#17坂本幸照選手、急激に速さを身につけてきている#77村上泰規選手、本シリーズでは唯一のレギュラー参戦女性ドライバーである#777関あゆみ選手、そして#61レジェンド平中繁延選手といったところ。
今回のKoshido Racingはチームオーナー兼ドライバーである佐藤を筆頭とし、レギュラードライバーである浅井、工藤、そしてスポット参戦となるRINA ITOと織戸の女性ドライバー2名を加えての布陣で挑む。
<練習走行>
今シーズンよりタイヤが大幅に仕様変更となり、開幕からセッティングに終われる各チーム。Koshido Racingも4月から走行を開始し、ニュータイヤの感触を確かめていた。
これまでのセッティングの方向性が今期のタイヤに上手く合致していたのか、シーズン初走行より好タイムを記録する佐藤と浅井の両ドライバー。工藤もこれに次ぐ形で昨年のタイムを大幅に上回って見せた。
今回のレースウィークから合流したRINA ITOも今期VITA-01に初乗りながらニュータイヤに素早く順応し、昨年の自己ベストから約1秒短縮してくる。
織戸はレース前日の公式特別スポーツ走行からの参加。この日はウエット路面ながら、各セクターベストを上手く1周にまとめ上げ、VITA-01二年目にして成長した姿を見せた。
しかし、すべてが順風満帆というわけではなかった。エースドライバー佐藤の12号機はエンジンとミッションに不安を抱えたままでの走行であったのだ。今ひとつエンジンに伸びが足りない状態であったとともに、普段はホームストレートでの4速から5速への素早いシフト操作を信条としている佐藤がゆっくりと、かなり慎重にシフトアップしている様子がみられた。これを受けて佐藤は練習走行を中断し、12号機はエンジン・ミッション換装という重整備がスタートする。また、11号機のRINA ITOはドライビングミスによりオーバーレヴを誘発。エンジンブローさせてしまう。
一気に2基のエンジンを要することになったKoshido Racing。スペアエンジンが1基のみであったことから第1戦に黄信号が灯りかけていたが、なんと他チームに快くスペアエンジンを供与いただけることとなり、ギリギリで窮状を凌ぐことができた。ライバルチームでありながら救いの手を差し伸べてくれたHDC日本平中自動車様とステップエンジニアリング様に心より御礼申し上げる次第である。
さて、エンジンが手に入ってからはメカニックの腕の見せ所。一部のサポートスタッフも協力し、いち早く走れる状態にしようとチーム総出で懸命な作業が続いた。結果2台ともエンジンは換装され、無事に火が入った。ただ、12号機のミッションは換装してもなおフィーリングに難が残る状態。致し方なくその状態のままレース本番を迎えることとなった。
チャンピオン奪還に燃える佐藤、昨年の最終戦で2位表彰台を獲得し勢いに乗る浅井、VITA-01搭乗二期目にしてトップ集団に肉薄するタイムをマークする工藤、KYOJO CUPにレギュラー参戦し、男性顔負けの強い走りで常連軍団を脅かすRINA ITO、同じくKYOJO CUPで昨年よりレギュラー参戦を果たし、目覚ましい成長を見せる織戸茉彩。Koshido Racingの活躍ぶりに期待が寄せられた。
練習走行結果
佐藤 元春:1’30.840 (5/4)
浅井 康児:1’30.920 (5/5)
工藤 大祐:1’31.539 (5/5)
RINA ITO:1’32.488 (5/4)
織戸 茉彩:1’36.540 (5/6 セミウェットコンディション)
<公式予選>
天候は晴れ。気温11.7℃、湿度52%。前日の雨雲はいなくなり、青空が広がり始めている。早朝の公式車検の時間帯は気温も上がらずコースコンデションに不安が残ったが、路面はしっかりと乾いていた。
コントロールタワーにコースイン2分前の表示が出されると同時に、各車一斉にピットガレージから飛び出していく。Koshido Racingはまず浅井がコースイン。それに続く形で佐藤が、この後に工藤、RINA ITO、織戸と続く。浅井・佐藤はアウトラップから2周かけてしっかりとタイヤに熱を入れ、徐々にペースを上げていく。常に浅井の後方につき、スリップストリームを上手く活用しつつポールを狙う佐藤。浅井も後方を気にかけつつ、ミスなく周回を重ねる。
最初にベンチマークとなったのは#77村上選手で、1分30秒台の好タイムを序盤から連発。次いで#778の大島選手が近接タイムで肉薄する。そこに割って入る形で浅井が6周目から1分30秒台後半を連続でマークし、8周目にベストとなる1分30秒643で3位につけた。そして遅れること1周、ついに佐藤が動き出す。それまで1分31秒台に留まっていたが7周目に一気に縮め、1分30秒台中盤を記録。その後もアタックは続き、皆がアタックを終えたラスト周回で1分30秒361を叩き出し、トップに躍り出る。同時に予選時間は終了となり、佐藤が土壇場でポールポジションを獲得した。
