2020.07.27 Ferrari Clienti “4hours Endurance” RACE REPORT
開催日時:2019年7月16日(火)
開催地:袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ(千葉県)
ドライバー:佐藤 元春、 竹谷 和浩、 船越谷 和彦
マシン:#55 VITA-01
天候:予選/雨 決勝/雨
路面:予選/ウエット、決勝/ウエット
予選(佐藤 元春):1/8位
決勝:4/8位
モータースポーツ事業全般の企画やプロモ―ションを手掛ける株式会社ファーストレスポンダーと
フェラーリジャパンが共催する本レース。ドライバーはフェラーリチャレンジレースへの参戦者
やF1/XXオーナー等が対象となる。マシンはウエストレーシングカーズ製のVITA-01のワンメイク
とされ、イコールコンディションでのバトルを通してフェラーリオーナー間交流が図られる。
フェラーリのモータースポーツ部門を率いる「コルセ・クリエンティ」のトレーラー
Koshido Racingからはチームオーナー佐藤、北海道クラブマンカップ及び富士チャンピオンレース
に佐藤とともに参戦している竹谷、過去に北海道クラブマンカップレースでSAURUS Jrをドライブ
していた船越谷の3名体制で挑む。佐藤・竹谷はもとより、先日VITA-01初走行で好タイムをマーク
した船越谷という今回の布陣。優勝への期待が高まる中、千葉へと向かった。
予選(9:30~10:30)
7月15日より現地入りしていた面々であったが、その日の走行時間は一切なく、当日の朝、シート
合わせから始まる。
天候は雨で路面はウエット。朝一、空を見渡した様子では、一日中雨天であることが容易に分かる
ほど厚い雲と雨脚にさらされていた。
長めにとられた予選時間は、VITA-01に不慣れな各ドライバーの練習時間も含むものであり、60分
間が設けられている。まずは袖ヶ浦の走行経験がある佐藤がコースイン。とは言ってもこれだけの
豪雨に見舞われると、もはやドライ路面とは走行ラインを大きく異にするため、これまでの経験が
頼りとなる。
1周目、セーフティーカー先導のもとでゆっくりと周回したが、コースのあちらこちらに大きな
水溜りができており、VITA-01のカウルの下からは多量の水しぶきが上がっている状況。セーフ
ティーカーはピットに入る様子はなく、そのまま2周目へ。セーフティーカーとの間合いを空け、
やや速度をのせてみるが、今にもハイドロプレーニングを起こすのではないかというコンディショ
ンである。
結局3周目もセーフティーカーはそのまま先導を続け、4周目にようやくレーシングスピードでの
走行が可能となった。水溜りの少ない箇所を選び、グリップを感じながらペースを上げていく
佐藤。しかし、油断するとあっという間に水の膜に四輪とも持っていかれ、コースアウトして
しまう。フロントタイヤで跳ねた水がカウルを通してドライバーに降りかかるなどいう場面も
あり、コンディションは過酷さを増していた。
奥に行くほど回り込んでいる5→6→7コーナーでは、奥目にクリッピングポイントをとるべく進入
でアウト側にマシンを振るが、常にオーバーステアとの闘いを強いられる。少しでもカウンター
が遅れるとたちまちスピンモードへ移行するが、同時にブレーキングも開始するため、ハイリスク
である。それでも徐々にマシンを手懐け、ラップタイムを削っていく佐藤。ドライバー交代ぎり
ぎりに1分32秒515をマークし、竹谷にステアリングを託した。
十勝のVITA-01レースではすっかり上位陣の顔ぶれとなった竹谷は慣れないコースということも
あり、インラップを丁寧かつ慎重に走行。しかし、マシンの特性とコースの特徴を1周で掴んだ
のか、2周目にはアタックを開始。その周を1分36秒台で周回し、3周目には1分35秒台と、確実に
タイムを短縮していく。
ヘビーウエットコンディションへの適応力も高く、いざ4周目といったところで他車のスピン・
コースアウトにより赤旗中断。余儀なくピットに戻った。車両が回収され、再びコースに繰り出す
竹谷。赤旗解除後ドライバーチェンジの時間が迫る中、1周のみ与えられたアタックラップにて
1分34秒238を記録し、走行を終えた。
十勝スピードウェイでの初VITA-01練習走行ではドライ路面でしか走行できていない船越谷。
マシンに乗り込み、コースインしようとしたちょうどこの時、雨脚が強くなった。
ここはやはり慎重にならざるを得ないであろう。数周にわたってマシンとコース、そしてウエット
路面の感触を確かめるべく、非常に丁寧にマシンを進めていく。しかし、過去にSAURUS Jrで
戦っていた経歴をもつだけにマシンへの順応性は非常に高く、3周目にはペースも上がり、オー
バーステアが出るくらいまで攻め込む姿が見られた。挙動にも慣れ、ペースを上げようかといっ
た矢先、再び赤旗中断となってしまい、ピットの中へ。解除されたとき、既に予選終了時刻を