上位陣のタイム順では2位に#77村上選手、3位に浅井、4位に#778大島選手となっているが、村上選手にトラックリミット違反が課せられベストタイム末梢のペナルティ。スターティンググリッドは3番手となった。
5位以降は1分31秒台の戦い。とはいえ面々昨年から軒並みタイムを短縮してきており、こちらもハイレベルな戦いが繰り広げられる。開幕前に何度か練習走行を重ねていた工藤は、試行錯誤の末に前日の特別スポーツ走行時間までも惜しみなくセッティングに割いていた。納得いくまでマシンの仕上げに注力し、乗り方も着実に今年の仕様にアジャストしていった結果、上位陣と僅差の1分31秒060までタイムを刻む。練習走行では1分32秒台に甘んじていたRINA ITOも予選で開眼し、1分31秒台前半を連発。予選アタック中にニュータイヤの特性を掴み、最終的には工藤に迫る1分31秒141を記録した。
最終的には5位に工藤、6位にRINA ITO、昨年から好調の#17坂本選手は7位となっている。マシンコンディションに泣いた#61レジェンド平中選手は、練習走行では1分31秒台をマークしていたものの、予選中は1分32秒113で9番手。唯一の旧エンジン車で奮闘中の#777関選手は、そのハンデを一切感じさせない1分32秒297という驚異的なタイムをマーク。しかし、ピットアウト時のホワイトラインカットにより10番手としながらも、グリッドは11番からのスタートとなった。
絶対的な練習不足に泣いた織戸は13位。それでも久々のVITA-01で、まして乗りなれないマシンということを考えれば十分なタイムである。20分間という短い予選の間だけでもピットアウト直後と終了時の走りを比較すればその差は歴然。コース幅の使い方や操作の精度が格段に高まっていた。現に同じ車両でエントリーした昨年と比較するとアベレージを2秒ほど短縮している。前日練習がすべてウエットコンディションとなってしまったために、ニュータイヤ初のドライ走行となった予選時間で多くの感触を得た様子。決勝での巻き返しが期待された。
<決勝>
気温は10.9℃、湿度50%。この時期としては若干肌寒い。但し日差しはあり、路面温度は涼しげな外気温に相反して上昇しつつあった。タイヤに熱を入れるには十分である。
各ピットからコントロールタワー下に向かって車列をなす色とりどりのVITA-01達。ワンメイクでありながら外装は各チーム個性に富んでおり、列を成すその姿は他のレースシリーズに引けをとらないくらい華やかである。
各車スタート練習を交え、それぞれのグリッドへ向かう。フロントローは佐藤と浅井でKoshido Racingが独占。中盤にも工藤とRINA ITOが並び、後方には好機をものにすべく織戸が目を光らせている。
グリッドでは各チームスタッフや仲間たちとともに和やかな時が流れる。スタート前、ドライバーの緊張をほぐしてくれるひとときである。グリッドウォークを終え、ここからスタート1分前の表示が出されるまでの間、サーキットは一変して静寂に包まれる。数は少ないが筆者も本シリーズにはスポット参戦の経験があり、この静寂がえもいわれぬ緊張感を作り出す。今期初戦ということもあり、その緊張感はいやが上にも高まっていた。スタートまで1分を切ると全マシンがエンジンスタートし、グリーンフラッグとともにフォーメーションラップへ。それぞれのグリッドに戻ったマシンたちはスタート5秒前の表示で一斉に咆哮を上げ、レッドシグナル点灯、ブラックアウトで最初のコーナーに向かって飛び出していく。
タイヤの規格が変わったことはこれまで何度も触れてきたが、これはレーススタートにおいても絶大な変化をもたらした。横のみならず縦グリップも大幅にアップし、昨年までの感覚でのクラッチミートではパワーが喰われてしまう。したがってある程度スロットルをしっかりと開けないとスタンディングスタートは決まらない。各車まずまずの蹴り出しでトラブルなくスタートする中、浅井が痛恨のシフトミス。2速、3速と立て続けにギアを蹴られ、スピードを乗せられないまま2位のポジションからずるずると後退していく。浅井の順位変動はあったものの、他車はスタート直後に特に混乱もなく、各マシンきれいな隊列を成して2、3、4コーナーへとなだれ込んでいった。
佐藤はミスなくスタートし、ホイールスピンを避けるべく早めに2速へ叩き込むと同時にイン側をけん制。トップのまま1コーナーへ飛び込む。タイヤに熱が入っていないため走行ラインはぶれるが、可能な限り車速をのせていく。予選を含め依然としてミッションに不安を抱えながらの走行を強いられていたが、2周目の5コーナー立ち上がりでは4速に蹴られ、ホームストレートでは5速にシフトアップするところでほぼ毎回のようにギア鳴りするなど、やはり普段通りとはいかない様相である。それでも致命的な失速とならないよう慎重な操作を心掛け、1周1周を大切にラップしていく。周回を重ねれば重ねるほどにその走行ラインは鋭さを増していった。