迎えていたが、5分間の延長措置が取られた。コースに戻ってすぐ、ペースを上げようと奮闘する
船越谷であったが、他車が一斉にピットアウトしていったこともあり、コース上は混雑。周りに
合わせたペースを強いられ、タイムを伸ばすことは叶わなかった。
結果、佐藤が自身のスティント終了間際に記録した1分32秒515が全体のトップタイムとして残り、
見事ポールポジションを獲得した。
予選結果(ラップタイム)
佐藤 元春:1’32.515
竹谷 和浩:1’34.238
船越谷 和彦:1’36.924
決勝(11:00~15:04)
予選を終え、決勝スタートまでの時間は30分弱ほど。その間、予選結果を基にチームをマネジ
メントする中川により綿密な作戦が練られ、各員に伝達がなされる。彼もまたレース参戦経験は
豊富で、北海道クラブマンカップにおいては表彰台を獲得するなど、VITAレースに関しての見識
が深い。
予選の状況を基に、決勝での走行を組み立てる中川
また、佐藤よりVITAでは初レースとなる船越谷にアドバイスがなされる。
スターティングドライバーは佐藤が担当することとなった。10時50分コースイン。ホームストレー
トの1番グリッドにマシンを進める。言わずもがな天候は土砂降りのままである。
11時2分、フォーメーションラップがスタートし、各車コース状況を確認しながらゆっくりとVITA
を走らせる。雨量が多く、1周終えてもセーフティーカーはピットに戻らず先導のまま2周目へと
突入。
レーシングスピードでの走行を拒むかのように、袖ヶ浦の雨は一向に弱まらない。あちらこちらに
広がる水溜りがつながって川を形成し、ミッドシップのVITAにハイリスクなコース状況をつくり
出していた。
結局セーフティーカー先導が終わったのは4周後。その頃雨脚も若干弱まり、各車一斉に加速して
いく。佐藤は他車の追随を許さないと言わんばかりに1分32秒台のペースで後方とのマージンを
拡げていった。しかし、そんな予選さながらのレースラップも長くは続けられなかった。6周回
したところで再び雨量が増加、セーフティーカーが導入かと思いきや、そのまま赤旗中断となって
しまった。
その後リスタート予定は12時ちょうどとアナウンスされたが、コースコンディションの見極めから
正式にスタ―トが切られたのは12時30分。ドライバーは竹谷にチェンジしていた。佐藤が築いた
マージンはゼロになってしまったが、竹谷もまた悪天候にはめっぽう強いドライバーであり、善戦
が期待された。
リスタートもセーフティーカー先導となり、3周回したのち本スタートが切られた。意気揚々と
加速していく竹谷であったが、最初の1コーナーでのブレーキングポイントを見誤り、スピンを
喫してしまう。それに続く形で2位を走行していたマシンもスピン。
そのさらに後方を走っていたマシンには抜かれてしまったが、スピン後の的確なステアリング
ワークと対処により素早くレースに復帰したため、ポジションは2位をキープすることができた。
遅れを取り返すべく前を猛追する竹谷。しかし、5→6→7コーナーでトップを奪ったマシンがスピ
ン。これを慎重にかわし、再びトップへ浮上する。その後はマシンコントロールに集中し、再スピ
ンすることなく周回を重ねていったが、7周目に#77のチーム77にトップを奪われる。
チーム77は予選で佐藤のタイムのコンマ1秒落ちの僅差につけており、今回実質的なライバルチー
ムといえる。その中で3名いるドライバーのうち、都筑選手はポルシェカレラカップジャパンで
シリーズチャンピオンに輝いており、スーパーGTにもスポット参戦している経歴を持つレーシン
グドライバーである。その卓越したマシンコントロールは十分にKoshido Racingを脅かす存在で
あった。
先行を許した竹谷であったが、その後は離されまいと一定の間隔を保って追従する。
しかし、コースのいたるところでスピンが続出。12時44分、またもやセーフティーカー導入と
なる。
ここで給油を済ませ、船越谷にドライバーチェンジ。いよいよ船越谷のVITA初レースが始まった。
但しコースインした時はまだセーフティーカー先導中であるため、ゆっくりと隊列の後ろに加
わる。
アウトラップ後も3周にわたってスロー走行を強いられ、スロットルを全開にできたのは4周目
から。ところどころブレーキングでオーバーステアとなりながらもしっかりとコントロールし、
VITAを手中に収める船越谷。ラップタイムも1分35~36秒台を堅実にマークし、レースペースを
作り上げていく。ちょうど雨脚も若干弱まり、タイヤのグリップを感じ取りながら前を行く#77
との距離を詰める。危うく接触か、という位置まで肉薄するようなシビアな戦いが続いた。
なかなかにアグレッシブな走りで、確実にプレッシャーをかけ続ける船越谷。7周にも及んだ
テールトゥノーズのバトルを制し、ついにトップを奪還する。直後にピットインし、ポジション
を再び2位としたが、その走りは見事というに他ならないものであった。
次スティントはファーストドライバーに返り、佐藤が出撃。1スティント目の赤旗中断の鬱憤を
晴らすべく、ピットアウト直後から予選タイムのコンマ2秒落ちというハイペースで飛ばす。
その次の周には予選タイムを2秒以上超える1分30秒449という驚異的なタイムを叩き出し、1位を
猛追。やはりここまでのペースともなるとトップ返り咲きは時間の問題であった。2周後、最終
コーナー立ち上がりを上手くまとめた佐藤は一気に前走車との間合いを詰め、1コーナー進入まで
に難なくトップへ。その後も1分31秒台のタイムを安定して重ね、スティント後半には30秒台を
連発。こうなると次に狙うはレース中のファステストラップである。完璧な勝ちに拘り、プロ
ドライバーに真っ向勝負をかける佐藤は、慣れない袖ケ浦でしかも悪コンディションにもかかわ
らず、すべてのコーナーでVITAを攻め立てる。ロック寸前のシビアなブレーキング、路面状況を
見定め、4輪のグリップを最大限に活かし切るライン取り、パワーオーバーステアを出さない丁寧
な立ち上がりでのアクセルワークと、タイムを詰めるべく集中して走り続けた。しかし14周目の
1コーナー、一瞬の判断ミスがもたらしたブレーキロックによりコース外へオーバーラン。大きく
コースから飛び出したわけではないが、場所が悪くスタックしてしまう。
コース復帰からそのままピットに戻り、ドライバーは竹谷へとチェンジ。この時点でマージンは
30秒。再び差を拡げるべく奮闘する。しかしコースインしてすぐ1コーナーで予選3位の#74が
スタックしており、2分後またもセーフティーカー導入。解除されたのは約10分後。竹谷もまた、
佐藤に続くペースでラップを刻み、1分31~32秒台で周回する。ここで迫ってきたのは実質的な
ライバルともいえる#77。じわりじわりと差を詰め、何度も並びかけるが、竹谷も走行ラインを
巧みに変え、易々と前には行かせない。雨の中、見ている側にも緊張を強いるようなサイドバイ
サイドの戦いが続いた。一旦は前に出られるが、竹谷は行かせてなるものかと追いすがり、
一瞬の隙をついて1コーナーのブレーキング競争で再び抜き返す。
その後はギリギリのところでおさえていたが、2コーナーのクリッピングポイント付近で一瞬荷重
が抜け気味になっているところで#77と接触。2台ともにスピンを喫してしまう。#77はランオフ
エリアに吸い込まれていってしまったが、竹谷は幸いコース上にとどまった。これもまた、姿勢が
崩れた後の的確なステアリング操作がもたらした結果である。即時リカバリに転じた竹谷は動じる
ことなく戦線に復帰。ラストに1分31秒台を刻み、船越谷にステアリングを託した。
ラストスティントの船越谷であったが、ピットイン・ドライバーチェンジの間にポジションを5位
に下げてからのコースインとなった。走行を許された残り時間は実質5分ほど。少しでも順位を
挽回すべく、持てる力を発揮して攻め込んでいく。この日、自身のベストとなる1分34秒698を
マークし、4位のマシンへと肉薄。その走りが結実したか、ファイナルラップで前走車がスピン。
その横を冷静に通り抜け、4位にポジションアップし、ゴール。
終始このレースはセーフティーカーに左右される展開であり、その中での順位変動も目まぐるしく
起こった。ピットタイミングもあり、終盤に順位を落とす形となってしまったが、ペース的には
チームとして相当にハイレベルなものであったと言える。今後も耐久レースでの各ドライバーの
活躍が期待されるところである。
~レース後、チームオーナーコメント~
予選及び決勝と、非常に強い雨の中の走行となりましたが、悪天候の中でのトレーニングはこれ
までかなり積んできたため、自分としてはコンディションが悪い方が自信がありました。今回、
フェラーリチャレンジで常に表彰台に上がっているような速く、強いドライバーも複数人エント
リーしている中で、予選でポールポジションを獲得できたのは、これまでの雨の中のトレーニン
グの賜物であると思います。
途中でセーフティーカーが何度も導入されるようなレースだったため、それを見極めたピット
タイミングによって大きく順位が変わるレースでした。最も悔やまれるのは、自分がファステ
ストラップを刻みながらアタックしている途中、1コーナーでコースアウトしたこと。それに
よってスタックしたがために、それまで築いていたマージンをすべて失ってしまい、トップを
譲ることになってしまいました。やはりあのようなコンディションのレースこそ周りのクルマの
状況を見て、自分の持てる100%以内の力でドライビングすべきだったと痛感しています。少な
からずあれはチームで勝利するというよりも自分がファステストラップを記録したいという単独
での行為に起因したものであり、今後はやはりレースに勝つということに重きをおいて臨みたい
と思います。普段、北海道クラブマンカップで共に戦っている竹谷選手と、VITA-01では初レー
スとなる船越谷選手と一緒に走ることができ、良い意味で結束力が固まりました。この3名とは
これからもレースを続けていきたいと思います。
Koshido Racing 佐藤 元春