同時に隙もみせず、このミスしない走りそのものが佐藤の最大の強みといえよう。結果、ブッチギリというわけにはいかなかったが、後方との差をみながらレースをコントロールし、ただの一度もトップの座を明け渡すことなくチェッカーを受けた。トラブルを抱えながらも、まさに完璧なレース運びである。
一方、スタートで後方に沈んだ浅井。1コーナー進入までの間に6番手まで後退し、その後も各コーナーで後続車にラインを奪われ、4コーナーを立ち上がるまでに9番手まで後退してしまう。しかし、予選2位の底力はここから遺憾なく発揮されることになる。まずオープニングラップの最終コーナーを丁寧に立ち上がり、2周目のホームストレートで#61 平中選手のスリップストリームについたのちパス。1コーナー進入で姿勢を乱しながらもそのまま#55後藤選手の追撃に入る。コーナー1つクリアするたびに前との差を確実に縮めていく浅井。同周回の7コーナー進入までにはテールトゥノーズの状態にまで詰めていた。前周同様うまく最終コーナーをまとめた浅井は再び前走車のスリップを狙う格好の位置にマシンをつける。後藤選手の前にはチームメイトであるRINA ITOがいたが、ホームストレート上で後藤選手の前に出た浅井は3周目の1コーナーのブレーキングでRINA ITOもパス。一気に2台の前に出た。そこからは2秒ほど前を行く工藤と#17 坂本選手に追いすがる。ストレートもインフィールドもバランスよく速い310号機。浅井もそれに呼応する形で十勝スピードウェイを駆けていく。
そのような中、4番手争いを展開していた工藤と坂本選手のバトルが勃発。昨シーズンからレギュラー参戦を開始し、見る間に速さを身に着けてきた工藤。2022年シーズン最終戦ではトップ集団に肉薄するタイムをマークするほどの成長ぶりを見せており、VITAベテランドライバーの坂本選手をも唸らせるほどの走りを見せた。しかしながら表彰台の常連となっている坂本選手は手ごわく、4周目の4~5コーナーで先行を許してしまう。ただ、クリーンなバトルの末に工藤が得たものは大きかったはずである。
2台以上が絡んでの走行はラインの自由度が少なくなり、走行ペースは落ちてしまう。そんな戦況を後方から見ていた浅井はチャンスとばかりに追撃の手を緩めなかった。坂本選手に前に出られた工藤を同周回のうちに捉え、ピタリと後ろにつけてプレッシャーを与える。チームメイト同士とはいえ、お互い手は抜かない。工藤・浅井で強みが異なり、右コーナーでグッと差を詰める浅井に対し、左コーナーでは工藤が離す。但し、コースの大半を右コーナーが占める十勝スピードウェイだけあり、後方の浅井が優勢。5周目のホームストレートで工藤のスリップに入った浅井は6周目の1コーナーのブレーキングで前へ。5位争いを制す。浅井はその後も1分31秒台前半~中盤のペースを維持するが、追撃もここまで。最終的には5位フィニッシュとなった。それでも猛追する中で意地を見せ、4周目にレース中でのファステストをマークした。工藤はそこからポジションを守り、6位でチェッカー。
スタンディングスタートを成功させ、中盤で戦っていたRINA ITOは#55 後藤選手とのバトルを長きにわたって展開。幾度となく前に出られそうになりながらも鉄のようなメンタルがそれを許さず、工藤に続く7位フィニッシュとなった。富士スピードウェイで開催されているKYOJO CUPで鍛え上げられた精神力は並大抵のものではないことがわかる。
織戸は低めの回転に合わせ、無難にクラッチミート。スタート直後は#777 関選手の後ろにつけていたが、1コーナー進入にて大外から仕掛け、ブレーキングで前に出る。するとそのまま2コーナーへ猛進し、#48 山口選手の背後につけた。しかしその後は後方の関選手とのバトルに費やし、前方との距離は拡がっていく。2周目に入ったところで1~2コーナーで痛恨のアンダーステアを出し、何とか抑えていたものの4コーナー立ち上がりから5コーナーにかけて関選手に先行を許した。その後はミスなく自身の走りに徹し、チャンスをうかがい続けた織戸。すると11番手を走行していた#48 山口選手がスピン。これに乗じ、ポジションをひとつ上げる。その後は山口選手の猛烈なプッシュがあったものの、守り切って12番手のままゴール。最後の最後は0.149秒差という超僅差でポジションを勝ち取った。
昨年第1戦以来の勝利となった佐藤の活躍に沸いたKoshido Racingのピット。しかし、浅井や工藤をはじめ、各ドライバーが上位に食い込めるチャンスがあっただけに悔しさも残る今回のレースであった。次戦は今回の結果を挽回すべく、より修練を重ねての再挑戦となることは間違いない。ただ、フレームに難を抱えながらも3位表彰台を獲得したディフェンディングチャンピオンである#778の大島選手やエンジン不調に悩まされていた#61の平中選手、次戦より新車投入予定の#777 関選手など、周りもさらに手強くなることは明白である。Koshido Racingはより高みを目指して走り続けるのみだ。